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S.Y.P.H. “Pst”
久々に引っ張り出してきました。独のS.Y.P.H.(いつも読み方が分からないのだが、「ジフ」で良いらしい)のセカンド・アルバム”Pst (プストと読む?)”です。当時、Neue Deutsche Welle (NDW: German New Wave)の中で、そのユニークな音楽性から、「Canの再来」とまで言われたグループが、S.Y.P.H.でした。ファースト・アルバムは同年2月で、本作品は8月にリリースされており、溢れるアイデアを即座にパックしているのが伺い知れます。しかも、今回は、元CanのHolger Czukayも参加していると言う豪華さです。S.Y.P.H.のバイオグラフィーは既に書いてあると思いますので、詳細はそちらをご参照して下さい。それで、本作品についてですが、バンドメンバーは、Harry Rag (Vo, G; ハリー・ラグ), Uwe Jahnke (G; ウーヴェ・ヤーンケ), Jürgen Wolter (B; ユルゲン・ヴォルター), Uli Putsch (Drs; ウリ・プッチュ)で、ゲストとしてHolger Czukay (Horn, Perc, B, Harmonica [A3, A5, A7, B1, B3])も参加しており、また、本作品は、S.Y.P.H.とHolger Czukayが共同プロデュースしており、録音もInner Space Studioを借りきって、10日間セッションをやり続け、その膨大な録音音源から、ロック色の強いテイクを厳選して作製されています (小柳カヲル氏「クラウトロック大全」による)。内容は、A面7曲/B面3曲となっています。それでは、各曲を紹介していきましょう。 ★A1 “Euroton” (0:52)は、ひたすら掻きむしられるGと一本調子のリズム隊に、笑い声すら使うVoが乗る小曲です。メタパーも使ってる? ★A2 “Einsam In Wien (Lustlos)” (5:32)は、単調で催眠的なビートを刻むリズム隊と自由に弾かれるGと呪文のようなVoが乗る曲で、バックの反復が気持ち良いです。Voとかは喚きそうになります。 ★A3 “Moderne Romantik” (3:01)は、16ビートのアップテンポの曲ですが、バックはひたすら反復しており、そこにGのカッティングや自在なVo(喚き声を含む)が絡んできます。何とも催眠的な曲です。 ★A4 “Lametta” (3:50)は、一転、静かな音数の少ないイントロで始まりますが、やがてキックとBのリフが延々と続き、フリーなVoも入ってくる曲で、背景にはGのスライド奏法や鋭いカッティングも聴取出来ます。 ★A5 “Modell” (1:47)は、単調なアップテンポな曲で、ひたすら反復するリズム隊に自在なGや喚き声のような多彩なVoが被ってきます。 ★A6 “Alpha & Vieta” (1:35)も、アップテンポな曲で、規則的なGのカッティングと単調なリズム隊に、機関銃のようなVoが逆に心地良いです。 ★A7 “Nachbar” (3:15)は、何ともゆったりとした土俗的リズム隊の静かな反復演奏に、呟くようなVoが乗る曲で、やがてGが弾きまくられます。小鳥の囀りも流されています。 ★B1 “Regentanz” (8:43)は、執拗に反復するリズム隊に、ホーンの音やGのカッティングやオルガン或いはファズG、叫び声なんかが無作為にカットイン/カットアウトしたりする、ミックスに凝ったフリーな曲で、Voも偶にはありますが、ほぼインスト扱いですね。 ★B2 “Stress” (6:45)は、静かで不穏なリズムレスなイントロから、民族楽器のような打楽器が立ち現れ、変調VoやGなどの音や物音音が人為的にミックスされている曲です。勿論、呪文のようなVoも微かに聴こえますが、テープの速度もイジっています。 ★B3 “Do The Fleischwurst” (4:26)は、B2に連続して、反復するリズム隊の上を、フリーフォームなGや他の音等が自在に跳ね回っている印象で、開放感が半端ないです。 以前、初めて聴いた時とは違う印象で、一聴すると有り勝ちな曲構造のようにも思えるのですが、本当に良く出来たフリーフォームな演奏で、特にB&Drsの禁欲的で催眠的な反復と、GやVoなんかの自由度のコンビネーションは神がかっていますね。それと、B面、特にB1のミックスが凄過ぎます!「流石、Holger Czukay!正しくCanだ!」と言うところでしようか。こう言う風に聴けるようになったのは、Canの良さが分かったからでは?と個人的に思っています。単にNDWのバンドとかパンクとかの先入観を捨てて聴いてみて下さい!完成度は非常に高いので、フリーなロックに関心のある方は、S.Y.P.H.のセカンド、是非とも聴いてみて欲しいです❗️正に、瞑想(迷走)する音楽ですね!名作! https://youtu.be/PeY2JzEu-S0?si=vpPPMPnlq1iPi9hN #S.Y.P.H. #Pst #PureFreude #SecondAlbum #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #Can #Repetition #HarryRag #UweJahnke #JürgenWolter #UliPutsch #Guest #Co-Producer #HolgerCzukay
Neue Deutsche Welle (German New Wave) Pure Freude 不明Dr K2
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Sodom “TV Murder”
何で、こんなもん持ってるのかなぁ?と言う訳で、Trans Records御三家(Asylum, Z.O.A.,Sodom)の一つSodomのアルバム”TV Murder”を紹介します。多分、何かの気の迷いで買ったのだと思いますが、よく覚えていません。1980年代中期〜1990年代までバンドブームが起こり、黒いモノトーンの服装の女の子のファンをトランス・ギャル、それに対してキラキラの色取り取りな可愛らしい服装のナゴム・ギャルと言うように棲み分けがありました。まぁそれは良いんですが、私が、初めてSodomを観たのは、Psychic TVの初来日の前座の時だと思ったのですが、どうでしよう?もしそうだとしたら、ちょっと「イタかった」です。 それで、Sodomのバイオグラフィーを書いておきます。1981年 Zazieを中心にSodomは結成され、1983年には、スターリンのタム氏が設立したADKレコードより発売された”ADK Omnibus vol.1”に収録されています。翌年1984年に、カセット・アルバム”聖レクイエム”をゴモラレコードからリリースしています。このアルバムは、世界的に上映禁止となった1975年作映画”ソドムの市”と同名のライブ活動をしていた時期の音源です。この時のメンバーは、Zazie (Vo), Shinoyan (G), Bara (B), Hayato (Drs, Piano)で、一曲だけゲストでBaki (G)が参加しています。そうして、1985年に、本作品でもあるファースト・アルバム(LP)”T.V. Murder”をTrans Recordsからリリースしています。この時には、Shinoyan (G)の代わりにKonan (G, Synth)が加入しています。1986年に、12㌅シングル”Material Flower”をTrans Recordsよりリリースしますが、一度活動を休止しています。その後、1987年に活動を再開しますが、その際、ダンス・パンクというジャンルをバンドに取り入れています。そして、1988年に、Tommyこと福富幸宏がメンバーとなって、ハウス・バンドとして復活し、セカンド・アルバム”King Of House”をCaptain Trip Records傘下のBang A GongよりCDリリースしています。この時のメンバーは、Zazie (Vo), Conan (Computer [Programming]), Tommy (Computer [Programming]), Marr (Perc)です。1991年に、サード・アルバム”Sodom”をAlpha Recordsからリリースし、これがメジャーデビューとなりますが、リリース直後に活動を停止してしまいます。その時のメンバーは、Zazie (Vo), Conan (Kbd, Back-Vo), Yukihiro Fukutomi (Kbd, Programming), Marr (Perc, Back-Vo)です。その後、2007年2月18日に、新宿Loftにて、Shoko-Fこと藤川祥虎が加わり、16年振りにSodom名義でライブを行い、活動を再開しますが、2009年の企画Drive To 2010では、Sodom Project名義で再復活し、暫くはこの名義で活動しています。2019年2月3日に新大久保Earthdomでの企画機械魔術フェスのライブ後、Sodomとして、2019年の全国ツアーが発表されています。 以上が、Sodomの略歴となります。最初のLPでもある本作品では、先述のように、Zazie (Vo), Bara (B), Konan (G, Synth), Hayato (Drs)がメンバーであり、プロデュースは、あの北村昌士がやっています。収録曲はA面3曲/B面4曲となっています。それでは、各曲をご紹介していきましょう。 ★A1 “Euro (Down On The Dead)”では、単調なピアノの単音弾きに呻くようなVoが乗ってきますが、突如、GのリフやDrsが入ってきて、ビートを刻み始めます。と同時にVoのテンションも上がりますが、一端静まり、再び、ビートをたたき出し、怒号のようなVoのテンションも上がります。長尺で曲構成はやや複雑で、緩急や音圧の振り幅も広いですが、飽きることはないですね。 ★A2 “TV Murder”では、ディレイの効いた掛け声で始まり、リズム隊も重厚でタイトなリズムを叩き出し、Gもひたすらリフを刻み、シアトリカルなVoも自在に怒声を放射しています。 ★A3 “Hills Garden”は、タムを多用したリズムと唸るようなBと控えめながらもツボるGをバックに、Voのテンションは高くなります。これって六本木ヒルズのことじゃないよね? ★B1 “Art Of Lab”では、ミニマルなリフをひたすら弾くBとGで始まり、Drsも入ってビートを、更に捨て鉢なVoも加わり、一丸となったタイトな演奏を繰り広げます。Gの音色が当時を思い出しますね。 ★B2 “In The Wall”は、微かな悶え声から、スネア連打のビートとなりますが、途端に、シンコペーションの効いたビートの曲に変換されます。曲の構成にはかなり柔軟ですが、演奏は極めてタイトです。 ★B3 “Calimrec”は、タイトなリズム隊にシグナルのようなGのリフから成る曲で、狂的なVoが異教徒の呪文のように暴れまくります。 ★B4 “Test Pattern Nº2”では、叫び声から、ポストパンク的リズムが叩き出され、演奏はミニマルですが、Voはシアトリカルで自在です。途中のブレイクなんかもカッコ良いですね。 当時、言われていた程、Gothな感じはないですね(これは当時の服装に寄る印象かと)。YBO2のベーシストでもある北村昌士が共同プロデュースと言うこともあってか、リズムの構築とか曲構成とかに気を使って練り上げられており、特にBの録音仕方が良いです。また、ZazieのVoも基本、怒声なのですが、結構シアトリカルかつ自由自在に歌っているようで、その点も興味深かったです。反対に、Gとかは敢えて抑え気味に仕上げられているのかなぁと思いましたし、フランジャーを多用したGの音色も当時の流行りだった思います。凄くノレる音楽ではないですが、プログレのように曲構成が割と複雑で、じっくり聴きたいものです。あと、この作品ではシンセは余り使われていませんね。ちょっと残念。 https://youtu.be/HLiwbAbQKwE?si=NAZ5rxJl0ldlQp4G A2 “TV Murder” [MV] https://youtu.be/6Bxsi8mbfRs?si=CSLuI6E-meYLXkTe #Sodom #TVMurder #TransRecords #2ndAlbum #JapaneseUnderground #PostPunk #AlternativeRock #Industrial #Zazie #Bara #Konan #Hayato #Co-Producer #MasashiKitamura
