牧草のいろいろ@明治の栽培教科書

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明治になるまでの日本では、牛や馬などの大型の家畜は主に労働力として、また農作物の肥料原料供給源として小規模に繁殖されていて、西洋食文化が入ってきて食肉や乳製品などをもとめる人々がふえてくるまでは、その食糧としての牧草が注目されることもまずなかったろう。しかし、おいしい肉や乳などを常に大量に供給する必要に迫られると、「その辺の草でも喰わせておけ」というわけにはいかなくなる。
そうしたことから、農作物栽培のやり方を教える教育現場でもこうした牧草にはどのような種類があるか、その特徴や育てる際の注意すべき事柄は、といった情報がもとめられるようになった。とはいえ、農業全体からすれば牧畜用植物について識る必要のある農家人口はそれほど多くなかっただろうから、ここに紹介したようないろいろな牧草向きの草の図版は、農作物のうちでも割と珍しい部類に入るかとおもう。
一枚目から順に、「オホアハガヘリ或いはチモシー」「カモガヤ或いはオーチャード」「コヌカグサ或いはレッドトップ」「メードウ、フエスキュー」(=メドウフェスク)「ペレニアル、ライ、グラス」「トール、オート、グラス」「ナガハグサ或いはチンタッキー、ブルー、グラス」(=ケンタッキーブルーグラス)「ルーサン」(=アルファルファ)。ルーサンはマメ科、ほかはイネ科で、いずれも外来植物だが、オオアワガエリやカモガヤなどは今や牧草というよりも、イネ科花粉症の原因としてより身近になってしまったかもしれない。
なおこのほかに、図版はないが「ジョンソン、グラス」「クリーピング、ベント、グラス」「スウヰート、センテッド、バーナル、グラス」「赤ツメグサ或いはレッド、クローバー」「白ツメグサ或いはホワイト、クローバー」「セインフォイン」「黃及白メリロット」などが紹介されている。

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