DVD「素晴らしき哉、人生!」

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 今日においては、『或る世の出来事』と並んでフランク・キャプラ監督の代表作と言われることも多く、特にアメリカ本国においては、クリスマスの時期のド定番でもあるわけで、ストーリーなど作品そのものの話をこの場でする必要もないでしょう。ということで、別の切り口の話を。
 スティーブン・スピルバーグ監督は、以前何かのインタビューで、映画の撮影前や製作に行き詰まったときに、もの作りの原点に立ち戻るために必ず観る映画として、『アラビアのロレンス』『七人の侍』『捜索者』、そして本展示アイテム収録作である『素晴らしき哉、人生!』の4作を挙げている旨の記事を読んだことがあります。スピルバーグほどの人ですから、各作品の隅々まで知り尽くしているはずで、それでも観返す、というのは、多分に気分転換の要素が強いのでしょうが、「言われてみればそうなのか」と、妙に納得してしまう側面もあります。というのも、上記4作に止まらず、デヴィッド・リーン、黒澤明、ジョン・フォード、そしてフランク・キャプラ監督の他の作品も含めて、その演出のオマージュではないかと見て取れる映像での表現が、スピルバーグ自身の監督作品のみならず、製作総指揮などで関わった作品にも散見されたからで、そのような表現があるのではないかと探しながら観るのがスピルバーグ絡みの作品の楽しみ方の一つでもあります。
 ただ、基本的にはスピルバーグ絡みの作品の中であっても、この演出は気に入らないという部分はあるわけで、それらがどうもフランク・キャプラ監督の影響を受けた部分ではないかと想像されることがあります。もちろん、一方的な思い込みで、要するに私自身がフランク・キャプラ監督の演出タッチと相性が良くないということに過ぎない、ということなのでしょう。
 もっとも、フランク・キャプラは生涯に40作近くの映画を監督しており、その中で私が観たのは、せいぜい本フロア展示アイテム収録の4作と『オペラハット』『失はれた地平線』『我が家の楽園』『スミス都へ行く』『ポケット一杯の幸福』と10作にも満たないわけですから、その程度の知見でフランク・キャプラ監督の演出タッチを気に入らないと断じてしまうのも早計なのかもしれません。
https://www.youtube.com/watch?v=y_LselYMgS4
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    qqtys

    2020/12/11

    こちらをリメイクしたニコラス・ケイジ主演の『天使のくれた時間』もいい映画でした。

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      woodstein

      2020/12/12

       qqtysさん、コメント有難うございます。確かにいい映画でしたね。ただ、『素晴らしき哉、人生!』のリメイク、というよりは、インスピレーションを受けた作品という感じに私は受け取りました。ところで、『天使のくれた時間』のサントラ盤も、そこそこお気に入りです。基本的にはポップスのコンピレーションアルバムであり、「映画音楽はスコア派」の身にとっては苦手な部類なのですが、このサントラ盤に収録されている曲は、少なくとも聴き辛いものがありませんでした。

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      qqtys

      2020/12/12

      確かにリメイクというには主人公の造形が違いますね。どちらかというと『クリスマス・キャロル』のスクルージに近いキャラクターでしたから…。
      両作を掛け合わせた作品と言えるのかもしれません。

      『天使のくれた時間』は深夜のロードショーで見て以来何度も見返しましたが、『素晴らしき哉、人生!』はずいぶん前に一度見た切りですので、クリスマスに合わせて久しぶりに観てみようと思います。

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