Post Punk / Alternative Rock / Industrial Trans Records 不明Dr K2
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Ja Ja Ja “s/t”
しかしながら、ATA TAKは、いつも凄いバンドを見つけてくるよなー。と言う訳で、今回、ご紹介するのは、当時、Neue Deutsche Welle (NDW: German New Wave)の渦中にあったバンドJa Ja Ja (ヤーヤーヤー)の唯一のアルバムです。もう、ジャケからして脱力してしまう、このバンドは、米国人のJulie Jigsaw,に、独逸人のWietn Wito (ヴイートン・ヴィト)とFrank Sambaから成るトリオです。 それで、ちょっと調べていたら、VoのJulie JigsawことJulie A. Ashcraftのちょっとした自叙伝みたいな記事を見つけましたので、なるべく簡潔に書いておきます(現在はJigsawnovich名義で活動)。どうも、彼女は米国在住であったようで、1980年にNYCのPratt研究所に通う為にDallasから引っ越して、そこで、美学生のTed Parsons (Drs)とGregory Grinnell (G)とで、最初のバンドGroup of Treesを組んで、彼女はVoとCasiotoneを担当しています。彼女曰く、サーフの影響を受けたポストパンク/ノーウェーブなサウンドであったとのこと。しかし、ParsonsはThe Swansに、GrinnellはThe Toastersに加入して、バンドは消滅します。話しが少し前後しますが、1978年〜1980年には、彼女は、Liquid Liquid, Siouxsie & The Banshees, Bad Brains, The Slits, Captain BeefheartやDevoのライブを観ており、その中で、CrassのSteve Ignorantとも直接会っています。一方で、彼女は、京劇や小野洋子, Der Plan, DAF, Holger Hiller, The Wirtschaftswunder, ? & The Mysterians, The Residents, Kraftwerk, Mars, DNA, PIL, Wire, Ornette Colemanなんかも聴いていました。それで、週1回、ラジオ局WPIRのPratt RadioでDJをやるようになります。1981年に、彼女はDer Planのアルバム”Geri Reig”をジャケ買いし、独逸語のサウンドが大好きになって、Der Planの曲を歌おうと練習していました。そして、彼等にファンレターを送り、そのアートワークとか彼等の求めている音楽とかについて尋ねます。それに対して、レーベルのグラフィック・デザイナー兼リードVoのMoritz Rから返事ももらい、その後、手紙やカセット作品の交換を経て、独逸に来ないかと誘われます。それで、彼女はDüsseldorfに行き、ATA TAKスタジオのゲストルームに住みつきます。そこで、PyrolatorことKurt DahlkeとFrank Fenstermacherらと、かなりディープな哲学的な会話を交わすようになり、特に、Dahlkeが”同一性”について語ったことを、彼女にもっと詩的に書き直させて、それが後のJa! Ja! Ja! (意味は「はい!はい!はい!」)の持ち歌の歌詞になります。それで、彼女は、ピアノでメロディを、ドラムでリズムを作っていたりしましたが、ATA TAKスタジオにあったベースやトランペット、シンセにもチャレンジして、Fenstermacherには「天然の才能だね」と言われ、Dahlkeも友人を紹介するからと言って、Frank SambaとWietn Witoを連れてきました。会った日の晩に早速3人でセッションを行い、即興で歌詞も歌も付けてジャムっていました。それを聴いていたDahlkeがサッと録音ブースに入って、そのセッションを録音しています。その中からベストテイクを選び、Witoの一言で、”Wahrheit (ヴァールハイト; The Truth)”として、1982年のコンビ・アルバム”Klar! 80 Sampler, ALLES ODER NICHTS (アーレス・オーダー・ニヒツ; EVERYTHING OR NOTHING)”に収録し、その翌日、3人で、”Katz Rap”(カッツ・ラップ; Cat Rap)と“Mom”の2曲をシングルとして、ATA TAKからリリースしています。その時に、グループ名をJa Ja Jaとしています。1981年〜1982年に、彼女は、Blixa BargeldやGudrun Gut, Bettina Köster, Robert Görl, Andreas Dorauらと会い、NMEの記事の為に、Holger Hillerにインタビューし、実際にPalais SchaumburgやEinstürzende Neubauten, Der KFCのステージも観ています。彼女はその時に、ベルリンの壁で、西側と東側の両方から、その緊張感やスクワットや暴れ方を実体験しており、独の若者達から「米軍基地の為に、冷戦中、しなければならない業務があるのだ」と言うことを再度伝えて欲しいと言われ、その体験から、“Habt Nicht Mehr Angst (Have No More Fear)”の歌詞が出来たとか。それで、NYCで書いていた歌詞に加えて、Ja Ja Jaでの新曲では、彼女は、全て独逸語で歌詞を書くようになりました。それと、1982年にリリースした”Katz Rap”で、彼女は、欧州で最初の女性ラッパーとして録音されたらしく、また、同年のその後、“Graffiti Artists International”も欧州で最初に「落書きアート」に関してのラップ曲となったとも言われています。また、ジャケ絵は、David Icke (デヴィット・イケ)によるモノで、バンドの曲”I Am An Animal”に関係しています。一方、他の2人は、素晴らしいミュージシャンHenry Scott IIIをバンドに加えることを提案し、実際、ライブでも凄かったらしいです。ただ、3人の音楽性がバラバラで、良い意味で、バンドとしては、色んな要素を含んでいました。例えば、Zurichでのライブでは、観客の半分はゴリゴリのパンクスで、残りの半分はオタクのような若者と言う感じだったとか。彼等は、独、蘭、スイス、ベルギーのクラブや大学、フェスでライブ活動を行っていますし、NYCのダンステリア・クラブからのオファーもありました。John Peelも、BBCラジオ番組で”Katz Rap”を掛けてくれていますし、Zurichの独逸語ラジオ番組でもインタビューも受けています。後、NDWの裏番長Xao Seffchequeが1曲、彼女(Julie Jigsaw)のことを取り上げた曲”Julie In Germany”を1982年にリリースされたコンピ”Klar und Wahr – Sounds Rettet Deutschland (クラー・ウント・ヴァール-サウンズ・レテッテ・ドイッチュランド)”に収録したのは、彼女にとっては嬉しかったようです。Ja Ja Jaでは、彼女が歌詞とメロディを作り、他の2人がアレンジして曲にすると言うやり方でしたので、クレジットもそれぞれ別にしていましたが、ある日、Witoが新曲を書いたと言ってきて、彼の主張によると、複数のクレジットにしてもらえないかと言うことでした。また、彼自身は、よりプログレ・ジャズの方向に向かっていましたが、Jigsawはもっとヒップポップ的にしたかったようです。そう言うこともあって、彼女は、1983年にNYCに戻り、ヒップポップ・ムーブメントにどっぷりハマり、また落書きアーティストとしても活動していくことになり、独でのJa Ja Ja は自然消滅してしまいます。 ちょっと長くなってしまいましたね。すいません。それで、即席セッションから発展したJa Ja Jaの唯一のセルフ・タイトルのアルバムを紹介していきます。先述のように、このバンドは、Julie Jigsaw (Vo, Casiotone, Harmonica), Wietn Wito (Fretless-B, Chapman Stick), Frank Samba (Drs[Sonor], Perc, Vibes)から成るトリオで、本作品には、Henry Scott III (Trumpet, Flugelhorn, Vo)がゲストで参加しています。またプロデューサーは、PyrolatorことKurt Dahlkeです。内容的には、A面4曲/B面6曲を収録しています。それでは、各曲について紹介していきましょう。 ★A1 “Ain't Gonna Give Up Yet” (2:33)はChapman Stick (以下Stickと表記)とカシオの音に導かれて、不思議なメロディとなる曲で、B級感満載です。 ★A2 “Graffitti Artists International” (6:29)も、Stickのリフから始まり、Drsとカシオが被って行きますが、VoがモロRap調で、NDWとしては異端的ですね。間奏にはホーン類が吹きまくってますし、Stickのソロもあります。 ★A3 “Mom” (3:48)では、ミュートしたBから静かに始まったかと思ったら、いきなり急かすようなアンサンブルが始まります。Slap奏法も交えて、凄い迫力です。 ★A4 “I Am An Animal” (3:36)は、カシオの音とVoから成るキュートな曲ですが、バックの演奏は高度です。この曲でジャケが決まったとのことですが、私にはその理由は良く分かりません。 ★B1 “On The Other Side” (2:36)でも、Stickの高度な演奏とビートをキープするDrsに、英詞のVoがシアトリカルに絡んできます。 ★B2 “Red” (3:36)は、アップテンポで手数の多いDrsとBをバックに、元気一杯なVoが乗っかる曲ですが、途中、鉄琴ソロで、一息付けます。 ★B3 “Katz Rap” (2:51)は、Slap奏法も冴えるBとDrsとVoで始まりますが、やがて更にアップテンポになって、ややRap調のVoとStickの速弾きが最高にファンキーでご機嫌です。 ★B4 “Ja! Ja! Ja!” (2:20)は、リバーブの効いたDrsに、Bと囁くようなVoが被ってきますが、間奏にハーモニカのソロも良い味付けです。 ★B5 “Destiny” (3:50)は、ホーン類のユニゾンで始まり、強力なリズム隊と、爽やかなVoが独自の空間を作り上げています。間奏のトランペット・ソロも良し!更にそれに絡まるBソロとの掛け合いも凄いです。 ★B6 “Habt Nicht Mehr Angst!” (1:45)は、地を這うようなリズム隊に、Voが独語歌詞を不貞腐れたように歌い、間奏には歪んだStick(?)のノイジーなソロも聴取できます。 これは、当時のNDWの流れの中では、異色作ですね。多くはどちらかと言うとミニマルで、ドラムマシンを使うことが多い印象でしたが、Ja Ja Jaは、上手過ぎるStick/Bの演奏(私は当時、Chapman Stickを弾きこなすNDW関係のアーティストを知らなかったです)とそれに耐えうるDrsの力量からして、別格で、更に曲もプログレっぽくもあり、アレンジも最高です。まだ、Jigsawが米国人の為、独逸語の歌詞が極端に少なく、その点でも通常のNDWとは異なります。購入当時、個人的には、そのStick/Bとかの速弾きがどうにも腑に至らず、そのまま、余り聴いていませんでしたが、今聴くと、凄っく面白いです❗️しかも、これが、ATA TAKからあんなジャケでリリースされたことに驚愕してしまいます。なので、ジャケとかに惑わさらないで、聴いてみて下さい! https://youtu.be/m_-iH3Y8PD4?si=uCMdjUDHfCVGMYzt #JaJaJa #ATATAK #First&LastAlbum #1982年 #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #JulieJigsaw #NewYorker #WietnWito #FrankSamba #Drums #Casiotone #ChapmanStick #HipHop #Rap #Guest #HenryScottIII #Producer #Pyrolator
Neue Deutsche Welle (German New Wave) ATA TAK 不明Dr K2
