- Dissipated Life Museum
- 1F Leica L39マウントレンズ
- CANON LENS 25mm F3.5
CANON LENS 25mm F3.5
Canonがレンジファインダーカメラを作っていた1956年に登場したレンズです。当時25mmの画角は超広角で,かつこのレンズは25mmで世界で最も明るい(ZeissやNikonよりF値が半絞り小さい)レンズでした。こういうスペック重視なところは現在と変わらずCanonらしいなぁ,と思ってしまいます。
レンズ構成は2群4枚のトポゴン型の後群の後ろに「無限遠曲率の特殊光学ガラス」を追加して収差補正を行っています。「無限遠曲率の特殊光学ガラス」という表現は,Canonのオフィシャルサイト内のCanon Camera Museumの説明です。要するに,最後面に板ガラスを追加した,ってことです。簡単なことをわざわざ難しく説明するというのはなんだかなぁ,と思わなくもありませんが,このような変形トポゴン型のレンズはたぶん,Canon 25mm F3.5が唯一無二だと思われます。
トポゴン型レンズは,まるでビー玉のように大きな曲率をもつ半球状の2組のレンズが向かいあって配置される対称型のレンズで,Carl Zeissのロベルト・リヒテルによって戦前に発明されました。歪曲が非常に少ないため,航空測量用のレンズとして使われたようです。その後,レンジファインダーカメラのContax用のTopogon 25mm F4として投入されます。歪曲は小さいのですが,周辺減光が半端なく大きい,という特徴を持ちます。ZeissのContax用トポゴンは数も少なくたいへん高価です。Zeissの超広角レンズはTopogonはこの一代限りで終わり,Biogonや15mmのHologonに置き換わります。
トポゴン型構成のレンズはレンズエレメントの製作が難しいためか,あまり多くはなく私の知る限り2つしかありません。ひとつはトポゴンコピーとして知られるNikonのW-Nikkor C 2.5cm F4です。このレンズも繊細で美しいレンズですが,本家のTopogon以上に高価で取引されているようです。もうひとつはソ連製のOrion-15 28mm F6です。Orionは第二次世界大戦のどさくさでソ連が接収した多くのレンズ(と技術)の末裔ではなく,Zeissから技術供与をうけて独自に開発されたソ連オリジナルのレンズだそうです。Orionは数も多く,ソ連製ということもあってそれほど高価ではありません。
Canonの変形トポゴン型レンズである25mm F3.5は1970年代まで現役の20年にわたるロングセラーだったようです。また,このレンズによって撮られた多くの写真が写真雑誌の月例コンテストなどに多く入賞していたようです。撮影に使われたカメラはLeitz Minolta CLが多かったとか。一番重要なのは写真の腕とセンスなのでしょうけれど,このような武勇伝を聞くとこのレンズを使えば自分もよい写真が撮れそうな気がしてきます。
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