星のない夜に 音からの妄想
初版 2023/07/04 12:15
改訂 2023/07/04 12:15
ラフマニノフ/夜想曲3つの夜想曲より第3番変ハ短調
突然思い出した。
あの人に会いに行こう
あの子に会いに行かねば
この狭い場所から両腕を突き上げ、しっかりと掴んだ大地は意外なほど容易く割れた
どれほどここで過ごしたのかもう考えようもないけれど、忘れかけた場所へ今夜こそたどり着けるだろう
四角く空いた空は星もなく暗く、夜の一番深い闇が訪れるほんの少し前
黒い森を抜けて、朧気な記憶に導かれて白く雪に覆われた径を歩く
少し左に傾きながら、よろけながら歩く私の脚は、それでも羽のように軽く、素足の跡すら雪の上に残らない
青白い月が私の揺れる影を映している
逢わなければ、
あの人にも
逢わなければ、
あの子にも
私がいなくてきっと寂しがっているだろう
私がいなくてきっと悲嘆にくれているだろう
きっと
でも、私がいなくなってどれくらい経っているのだろう
目覚めたときから私の時間は何ひとつ動いてはいない気がする
この森を抜ければ
そう、ほら明かりが見える
いつも私が過ごしていた二階の出窓の明かりはついていないけれど
それはきっと私がそこにいないから
少し足がもつれる
私のドレスは薄くて、この季節にこんなに薄着で外を歩くのは初めてだけれど、
それでも不思議なほど寒くない
周りの木々は白く凍っているのに、ほら私の吐く息はちっとも白くない
ほら、私の娘の姿が見える。
でも、とても背が高くなっている
あの人がいた
見覚えのある深緑のサテンのガウンを着ているのが見える
サーシャに何か話しかけている
私のことを忘れてしまったように優しい笑顔で微笑んだ
サーシャ…声に出して愛らしいあの子の名前を呼ぼうとしたけれど、
私の舌は何処かに行ってしまったみたいに声にならない
暖炉の側の私の自画像
あの人とあの子は祈っている
何て祈っているの?
私の姿が見えているはずなのに、この窓に近づいてもくれない
二人とも何て祈っているの?
天国にいる私に?
二人の動く唇は確かにそう言った
嘘!
私はそんなところにはいない
あなた達の側に
ほら、ずっといるんだから
今日はどうかしている
明日もう一度帰ってくるわ
そうして私は玄関のドアを叩く
きっと気づいてくれるはずだから
あまり弾かれない曲。マルカートな響きでピアニストの顔が浮かばない演奏を(つまり聴いたことのないピアニストの演奏を)選び、聴きながらイメージを膨らませた。
確か作曲者自身の演奏もあったと思いましたが、絶対こんなイメージではないと思います。
でも、聴いたときの印象で浮かんだ妄想はこんな感じでしたね。
Mineosaurus
古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。
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