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Diamanda Galás “You Must Be Certain Of The Devil“
Diamanda Galásは、忘れた頃にやって来る!と言う訳で、ギリシャ系米国人の彼女の6枚目のスタジオ・アルバムになる"You Must Be Certain Of The Devil"を今回はご紹介します。彼女のバイオグラフィーは、以前に書いていますので、そちらをご参照下さい。それで、本作品”You Must Be Certain Of The Devil”なのですが、これは、3部作"Masque Of The Red Death"の3番目の作品に当たり、1番作"The Divine Punishment"と2番作”Saint Of The Pit"とで完成するとされています。この3部作は、1988年に3枚組CDとして、Mute Recordsよりリリースされています。この3部作は、彼女の兄弟であり、作曲家でもあるPhilip-Dimitri Galásが、丁度1作目を制作中にHIVに感染して、AIDSを発症した事と関係して、彼女はAIDSに関する作品を作ろうと決意し、作り上げたもので、AIDSに関する啓蒙や活動家としての参加と関係しているようです。しかしながら、彼女の弟は、1986年に、その3部作の完成を見るまでに他界してしまったとのことです。それで、本作品についてのクレジットですが、本作品には、Diamanda Galás (Vo, Hammond Organ, Piano, Synth, B-Kbd)の他に、Charlie Terstappen (Drs), F. M. Einheit (Drs [B2], Chains [A2]), Naut Humon (Sampler), Kurt Schmidt (G [A2,A4]), Peter Zimmermann (Perc)がゲストで参加しています。両面4曲ずつ収録されており、45回転のミニ・アルバムの体裁を取っています。それでは、各曲についてご紹介していきましょう。 ★A1 “Swing Low Sweet Chariot” (2:44)は、Galásの高周波ファルセットの独唱が気狂いじみたように響き渡ります。 ★A2 “Double-Barrel Prayer” (5:02)は、A1に連続して、Drsとシーケンスによる楽曲へと進む曲で、呪文のような多重化したコーラス(歌詞の朗読)や声帯をむき出しにするようなGalásのVoも混在してカオスへと雪崩れ込んでいきます。 ★A3 “Let's Not Chat About Despair” (4:59)は、這いずり回るB-Synthとピアノの上で、狂気のVoがパンしながら放射しまくり、やがて物音系ノイズも挿入されます。後半、GalásのVoは語り調になりますが、この時点で聴く者はカオスの中に放り込まれることに。 ★A4 “Birds Of Death” (5:15)では、Drsとcelloらしき持続低音による演奏をバックに、Galásが自由自在に叫ぶように歌いまくっています。バックの演奏は益々不穏になり、高揚するVoの迫力、そして最後のストリング・シンセやGやPercで緊張感はピークになります。 ★B1 “You Must Be Certain Of The Devil” (4:57)では、意外にも1950年代のポップス調の演奏ですが、Galásは相変わらず高周波Voで歌っており、コーラスも1人で担当しています。演奏と歌のギャップによって、彼女の凄まじさがより浮き彫りになっていきます。 ★B2 “Let My People Go” (3:21)は、Galásによるピアノの弾き語りですが、全ての悲哀を飲み込むような迫力があります、恐ろしいくらいに! ★B3 “Malediction” (4:18)では、シンプルなロック調のリズム隊に、Galásの狂人的なVoが悪意を撒き散らすが如く歌われ、更に多重録音によるコーラスやピアノも加わり、カオスの中に突っ込んでいきます。最後にはシンセも加わり、高周波Voと共にフェイドアウトしていきます。 ★B4 “The Lord Is My Shepherd” (1:32)では、歌うと言うよりも呼吸するように呪詛を吐く唱法を試しており、無伴奏となっています。 しかしながら、Diamanda Galásのアルバムは、毎回、分かってはいるものの、凄まじく狂的であり、混沌としており、取りつく島もなく、圧倒されるばかりです。それは、彼女が精神疾患とか言う訳ではなく、シラフでそう言った表現が出来ることが素晴らしいと、毎回、感嘆してしまいます。以前にご紹介した3部作の"The Divine Punishment"と”Saint Of The Pit”とを聴いた時から全然変わっていませんね。また、余り言われていませんが、彼女の歌詞にももっと注目が集まっても良いのではないでしょうか?まぁ決して明るい歌詞ではないですが、何か(恐らくはAIDS?)に対する呪詛のように、ある単語や言葉のパタンを繰り返したりするのは、彼女の唱法にマッチしているのだと思います。因みに、A2は、ミサ曲から、B1は旧約聖書の一部から歌詞が取られているようです。このアルバムも完成度は高いので、是非是非、彼女の壮絶な世界を体験してみて下さい! https://youtu.be/UsVW14its94?si=RJM5i_s-eHTXGSnP [full album] https://youtube.com/playlist?list=PLaUZvzqQ0efQ77Vjah4PVkPlLpRQoDc8C&si=Tll82rX9cm09PESJ #DiamandaGalás #YouMustBeCertainOfTheDevil #MuteRecords #6ThAlbum #Trilogy #MasqueOfTheRedDeath #ForAIDSPatients #Philip-DimitriGalás #TheDivinePunishment #SaintOfThePit #Experimental #Vocalization #Organ #Piano #Synthesizers #Bass-Synth #Guests #CharlieTerstappen #F.M.Einheit #NautHumon #KurtSchmidt #PeterZimmermann
Avant-Garde / Vocalization Mute Records 不明Dr K2
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Stephen Mallinder “Pow-Wow”
Stephen Mallinderと言えば、ご存知、Cabaret Volaire (キャバレー・ヴォルテール、略称Cabs[キャブズ])のVo/Bとして長年活動してきましたが、最近、Cabsを脱退して、Phil Winter及びBengeと共にWranglerを結成しています。彼は、そう言ったグループ活動と並行して、ソロとしても活動しています。今回は、彼のソロアルバムとしては一番古いアルバム”Pow-Wow”を紹介したいと思います。Cabsについては既に書いていますが、Mallinderについてのバイオグラフィーは書いていませんので、ここで、改めて書くことにします。 Stephen Mallinderは、英国シェフィールドで1955年1月1日生まれで、1973年にCabaret VoltaireをRichard H. KirkとChris Watsonと共に結成し、Western Worksにて様々な音楽的実験を試みたおり、Cabsとしては30枚以上のアルバムをリリースしています。1995年に豪州に移住し、10年間そこで暮らしています。1996年には、Pete Carrolと共にOffWorld Soundsを運営し、Western AustraliaのMurdoch大学で、論文”Movement - Journey Of The Beat”を執筆し、博士号を取得しています。その後、英国に戻りBrighton大学で教鞭を取る傍ら、Phil Winter及びBengeと共にWranglerを結成して、未だ現役のミュージシャンでもあります。もう少し、詳しく書いておきますね。Mallinderは、Cabsと並行して、1980年代には、既にソロワークも始めており、その中には、本作品でもあるアルバム”Pow-Wow”も含まれています。1988年にはSoft Cellのメンバー達と、Love Street名義で録音も行っており、1989年には、MinistryのAl Jourgensen達とのバンドAcid Houseのメンバーでもありました。ちょっと話しが前後しますが、1982年に、英国初の自主制作ビデオレーベルDoublevisionをRichard H. Kirkと設立し、1990年には、そのビデオレーベル関係のレコードレーベルPlastex Recordsも始めています。その後、豪州に渡ってからは、Ku-Ling Bros.やSassi & Loco名義での作品のリリースの為、1998年に、Off World Sounds/Productionsも始めています。Mallinderは、豪州に渡った時には、音楽ジャーナリストとしても働いており、Ministry Magazine, Sunday Times, The West Australianに音楽記事を書いていました、また、コミュニティ・ラジオRTRFMのプレゼンテーターやプロデューサーも務めています。また、2000年代になると、本の執筆も手掛けるようになります。例えば、2013年に発刊された、Benjamin Halligan, Nicola Spelman, Michael Goddard編集の書籍”Resonances: Noise and Contemporary Music”でも1章執筆していますし、同年、S. Alexander Reed編集の本”Assimilate: A Critical History of Industrial Music”では、表書きも書いています。後、博士号については、前述の通りです。それで、最近の音楽活動ですが、まず、Fila Brazilliaの片割れのSteve ConnyとHey, Rube!名義で録音開始、2012年10月にファースト・アルバム”Can You Hear Me Mutha?”をリリース、Ku-Ling Bros.のファースト・アルバム”Creach”が2001年に米国でリイシューされ、その後、2010年にアルバム”Here Come the Astronauts”をリリースしています。2014年2月には、プロデューサー兼リミキサーDub Mentorとのコラボシングル”Obsession”をリリース、これにはCabsの曲も収録されています。また、先述のように、Phil WinterとBengeとWrangler名義で、3枚のアルバム” LA Spark” (2012年), “Sparked” (2014年), “White Glue” (2016)を出しています。また、2014年には、地元SheffieldのバンドClock DVAとIn The Nurseryのメンバーと一緒にIBBERSON名義でのパフォーマンスも行っています。そうして、2019年には、再びDub MentorによるAnna Dominoの”Lake”のスポークン・ワード・ヴァージョンのシングルを作成しており、まだまだ、彼の活動は衰えないようです。 以上が、Stephen Mallinder個人の活動歴なのですが、本作品”Pow-Wow”は、ソロとしてのファースト・フルアルバムに当たる訳で、ゲストには、Alan Fisch (Drs)とLast Few Days (Daniel Landin, a.k.a. D. Styme, Si Joyce, a.k.a. Si Gross, Keir Wahid, a.k.a. K. Warhead & K. Fraser)の3人が参加しています。内容は両面とも6曲ずつで、リリースは、当時、この界隈で人気のあったレーベルFetish Recordsからです。それでは、各曲についてご紹介していきますね。とは言っても、1分前後のインターバルな曲も入っていますので、実質的な曲としては合計8曲と考えてもらって構いません。 ★A1 “Temperature Drop” (5:02)は、リズムマシンとスチールドラムと簡素なBから成るダブ的ミックスの曲で、時に聴こえるVoやノイズが何とも不穏でダークな雰囲気が、初期Cabsっぽいです。 ★A2 “The Devil In Me” (5:01)は、バシャバシャしたリズムマシンとスラップ奏法のBに、シンセやG、不可聴なVoが挿入されるジャンク・ファンクな曲です。 ★A3 “0.58” (0:58)は、ヨレヨレのパルス音とホワイトノイズのスネアから成る小曲です。 ★A4 “Pow-Wow” (3:23)は、リズムマシンのキックとPercが引っ張っていく曲ですが、エフェクターを掛けたBもシンプルなリフを重ねています。トランペット音の残骸等も挿入されていますが、これらは多分サンプリング? ★A5 “Three Piece Swing” (2:52)は、ノリの良いリズムマシンに、テープ音やB等から成る曲ですが、Gのカッティングも入っているのかな? ★A6 “Cool Down” (3:55)は、音色がもろCabsのリズムマシンで、そこにシンプルなBやノイズが纏わりついていくます。これもCabsっぽい曲です。 ★B1 “1.37” (1:37)は、笛(?)の音のループに打楽器のループが重なっていきます。 ★B2 “In Smoke” (3:37)は、四つ打ちキックに上物(ブラスや打楽器、Vo等)が乗っていく曲で、いつの間にか”not funky”なBも加わってきます。 ★B3 “1.59” (1:59)は、金属を擦るような微音ノイズから成る小曲です。 ★B4 “Length Of Time” (6:05)は、シンセで作った機関車のようなリズムとシンセのリフで持って行くような曲で、まるで除雪車が走っているような曲で、段々と盛り上がっていきます。 ★B5 “1.34” (1:34)は、テープ音とワイヤーの音(?)のループから成る小曲です。 ★B6 “Del Sol” (5:36)も、Cabs直系のリズムで、簡素なBとGも初期Cabsっぽいですが、割とGがコードをちゃんと弾いてますし、Voも聴こえる方ですが、その分、首を絞められそうな音楽になっています。 と言う訳で、Stephen Mallinderのソロ第1作目ですが、Voの無い、初期Cabsの鬱々としたマシン・ミュージックをそのまま受け継いでいるようにも思えますね。しかしながら、本作品の方がヴァリエーションが豊富で、自由度も高いと思います。まだ、後のエレクトロ・ファンクな面は見せていませんが、それでもちょこっとだけ、その片鱗も伺えます。Cabsの”Voice Of America”辺りが好きな方ならきっと気に入るでしょう!それにしても、Mallinderの創作意欲は衰えを知りませんね。 https://youtu.be/hp4DT4d1mfA?si=r3StdBvwMjv2myc4 [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_mjFyGgTRLdWtoCm4vqsb6CMNWrWnY9nFk&si=a6cIwjdbBboRsX0b #StephenMallinder #Pow-Wow #FetishRecords #FirstSoloAlbum #日本盤 #CabaretVoltaire #Wrangler #Industrial #LeftField #Electro #Guests #AlanFisch #LastFewDays
Industrial / Left-Field Funk / Electro Fetish Records 不明Dr K2
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The New Blockaders & Xtematic “Degenerative Themes”
またまた、来ましたよー。今度は、英国The New Blockaders (以下TNBと表記)とクロアチアのXtematicのコラボレーション・アルバム”Degenerative Themes”です。TNBに関しては、既にバイオグラフィーは書いてありますので、ここでは、コラボ相手のXtemaricのバイオグラフィーについて少し書いておきます。一言で言うと、Xtematicとは、Marko Jovićのソロノイズ・ユニットとのことで、2011年に宣言を発表して、彼の芸術活動を開始しています。Jović自身は、テクノ、ブレイクビーツ、ドラムンベース、トランス、ハードコア、インダストリアルなどの色々な電子音楽を聴いて、活動を始めています。そんな中で、彼は16歳の時に、ハーシュノイズやエクスペリメンタル、ダークアンビエント、ハーシュノイズ・ウォール、グリッチなんかを聴いて、実際の活動に影響を受け、特に、Diazepa.Mと言う即興・ノイズ・実験系アーティストに大いに影響を受けています。Jovićの最初のハーシュノイズ作品は、Shit Noise Recordsからリリースされており、その数日後には、彼の実験ノイズ・アンビエント作品も、Adrien Millerと共に、Itsu Jitsuレーベルから出ています。その後、数年経って、彼は他の同様のノイズ・アーティストとコンタクトを取るようになり、様々なコラボを行なって、テープやCD/CDR、フロッピーディスク、レコード、配信等の形式で、その結果を発表してきました。そんな中で、彼は、Xtematicとして、一つのアイデアやコンセプトに捉われずに、様々なスタイルでの作品を作り、インダストリアル・カルチャーや明暗の対比こそが、彼の最も興味のあるテーマです。そして、Pain JerkやGovernment Alpha, Genocide Organ等は、彼に大きな衝撃を与えてきましたが、また、その中でも、彼は、TNBやTorturing Nurse, The Haters, Richard Ramirezらとコラボ作を作ってきています。それは、音だけに留まらず、写真やビデオ、グラフィック・デザインに関しても同様であったとのことです。Discogsで確認すると、Xtematicとしては、2021年まではリリースを確認出来ますが、その後の活動は良く分かりません。 と言うのが、Xtematicの略歴になります。それで、今回は、Jović自身が大いに影響を受けた英国TNBとのコラボ作品となる訳ですが、両面共3曲ずつ収録されて、合計6曲(全曲”Theme”I〜VIと記載されています)となる訳ですが、どちらが最終ミックスをしたとかどちらの音源を使ったとかの情報はクレジットには記載がありませんので、実際のコラボがどのように行われたのかは不明です。と断った上で、各曲についてご紹介していくことにします。 ★A1 “Part I”は、重い金属塊を引き摺るような音に、リバーブの効いた電子音(かな?)が絡んでくるヘビーな金属音響ノイズで、恐らく後者にはサンプラーの使用やテープ操作も施されているようです。 ★A2 “Part II”も、キーキーと軋む金属音で始まり、ヘビーな金属音と歪んだ電子音のミクスチャーから成る曲で、段々と重積されるノイズ音源が、時に崩れたり、時に聳え立ったりして、破壊と再構築が交互に進みますが、収録時間は短いです。 ★A3 “Part III”は、缶詰のような金属音が増幅されながらも、不明瞭な電子ノイズや潰された金属音がカットイン/カットアウトするカッコ良い曲です。 ★B1 “Part IV”では、リバーブの掛かったザラついた金属音が引き摺り回され、それに更に、金属音や具体音、更には電子音などが、ガチャガチャともつれて込んで、絡んみ合って、「生き物」のように蠢いています。 ★B2 “Part III”でも、不明瞭な金属音に、歪みまくった電子音や具体音が上乗せされていき、ヘビーで激しいブラウン運動の様相を呈しています。後半には「メタルの悲鳴」も聴取できますが、やはりサンプラー等も使用されていますね。 ★B3 “Part VI”も、潰されていく金属音と変調された具体音等がガッツリと絡み合い、巨大な「鋼的胸像」となる小曲です。 明確なクレジットの記載はないですが、多分、TNB側は音源を提供しているだけで、ミックスや再構築はXtematic側が全て行なっているようです。その出来は、1990年代の初期Macronymphaを想起させるような、歪んでグシャグシャに潰された音響ノイズで、何ともヘビーな仕上がりになっています。また、音圧的にも、緩急が付けられており、押しては退くように音が配置されていますので、単にダダ漏れのハーシュノイズ・ウォールと言う訳ではないです。寧ろ、頭脳派ノイズですが、かと言って、アンビエントな要素は皆無ですので、ハーシュノイズ・ファンの方は安心して下さい。本作品では、Xtematicの手腕が遺憾無く発揮されており、聴き応えも充分です。差し詰、ドゥーム・メタル・ジャンク・ノイズでしようか?メタル・ジャンク・ノイズ・ファンの方は、勿論、初期Macronymphaのファンの方にも大推薦ですよ❗️ *本作品はYouTubeにも上がっていなかったので、TNBのライブ動画とXtematicの単独動画を貼っておきます。 [TNB live in Berlin, Mar.31, 2012] https://youtu.be/i1sCwqGqOu4?si=4ClHcOO31CatxY1_ [Xtematic “Nu: tral “] https://youtu.be/myW1CYQlE5I?si=82zd0LOkSV0hN-ON [Xtematic “Another Way of Wisdom”] https://youtu.be/JvrXhcptukk?si=-rlDksi7YqE9Se7z #TheNewBlockaders #Xtematic #DegenerativeThemes #EquationRecords #UK #Croatia #CollaborationAlbum #HalfBlackHalfGoldVinyl #LimitedEditions #80部 #Noise #Experimental #RichardRupenus #PhillipRupenus #MarkoJović
Noise / Experimental Equation Records 不明Dr K2
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Hajime Tachibana (立花ハジメ) “Hm”
Plasticsで、有名になった立花ハジメのセカンド・ソロアルバムが、この”Hm (エイチ・マイナー)”ですね。Plastics時代はギタリストとして活動していましたが、ソロでは、専らSaxを中心に自作楽器Alpsや自動打楽器なんかを演奏するようになっています。彼のバイオグラフィーは以前に書いてありますので、そちらをご参照下さい。本作品では、Hajime Tachibana (Sax)を始め、他にHiroyasu Yaguchi (Sax), Robin Thompson (Sax, Clarinet), Mitsuru Sawamura (Reeds, Sax), Tatsuo Kondo (Piano, Kbd), Donbay Nagata (B), Saeko Suzuki (Drs, Piano)がゲスト参加しています。本作品では、曲にコンセプトらしき文言が付随している場合があり、それをちょっと記載しておきます。「A2では、細分化されたPIANO PILLOWSのイメージが元に戻る一瞬前 とA4-A5では、自分の一生の映っているビデオテーブを手に入れた主人公。誕生、少年時代に見入る興奮とスリル。ふと60才の自分が見たくなり、早送りしたものの画面に何も映っていないショック! 50才、40才と戻す。まだ何も映らない。次の瞬間にも自分もしくは世の中全体がなくなってしまうのではないかという不安にかられながらタイマーを現在に戻し恐る恐る再生スイッチに手をのばす⋯。こ、こ、これは⋯⋯!!!」と付加されています。更に、B3では、副題に「月を背にして自分の影を見ながらサバクを歩く突起物 」と付いており、B4では、再創造される幼年期と加最度のついた日常生活とか、B5では、A documentary program showcasing facets of Japanese life as-is that ran from 1957 to 1964と付記されています。単なるお遊びなのかもしれませんが、当時の立花ハジメにとっては、彼の音楽を理解する為のヒントだったのかもしれませんね。と言う訳で、本作品(両面5曲ずつ収録)の各曲をご紹介していきたいと思います。 ★A1 “Theme From ‘Hm’ /「Hm」のテーマ” (3:09)は、仰々しいティンパニのマーチングリズムで始まり、前作の点描的音ではなく、それぞれの楽器が重々しいメロディを奏で、かなり「音楽的」になっています。 ★A2 “Piano Pillows Going Abstract / 細分化されたPIANO PILLOWS” (3:05)は、6拍子を刻む管楽器が上下するミニマルな曲で、ドラムレスで心地良いです。