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CARL ZEISS MC Flektogon 35mm f2.4 M42
フレクトゴン35mmは、1953年に発売された「Flektogon 35mm/f2.8」です。1950年フランスのP. ANGENIEUX PARIS 社から発売された世界初の広角レンズ「RETROFOCUS TYPE R1 35mm/f2.5」に倣い、レトロフォーカス型光学系 として発売されました。初期型は、アルミ材削り出しにメッキ処理を施した「シルバー鏡胴」の筐体、1950年代から1960年代後半まで世界的に流行った俗に言う「ゼブラ柄 、そして1970年代から主流となる「黒色鏡胴」へと変遷していきます。 「MC FLEKTOGON 35mm/f2.4」が発売されたのは1972年、初めてマルチコーティングが施され「MC」刻印をレンズ銘板に表記するようになりました。それまでの主なシングルコーティング「T」からコーティング技術が進化しています。 「Flektogon 35mm/f2.4」としての生産は1989年で終了し、1990年のドイツ再統一でオーバーコッヘンの CARL ZEISS に吸収され消滅しました。 フレクトゴンは「一眼レフカメラは広角レンズに不利」という既成概念を打ち砕き、レトロフォーカス型広角レンズの地位向上に貢献した歴史的に大変意義のあるレンズと思います。 このレンズの存在がなければ、一眼レフカメラ全盛時代の到来は、もっと遅かったのかも知れません。
広角レンズ CARL ZEISS JENA DDRFortune Lens
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Carl Zeiss Jena Flektogon 35mm F2.8 Zebra
フレクトゴン35mmはカールツァイス・イエナ人民公社のレンズ設計士ハリー・ツェルナー(Harry Zöllner)とルドルフ・ソリッシ(Rudolf Sorisshi)がレンジファインダー機のコンタックス(Contax)用に供給されていた広角ビオメタール 2.8/35を一眼レフカメラに適合させるという方針で開発し、1952年に登場させたドイツ初の広角レトロフォーカス型レンズである。ツェルナーはビオメタールの他にテッサーF2.8の戦後型やパンコラー F1.8を設計した人物でもある。抜群の描写性能を発揮したため大人気となり、コンタックスSやプラクチカ、エキザクタ、プラクチナ、ヴェラ(Werra)、中判カメラのペンタコンシックスなどに搭載され、その後の広角レトロフォーカス型レンズの地位向上に大きく貢献した。 フレクトゴンの設計構成のルーツはAlvan G.クラークが設計し1889年に登場したダブルガウスである(下図)。クラークのダブルガウスからはツァイスのルドルフによる設計でプラナー(1897年~)が生み出され、1920年代に同社のメルテによる改良でビオター(Biotar)へと発展している。また、1930年代初頭にツァイスのリヒターが設計した超広角レンズのトポゴン(Topogon)もクラークのダブルガウスからの派生レンズである。明るく諸収差をバランスよく補正できる大口径レンズのビオターと、画角特性に優れた広角レンズのトポゴン。ビオターとトポゴンは戦後に手を組みビオメタールへと発展し、それをレトロフォーカス化したフレクトゴンを誕生させている。 フレクトゴン35mmF2.8には鏡胴の素材にアルミ合金を採用した初期モデル、ゼブラ柄の2代目(一部に革巻き鏡胴)、黒鏡胴で1980年代後期まで製造された3代目のモデルが存在する。デザイン以外にも各モデルには絞り羽の構成枚数やコーティングの種類、最短撮影距離は初期モデル36cm、2、3代目が18cm、絞りの制御機構に若干の差がみられる。 絞り羽の構成枚数は初期モデルが9枚ともっとも多く、2代目が5枚に減り、3代目が6枚になっている。 フレクトゴンは「一眼レフカメラは広角レンズに不利」という既成概念を打ち砕き、レトロフォーカス型広角レンズの地位向上に貢献した、歴史的にたいへん意義のあるレンズといえる。このレンズの存在がなければ、一眼レフカメラ全盛時代の到来はもっと遅かったのかもしれない。
フィルムカメラ/レンズ CARL ZEISS JENA DDRFortune Lens