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- 100年ばかり前のカボチャ品種@大正前期の種子絵袋見本帖
100年ばかり前のカボチャ品種@大正前期の種子絵袋見本帖
ハロウィンに冬至、と、この季節はカボチャがしばしば話題にのぼるころ合い。
ということで、だいぶ傷んでいるのでここ何日か分解修繕に取り組んでいる種子袋見本帖のうち春蒔き野菜のものの中から、カボチャのところをいくつか拾ってご覧に入れるとしよう。
刊記は何もないので断言はできないが、
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☆マルに「S」の印がついていること
☆明治末に滅んだ「淸國」を冠した品種名のものが複数含まれていること
☆発芽率データが載っていないこと
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からして、大正前期から種子の国内販売を始められている老舗種苗会社「サカタのタネ」の前身企業「坂田農園」のものではないかと推定している。
(2023年8月23日追記:中田カボチャ氏にコメント欄にてご教示いただいたところでは、マル「S」は「昇文堂絵袋」を指す由。)
2013年の創立100周年を記念して開設されたという同社特設サイトの「サカタのタネ歴史物語」
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サカタのタネ歴史物語|サカタのタネ 100周年記念特設サイト PASSION in Seed 100 years
https://www.sakata100th.jp/story/01/
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によれば、「坂田農園」として創業して4年目の大正5年(1916年)に種子の販売を開始、大正10年(1921年)ごろに国内民間企業としては初の発芽試験室を設けてからは種子袋に「発芽率○○%」と書かれるようになった、ということだから、この見本帖に綴じ込まれている絵袋はその間のもの、ということになる。
袋に仕立てた際に裏側になる右手の解説文が文語体、という古風さからしても、大正期の初めごろのもの、という推測は腑に落ちるとおもう。
今日、お店などでは見かけないようなものもあるが、品種改良は絶え間なく続けられているから、とうの昔に消えてしまったものも数多くあるにちがいない。ここに掲げたうちには、家畜飼料用のものも含まれている。「ポンキン」というのはもちろん、英語の 'PUMPKIN' が訛った呼び名だろう。
栽培品種の多くは、普通の植物図鑑にはほとんど載っていない。しかし、戦前の園芸商品カタログは表紙以外モノクロ印刷なのが常で、大半はどのような色味だったのかはわからない。そういう点で、美麗な石版多色刷り図版の古い種子絵袋見本帖は、その当時の「園芸品種図鑑」の趣きがある。
中田カボチャ
2023/08/22失礼します。とても貴重なコレクションですね!
この丸にSの字の絵袋は、東京の昇文堂絵袋(頭文字をとってS)が製造したものですね。
年代は推定し難い所ですが、もし他の南瓜に「錦甘露」が載っていましたらおそらく昭和7年以降に出版されたものとみて宜しいかと思います。
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図版研レトロ図版博物館
2023/08/23 - 編集済み中田カボチャ様:ご教示ありがとうございます✨
発行元については調べがつきませんでしたが、なるほど絵袋の会社の荷印でしたか。
なおこの見本帖に入っている南瓜の品種は、縮緬・早生チリメン・早生黒皮・甘栗(皮の赤いものと青いもの二種)・菊座大・備前・會津黒皮・白皮砂糖(尖頭のものと円いもの二種)・デリシヤス・ハッバード・バナヽ・テーブルクヰン・スヰートポテート・十六貫メ胡瓜・西京・二重ポンキン・大ポンキンの19種類のようです。
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中田カボチャ
2023/08/23何れも今となっては貴重な品種ばかりですね!
こちらこそ丁寧に教えて頂き有難うございます。
蛇足ですが、昇文堂絵袋は東京にあった為、こちら北陸では余り見かける事が無いです。添付の写真は戦後おそらく60年代に用いられていた昇文堂さんのキュウリの袋で、マークに沿ってまるえすと書いてあります。東の昇文堂さんであればは西は京都の丸種絵袋の二大勢力と言った所でございます。
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図版研レトロ図版博物館
2023/08/23わざわざ写真をお示しくださり、また追加情報も頂戴しありがとうございます。たしかに、このマル「S」の商標は、当方架蔵のものと同じようですね。
種袋の彩色図版は、かつて作られていたものの今では見られなくなった品種の姿を識ることができる数少ない資料のひとつとおもいますが、見本帖ではそれがある程度まとまったカタチの、一種の図鑑としての役割をも果たせそうな気もします。
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