この曲の終わりは! ★A3 “Liquid / リキッド(清楚な熱帯夜)” (6:28)では、ドタドタしたDrsと柔らかいKbdのミニマルな演奏を基礎に、劇的な管楽器が多層化してメロディを奏でています。特に一定のメロディは無いようですが、非常に心地良いです。 ★A4 “This Is ...... !!! (Death Video)” (4:07)は、柔らかい管楽器のアンサンブルなのですが、中盤からやや不穏な雰囲気になってきますが、クラリネットがメインだからでしようか?悲しげな室内楽です。 ★A5 “Theme From ‘Sex Symbol Strikes Back’ / セックスシンボルの逆襲のテーマ“ (1:30)では、飛び跳ねるような管楽器のリズミックな演奏とそれに乗るSaxがメロディを奏で、フェイドアウトしていきます。 ★B1 “Sex Symbol Strikes Back / セックスシンボルの逆襲” (3:57)では、機械のように正確なティンパニとピアノのリズムとホーンによるミニマルなリフの反復に、Sax類がメロディを奏でていますが、肉感的なイメージは全く無いです。 ★B2 “Arrangement” (4:22)は、本作品では珍しく、DrsとBのロックリズムに、Sax類がメロディを奏でており、途中にピアノのコロコロしたソロ演奏を挟んで、再びロック・アンサンブルへ。 ★B3 “Yoru No Tokkibutsu / 夜の突起物” (3:35)では、足踏みオルガンの朴訥な演奏とSaxのほんわかした合奏ですが、音数が少ないので、落ち着きますね。 ★B4 “Ab1013” (4:57)は、Drsとピアノのダイナミックな演奏とSax類のせめぎ合うような曲ですが、シンプルなコード進行ですね。しかし、収録されている音自体はダイナミックです!転調してからがカッコ良いです。 ★B5 “Theme From ‘Nihon No Sugao’” / 「日本の素顔」のテーマ(2:34)も、Saxとピアノの素朴な合奏で、子供向けTV番組のエンディングみたいです。 今回は、極めて音楽的な作品になっており、言い換えれば、Saxとかを「普通」に演奏していますが、どうもPlasticsのイメージがあるからか、真っ白な無菌室のような音楽と感じてしまいます。もっと人間臭い音楽になるのかな?とも思っていたのですが、前述のような無機的で衛生的な音楽になっているところが面白い、と言うか凄いですね。B面には、立花ハジメ以外の方が書き下ろした曲やカバー曲も含まれていますが、聴いた感じには全く違和感はないですね。これも、彼の才能なのでしょう。あと、ミニマルな曲が多いのも、時代的には特徴かもしれません。Sax等によるインスト曲に興味がある方にはお勧めします!いい意味で、ファースト・アルバムの内容を裏切ってくれました❗️なお、プロデュースは高橋幸宏です。 A1 “Theme From ‘Hm’” (3:09) https://youtu.be/KH_dMTL3LV0?si=VdoQwAUnOFlK20rP A2 “Piano Pillows Going Abstract” (3:05) https://youtu.be/trMeUn5xcco?si=dv0eE_ocy5c53Jr8 A3 “Liquid” (6:28) https://youtu.be/L5YXSolGC2Y?si=we3MuUUmdNgKNTGH B1 “Sex Symbol Strikes Back” (3:57) [Garage Band version] https://youtu.be/YpyxO4Oz2Eo?si=wKiCrYwXhZb4yB4E B2 “Arrangement” (4:22) https://youtu.be/AymYA8kJBa0?si=sFjdJJvlqnv9Hqto B2 “Arrangement (Cover)” (4:22) https://youtu.be/KH8VB4o58ws?si=KwKUUB7NFBHT-qFL B5 “Theme From ‘Nihon No Sugao’” (2:34) https://youtu.be/k3kkNFriP6E?si=IVf5LlAs11PWhOoQ #HajimeTachibana #Hm #YenRecords #SecondAlbum #SoloAlbum #ExperimentalPop #Contemporary #Sax #HiroyasuYaguchi #RobinThompson #MitsuruSawamura #TatsuoKondo #DonbayNagata #SaekoSuzuki
Experimental Pop / Contemporary Yen Records (Alpha Records) 不明Dr K2
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Embryo “Live"
また、ちょっと買っちゃったので、紹介します。独ロック界の中でも、超絶テクのジャズロックからエスノ・ロックへと移行していたEmbryoのライブ・アルバムです。なお、Embryoのバイオグラフィーは前回書きましたので、そちらをご参照下さい。Embryoは、結構、メンバーが代わっていますので、本作品での参加メンバーを列挙しておきます。Christian Burchard (Vo, Drs, Marimba, Vibes), Roman Bunka (G, Vo, Oud, Perc), Uve Müllrich (B, Dilruba, Perc), Charlie Mariano (Alto Sax, Soprano Sax, Flute, Nagasuram), Dieter Miekautsch (Fender Rhodes Piano), Maria Archer (Vo, Perc)で、1976年2月のライブ音源からコンパイルされています。この時点では、Burchardと一緒にEmbryoを立ち上げたEdger Hoffmannはいませんし、Amon Düül IIに在籍していたChris Karrerはまだ加入していません。しかも、このアルバムは、装丁がチープで、ジャケはカラーコピーを2枚、表と裏で挟み込んだだと言うチープなもので、それこそ1980年代初頭の日本の弱小自主制作レーベル並で、そこがちょっと残念です。まあ、それは良いとして、本作品は、A面3曲/B面6曲が収録されており、同じライブなのかどうかは不明です。それでは、各曲についてご紹介していきたいと思います。 ★A1 “Bambus Railway” (5:06)は、軽快なリズムに乗せて、歌い上げるVoで、正しくジャスロックですね。エレピソロは聴かせてくれます。 ★A2 “You Can Turn Me On” (13:13)は、やや複雑なリズムパタンを弾くエレピとリズム隊に、自在に吹きまくるSaxと弾きまくるGの絡みが拮抗する良曲で、Voを含めバネのあるファンクを感じます。 ★A3 “Tiflis” (5:52)では、民族打楽器のリズムをエレピやFluteが引っ張っていきますが、やがて熱いVibesの演奏が入ってきますが、フェイドアウトが残念。 ★B1 “Road Song” (3:35)は、ワウったGとDrsやBが如何にジャズロックで、Voも「黒っぽい」ですが、Bの唸りが凄いです。 ★B2 “After The Rain” (3:25)では、熱帯雨林のスコール後のような雰囲気を醸し出すエレピやGが心地良いですが、後半のプレイは一気に熱量が上がります。 ★B3 “Bambule” (3:50)では、アコギとFlute、それにVibesの絡み合いが、何ともターキッシュな雰囲気で、心地良いです。 ★B4 “No More Love” (4:35)では、かなり弾けるインタープレイが聴けます。ArcherのVoもソウルフルで、昔TVで観ていた「ソウルトレイン」を想起しました。 ★B5 “Sho Do Ima(項度今)” (1:19)は、しっとりした演奏で、ArcherのVoを中心に進みます。でも、この日本語の意味は? ★B6 “The Orange Man” (7:09)は、ターキッシュなムードのSaxとGの演奏に導かれて、次第にリズム隊も加わってきますが、全体的にエスニックで、しかもGは弾きまくって、アルバムを締めていきます。 う〜む、そうですねぇ、独逸のクラウトロック・バンドがこんなブラックでソウルフルな音楽を志向しているのに、ちょっと驚きましたが、時代的にそうなるしかなかったのかな?とも思います。もっと民族音楽的な感触かなと期待していたんですが、内容はジャスロックでしたね。それと、殆どの曲がフェイドアウトで終わってしまうのが、ちょっと残念で、曲数減らしても、最後までを収録して欲しかったです。余り、初心者向けではないですが、熱いインタープレイを聴きたいのであれば、試してみても良いかも? https://youtu.be/ANjnxwXkcJQ?si=Byd1OVm0Z-1Sx4Ay #Embryo #Live #April #Reissue #LiveAlbum #1976年 #Krautrock #JazzRock #Ethno #Funk #EthnicInstruments #ChristianBurchard #RomanBunka #UveMüllrich #CharlieMariano #DieterMiekautsch #MariaArcher
Krautrock / Jazz Rock / Ethno April 不明Dr K2
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Penguin Cafe Orchestra “Music From The Penguin Cafe”
皆さんは、Penguin Cafe Orchestra (以下PCOと表記)を覚えてますか? 1980年代初頭に日本でも大ブームを巻き起こした英国グループで、Brian EnoのObscure Recordsの一貫としても紹介され、当時のアンビエント・ブームに乗っかる形で、それこそOLや女子大生にまで人気がありました。その時は、私は全然興味が無かったのですが、ふとしたキッカケで中古日本盤を購入していました。 先ずは、PCOのバイオグラフィーを書いていきたいと思います。中心人物のSimon Jeffesは、英国サセックス州生まれ、カナダ育ちで、13歳の時に、Gを弾いて欧州を回っており、その時に、クラシックGやPiano、音楽理論をChiswick Polytechnicで学んでましたが、卒業前にドロップアウトしています。それで、1972年に日本に住んでいたらしいのですが、その頃は、クラシックの硬直性とロックの限界を感じ、そのどちらにも幻滅していた時期で、その代わりに、いわゆるフォークミュージックに可能性を見出してしたらしいです。そして、その時に、エスニック・ミュージック、特にアフリカン・スタイルに興味を抱き、これらのスタイルを西洋の古典的音楽に掛け合わせようと決意します。こうして、Jeffesは、自ら作曲して、それを演奏する為に、PCOを始めます。ただ、Jeffesは、Penguin Cafeについて語る時、それは、1972年夏、南仏で不味い魚料理で食中毒になり、ホテルのベッドで横になっていた時に、「自分がPenguin Cafeの経営者になって、適当に話しをしていく」夢を見たことによるとしています。彼は、PCOの音楽をmodern semi-acoustic chamber musicと評しています。そうして、Jeffesは、本作品でもあるPCOのファースト・アルバム”Music From Penguin Cafe Orchestra”を1974-1976年に録音しており、この作品は、Brian EnoのObscure Recordsのシリーズとして、Edition EGから1976年にリリースされます。その後、メンバーも落ち着いてきて、1981年には、セルフタイトルのセカンド・アルバムを出しています。PCOは、1976年10月に、KraftwerkのRoundhouseでのライブサポートとして、初めて大きな会場での演奏を行っています。その後は、LondonのSouth Bankの専属になりながらも、様々なフェスに参加、1976年〜1996年に、北米、豪州、日本、欧州、英国で演奏をしています。1987年3月には、ITVのアートシリーズThe South Bank Showでも出演し、演奏を披露しています。一方、Jeffesは、より実験的な方向性を打ち出し、トロンボーンやオーボエも入れて、PCOをダンス・オーケストラにしようとします。