局方薬品ラベルのカラー広告@二十世紀初頭の医療器械カタログ

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当時の有力医療器械ディーラーの取扱商品カタログ巻末に載っている、印刷見本を兼ねたレディメイド薬品ラベルの広告。上から毒薬、劇薬、普通薬を示していて、見本に使われている薬品は「昇汞〈シヤウコウ(=しょうこう)〉(=塩化第二水銀、水で稀釈して手指消毒などに用いられたが、あまりに強い毒性のため今では使われなくなった)」「石炭酸(=フェノール、これも消毒薬で今も局方にあるが、結構危ない薬品)」「單寧酸〈タンニンサン〉(収斂薬で下痢止めなどに使う)」。
なおご参考までに、消毒薬の歴史については白石正「消毒薬の適正使用—今昔物語—」(@『環境感染誌』第31巻第4号)がわかりやすくまとめられている。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsei/31/4/31_16RA03/_pdf
簡潔鮮明でひと目で中身がわかる、予め日本薬局方に基づく薬品名が刷り込まれたラベルは医療業界の大歓迎を受け、真似っこ商品が次々と売り出されるようになったのだが、先に取り上げた『調劑術講本』の著者小林九一と薬種商の子が創業した横浜の印刷業者大川印刷所とが組んで拵えたこの『大川藥名牋〈やくめいせん〉』がオリジナルのようだ。
西洋のものを模倣してはいるが、日本語名の方には独特の雰囲気ある隷書体を採用するなど、そのデザインセンスの恰好よさは今でも古くささを感じさせない。
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