傑作の森の小径 ベートーヴェン:チェロソナタ第3番
初版 2024/12/22 10:31
改訂 2024/12/22 12:25
Museumの方で展示したのはロストロポーヴィチとリヒテルの全集。ロストロポーヴィチのチェロとリヒテルのピアノは特に第5番が印象に残っている。初期の作品では牛刀で鶏を捌くようなところがあって、もう少し曲に寄り添ってくれよと思いつつ、いつの間にか聴かされているというものもあった。
他にもよく聴いていたがCDとして買い替えていたものがフルニエとグルダの廉価版の確か2枚のCD(もうかなりの年月が経過しているにもかかわらず、まだ段ボールに入ったままで未整理のバックヤード入り。このまま終活の対象になりそう…)同じ1音を弾くのでも、グルダのピアノはただ弾いているのではなく、その縁取りが言いようのないニュアンスを含んでいて演奏が二つあるような魅力を持っていて、フルニエの中庸の気品あるチェロと特に第1や第2番の演奏がお気に入りだった。
あと、全集では後マイスキーとアルゲリッチのがまだ展示しないでそのまま。全集ではないがデュ=プレのチェロと夫君バレンボイムの第4番と第5番の入ったCDがある。展示を系統だてて行っていればいいのだけれど、爺には時間がない。
昔からあったのだけど、オフィシャルの面白い演奏記録があって、何度見ても面白いので一度この曲の備忘録に書いておきたかった。
べートーヴェン/チェロソナタ第3番イ長調OP.69
1808年。この時代のベートーヴェンの作品といえば第5交響曲や第6交響曲、ピアノ協奏曲では第5番の直線的な山道や曲がりくねった川沿いの道や花々に縁取られた広々とした野原があったが、そこには、鬱蒼とした黒い森の中に淡く、時には木陰を突き抜けた陽射しが苔むした幾本かの小径があって、このチェロソナタはその中のさらに深い部分に続いてゆく一本である。
弦楽四重奏曲ほどではないにしろ、チェロソナタにはベートーヴェンの室内楽の中心近くにあり、古典的美意識の中に確固たる位置を占めている。
この年になるまで上記のような顔ぶれの様々な演奏家で聴いた。
ピアノの魅力ではボクにとってグルダとグールドは特別だったけれど、グールドもよく室内楽をやっていて、非常に面白い演奏が多い。CDのカタログにあるかどうかは分からないけれど、レナード・ローズのチェロにグールドのピアノという組み合わせでこの第3番を聴くことができる。
CDで探したけれど、ヒットしない。
YouTubeにあるソースは昔のテレビ番組のライブのような雰囲気だ。ソースはおそらくビデオ・テープではなかろうか。非常に面白い演奏でした。面白いというのは失礼な話だが演奏家の個性が際立っていて作品自体とは別な意味で面白いという意味合いだ強い。
以前は全曲フルで見られたけれど、オフィシャルでは今は4つの映像に分かれている。
第1楽章 アレグロ・マ・ノン・タント
冒頭チェロが雄大なテーマを示し、ピアノがそれを受けて入ってくるその1音からグールドは完全に唯我独尊のベートーヴェンの世界を作ってしまっていて、『こいつ、大丈夫かホンマ?』というようなローズのしかめっ面がおかしい。
しかし、ローズは大人だからとにかく音楽を作ろうとリードしてゆくのだが、時折グールドの自己陶酔的な奏法にとまどい、『しょーがねえな、こいつ』とでも言いたげに演奏を続ける。
でも、いつの間にか完全にグールドのペースなんですね。
第2楽章 スケルツォ:アレグロ・モルト
スケルツォはコケットで木靴のステップがピアノの跳ね方に顕れているようでローカル的ですごく楽しい。チェロとピアノとグールドの唸り声の三重奏曲。もう、ピアノは奏者紹介で Piano and growls(ピアノとうなり声)と書くべきではないか。
第3楽章 アダージオ・カンタービレ~アレグロ・ヴィヴァーチェ(実質4楽章かな)
この前半のカンタービレは素晴らしく美しい。グールドの弾くバッハの持つ波長がそのまま乗り移ったような陶酔方だけど、説得力がある歌が訊けます。チェロはその背後に回り、これもローズのこめかみに浮いた血管が少し納まったような気がする。
後半は協奏曲スタイルであり、チェロとピアノは寄り添う必要は在るだろうけれど、決してピアノがオブリガードである必要はない。ベートーヴェンは均等に両者の力を割り振っている。彼がチェロに深い理解を持っていたかどうかボクはピアノの彼ほどではなく、やはり、ショパンと同じように優れた演奏家とのつきあいで理解していったのだと思う。この曲、というより、この演奏はそんな自由を与えられたピアノと飛んで行っちゃいそうなピアノを太い線でつなぎ止めるチェロの労力によって実にスリリングなものになっている。プリムローズのうっとりと閉じた瞼が突然のヴィヴーチェにかっと見開かれ、『あれ、!?コンの野郎…ええかげんにしろよ』って心の声が聴こえてきそう。
前半
後半
お暇なら一聴、一見ものです。
Mineosaurus
古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。
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とーちゃん
about 5 hours ago> 第1楽章
唯我独尊と大人
> 第2楽章
ピアノと唸り声
> 第3楽章
こめかみに浮いた血管が
少し納まり …
↓
閉じた瞼が 見開かれ …
一聴ものでした。
人は、他者が居てこそ
存在する意味が
ハッキリするのだと、
柄にも無く あらためて
感じました。 ^o^
貴重な映像のご紹介、
ありがとうございます。
3人がいいね!と言っています。
とーちゃん
about 5 hours ago> … 手の置きどころ
鍵盤に
ぶら下がっている様ですね。
心は ともあれ、
あの姿勢で 良く
あの様な音が 奏でられるものだと
つくづく 感心してしまいます。
3人がいいね!と言っています。