その為か、オリジナル・メンバーのGavyn Wrightは1984年に、Steve Nyeは1988年にバンドを脱退してしまい、新たなラインナップで活動を続けます。新メンバーは1975年頃から1988年までの間に加入し、1995年に、アルバム”Concert Program”をリリースしています。しかしながら、1997年に、リーダーのJeffesは、脳腫瘍で亡くなってしまい、PCOは一旦休止状態となります。しかしながら、2007年に”Concert Program”の時のメンバー(若干の違いはある)でリユニオンを果たし、特に、Jeffesの息子Arthur JeffesがPercとKbdで加入してから、Arthurはバンド名を単にPenguin Cafeとして活動していますが、元々のPCOのメンバーの内4人はThe Anteatersと名乗ってフェスに出演したりしています。 以上がPCOの略歴となりますが、本作品はPCOとしてのデビュー・アルバムに当たります。少々、混乱するかも知れませんが、クレジットには、2種類のバンド名(?)が記載されています。一つは、ZOPFで、Simon Jeffes (G, B, Ukulele, Quatro, Spinet, E-Piano, Mouth Perc, Vo, Zither, Ring Modulator, Cello [A2-2]), Helen Leibmann (Cello), Gavyn Wright (Vln, Viola), Neil Rennie (Ukulele [A2-5]), Emily Young (Vo), Steve Nye (Mixing)から成り、主にA2を担当、もう一つは、Penguin Cafe Quartetで、Helen Leibmann (Cello), Gavyn Wright (Vln), Steve Nye (E-Piano, Engineer), Simon Jeffes (E-G)から成り、主にB面を担当しているようです。また、録音時期もA1, B1は1974年に、B2, B3は1976年に行われていますが、A2についての録音時期の記載はありません。しかしながら、作曲は全てSimon Jeffesで、プロデュースはJeffesとSteve Nyeが行っています。そうして、A面には2曲(内A2曲は7パートから出来ています)/B面は3曲と言う内容になっています。それでは、各曲についてご紹介していきましょう。 ★A1 “Penguin Cafe Single” (6:14)は、恐らくPCOとしての発想が初めて具現化した曲だと思います。弦楽器のリズミカルな音とピアノの軽やかな音の対比や、途中で即興っぽく、或いはロッケンローっぽくなってしまう辺りの崩し方が絶妙です。 ◼️ZOPF ★A2-1 “From The Colonies (For N.R.)” (1:38)は、弦楽器を弾く音とチェンバロ風の楽器にBが底上げしているミニマルな曲です。 ★A2-2 “In A Sydney Motel” (2:27)は、アコギと虚なVoからリズミカルな展開になるダイナミックな曲で、その対比が面白い。 ★A2-3 “Surface Tension (Where The Trees Meet The Sky)” (2:20)は、ショッキングなピアノで始まり、チェロやVlnが絡んでくるゆったりした曲です。 ★A2-4 “Milk” (2:20)は、BとVoのミニマルな曲で、変調音やフリーキーなチェンバロ音が絡んでくる曲。 ★A2-5 “Coronation” (1:30)は、弦楽四重奏をバックにゆったりと歌う曲ですね。 ★A2-6 “Giles Farnaby's Dream” (2:17)では、チェンバロのイントロから、Bやウクレレなんかがちょっとポップス調にメロディを奏でています。 ★A2-7 “Pigtail” (2:45)では、ポロロンとしたピアノに変調された音が被ってくる曲で、ミニマルにゆっくりと展開します。 ◼️Penguin Cafe Quartet ★B1 “The Sound Of Someone You Love Who's Going Away And It Doesn't Matter” (11:38)では、軽妙なGソロ弾きから次第にピアノや弦楽器がお互いに絡み合い、どれがメインとなる訳でもなく、躁鬱病のように流れていきますが、エレピの高音と弦楽器でいきなり「電気的」にもなったり、「不仲」になったりします。 ★B2 “Hugebaby” (4:43)でも、Gとエレピとチェロが網目のように絡み合いながら、盛り上がりかけたり、落ち着いたりします。 ★B3 “Chartered Flight” (6:37)は、漆黒の中からVlnが立ち現れ、エレピやチェロも出てきますが、突然、弾むんで散歩するような曲調へ。エレピソロが目立ちますが、やがて離陸していき、最後はVlnのピッキングでフェイドアウトしていきます。 普段、聴かない音楽なので、中々興味深く楽しめました。多分、サティ辺りの「家具の音楽」との関連もあるとは思いますが、A2の短い曲の連続もそれぞれの曲に工夫が凝らしてあって面白かったですし、B面の長めの曲も、表情の変化の移ろいが感じ取れて、面白かったです。特に、エレピの高音をああ言う風に弾くと、かなりエレクトリックな感じになるのが、発見でした。まだまだ、セミ・アコースティックでも新しい音楽が作れると確信出来た時代だったのかもしれませんね。まぁ「家具の音楽」と言うよりも「Obscure」と言った方がピンときます。貴方は聴きますか? A2-3 “Surface Tension (Where The Trees Meet The Sky)” https://youtu.be/e_VWTJeA3w0?si=0DDb8udV6ZmHiQVy [full album(B2を除く)] https://youtube.com/playlist?list=PLgUklsPQ_4toXsZljE4B7Kc7WhFZktD2z&si=fan-XsaHtUkMSj6v #PenguinCafeOrchestra #MusicFromThePenguinCafe #EditionsEG #PolydorRecords #ObscureRecords #FirstAlbum #1974-1976年 #日本盤 #Contemporary #ChamberMusic #Semi-Acoustic #ZOPF #PenguinCafeQuartet #SimonJeffes #SteveNye #HelenLeibmann #GavynWright #EmilyYoung #NeilRennie
Contemporary / Semi-Acoustic Editions EG / Polydor Records 不明Dr K2
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Throbbing Gristle “20 Jazz Funk Greats”
Throbbing Gristle (以下TGと表記)の名盤の一つ、ジャズでもファンクでもないアルバム”20 Jazz Funk Greats”を、今回はご紹介します。TGのアルバムの中でも、このアルバムは中々中古市場に出ず、また出ても結構高額なことが多く、私は何年も買いそびれていました。それで、去年、やっと購入できました。TGのバイオグラフィーについては、今までも紹介してきましたし、メンバーのCosey Fanni Tuttiの自叙伝なども出ていますので、そちらをご参照下さい。メンバーを一応、書いておきますと、Genesis P-Orridge (B, Vln, Vibes, Synth, Vo), Cosey Fanni Tutti (G, Synth, Cornet, Vo), Chris Carter (Roland Synth, Sequencer, Drum Machine, Vo), Peter “Sleezy” Christopherson (Tapes, Vibes, Cornet, Vo)の鉄壁の4人です。また、ジャケ写は、一見爽やかに見えますが、英国の自殺の名所(東サセックス州の南端にある通称Beachy Head)が使われています。本作品は、LPとしては、3枚目のアルバムになり、また、TGのアルバムの中では「最も聴き易い」作品とも言われています。今回の再発では、緑盤となっており、ブックレットも付いています。また、内容については、A面6曲/B面5曲となっています。それでは、各曲について紹介していきましょう。 ★A1 “20 Jazz Funk Greats” (2:51)は、如何にもTGらしいダウナーなリズムを刻む曲で、勿論、ジャズでもファンクでもないです。シンセとコルネットでとにかく憂鬱な気分にさせられます。 ★A2 “Beachy Head” (3:42)も、リズムレスで、更にダウナーな曲です。自殺する人の頭の中の諦念を見事に描写しています。 ★A3 “Still Walking” (4:56)は、パンで左右に振られたリズムマシンとノイズGやVlnの軋む音から成る曲ですが、囁く様な男女Voの絡みに反吐が出そうです。 ★A4 “Tanith” (2:20)では、ワウを掛けたBと鉄琴のフリーな絡みから成るリズムレスな曲で、地縛霊のように飛び跳ねることが出来ない。 ★A5 “Convincing People” (4:54)は、ライブでも良く演奏されている曲で、6/8拍子の独特のリズムマシンとシークエンスに、暗雲たるノイズが被さって、抑制的なGene-PのVoも冴えてます。 ★A6 “Exotica” (2:53)は、また鉄琴の演奏で、浮遊する魂がふらふらしているようなリズムレスな曲で、逆に陰鬱。 ★B1 “Hot On The Heels Of Love” (4:24)は、後のChris & Coseyの原型になる様な四つ打ちキックとシーケンスにCoseyの囁くようなVoが乗る曲で、ポップなトラックです。しかし鉄琴の音は虚ろです。 ★B2 “Persuasion” (6:36)も、ライブで良く演奏される曲で、単調なBとGene-Pの邪悪なVo、それにSleezyのテープ音やGノイズから成り、これまた鬱々としています。 ★B3 “Walkabout” (3:04)は、またもやChrisの打ち込みが冴えるシンセポップな曲で、TGってアルバムに、こう言う曲を混ぜるから困ります。 ★B4 “What A Day” (4:38)は、テープによる単調な反復リズムにGene-Pの叫び声から成る強力な曲です。憤怒の唄! ★B5 “Six Six Sixties” (2:07)は、ライブ録音と思われる粗いリズムマシンとB?G?によるノイズ、それにGene-Pの呪詛のようなVoから成る曲です。 まあ、あんまりメンタル弱っている時に聴く音楽ではないですが、それでも当時の一種の閉塞感みたいなものが詰め込まれており、しかも、B1やB3の様なハッピーエンドを伺わせる曲も混じっているのが救いですかね。本作品は、ジャケ写のように、何気ない景色/風景の中に鬱屈した薄寒い「負の何か」があるような事象を的確に掴んで、それを抽出・増幅しており、その意味ではTGのアルバムの中でも傑作なのではないでしょうか?ブックレットの軍服姿の4人はそれを差し引いても、カッコ良いですが、、、ただ、内容は良いので、2枚組とかでじっくり聴きたい一枚ではあります! https://youtu.be/EEsjrg9j2c4?si=tpBQ0eJAVSPEecf2 [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_miBdBiuGRWWq6kDf2jruN6lmf6wMDNpkg&si=ttTOlAt3CBpM6R6Z #ThrobbingGristle #20JazzFunkGreats #MuteRecords #IndustrialRecords #Reissue #Remastering #1979年 #2017年 #GreenVinyl #Industrial #Electro #Synthesizers #DrumMachine #Bass #Guitar #Tapes #GenesisP-Orridge #CoseyFanniTutti #ChrisCarter #PeterChristopherson #Sleezy
Industrial / Electro / Noise Mute Records (Industrial Records) 不明Dr K2
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Self Deconstruction “Wounds”
