Fad Gadget “Gag”

いよいよ、登場です。Fad Gadget ❗️このアーティスト(ユニット名？)はテクノの文脈では知っている方は多いと思いますが、英国ニューウェーブの文脈では今一つよく分からない方もいらっしゃると思います。本名はFrank Tovey、世界で一番最初にMuteと契約したアーティストで、４枚のアルバムをMuteから出しています。幼少期から宅録の真似事をしていた彼は、仕事を転々としながら、安いエレピとKorgのシンセを買い、それで作ったデモテープをMuteのDaniel Millerに送ります。その結果、彼はMuteと契約しますが、本格的なスタジオを使ったことのない彼は、Daniel氏の助言に従い、代表曲”Back to Nature”を録音。これが英国インディー・チャートでヒットします。その後も、ARP 2000などのシンセを譲り受け、所謂、エレ・ポップを作っていきます。その後のアルバムではセルフ・プロデュースしています。ライブは、彼にとって重要であったようで、キチンとしたコンセプトの元にヘルプのメンバーをバックに行われますが、テーブルの上で踊りまくったり、アンプの上によじ登ったりして、結構、激しいアクションと奇抜なステージ衣装(本作のジャケ写のようにタールと鳥の羽根を塗りたくった服など)から成るので、エレポップ界の”Dr. Who”とも呼ばれてました。３枚目のアルバムから、彼は当時、高嶺の花だったRoland MC-4 (YMOも使ってましたね)を使うようになります。そして本作品になりますが、ここで彼は大きな転機を迎えます。一つは、このアルバムはいつものロンドンのBlackwing Studioではなく、独逸ベルリンのHansa Tonstudioで録音されたこと、もう一つは、生楽器を大々的に導入したこと、そして更に、Gareth Jonesと共同プロデュースしたことです。本作品のメンバーは、Frank Tovey (Vo)に加えて、Dave Simmons (Piano, Synth, Organ, Celeste, Tuned Bottles, Marimba), Nicholas Cash (Drs, Perc), David Rodger (Double B, G, Bass-synth), Joni Sackett (Vo, Viola), Barbara Frost (Vo), Morgan Tovey-Frost (Vo)から成り、ゲストとしてThe Birthday PartyのRowland S. Howard (G)を招いています。また、ベルリン滞在中に、Einstürzende Neubauten (EN)にライブ・サポートしてもらったのですが、ENのメタパーの音がすっかり気に入ってしまい、AkaiのサンプラーにNEのメタパー音を熱心に取り入れたとの事です。また、それを活かし切れるプロデューサーとしてGareth Jones氏が選ばれたらしいです。そうして、本アルバムが完成する訳ですが、子供の頃から心臓が悪かったFadは2002年４月３日に45才と言う若さで心不全によって他界してしまいます。本作品はそうした変遷から生まれた極上のポップ・アルバムであり、既存の枠からはみ出そうとした彼の意欲作だと確信します。日本では一部のリスナー以外には余り知られていないアーティストですが、彼の45年間が詰まった傑作だと思いますので、是非皆さんも聴いて下さい。

本作品はYouTubeに上がっていませんので、個々の曲とライブ曲を貼っておきます。
“Collapsing New People”
https://youtu.be/ypINKMapdE0

“Jump” live version
https://youtu.be/VVDVlZukwRA

“One Man’s Meat”
https://youtu.be/Chg3Bej3z20

“Live at SAMA festival”
https://youtu.be/oEW5na6wdbU

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