Carl Zeiss Jena Flektogon 35mm F2.8 Zebra

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フレクトゴン35mmはカールツァイス・イエナ人民公社のレンズ設計士ハリー・ツェルナー(Harry Zöllner)とルドルフ・ソリッシ(Rudolf Sorisshi)がレンジファインダー機のコンタックス(Contax)用に供給されていた広角ビオメタール 2.8/35を一眼レフカメラに適合させるという方針で開発し、1952年に登場させたドイツ初の広角レトロフォーカス型レンズである。ツェルナーはビオメタールの他にテッサーF2.8の戦後型やパンコラー F1.8を設計した人物でもある。抜群の描写性能を発揮したため大人気となり、コンタックスSやプラクチカ、エキザクタ、プラクチナ、ヴェラ(Werra)、中判カメラのペンタコンシックスなどに搭載され、その後の広角レトロフォーカス型レンズの地位向上に大きく貢献した。
フレクトゴンの設計構成のルーツはAlvan G.クラークが設計し1889年に登場したダブルガウスである(下図)。クラークのダブルガウスからはツァイスのルドルフによる設計でプラナー(1897年~)が生み出され、1920年代に同社のメルテによる改良でビオター(Biotar)へと発展している。また、1930年代初頭にツァイスのリヒターが設計した超広角レンズのトポゴン(Topogon)もクラークのダブルガウスからの派生レンズである。明るく諸収差をバランスよく補正できる大口径レンズのビオターと、画角特性に優れた広角レンズのトポゴン。ビオターとトポゴンは戦後に手を組みビオメタールへと発展し、それをレトロフォーカス化したフレクトゴンを誕生させている。

フレクトゴン35mmF2.8には鏡胴の素材にアルミ合金を採用した初期モデル、ゼブラ柄の2代目(一部に革巻き鏡胴)、黒鏡胴で1980年代後期まで製造された3代目のモデルが存在する。デザイン以外にも各モデルには絞り羽の構成枚数やコーティングの種類、最短撮影距離は初期モデル36cm、2、3代目が18cm、絞りの制御機構に若干の差がみられる。
絞り羽の構成枚数は初期モデルが9枚ともっとも多く、2代目が5枚に減り、3代目が6枚になっている。

フレクトゴンは「一眼レフカメラは広角レンズに不利」という既成概念を打ち砕き、レトロフォーカス型広角レンズの地位向上に貢献した、歴史的にたいへん意義のあるレンズといえる。このレンズの存在がなければ、一眼レフカメラ全盛時代の到来はもっと遅かったのかもしれない。

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