何故か、惹かれてしまうバンド、通称「セルコン」ことSelf Deconstruction!結成は2010年だそうです。初めて観た時は、男女のツインVoに場違いな程ロリなGと屈強なDrsの4人組で、数年前の「地獄のコミュニケーション」で男性Voが脱退するとアナウンスされた時だと思う。その前に、X(旧Twitter)を始めた頃、Kuzuha (葛葉)さんから、SPKとかの古いノイズ系のカセットを購入したことが、一番初めのコンタクトかなぁ? その後、Kuzuha (G), Kubine (Vo), Jiro (Drs)の3人組としてセルコンは活動を続けていました。私は、1度だけ、落合SoupでChris Goudreauの日本ツアーの3daysが行われた時に、対バンをしたことがありますが、凄い迫力だったと記憶しています。その後、Kubineが脱退し、MarinoがVoで加入しますが、バンドは諸事情によりバラバラになり、Kuzuhaさんだけが、セルコンの看板を背負っている形になって、現在もメン募をしているようです。まあ、そんなこんなで、Kuzuhaさんの日常をFBとかで眺めていたのですが、先日、偶々、Kuzuhaさんが誕生日を迎えられたのをFBで知って、その時に、LPが欲しいと思い、その旨を伝えたら、早速、送ってくれました。Kuzuhaさん、どうも有難うございます。こちらのレコードの発送が遅れてすいませんでした。 それで、今回、入手したアルバム”Wounds”は、単体としては2枚目に当たり、実はこの作品は、アナログ盤の出た2年前の2016年に、CDでBreak The Recordsからリリースされています。そうして、2018年にミルキークリア盤は伊のF.O.A.D. Recordsから、血液赤盤は日本のBreak The Recordsからリリースされています。メンツは、Kuzuha/葛葉 (G), Kubine (Vo), Jiro (Drs)と言うベースレスのトリオです。彼等自身が標榜しているフリースタイル・グラインドコアがたっぷり23曲(A面13曲/B面10曲)詰まっています。ほぼほぼ1分以内の短い曲なので、曲間は良く分かりません。ですので、各曲毎の紹介ではなく、アルバム全体のご紹介をしたいと思います。 A1 “Disaster” (0:38) A2 “Ain't It Fun” (0:27) A3 “Spring's Trend” (0:37) A4 “Pay Up” (0:50) A5 “Dog” (0:28) A6 “Vulture” (0:44) A7 “Our Graves” (0:48) A8 “Dear Weekend” (0:41) A9 “Malice” (0:41) A10 “Psychowhore” (0:30) A11 “Taken For Granted” (0:38) A12 “Deeper” (0:39) A13 “Not For Me” (0:33) B1 “You Deserve” (0:22) B2 “Possession” (0:27) B3 “It Was Rain” (0:14) B4 “No Savior” (0:51) B5 “The Burden” (0:35) B6 “Hazard” (0:47) B7 “Virtue” (0:55) B8 “Force Fed” (0:48) B9 “Mess” (1:29) B10 “Grace Period” (1:25) 私自身、グラインドコアをLPでちゃんと聴くのはほぼほぼ初めてなのですが、ベースレスにも関わらず、音は、結構分厚く、また、タイトな録音にもなっているのに驚きました(Gとかは一部重ねている部分もあるのかな?)。とにかく、曲の中のリフと言うかパタンが殆ど繰り返されない、それこそ1曲の中で次々にリフが繰り出され、テンポすら目まぐるしく変わる演奏は、正しく「フリースタイル」グラインドコアであると確信しました。KuzuhaさんのGのキレが凄くて、何度も聴き直してしまいました。特に、曲間と思われるところの本の一瞬が特に好みです。また、Kubineちゃんのデスヴォイスも様になっています(これって歌詞があるのかな?といつも思ってます)。録音された演奏も迫力があるのですが、これらの曲を作曲し、ライブで演奏する方が大変なのでは?と思ってしまいます。この時期のセルコンは、結構好きだったこともあって、動画はよく観てましたが、アルバムとしての体験は初めてだったので、非常に楽しめました❗️また、Kuzuhaさんには、Self Deconstructionとして活動を復活して欲しいですね! https://youtu.be/noT6f0Acr5c?si=rb9BnLM0agiN1efL [BandcampのURLも貼っておきます] https://foadrecords.bandcamp.com/album/wounds-2 [オマケ: live in Obscene Extreme Fes. 2018] https://youtu.be/aURJlHxmjyQ?si=1FCc4h-Zt89QvSQo #SelfDeconstruction #Wounds #BreakTheRecords #F.O.A.D.Records #SecondFullAlbum #Japanese #GrindCore #FreeStyleGrindCore #PowerViolence #Bassless #Kuzuha #Kubine #Jiro
Grind-Core / Power Violence Break The Records / F.O.A.D. Records 不明Dr K2
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Shi-Shonen “Harvest”
何故か、聞いたことのある名前だなあと思って、中古屋で購入したのが、Shi-Shonenのマキシ・シングル”Harvest”でした。当時は、バブルも弾けて、シャレ乙ニューウェーブは廃れていたこともあり、聴いても余りピーンと来なかったので、今回、聴き直してみることにしました。それで、先ずは、彼等のバイオグラフィーを調べてみました。元々は、戸田誠司が、中央大学在学中に、渡辺等、友田真吾らと、極東通信と言うバンドを結成し、シンセを用いた宅録テープコンテストで多数入賞し、そこへ、福原まりが1981年秋に参加しで、Shi-Shonenと改名して活動を本格的に行います。日本Columbiaのディレクター三野明洋に見出され、1983年2月21日に、日本Columbia傘下のレーベルShan-Shanより、シングル”嗚呼上々”と、本作品でもある12インチ・マキシシングル”Harvest”の同時発売でメジャー・デビューを果たしています。また、彼等は、芸能事務所アミューズに所属し、TV音楽番組”アップルシティ500”などにも出演しています。1985年には、テイチク内で細野晴臣が立ち上げたレーベルNon-Standardに移籍し、同年5月にファースト・アルバム”Singing Circuit”を、また12月には12インチシングル”Do Do Do”をリリースしていますが、1986年2月の草月ホールでのライブを最後に、渡辺と友田が脱退し、同年7月に戸田と福原の2人ユニットとして、最後のアルバム”2001年の恋人達”を発表しています。しかしながら、その福原も脱退したり、レーベルの方も活動が鈍ってきたりした為、1987年秋にバンドは消滅します。 と言うのが、Shi-Shonenの略歴となります。それで、今回は、彼等のファースト・マキシシングル”Harvest”を紹介しますが、この時のメンバーは、戸田誠司 (Vo, G, Kbd, Sax), 福原まり (Vo, Kbd), 渡辺等 (B), 友田真吾 (Drs)で、立花ハジメ (Horn), 矢口博康 (Horn), Robin Thompson (Horn), MOMO (Horn)がゲスト参加しています。それでは、各曲についてご紹介しますね。 ★A “Harvest (Long Size)” (6:28)は、Chakraをもう少しシャレ乙にしたかのような曲で、Bの存在感が凄いのは勿論、似非中華風のアレンジやゴージャスなホーンの導入も聴くことができます。福原まりがVoですね。途中で突然、シンセ主体のアンビエント調の曲にカットインしますが、また元に戻ります。 ★B1 “今天好” (4:06)は、中華風ニューウェーブなんですが、Voは戸田誠司がやっています。アコギも使って、ちょいスカのリズムも取り入れています。相変わらず、Bはブリブリしています。因みに、作詞はなかにし礼です。 ★B2 “叛乱-ロマンス-” (4:05)も、中華風ニューウェーブですが、テンポは早めで、Voは戸田誠司がやっています。この頃のニューウェーブって何としても、シンセと中華音階を結びつけ易かったのですね。リズム隊が強靭で、タイトな演奏になっていますね。 まぁ、ここら辺の後続バンドは、初期YMOの影響を拡大解釈したのかなぁと思いますね。それが良いのか悪いのか、良くは分かりませんが、個人的には、YMOは、”BGM”と”Technodelic”しか評価していない私にとっては、Shi-Shonenは、これで充分かなと思いました。この如何にも垢抜けた感じが、返って「産業ロック」に思えますね。でも、戸田誠司は一時期、Yapoosにも入っていたみたいですし、福原まりや渡辺等もソロ等で最近まで活動していたみたいなので、気になる方はチェックしてみてはどうでしょう? A “Harvest (Long Size)” https://youtu.be/OBVFRI1GFaE?si=9Weqci9NKz1X5vzC B1 “今天好” https://youtu.be/Pbh4wY7MLfA?si=kZ413ZDxMsy9yL9Z B2 “叛乱-ロマンス-” https://youtu.be/aW9fUdo7jHY?si=9ycBSm0H_LgKIh-G #Shi-Shonen #Harvest #Shan-Shan #Columbia #12inchEP #Japanese #NewWave #中華風 #SynthPop #Synthesizers #戸田誠司 #SeijiToda #まり #MariFukuhara #渡辺等 #HitoshiWatanabe #友田真吾 #ShingoTomoda #Guests #HornSection and #立花ハジメ #矢口博康 #RobinThompson #MOMO
New Wave / Synth Pop Shan-Shan / Columbia 不明Dr K2
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Killing Joke “Fire Dances”
時々、思い出すのが、Killing Jokeなのですが、私は正直、このバンドがどう言う立ち位置なのかは今だに良く分かりません。前回、Killing Jokeのバイオグラフィーはこのアルバムの直前まで書いてありますので、それで大体のことは分かると思います。少しだけ補足をしておきますと、サード・アルバム”Revelations”を出した1982年頃に、メンバー、特にJaz Coleman (Vo, Synth)は、オカルト、それもAleister Crowleyの黒魔術に心酔しており、同年2月には、ColemanはKevin "Geordie" Walker (G)を誘って、直ぐにもやってくると信じていた黙示録的終末を避ける為に、暫くアイスランドに逃亡し、Þeyrと言うバンドと一緒にNicelandなるプロジェクトをやっています。残されたYouth (B)はそのまま英国に留まっていましたが、Killing Jokeを脱退し、Paul Ferguson (Drs)と共にバンドBrilliantをやり始めます。ただ、Fergusonは、アイスランドに行き、新メンバーPaul Raven (B)と共に、新生Killing Jokeを始めます。1982年には、このメンツで、シングル”Birds Of A Feather"を、またカナダのトロントで制作した10㌅ミニ・アルバム”Ha!”をリリースしています。そうして、1983年には、本作品でもある5枚目のアルバム”Fire Dances”をリリース、そこからシングルカットされた”Let's All Go (to the Fire Dances)"もリリースし、彼等は初めてのMVを作製し、プロモーションを行っています。更に、同年10月には、アルバム未収録曲”Me or You?"も出しています。まぁ、ここら辺で辞めておきましょう。 こんな経歴で、Killing Jokeは、ポストパンクにもヘビメタにも人気があると言う特異な立ち位置のバンドであるとは分かってもらえましたか? 