György Ligeti “Aventures-Nouvelles Aventures / Atmosphères / Volumina

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たまーに訪れる現音聴取発作。今回はLigeti (György Ligeti)の1967年作”Aventures - Nouvelles Aventures - Atmosphères- Volumina”の4曲入りのアルバムです。私の持っているのは再発盤で、1962年にDr. Werner Goldschmidtに設立されたWERGOが版元になっており、Studio Reihe Neuer Musikと言う再発シリーズのアルバムの一つです。その前にGyörgy Ligetiについて少々紹介してみます。ルーマニア生まれのハンガリー育ちの作曲家がGyörgy Ligetiその人です。第二次世界大戦時に、ユダヤ人であった為に、家族はバラバラに強制収容所に入れられ、父親はAuschwitz Birkenau収容所で、弟はMauthausen収容所で命を落としています。終戦後、彼はブダペストで、Kodály Zoltán(コダーイ・ゾルターン)やKadosa Pál(カドシャ・パール)らの元で音楽を学んでいましたが、ハンガリー動乱がソ連軍によって鎮圧された2か月後、オーストリアのウィーンに亡命します。そして、1968年に彼はオーストリア国籍を獲得します。1973年に彼はハンブルグ音楽演劇大学の作曲学の教授をリタイアする1989年まで勤めていました。その後、2006年にウィーンで他界しています。ハンガリー時代では、彼の音楽は、ハンガリー共産党により制限されていましたが、1956年に西欧諸国に来た時に前衛音楽に取り憑かれ、新しい作曲テクニックの開発を始めます。彼は、ウィーン音楽院で学び、その後、西ドイツのケルンでKarlheinz StockhausenやGottfried Michael Koenig, の現代音楽の手法、特に電子音楽に触れ、前衛的手法での作曲方法を学んでいます。彼はダルムシュタットのInternationale Ferienkurse für Neue Musikを訪れ、ケルン電子音楽スタジオで働き始めますが、彼自身は電子音楽を殆ど作っていません。代わりに電子音楽の音の組み合わせ/音色を持った楽曲の作曲に集中しています。3年間そこで働いた後に、彼はケルン電子音楽学校に落ち着きますが、「最初はStockhausenのようにとかKabelのようにとか、何にせよ、『最初に』なりたいと思うものだが、私にはそんな『最初に』というような野心は重要ではない。」と言っています。その後、彼は1961-1971年の間、ストックホルムで作曲学の客員教授になり、1972年にはスタンフォード大学に作曲学レジデントになっています。その後、オーケストラ曲で一気に突き抜け、そのテクニックはDubbed Micropolyphony (Tone Cluster)と呼ばれています。彼のアンチ・アンチオペラの曲”Le Grand Macabre”を書いた後に、半音階主義から転身して、ポリリズムな曲作りに向かうようになります。その中でも「100台のメトロノームのためのポエム・サンフォニック」は現音ファンには有名ですよね? しかしながら、彼を最も有名にしたのは、映画のサントラで、その中でもStanley Kubrickの映画”2001年宇宙の旅”、”シャイニング(The Shining)”や”Eyes Wide Shut”やで、彼の音楽が使われています。
それでは本作品についてですが、1962年前後の曲が4曲、収録されています。1962年作”Aventures”と1962-1965年作”Nouvelle Aventures”は3人の声楽家と7つの楽器の為の曲で、笑い声で始まり、断続的な声やヒソヒソ声とピアノやパーカッション、管楽器なとの楽器が静謐さと突然の鳴りで、緩急をを見事に操っています。声楽の方はソプラノ、アルト、バリトンで構成されでいます。間の取り方が絶妙で、まるでドタバタコメディ(?)のようです。1861年作“Atmosphères”はオーケストラの為の曲で、押し寄せる音の波と引いていく音のコントラストが絶妙です。低音ドローンは腹に響きます。もう少し長くても大丈夫ですね。1961-1962年作”Volumina”はオルガンの為のソロ曲で、その名の通りオルガン・ソロなのですが、トーン・クラスターを聴取できます。ノイズ界で言えば、初期非常階段の蝉丸さんかソロをやったら?みたいな感じですかね(←違う!)? 現代音楽の面白さって、ちゃんと音楽教育を受けた人が、真面目にめちゃくちゃなこと(とは言ってもちゃんと当然、楽譜はある)をやっているのを聴けるところですかね。本当に面白がれるかどうか?なんですよね。まあ、そんな気張らずに聴いてみて下さい。

“Volumina”
https://youtu.be/wbLcI9-Js0U

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