ハイフェッツかヌヴーか 

初版 2024/04/15 11:24

改訂 2024/04/15 11:24

シベリウス ヴァイオリン協奏曲ニ短調op.45

冷え冷えとするような独奏の弓の走り。


確然とした力が弦に抜きがたく張り付いて、擦り挙げる音に心の青白く、決して燃え上がらない炎(ほむら)が宿っている。


これが北欧の巨人の作だからというのではなく、この曲自体に厳しい氷の国の自然を聴き取るのはボクだけではないだろう。


ひんやりしたいなら寒色系の音色を持つハイフェッツのヴァイオリンがいい。

際だって切れのいいフレージング。

よけいな表情が出る暇もない素早さ。

作曲者の渾身の技術的難度が事も無げに弾き捨てられてゆく。

ボクは初めてまともにヴァイオリンを聴いたのがサラサーテの『ツィゴイネルワイゼン』で、その奏者がハイフェッツだった。

凄く生理的な爽快感のあるすっきりした演奏だったけれど、この曲はそんなものだと思っていた。

ところが、他のヴァイオリニストを聴き始めると、どんなにハイフェッツの演奏が凄まじいものであったかがわかってきた。

最初に聴くべきヴァイオリニストではなかったんですね、このひとは。

以来、ボクはハイフェッツのファンです。

シベリウスはこの人でよく聴きます。

シベリウス独特の弦楽のうねりとリタルダンド、くすんだ金管楽器のうつむいたままの咆吼。その上を走り抜けるハイフェッツの揺るぎない構築性に支えられたスケール豊かなでもテンションの高いヴァイオリン。しびれますぞ。

今も昔もハイフェッツはヴァイオリンを弾いているのではなく、彼自身がヴァイオリンなのです。

もう一人全く別のアプローチでボクを捉えて放さない人がいます。

ジネット・ヌヴーです。

若くして飛行機事故でなくなったので、録音はボクの苦手なモノラルなのですが、状態が凄く良くてあまり気になりません。

オーケストラのレンジは狭いですが、これは彼女のヴァイオリンを聴くべき演奏です。

ハイフェッツの冷徹なゆるぎない硬質の音に対して、彼女の切れのあるフレージングからは弓が弦から離れてゆくところから炎が生まれるような若さと思い切りがあります。

気迫が鳴らすヴァイオリンの典型があります。


第1楽章 アレグロモデラート どの協奏曲よりもピンと張りつめた緊張感と凛とした空気を感じますね。

これは交響曲でシベリウスに感じる雰囲気そのままです。

第2楽章 アダージオ・モルト アダージオを書いていて作曲者が次第に興奮してきて突っ走ったような中間部にびっくりしますね。

第3楽章 アレグロ・マ・ノン・タント 民族風のドラミングと通奏の弦が刻む音の上でヴァイオリンが冴え冴えと躍るようです。

シベリウス独特のイデオムが心を熱くします。

オーケストラのトウッティに沈み込まない強靱な独奏力が求められる曲です。

たとえて言えば、円座した土民達の中央で無言で舞う舞姫の青白い炎が時折紅蓮に染まり、空に届くような姿が思い浮かびます。


今更ながら二人のヴァイオリニストの際だった個性は凄いですね。それぞれ典型ですね。

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

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