劇情の劇場

初版 2024/04/30 23:26

フランク/ピアノ五重奏曲ヘ短調

第1楽章 モルト モデラート クワジ・レント-アレグロ
第2楽章 レント・コン・モルト・センティメント
第3楽章 アレグロ・ノン・トロッポ、マ・コン・フォーコ

第1楽章の印象

悲劇的な歌が切り口の鋭い傷跡を見せるように斜めに響く。
感情の高ぶりが抑えきれないと言いたげな劇性のファンタジーが弦楽から抑制された美しいピアノパートに移ってゆく。
とぎれながらピアノは弦楽とは別の静謐な表情の中に、自分の居場所をしっかりと持っている。
追いかける弦楽の複雑に綾取られた歌は折り重なって流れてゆく。


ヴェールを降ろした喪服の女性が佇む。
陽光は斜めからその深く被られた帽子を貫くように射し、思いがけず微笑んだその女性の深紅の口紅に縁取られた疵ひとつない皓歯。

ストイックな劇性ではなく肉感的でさえあるその旋律線はヴァイオリンが主導する総奏の中で激しくピアノと絡まりテーマの悲劇的な回想にとけ込む。
うねるように起伏するアンサンブルの中でやはりピアノは一瞬の沈黙からいち早く抜け出し、青白い点描の閃光になる。
これほどの作品が普段聴く機会に恵まれないのは惜しいとしか言いようがない。

音の緊密化と緻密きわまりない設計はブラームスのそれに匹敵する。
まさに弾き手が大きければ室内楽を凌駕しそうな楽章です。

思い出しそうで思い出せない懐かしさに満ちた想い出がセピアの映像の中でじっとこちらを見ている。

ピアノは弦楽の対話の中を邪魔せぬように身を潜めるような呟きをくり返し、どこまで行っても明るさの射さない薄日の抒情はなだらかであり、滑らかではあるが厳しい。
フランス音楽の香気馥郁たるありようではなく、腹に応える存在感がある。

弾きすぎず、語りすぎない。

中間部から広がる感傷的な総奏は熱を帯び憎しみに変わる寸前の愛情のように高まりながら少しずつ冷えてゆく。
その向こう側にあるものの激しさと暗さと感情の抑圧が、心の中の第3楽章の扉をこじ開けようとしているかに思える。
選び抜かれた言葉のように。次第に高くなる感情の音楽は、消しようのない大きな炎を発てあげたあげく、いくつかの美しさとともに突然収束する。

傑作です。第一楽章が全てのようなフルスロットル

聴いているのはSir:クリフォード・カーゾンが当時主席バイオリニストであったウィーンフィルのメンバーで構成したウィーンフィルハーモニィ弦楽四重奏団の演奏LPでは依然パレナンのを聴いていましたが、CDで買ったのはこれだけでした。(未展示)

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

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