Blässe/EKG/Roter Stern Belgrad “Massa”

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レコード棚を漁っていて、掘り出し物を見つけてしまいました。NDW初期にカセットレーベル兼店舗として活動していたKlar! 80/Tapes Klar!が出した、Blässe (ブレッセ), EKG (エー・ケー・ゲー), Roter Stern Belgrad (ローター・ステルン・ベルグラード)の12㌅ミニ・アルバム3枚組段ボール入りと言う、大変なブツ”Massa”です。と言ってもよく分からないかもしれませんが、Blässeは、NDW界のMalcom MacLarenとも言われるXao Seffcheque (クサオ・ゼフチェーク)が組んでいたバンドで、メンバーには、初期Die Kruppsにも加入するEva-Maria Gößling (エファ・マリア・ゲスリンク)もいた訳で、何気に重要なバンドなんです。それでは、それぞれのバンドについて、少し紹介しておきたいと思います。
 先ず、Blässeは、Xao Seffcheque (Drs, Synth, Piano), Brigitte Bühler (G), Eva-Maria Gößling (Sax)から成るジャジーな雰囲気のトリオですが、ここでは、Die Kruppsに加入するBernward Malaka (B)も参加しています。
 EKGは、Kastner, Medrich, Stoya, Syniugaから成るバンドらしいですが、実は、KastnerことBernd KastnerとSyniugaことSiegfried Michail Syniugaが在籍しており、後のStrafe Für Rebellion (シュトラーフェ・フュール・レベリオン)となり、Staalplaat等から数多くのアルバムを出していくことになります。1990年代半ばに一旦自然消滅しますが、Strafe FRとして、2014年半ばにシーンに復活しています。なお、本作品では、D1とD2にはF. Eltner (Sax)が、D2にはRalf (Vo)がゲスト参加しています。
 そして、Roter Stern Belgradは、Rainer Rabowski (ライナー・ラボヴスキー)のソロユニットなんですが、実は、この人物がKlar! 80レーベルの主催者なんです。と言うことは、この3枚組を仕組んだ張本人はRabowskiかもしれませんね。なお、MutterfunkのAlexがE1でDrsで、E2とF1でミックスを、またE2にはChary Morrow(Vo)も参加しています。
 と言う訳で、各バンドの各曲について紹介していきたいと思います。

◼️LP1: Blässe
★A1 “Zitteraal” (2:45)は、狂ったようなNo Waveジャスですね。リズム隊はまだマシですが、Gが狂っており、Lounge Lizardsより酷い(褒め言葉です)!
★A2 “Bora” (4:41)は、複数のDrsとジャズ・スケールのBに、自在なSaxとMars調のGが暴れる痛快な曲です。
★A3 “No Oberbilk” (2:13)も、シンコペーションの効いたジャジーなBとDrsに、これまた自在なSaxが、無調GとPianoとせめぎ合っている良曲です。
★B1 “De-Montage” (3:28)では、ドコドコしたタム多用のDrsから始まり、そこにフリーなGと多重化Saxが雰囲気たっぷりに絡んできます。その様はスリリングです!
★B2 “Ready Made” (3:08)は、空間を切り刻むような刃物のようなGを中心に、ゴリゴリに刻むBが絡んでおり、その有り様だけで、イってしまいそうです。バックに薄っすらシンセも!
★B3 “Blaue Orange” (2:10)は、DrsとGとSaxから成る無調アンサンブルですが、どうもダブ処理してあるようです。シンセも挿入され、暴れまくっている所が何とも独逸的。

◼️LP2: EKG
C1 “Liebeslied” (3:56)は、重く引き摺るような単調なBとDrsに、地獄の底のようなVoとフリーキーなGから成る曲ですが、バックにシンセ持続音も聴取できますし、後半では囁くようなVoも!
★C2 “Niemand Ist Sieger” (2:41)は、いきなり張り上げた声で始まり、単調なビートを刻むリズム隊に、相変わらずフリーキーなGと呪文のような複数人によるVoが乗ってきます。
★C3 “Muscheln/Schnecken” (2:23)は、シンセのLFO音に、呟くような念仏Voから成る曲で、ガラス瓶PercやDrs、それにテープ音も聴こえてきます。
★D1 “Immer” (5:30)は、淡々と引き続けるBを中心に、テープ音や突発的Vo/ヴォイス、不明なPerc/メタパー、シンセ音/オルガン音などか混ぜられた、「何かいけない混合物」のような曲(ミサ)になっています。後半ではジャジーなSaxも挿入されます。
★D2 “24 Bilder” (3:19)では、痙攣するGとテープ操作から、いきなり不恰好なビートを刻むDrsが始まり、更に意味不明の言語によるVoとジャジーなSaxな無調Gも加わります。

◼️LP3: Roter Stern Belgrad
★E1 “Wegwerfliebling” (5:27)は、蠢くような電子音にDrsが加わりビートが生成され、そこに不明瞭な変調VoやシンセのSE音等の色んな音が随時追加されていく曲で、まるでタントラのようです。
★E2 “Abend Stern Chant” (5:21)は、クリスマスの鈴のような音で始まり、地下に蠢くBと意味不明な合言葉的Vo及び様々なPerc音やそのループ等が重積していく曲で、何か「邪神への祈り」のようです。最後、音量が増すので、ビクッとなります。
★F1 “Afars & Issas” (7:20)は、この3枚組の中で唯一のシーケンサーとドラムマシンを使った曲で、民族音楽調のトランス的ドラムパタンに、不明な持続音がゆっくりと挿入され、更にカラスの鳴き声やPercの打撃音や摩擦音等も加わり、ドラムマシンにはダブ処理もされたりしています。都市の民族音楽!

 久しぶりに聴きましたが、個人的にはかなり良かったです。どのバンドも未成熟かつ未整理で、だからこそアイデア満載の音楽がそれぞれの盤にパックされている感じがしました。多分、今では、本作品の現物は入手困難かとは思いますが、実験的な音楽をやりたい方や興味のある方には、是非是非、聴いてもらいたい作品だと思います。それぞれのバンドの共通点とか相違点なんかを聴き比べるのも面白いですし、何より、彼等が「さぁ、これから新しい音楽を作るぞ」という気概が見えて、頼もしいとすら思ってしまいます。なので、中古を見つけたら、即ゲットです!

https://youtu.be/DUMY5HOILo0?si=3Oi4ovIGXjfKNHM0Times

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