再掲になりますが、この5枚目のアルバム”Fire Dances”の参加メンバーは、Jaz Coleman (Vo, Synth), Kevin “Geordie” Walker (G), Paul Raven (B), Paul Ferguson (Drs, Vo)の4人組です。それでは、本作品(両面5曲づつ)の各曲を紹介してい曲ましょう。 A1 “The Gathering” (3:12)は、跳ねるようなリズム隊に、結構カッコ良い歪んだGと堂々と歌うVoが乗ってくる曲で、コーラスも間奏のGもグー! A2 “Fun & Games” (4:07)も、時計の音の直後に、跳ねるリズム隊と電流を通したようなGに、呟いたり、歌い上げたりする自在なVoが良く映える曲です。 A3 “Rejuvenation” (4:00)は、直角的なDrsと分厚いGとBから成る曲で、独特の歌い方のハキハキしたVoが迫ってくる曲ですね。 A4 “Frenzy” (3:48)も、メタリックなGに切羽詰まったようなリズム隊が追いつき、Voも生き生きしてます。ブレイクがカッコ良い! A5 “Harlequin” (3:56)は、四つ打ちっぽいキックに導かれて、太いBやGのリフが乗ってきますが、相変わらずVo(叫び声ではないのがまた良い!)に痺れます。 B1 “Feast Of Blaze” (3:34)は、またノリの良い曲で、サビでのGとBの絡みがイカしてますね。Voも良く通っています。 B2 “Song & Dance” (5:13)では、歪み気味のGのリフとVoから始まり、ドコドコしたリズム隊が挿入してきます。演奏自体は本当に上手いです!特にDrsとG! B3 “Dominator” (4:30)では、ややファンク調のリズム隊の演奏で始まり、Gは控えめで、時にKbdの不協和音が入ってきます。これはダンサブルですね。 B4 “Let's All Go (To The Fire Dances)” (3:20)は、DrsのスネアとGで始まり、直立的リズムが押し出された曲です。特に杭打ちのようなB!曲の熱量が凄い! B5 “Lust Almighty” (3:48)では、ジャングルのようなドコドコしたDrsに引き攣るGが真っ向勝負しています。 なんだろうなぁ。演奏もVoも上手いし、カッコ良いのだが、どうも心に残り難いような印象を持ちます。一つは、曲の並びに緩急が余り無いと言うこと。もっと言えば、心に残るリフとか曲の展開とかが余り無いように感じるってことです。1曲1曲は凄く良く出来ているし、演奏自体も上手いのですが、どうもアルバム単位で聴くとちょっと辛いかなぁ? それから、ColemanのKbdプレイが1曲(B3)だけしか聴こえなかったのも、今いちだったかも。そこら辺に物足りなさも感じたかなあ? しかしながら、曲自体は良く出来ていますので、好きな人には堪らないアルバムだと思いますよ❗️なので、気になる方は聴いてみては如何かな❓ B4 “Let's All Go (To The Fire Dances)” https://youtu.be/JV6ZUPp_mtQ?si=uavwi-0UYMr5syXa [full album] https://youtube.com/playlist?list=PLVpuNR2HpwPgbkAWHnQjJ1XYdjV7eDa5z&si=9mFDBPmXoc-o5vmf #KillingJoke #FireDances #EGRecords #PolydorRecords #日本盤 #5ThAlbum #PostPunk #AlternativeRock #HeavyMetal #Synthesizers #JazColeman #KevinGeordieWalker #PaulRaven #PaulFerguson
Post Punk / Alternative Rock Polydor Records (EG Records) 不明Dr K2
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招き猫カゲキ団 “第一歌曲集”
以前に、日本のインディーズ出自のバンドとして、恐らく一番成功したのが、Zeldaではないか?と言って、Zeldaのアルバムを紹介していたと思うのですが、今回は、そのZeldaのVoの高橋小夜子とBの小嶋さちほから成るスピンオフ・ユニット招き猫カゲキ団の10㌅EP”第一歌曲集”を紹介します。どこかで読んだと記憶しているのですが、レーベルのTelegraph Recordsが方向性か金銭面かで行き詰まっていた時に、このEPを出したら、何とかレーベル存続が出来て、うまくいったとのことで、正にTelegraph Recordsにとって救世主であったようです。メンバーは先述の高橋小夜子と小嶋さちほの2人ですが、このEPでは、他に、鈴木ヨーコ(G), 渡邉雅美(Drs)が参加しており、また、小山まさのり (Bell, Back-Vo), 小貫隆信 (Cymbal), 小西造次 (泣きG), 小杉均 (Hihat), 地引雄一 (オルゴール)もゲスト参加しています。曲によって演奏する楽器も代えているので、それらも含めて、各曲を紹介していきますね。 ★A1 “人形” (3:48)では、オルゴールに導かれて、やがてオムニコードの調べに乗せて、Voが静かに、そしてハキハキと歌っており、2人のコーラスワークも冴えています。 [小嶋さちほ(Vo, オムニコード), 高橋小夜子(Vo, オムニハープ)] ★A2 “砂漠のマリアンヌ” (3:42)では、民族音楽調のタムを多用したDrsとピアノに、小夜子のVoのちょい一生懸命なVoが切羽詰まって歌っていますが、サビ以降は素晴らしいアンサンブルを聴かせてくれます。 [高橋小夜子(Vo, Drs, Piano), 小嶋さちほ(B, Vo, Piano), 鈴木ヨーコ(G), 渡邉雅美 (Drs)] ★B1 “森のおくりもの” (2:20)は、アコーディオンとDrsとClarinetによるワルツで、サビのコーラス部分は秀逸です。時にファルセット気味なVoも良い塩梅! [高橋小夜子(Vo, Clarinet), 小嶋さちほ(B, Vo, オムニコード&ハープ), 鈴木ヨーコ(G, B, Vo), 渡邉雅美(Drs, B, Vo, アコーディオン)] ★B2 “幻夜” (4:43)は、落ち着いたゆったりした曲ですが、Drsとオムニコードに合わせて歌う小夜子のVoとさちほのコーラスが心地よいです。バックの演奏も良くアレンジされています。 [高橋小夜子(Vo, オムニコード), 小嶋さちほ(B, Vo, オムニコード&ハープ), 鈴木ヨーコ(G), 渡邉雅美(Drs)] 久しぶりに聴いてみたのですが、やっぱりに「歌もの」にフォーカスしている点で、内省的で感受性豊かな音楽だなぁと感心しました。このユニットが、この1枚しか録音物を残さなかったのは残念です。Zeldaとは方向性は違いますが、こう言う「遊び心」のある音楽は、大切に聴いていきたいと、改めて思いました。10㌅、45回転、全4曲入りなので、聴き終わっても、またすぐに聴きたくなりますね。耳が疲れた時には、この作品を聴いてみて下さい!また、おまけに彼女らのライブ音源も貼っておきますので、聴いてみて下さい。 [full EP] https://youtu.be/IQcXTOh7IRw?si=UjTSAYqnfbHjn-md [おまけ: Live at Four Vally on Sep. 4, 1983] https://youtu.be/iXk3ruxoZaE?si=9LGKzPSJX4rQFA1Z #招き猫カゲキ団 #第一歌曲集 #TelegraphRecords #JapaneseUnderground #Spin-OffUnit #Zelda #WorldMusic #Folk #Acoustic #歌謡 #10inchEP #高橋小夜子 #小嶋さちほ #鈴木ヨーコ #渡邉雅美 #Guests #小山まさのり #小貫隆信 #小西造次 #小杉均 #地引雄一
Post Punk / Folk / World Telegraph Records 不明Dr K2
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Sadie Sads “Angora”
私は、ここら辺の前後関係は良く知らないのですが、ちょっと何かの知識を聞き齧って、多少、興味を持ったので、当時、とりあえず買ってみた記憶はあります。そんなSadie Sadsのファースト・シングル”Angora”を今回は取り上げてみたいと思います。音は全然覚えていなかったので、今回、聴き直した訳です。先ず、Sadie Sadsについて調べてみました。Sadie Sadsは1982年に、Sad (Vo)を中心に結成され、メンバーは、Sad (Vo), Igarashi (G), Kazumi (B), Kan (Drs)で、Igarashiこと五十嵐義秀 (Yoshihide Igarashi)はこの前にはNubileに在籍していました。それで、彼等は一応、ポジ・パン(Positive Punk)に分類されるものの、やはり異端的な存在です。と言うのも、Voは創作言語による無国籍風唱法であり、また、日本のアングラ・シーンでいち早くメタル・ジャンク(又はパーカッション)の導入し、インダストリアルな硬質な音作りも特異でした。更に、ライブではスライドを用いての舞踏的な要素を取り入れており、単にポジ・パンに括れない存在だったそうです。そうして、1984年に、本作でもあるデビュー・シングル”Angora”を自主制作レーベルTelegraph Recordsの傘下のWechselbalg Syndicate (ヴェクセルバルク・シンジケート)よりリリース、翌年には、同レーベルからセカンド・シングル”Angora D.”と唯一のアルバム”Box With Little Doll”をリリースしています。その間にも、Sadie Sadsは、Auto-Mod主催のライブ企画「時の葬列」にも参加しており、その中で、ライブ企画”Bloody Valentine”での偶発的な事故による流血パフォーマンスを展開しており、今では伝説となっているようです。彼らの音楽性は徐々にダンサンブルなものへと変化していきます。そうして、1987年にはバンド名をSadsに改め、ホーンセクションを取り入れたファンク・サウンドへと変化を遂げますが、やがてバンドは終焉を迎えます。 以上がSadie Sadsのバイオグラフィーになりますが、本作でも、上記のメンバーで制作されています。プロデュースは、Auto-Modのマネージャー兼レーベルの共同創設者である宮部知彦 (Miyabe, Tomohiko)と彼等でやっています。それでは、本作の各曲をご紹介していきましょう。 ★A “Angora”では、まだメタパーは使われていないようですが、ドライブするリズム隊を含め、電線のようなGや創作言語を絞り出すように歌うVoも含めて、結構カッコ良いです。 ★B “Id”は、メタル・ジャンクのフリーな演奏とそのバックに咆哮のような音が鳴っていますが、途中から、通常のパンド演奏に変わり、トライバルなリズム隊とひたすらリフを弾き続けるGに、呪術的Voが良く映えるのですが、再び、最初のメタル・ジャンク演奏とバンド演奏が交互にカットアウト/カットインされており、興味深いです。 まぁ、A面は聴く分には、ポジ・パンと言っても、それ程的外れではないですが、個人的にはB面のメタル・ジャンク演奏とバンド演奏をポスト・プロダクションしている所に興味を持てました。私自身もメタル・ジャンク演奏はしていましたが、案外、メタル・ジャンクの音をそれっぽく録音するのは難しいんですよ。そこら辺がちょっと残念だったかな?とも思いますが、このバンドの先進性を感じることができました。今度は、LPボックス、聴いてみようかな? [full single] https://youtu.be/0VuGja8nk1g?si=Nh5lJSftxuP_eMED #SadieSads #Angora #Id #WechselbalgSyndicate #TelegraphRecords #FirstSingle #7InchSingle #1982-1985年 #JapaneseUnderground #PositivePunk #GothRock #Experimental #時の葬列 #MetalJunks #創作言語 #SlideProjector #Sad #Igarashi #Kazumi #Kan #Sads #TomohikoMiyabe
Positive Punk / Experimental Wechselbalg Syndicate / Telegraph Records 不明Dr K2