Nervous Gender “Music From Hell”

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Subterranean Recordsがまだ、米国西海岸の小レーベルであった頃に、V.A. “Live At Target”と言うコンピ・アルバムに入っていたので、初めて、Nervous Genderを知ったのでした。その時、このバンドにはまだ小学生の男児がDrs担当と言うことで驚いたものでした。まぁ当時は、米国西海岸の地下音楽、特にSubterranean Recordsなら、間違い無く買っていたので、このNervous Genderのアルバムもジャケ買いどころかレーベル買いでした。
 ここで、Nervous Genderのバイオグラフィーを書いておきます。Nervous Genderは、1978年に米国L.A.で、Gerardo Velazquez, Edward Stapleton, Phranc (本名Susan Gottliebでバイセクシャル。見た目は男性っぽい), Michael Ochoaによって結成されたエレクトロ・パンク・バンドで、当時はそのような概念が無かったので、インダストリアルとも呼ばれていました。1979年には、The GermsのドラマーDon Bollesが加入しましたが、翌年には、Phrancが脱退し、The ScreamersのPaul Roesslerが加入しています。この頃の編成でのサウンドは、先述の”Live At Target” LP/Videoで聴くことができますが、言葉通りのパンクだけではなく、初期のインダストリアルなFactrixやZ’evの変名ユニットUNS等も収められており、無調でノイジーであったので、普通のパンクバンドではないNervous Genderも受け入れてもらい易かったみたいです。また、彼等は、1980年代初頭には、SPK, Factrix, NON, Einstürzende Neubauten, Psychic TVとも対バンしています。それで、1981年に、ゲストVoにBagsのAlice Bagを迎えて、本作品でもあるファースト・フルアルバム”Music From Hell”を作製しますが、彼等はスタジオ録音をしたことがなかったそうです。アルバム・リリース後、Paul Roesslerが、Nena Hargen Bandで演奏する為に、NYCに引越し、代わりにBill Clineが加入、またDon Bollesが、45 Graveと演奏する為に脱退し、加入したのが、8歳の男児Sven Pfeifferでした。しかし、1982年には、Svenと彼の母親は強制退去させられ、2人は、ドイツに戻って暮らしています。ある音楽評論家はSvenのことを「LA音楽シーンにおける荊の棘みたいな、、、。」と評してします。その後、1980年代中期には、彼等のファンでもあったWall Of VoodooのBruce Moreland, Marc Moreland, Chas Greyが入り込んで、コラボしようとして、解散寸前までになります。それは、正にNervous Genderのギター版をやろうとしたからです。この時期、45 GraveのDinah Cancerがしばしばゲスト参加しており、彼等は、ひょっとしてChristian Death, Super Heroines, Kommunity FK, Gobsheit (Stapletonが、Patrice Reposeとやっていたサイド・プロジェクト)のようなゴス・ロックをやって、Anti Clubのようなライブハウスに出演しようとしていたように捉えられたからです。しかし、1988年に、Edward Stapletonは最後のステージに立って、Nervous Genderを脱退します。1990年初頭に、オリジナル・メンバーのGerardo VelasquezとMichael Ochoaは、長年のOchoaの協力者Joe Zinnatoで、トリオとしてNervous Genderを復活させます。このトリオで8回ライブを行い、45 GraveのPaul B. Cutlerをプロデューサーにして、Nervous Genderの最後のアルバム”American Regime"を作り始め、1991年8月26日に、CAのシルヴァーレイクのライブハウスClub A.S.S.で、Nervous Genderの最後のライブを行います。なお、翌年3月28日に、Gerardo Velasquezは、33歳の若さで他界しています。Velasquezの死後、OchoaとZinnatoは、Honeymoon KillersやHuge Killer ShipsのClaire Lawrence-Slaterをシンガーとして迎え入れて、パンクとインダストリアルとポップとグランジの混合物なアルバム”HighHeelTitWig"で作業を進めてましたが、1995年に、Zinnatoは重度の心臓発作によって、彼は音楽活動を辞めてしまいます。また。2000年からは、Edward Stapleton, Michael Ochoa, Joe Zinnatoの3人で、今までに録音してきた音源を、悪かった点を中心に全て聴き直していています。また、この頃、Edward StapletonとKarene Stapletonは、Kali’s Thugs名義でリリースしています。そして、2007年には、Stapleton, Ochoa, Zinnato, Tammy Fraserで、バンドを再構築していますが、2017年になると、StapletonとSan Diego Mod & Cal Artsにて作曲を学んでいたMatt Comeioneの2人で、再びバンドを組み直し、2021年に新録アルバム”Milking The Borg”をリリースしています。2023年には、Nervous Genderのデビュー・アルバム”Music From The Hell”の拡張版を2LPsとCDでリリースしています。
 以上が、Nervous Genderの略歴ですが、本作品”Music From Hell”には、Edward Stapleton (Synth, Vo), Gerardo Velázquez (Synth, Vo), Jesus Pagano Lozada (Synth, Vo), Patrice Repose (Lead-Vo [B1-B6]), C. Duffy (Synth, Throat Noises, Lead-Vo [B1-B6]; 本名Edward Stapleton), Bill Cline (Synth, Back-Vo), Don Bolles (E-Perc, Noises, G, [A1-A7]/ Tape Loops, Effects, Tape Manipulation [B1-B6]), Jim Bigolo (Back-Vo, Tambourine)が参加しており、プロデュースは、Gerardo VelázquezとMichael Foxが行っています。また、B1-B5は、1971年5月30日にTraetionギャラリーでのライブ音源から成ります。そして、本作品は、東芝RT-8200aポータブル・カセット・レコーダーとサンキョウSTD-1700カセット・デッキで録音されています。そして、このアルバムは、36時間ものスピンで録音とミックスダウンが行われています。また、ジャケとかWebサイトにBeelzebub Youthとの表記がありますが、これは別バンドのことでは無く、単にB面のことです。このアルバムは2515枚プレスされたとのこと。それからA2とA5は誤記されており、A2が”Alien Point Over View”で、A5が”Nothing To Hide”なので、ここでは修正しておきました。それでは、各曲についてご紹介していきましょう。

