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舎利石/釈迦の遺骨の代用品
舎利石は青森県東津軽郡今別町の海で採取できる特別なメノウです。
名前にある「舎利(しゃり)」とは仏舎利、すなわち釈迦の遺骨のことを指し、サンスクリット語で遺体を意味する“シャリーラ”を語源とします。
仏教の開祖であるお釈迦様ことガウタマ・シッダールタは紀元前に入滅されました。
その後に残された遺骨や遺灰は紆余曲折の果てに細かく分骨され世界各地の仏教寺院へ納められたと伝えられます。
しかしいくら微量ずつとはいえ分配できる量にも限りがあります。
そこで真骨に代わる品として各々の国や土地で採取可能な玉石が用いられるようになりました。
そんな聖遺物の代用とされる舎利石。
舎利石が生成されるのは溶岩の中です。
まず溶岩が地表近くに上昇すると、溶存していた火山性ガスが減圧作用により発泡し大小様々な気泡が生じます。
その後,冷却固化すると気泡だった箇所は空洞となり、やがてその内部がシリカに富む溶液で充填されます。
溶岩は地下深くで高温高圧となっているため、様々な元素が溶け込み混然一体となった地獄の大鍋状態です。
そのため高温高圧下では溶け込んでいた物質が温度や圧力の降下に伴いそれぞれの条件で晶出を始めるため、シリカもまたとあるタイミングで溶岩中から分離し、空洞内へ滲出するのです。
その溶液も長い時間をかけて冷却・結晶化し、やがて空洞の“型”に沿った球形のメノウが誕生します。
今別の海中にはこうしてできた舎利石を含む岩塊が眠っているらしく、かつて僧侶が漁夫に海中に潜るよう頼み、舎利石を採取してもらったというお話も残っています。
岩石が波の作用で削れて行くとメノウが外界に露出し、さらに侵食が進むと完全に剥離して海中に放たれます。
そして母岩を離れたメノウは海底に沈み、さらに潮流や波によって表面を磨かれながら海岸に辿り着きます。
こうして浜辺に打ち上げられた個体が舎利石です。
よって他の海岸でも得られるような、メノウの欠片が波の作用で丸く削れた代物とはまったくの別物です。
舎利石は火山ガスが発泡してできた空洞の中に生成されるため最初から形が丸いのです。
また球形に形成されるためか不純物が中心部に凝集しやすいようで、本物の舎利石の内部には白濁した核のような独特の構造が確認できることがあります。
ここまで一般的な舎利石の特徴を挙げましたが中にはイレギュラーなものも存在します。
例えば勾玉型や蕎麦の実型、ひまわりの種型、ひょうたん型。
そしてまさに銀シャリの名に相応しい米粒型など、多種多様な形状も散見され非常に面白いです。
不純物が表面付近に凝集し独特な蛇の目模様が現れたものは天眼と呼ばれ、価値を左右する要素のひとつとして扱われます。
それがもし橙色や緑色だったなら拾った者は尚のこと幸運でしょう。
メノウというごくありふれた鉱物種でありながら神聖物として珍重される不思議な舎利石。
私は単なる石好きとして関心を寄せていますが、そんな私でもこの石を探す行動を通して自身が鍛えられている気がします。
精神修行とかそういった高尚なことを意識している訳ではありません。
しかしひた向きに自然と向き合い続ける姿勢は忍耐を、そして足場の不安定な浜辺を歩くことは足腰の鍛錬になるように思います。
精神性はともかくして、少なくとも足腰に関しては筋肉痛になるたびに(運動不足と)効果を実感しています。