ロージルコン/風信子石

0

ジルコンはジルコニウムを主成分とする宝石鉱物ですが,不純物としてウランやトリウムを含みます。
そのため放射線測定器に感応し,放射性崩壊によるα線やβ線の放出が活発に行われていることが判ります。

ウランおよびトリウムの崩壊により放出される放射線はなんとジルコン自身を侵し,さながら内部被曝を受けているかのように結晶構造を破壊します。
この現象をメタミクト化と呼び,すなわち原子配列が失われガラス同然の物質に変異してしまうのです。

こうして結晶構造が蝕まれたジルコンは光学特性が変化し,例えば屈折率は低下し,宝石として光り輝く力が失われてしまうのです。
さらに耐久性にも難が生じ,このように性質が低下したジルコンのことをロータイプと呼び区別されます。

思えば輝きが鈍ることは宝石として極めて致命的であり,このジルコンという鉱物には哀愁すら感じてしまいます。

ですが私はこの重大な欠陥を抱えた幸薄いロージルコン結晶が堪らなく好きです。

派手さとは無縁な,しかし光に透かすと見るものを引き込む暗緑色。
水磨作用により擦り切れているものの正方晶系らしさを残した結晶形。
イイです実に素敵です。

傷みを知る者にしか出せない味ってあると思うんですよね。

Default