NHK大河ドラマ・ストーリー 獅子の時代

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 1980年1月10日発行。昭和55年に放映された大河ドラマ『獅子の時代』のガイドブックで、前2年のそれと同様のB5版サイズとなっています。内容的には、本放送第1回の「パリ万国博覧会」のロケの模様を巻頭掲載したのが目を引く以外は、何となく前例踏襲の構成なのですが、それでも山田太一氏や宇崎竜童氏の寄稿内容はそれなりに面白かったです。
 次にドラマ自体ですが、その概要は、
「大河ドラマで1967年(昭和42年)の『三姉妹』以来13年ぶりに、架空の人物が主人公になった。会津藩の下級武士である平沼銑次に菅原文太、薩摩の郷士の苅谷嘉顕に加藤剛が起用された。勝者である薩摩藩の嘉顕と、敗者である会津藩の銑次がそれぞれの生き方を貫いて幕末・明治維新を生き抜く様を描いた。それまでの大河ドラマとは異なり山田太一によるオリジナル脚本であり、しかも宇崎竜童(ダウン・タウン・ファイティング・ブギウギ・バンド)によるロック風のテーマ音楽(NHK交響楽団と同バンドの共演によるクロスオーバー的な楽曲)が使用されるという、極めて斬新な作品だった。物語の大部分が近代というのももちろん初めてである。最高視聴率26.7%、平均視聴率21.0%と当時の大河ドラマの水準としては高い視聴率ではなかったが、パリ万国博覧会、樺戸監獄、秩父事件、自由民権運動など、これまで取り上げられる機会の少なかった出来事が描かれた。それまでの大河ドラマが中央政権の近くにいる有名武将など傑出した英雄たちのドラマだったのに対し、本作は地方に生きる草の根の庶民(に近い層)にスポットライトが当てられており、歴史に翻弄された人々の裏面史と言える内容になっている。特に、明治維新で“賊軍”の汚名を着た会津藩士の運命を描いている点で、旧来の英雄譚とは明確に一線を画しており、後の『琉球の風』や『炎立つ』、『八重の桜』の先駆と言えるものだった。映画『仁義なき戦い』シリーズや『トラック野郎』シリーズをヒットさせ、当時の日本映画を代表する俳優の一人であった菅原が、1年拘束される大河ドラマに出演することは、東映にとって興行の柱の一つを失うことであったが、菅原にとっては新たなジャンルに挑戦する作品となった。また鶴田浩二はじめ、山田のドラマ『男たちの旅路』と共通の出演者もいた。」(Wikipediaより引用)
というもので、私は1年間1回も欠かすことなく全話観ました。まあ、これは『獅子の時代』に限らず大河ドラマ全体に言えるのですが脚本や演出の内容が冗長で、この頃は劇場で映画を観ることがおおくなった我が身にしてみれば、飽きのくる映像表現も多かった気がしましたが、そんなものを凌駕する要素がこのドラマにはありました。「菅原文太」です。
 このドラマが放映されていた1980年頃というと、当代には3人の映画スターが存在している、というのが私の認識でした。高倉健、渥美清、そして菅原文太の3氏です。もちろん、3氏ともそれまでにテレビドラマに出演のキャリアはありましたが、飽くまでスクリーンが主戦場、というある種の孤高感を醸し出している存在で、その一角が1年間に亘り連続テレビドラマに出演する、ということで、ある種の裏切りと別の高揚を感ぜずにはいられませんでした。他の2氏は最期まで私の言う「映画スター」の立場を保ったのに対し、菅原文太氏はこの1年間の出演を果たした後は、多数のテレビドラマに出演することになり、自分にとっては何となく特別な存在ではなくなってしまったのですが、少なくともこの1年は特別でした。
 あと、宇崎竜童氏の音楽も印象的でした。前段の概要欄でも触れていましたが、テーマ曲は主旋律がエレキギターで奏でられ伴奏をN響が行うという、これもこれまでにない新しさを感じさせるものでした。また、併せて清新だったのが大河ドラマに主題歌(または挿入歌)が制作されたことで、宇崎氏のヴォーカルによる『OUR HISTORY AGAIN ―時の彼方に―』なる曲も印象的でした。
https://www.youtube.com/watch?v=sDPI-A23h4E
#大河ドラマ #山田太一 #獅子の時代 #宇崎竜童 #ダウン・タウン・ファイティング・ブギウギ・バンド #菅原文太 #加藤剛 #大原麗子 #鶴田浩二 

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    woodstein

    2020/10/18

     「OUR HISTORY AGAIN ―時の彼方に―」
    https://www.youtube.com/watch?v=t8YipEIx3qM

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    sat-2019

    2020/10/18

    「独眼竜政宗」放映当時に、歴代大河ドラマの主題曲のカセットテープを購入して、こちらの作品の主題曲を初めて聴いたとき、そのロックとオーケストラとの融合に、斬新さを感じました。
    「花神」「黄金の日日」「草燃える」「獅子の時代」の主題曲は、いずれも歴代大河でも一番好きです。

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      woodstein

      2020/10/25

       sat-2019さん、コメント有難うございます。返事が遅くなって申し訳ありませんでした。確かに『獅子の時代』の主題曲は斬新で、その認識は40年を経過した今でも変わることはありません。ただ、個人的にはこの主題曲もさることながら、ドラマ本編内の背景音楽もエレキギターを用いた意欲作で、これも異彩を放っていました。

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      sat-2019

      2020/10/25

      woodsteinさん、ご返事ありがとうございます。
      本編内の音楽もエレキギターを使っていたのは初めて知りました。
      ぜひ機会があれば、本編も観てみたいと思います。

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    グリーン参る

    2022/06/10 - 編集済み

    本編とは直接関係ありませんが、当時北海道庁(赤レンガ道庁)前でこのドラマのロケをしていたのを家内が見ており、加藤剛の横顔がギリシャ彫刻のように美しかったと今でも言っています。

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      woodstein

      2022/06/15

       グリーン参るさん、コメント有難うございます。そうですね。この頃の加藤剛は見目麗しかったですね。不惑を超えたくらいの年齢でしたが、俳優としてのキャリアもそれなりに積み重ねて、もっとおいい時期の一つではなかったのではないでしょうか。もっとも、演技はワンパターンでしたが…。『大岡越前』もありますが、やはり最も印象深かったのは映画『砂の器』に尽きますかね。その件は、いずれ機会があれば語ってみたいと思います。

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