パリーおじさんの傑作
初版 2023/07/10 21:26
ピアノ三重奏曲第3番ト長調
第1楽章 アレグロ モデラート
第2楽章 カプリチオ:アレグロ
第3楽章 ラメント:レント
第4楽章 アレグロ
イギリスのブラームス、Sir Hubert Parry のピアノトリオ。
イギリス音楽の代表といわれるのはエルガーであるという人が多い。確かにそうだろう。でもね、イギリスの音楽の父はエルガーだけではない。二人もいて困るならイギリスのブラームスと言おうか、じゃあ、スタンフォードはどうなるとか言われるとますます困るけど、皆KBMだな。イギリスには毎年プロムスという音楽の祭典がある。それは国歌で始まり、第2の国歌で終わる。コンサートホールの全員が自主的に立ち上がり、老若男女てんでに大声で歌う。イエルサレムという歌。
確か、ロンドンオリンピックのオープニングで山高帽の歌手が燕尾服を纏って歌う姿をご覧になった方も多いのではないか。彼の歌は第二の国歌と呼ばれる国民の歌です。
ブラームス張りの交響曲を5曲作曲したシンフォニストでもある。誤解を恐れずに評せば風通しの良いブラームスと呼ぼうか。
その彼のピアノ三重奏曲が3曲ある。その中で僕がよく聴くのが第3番なんだけど、これが、YouTubeにもまったくなかった。彼の室内楽のCDは非常に少ない。まだこれからなのかもしれない。交響曲の方はロンドン交響楽団が共感に溢れた熱のこもった演奏で自国の作曲家をアピールしている。
しかし、室内楽となれば、カタログにほとんど見つからない。HMVにもジャケット写真すらない。
でも音楽は素晴らしい。
音構造(和声)が簡明で、ブラームスに近似していることから亜流とみなされているかといえば、そう呼ぶにはあまりにも作品に風格がある。
つまり、遜色がないのです。
確かに彼の作風はその前にブラームスの存在がなければ成り立たなかっただろうけれど、強烈な推進力と確固たる音楽性が腰の据わった『格』を作り上げ、世紀がもっと長いスパンで回想される時代になれば、間違いなくイギリスの音楽の大地に太い幹を伸ばしている大樹である。
彼の3曲のピアノとヴァイオリン、チェロのための三重奏曲は作曲年代を考慮しても、どの作品もわかりやすく素晴らしい。
モダニズムの風潮が世紀初頭を風靡する中で断固として全音階を突き進んだ。
凝縮された音楽性がこの室内楽の一曲にも滔々と流れている。
どの楽章も聴かせる。
第1楽章は懐かしい回想に耳をそばだてるような旋律から次第に熱を帯びた重奏の明快な旋律美。
主題には華があるとは言えないけれど、シンプルな楽器構成に実にぴたりと嵌っている。
ピアノの扱いと力感が対等な弦楽は決してヒステリックに叫ぶこともなく、ブラームスのように灰色がかったロマンティシズムを展開する。
第2楽章はスケルツォではなく、奇想曲風になっていて前に出てくるのはピアノとヴァイオリン。そのイングランドのローカリティが速い部分でヴァイオリンに乗るときの何て綺麗で浮き立つようなメロディだろう。
愁いを含んだ中間部のヴァイオリンとチェロの二重奏、そこから再び冒頭のテーマに帰る部分の気分の沈潜。
嵌りましたね。ボクは。
この楽章はいい。実に。
第3楽章はラメント『祈り』のレント。パリーはあまり美しいという緩徐楽章を書かない。メロディが時として体格に似合わず優美であったブラームスとそこが異なるといえばそうかな。
でも、やはり旋律だけで作り上げない頑固な音楽性が好ましい。対位的に組まれた音楽は風格があり、渋く松の木が燃えるように、派手な炎は上がらないけれど、熱気は高い。楽興がヒートアップしてゆくときのピアノ。弦楽がやや大人しいのはこのトリオの特徴みたいだ。
何しろ演奏を比較しようにも手許の音源がたったひとつ。
第4楽章は明朗さ全開のヴァイオリンが奏でる動機にピアノが後を追って旋律を踏んで行く。
あるかなしかのメロディだけれど、それがとても好ましく気分がいい。
バッハとブラームスを敬愛した作曲者の心意気が垣間見える。この楽章もいいぞぉ。
てなわけで、ボクは1番手の届く棚のバルビローリのブラームスの隣にこのCDを置いている。
このコラムの原型を作った当時、YouTubeに音源を探すことができなかった。あてにしていたので悔しかったボクは初めてYouTubeにビデオをアップロードした。
初めてだったので作り方がまずいけれど、そのうちきっと馴れるでしょう。
画像をメインとして音楽はBGMとして使用しました。第2楽章のみです。問題なく使えてる。
画像は以前のブログの中の猫たちで、過去に描かせていただいた作品からアットランダムにピックアップしました。
Mineosaurus
古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。
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