◼️Martyr Complex
★A1 “Monsters” (3:27)は、アップテンポのドカドカした生Drsと手弾きのSynth-Bに、パンキッシュなVoが乗る曲で、落ち着きの無さが良い!ヴァイオリンのようなシンセ音もあるのかな?
★A2 “Alien Point Of View” (4:05)は、ドンドンするアップテンポのキックに、ジワる手弾きのSynth-Bと悪びれているようなVoから成る曲で、バックVoもお騒がせで盛り上げています。
★A3 “Cardinal Newman” (1:46)でも、性急なビートと手弾きSynth-Bに、ヴァイオリンのような上物シンセと2人のVoが捲し立てる!捲し立てる!
★A4 “Fat Cow” (2:36)では、バタバタしたDrsと脳に直接響くようなシンセに、Voとコーラスがまた良くて、上物のシンセがキュルキュルしていて結構カッコ良い。
★A5 “Nothing To Hide” (2:41)では、悪びれたリフを弾くSynth-Bと早口Voは、ポップ・パンクにも聴こえますが、そこはシンセ・バンドですね、変なアレンジを施しています。
★A6 “People Like You” (2:40)は、ヘンテコなリズムに高音を強調したSynth-Bとまたもや早口Voが乗る曲で、間奏ではシンセ同士が打つかり合います。
★A7 “Regress For You” (3:40)は、スローで怪しい雰囲気で始まり、のっそりと進む中で、ダルなVoとちょっと延長したコーラスワークが如何にも米国人っぽさを感じます。後半にはシンセによるリズムも出てきます。

◼️Beelzebub Youth
★B1 “Christian Lovers” (4:45)は、何となくアラビックな旋律のシンセとユニゾンのVoが不気味に迫ってくる曲で、ベル音がリズム代わりで、バックでテープ音を流しています。
★B2 “Exorcism” (2:10)は、ウニョウニョしたシンセと歪んだシンセと奥張ったキックに、叫ぶ女Voと語り口の男性Voが段々とグシャグシャに。最後はインストが続いて終わります。
★B3 “Bathroom Sluts” (2:28)は、B2の続きのようなシンセ音に、呪文のような男女のVoが延々と続けられ、最後にシンセが暴れます。更に最後に喘ぎ声が、、、。
★B4 “Pie On A Ledge” (3:23)は、Synth-Bよるパルス音が延々と続く中、男性Voが諭すように淡々と教義を吐き続け、SE的電子音も飛び回ります。
★B5 “Push Push Push ” (1:56)は、リズムマシンのリズムに合わせて、女性Voが、初めはタイトルを鼓舞し、その内歌詞を投げ捨て続けます。
★B6 “Alice's Song” (0:58)では、珍しくシーケンサーとドラムマシンに、優雅なシンセ音と男性コーラスと女性Voが乗っかる「欧州的」な小曲で、締めます。

 この時代だと、既にシーケンサーは販売されていたの思うのですが、頑なにシーケンサーを避けてますね。なので手弾きになる訳ですが、その分、ノン・リズミックになってしまいますが、そこは、Nervous Gender!シンセでの参加人数を増やすことで、カバーしていのではないかな? それにしても、米国西海岸のこう言うシンセパンクとかインダストリアルは、編成やアレンジが変なものが多いですね。だからこそ、発掘するのは面白いのですが、、、まぁ一言て言うと「いびつ」とか「ダサい」なんですけれどもね。興味のある方はここら辺から入ると良いでしょう!

https://youtu.be/BRZ7nTTLP1s?si=GHqaMhl8IXebBmhh

[Nervous Genderのライブ”Regress For You (1981)]
https://youtu.be/cPNq-DMsWQQ?si=9MYlwYiC_nOk0thA

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