DVD「モロッコ」

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 小学4年生から5年生の頃、下校・帰宅後はラジオを聴く習慣があったのですが、番組内でパーソナリティの愛川欽也氏が映画を製作した旨の話をされ、それが『さよならモロッコ』というタイトルでした。作品自体は今日まで見る機会はないのですが、それはともかく、モロッコが具体的にどんな位置かわからず、地図で確認した、ということを夕食時に話したところ、父が「昔、『モロッコ』という映画は観たことがある」と返し、そんな国名のタイトルの映画が存在する、ということだけが記憶に残りました。その後何年かして映画に興味を持つようになり、本展示アイテム収録作のことについても、映画雑誌などを通じてそれなりに知るようにはなったものの、なかなか本編を観るに至らなかったのですが、意外な形でその映像の断片を観る機会を得ました。それは、映画『悪魔の手毬唄』のなかに挿入されたもの、しかも例の有名なラストシーンの部分で、これを初めて観たときは、何か少し得をしたと思える反面、興醒めもしたような複雑な心境でした。ちなみに、ちゃんと『モロッコ』全編を観たのは、80年代の終わり頃か、90年代の初めくらいにNHKの衛星放送で放映された際で、最も印象的だったのは、クーパーがディートリッヒの口紅で鏡に走り書きを残したシーンですかね。もっとも、鏡に口紅で警告文を記す、というのは、映画『女王蜂』でも観ていましたし、映画『モロッコ』はその『女王蜂』の設定年代よりも前の映画ですから、ここからは勝手な思い込みですが、私が小学生の時に何か大人の恋愛を垣間見たような気にさせた荒井由実の『ルージュの伝言』が、実に手垢のついた手法だったということを念押しされたような感じがしました。
 さて、映画『悪魔の手毬唄』については別に触れる機会もあるでしょうから、冒頭で題名を掲げた『さよならモロッコ』について触れるべきなのでしょうが、何分にも観ていませんし、今後も観たいとは思わないので、特に言うことはありません。ただ、話によるとモロッコといっても本展示アイテム収録作ではなく、映画『カサブランカ』に対するオマージュの作品のようで、そうなると、その数年前に製作・公開されたウッディ・アレンの『ボギー!俺も男だ』の二番煎じの感も否めず、『さよならモロッコ』は愛川氏本人の思い入れだけが突っ走っただけの企画だったのかもしれません。何と言っても、興行的には失敗しているのですから。
 ということで、他には本展示アイテム収録作が本邦で本格的に字幕のスーパーインポーズが導入された作品であり、これ以後活動弁士の仕事がなくなった、なんてエピソードは有名で、そもそも映画『悪魔の手毬唄』でもこの話の説明のために『モロッコ』の映像断片を登場させたわけです。
 あと、作品の内容自体については語り尽くされている感もありますので、ここでは言及しませんし、ジョゼフ・フォン・スタンバーグ監督やゲーリー・クーパー、マレーネ・ディートリッヒについても、もういいでしょう。「1931年キネマ旬報外国映画ベストテン第1位」の作品ですしね。
https://www.youtube.com/watch?v=AgGFytQHYso
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