LP2: MDK / Din A Testbild in V.A. “German Punk & Wave 1978-1984 vol.1”

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続いて、”German Punk & Wave 1978-1984 vol.1”のLP2をご紹介します。今回は、C面がMDK、D面がDin A Testbildとなります。
それで、C面のMDKですが、正式なバンド名は、Magmaのアルバム”Mekanïk Destruktïẁ Kommandöh”から取られたMekanik Destruektiw Komandoe (メカニク・ディストラクティヴ・コマンドー)なんです。メンバーは、Uli Radike (Drs; ウリ・ラディケ), Stephan Schwietzke (Sax; シュテファン・シユヴィーツケ), Alexander Hacke (G; 後にEinstrüzende Neubautenに加入;アレクサンダー・ハッケ), Ze-Thai (B; ツェ・タイ), Volker Hauptvogel (Vo; フォルカー・ハウプトフォーゲル)の5人組です。その前進バンドVollgasは、Volker HauptvogelとEdgar Domin(エドガー・ドミン)によって結成されており、元々、この2人は、クロイツベルクっ子から成るFront-Theaterと言う演劇組織で、Olaf Wried (Ades Zabel)と一緒に様々な作品を作っていたのですが、2011年出版のVolker Hauptvogel著書“Fleischer”によると、ロンドンから届いた数々のパンクロックのシングルを聴いて、ヤラれてしまい、キッパリ演劇活動を辞めて、1977年初夏に、Vollgas(ファルガス)を結成。1978年に伝説のベルリンのクラブSO36で初めてライブをやっています。その時には、裸や武装した女性と共に、ステージでバイクに乗り回すと言うモーターサイクル・パンクなライブをやっていたとか。そして、1978年にはVollgasは終わり、そして1979年に、MDKとVollgasのスプリット・カセットを自主制作で出しています。MDKは、1980年に単独カセット作品”Der Weg Zum Frieden”(この時のメンバーは、FroことVolker Hauptvogel [Vo], Edger Domin [B], KarstenことCarsten Brückner [G], Iane Rickes [Drs]ですが、MDK’81としては、Edger Domin [B], UliことUli Radike [Drs], AlexことAlexander Hacke [G]となっています)をリリース、翌年には、ZickZackより初のLP “Live! (Die Kriegserklärung)”とシングル”Rohe Gewalt / Rhytmus Der Musik (Live)”で正式にデビューしています。この時のメンバーが先述のメンバーです(因みにZe-Thaiは、Edger Dominの偽名です)。1984年に、カセット作品”MDK Berlin 84”とシングル”Der Liebe Auf Der Spur”を出すまでの間に、多量のライブパフォーマンス、チラシ、ファンジン、映画、ビデオ、カセット、本、ディスク等を作り出していますが、バラバラになってしまい、全容は不明です。彼等は、”Spass muss sein (スパス・ムス・ザイン;「楽しくなけりゃならない」)”というスローガンを掲げ、1983 年の米国ツアーまで、メンバーをほとんど変えずに欧州をずっとツアーしており、Ton Steine Scherben (1970年結成で、初めて独逸語で歌ったバンド; トン・シュタイネ・シェルベン)の唯一の正当な後継者として評価されています。その後、1994年に、バンドは一旦解散状態となりますが、2017年に、突如、新作アルバム”Manifestation”をリリースしますが、オリジナルメンバーはVolker Hauptvogelだけです。本作品C面には、基本メンバーとして、Volker Hauptvogel (Vo, Metallophone, Tonewood, 自動車, 電話), Stefan Schwietzke (Sax, 大きな笑顔), Edgar Domin (Earth-B, Heaven-B, ÜZ), Uli Radtke (Drs, Oil Change, レバーのソーセージ), Alexander Hacke (G, Korg Synth, Drum-Synth), Geore Hampton (lead-G, チューナー), LianeことIane Rickes (Drs, ロッカーの女), Riff La Roche (女性パート, 万能), Carsten Brucker (heavy-G, タバコ, チェックのジャケット), Gert Rudschuck (rhythm-G), Angelo Plate (エンジニア, 振動), Frank Osterland (Fretless-B, エンジニア)が参加していますが、ゲストとして、Schnaffte (Sax, サポートソックス), Nina Hagen (Back-Vo), Axel Treubrodt (速いDrsとカウント)も参加しています。本作のスタジオ録音は、クロイツベルクのMusicLabで、Harris Jonesによって行われています。現在は、Stephan Schwietzkeは、バーデンで沢山の子供達と共に暮らして音楽を教えており、Edgar Dominは、自身の記念碑的作品作りに勤しんでおり、Uli Radtkeは他界し、皆既日蝕に合わせて埋葬されたそうです。Volker Hauptvogelは、先述のようにメインVoをやっています。
 次に、D面のDin A Testbild (ディン・ア・テストビルト)ですが、以前にも単独作品”Programm”シリーズを紹介していますので、詳細はそちらをご参考にして下さい。ここでは、簡単に紹介しておきます。Din A Testbildは、Mark Eins (マーク・アインズ), Gudrun Gut (グドルン・グート), Nutty Norman (ナッティ・ノーマン), Genee Romee (ゲニー・ロミー)によって、1978年で西ベルリンで結成されています。元々のコンセプトは、西ベルリンの表現主義的前衛音楽と後にはテクノ・ウェーブに秘められた突出力の一つとして考えられていました。そして、Din A Testbildには、長年に渡る数多くの参加者(その中にはKraus Schulzeもいます)がいますが、2018年時点では、Din A Testbildのメンバーは、Mark EinsとTom Paschke(トム・パシュケ)のデュオになっています。本作品D面には、1978/1979年に初期のベルリンでのスタジオ録音の未発表バージョン(D2-D4)と1980年5月7日のFrözでのライブ曲(D5)及び1980年のアルバム“Programm 1”収録曲(D1)がコンパイルされています。彼等の特徴は、単に英国パンクをそのまま取り入れた訳ではなく、デジタル・パンクとも言われる、独自の西ベルリンの音楽を作り上げた点です。そして、Din A Testbildは、常にベルリンの地下音楽に拘っており、それと共に音楽性も変化し、所謂「ベルリンの電子実験/前衛音楽」を体現してきたと言えます。それは、彼等がベルリンと言う「場」を愛してきたからでしょう。特に、Din A Testbildのライブ音源は殆ど出回っていないので、大変貴重な音源ですね。
 と言う訳で、独逸独自の出発点となったMDKとDin A Testbildの各曲を紹介していきましょう。

