TELENAR 13.5cm F5.6

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Roeschlein KreuznachはStefan Roeschlein氏によってドイツのBad Kreuznachに1948年頃に創立された光学機器メーカーです。1964年にこの会社は現在のSill Opticsに売却されていますので,実質的な活動期間は15年あまりだったと推察されます。創立者のStefan Roeschlein氏はMeyer-Optik Görlitzにおいて光学技術者としてPrimoplanやTrioplanなどの現在でもたいへん有名なレンズを設計した人物です。1948年,60歳になって一念発起して自らのレンズメーカーを立ち上げたのでしょうか。60歳で会社を立ち上げ,自ら光学設計をしてレンズを製造する,というのは普通に考えて相当なエネルギーが必要なはずです。それをやってのけたというのはとてもエネルギッシュな人物だったのかもしれません。

このレンズはRoeschlein KreuznachがPaxetteの第二世代のカメラ(39mm径のねじ込み式マウントをもつレンズ交換式カメラ)のために供給したものの一つです。Roeschlein Kreuznachが作ったレンズの種類はそれほど多くはなく,いずれも比較的廉価なカメラ向けの小型のものが中心であったように見えます。135mmのTelenarも開放F値が5,6という当時としても暗いレンズですが,そのかわりに手のひらに収まるほどで非常にコンパクトです。レンズ構成や発売時期などの情報は私がネットを検索した範囲では何も見つけることができませんでした。この個体はレンズ銘に-E-がつかない距離計に連動しないタイプです。また,銘板に刻印された焦点距離もmmではなくcm表記ですので初期に製造されたものだということは予想できます。レンズ交換式の最初のPaxette IIの発売が1952年なので,この個体も遅くても1950年代の前半には市場に供給されていたはずです。

Roeschlein KreuznachのPaxette用レンズはいずれも小型化を優先して,ある程度(というか,かなり)収差を残したまま製品化したようなところがあって撮り方によってはボケが大暴れするような印象です。しかし,収差の暴れ方の再現性がよくわからず,たまに普通に写ったりして安定性というか一貫性がなく,コントロールが難しそうです。なんだか開発途中で投げ出しちゃったんじゃないかと思うくらいですが,見慣れてしまえば普通に見えてきます。現代のレンズとは対極にあるレンズと言えるかもしれません。この個体も例外ではなく,収差が多く残っており,いくらピントを合わせてもあってるのかどうかわからないくらいに滲みます(光路の調整が正しくない可能性も濃厚ですのでなんとも言えませんが)。しかしRoeschleinのレンズとしてはこれが普通だったのかもしれません。絞り環のねじ込み位置がおかしいようで絞りの指標と目盛があっておらず設定している絞り値がよくわからない,という問題はありますが,とりあえず写真を撮るには問題はありません。

撮ってみると,もちろんピント面でもあまり解像していません。そもそも高画素のカメラで撮って等倍で見るようなものではありません。しかし,普通に鑑賞する分にはなぜか解像感や立体感があるように錯覚してしまうのです。戦後すぐまでのCarl Zeissのレンズのような見るものを引き摺り込むような説得力はもちろんないのですが,こと自然さ,という点では意外にも相通じるものがあるように思います。

このレンズによる作例は
https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/TELENAR%201%3A5.6%2F13.5cm
に置いています。

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