VOD 82.2 - MDK / Din A Testbild
◼️Side C: MDK
★C1 “Spass Muss Sein” (3:21)は、パンクの性急さを持ちながらも、既にポストパンク的な曲です。がなるVoもそうですが、エフェクト掛けたりする所がポストパンク的です。薄っすらSaxらしき音も聴取できます。
★C2 “Der Tag Schlägt Zu” (3:37)は、針金のようなGのリフに導かれる、割とミニマルな曲で、Saxがムーディーかつフリーキーで興味深いです。
★C3 “Berlin” (5:34)は、ムーディーなSaxのイントロから一転、フリーキーなSaxとがなり気味の力強いVoと独特のリズムが特徴の曲で、Gもフリーキーになってきます。彼等のテーマソングなのでしょうか?
★C4 “Das Tier In Mir” (3:52)は、エフェクトを掛けた木琴がコミカルな曲ですが、間奏から入るSE音やGもかなりメチャクチャでカッコ良いです。Voの下品さも丁度良い塩梅です。
★C5 “What Music Needs” (2:50)は、強靭なリズムに乗って、揃って歌う男女のツインVoとブローするSaxが何とも爽快な曲で、ファズGのリフもカッコ良いです。
★C6 “Alles Was Ich Geben Kann” (4:06)は、キューバン・リズムが何ともダンサブルな曲で、Saxも吹きまくっています。Voのがなり声がミスマッチで面白い!
★C7 “Mir Wird Heiss” (5:47)は、違うVoなの方なのかな?ラテン・ファンク調の曲なのですが、延々と踊り続けられそうな勢いをビンビン感じます。段々、音やVoが混在してくると、リオのカーニバルを想起させられますし、既にダブ的Drsも聴取出来ます。

◼️Side D: Din A Testbild
★ D1 “She's So Nice” (5:08)は、単調なリズムマシンが流れる中、無関係に演奏録音や違うリズムマシンや憂鬱なシンセ等が挿入される曲で、明らかに音楽のコラージュ/ダダ的手法を取り入れています。
★D2 “Horseman” (5:10)は、特徴的なシーケンスにバンブードラムのようなPercとエフェクトを掛けたVoが歌う曲です。歌詞からすると、こちらが”She’s So Nice”ではないでしょうか?
★D3 “Revolution” (5:23)では、ディレイを掛けたドラムマシンをバックに、Mark Einsがゴスく歌っており、その声もループしたりします。良く聴くとBもシンプルなリフを刻んでいます。
★D4 “Rock N Roll Circuit” (6:03)は、ラジカセ一発録りのような音質で、歪んだGをバックにロックスターよろしく歌っている曲で、声も裏返ったり、怒鳴ったりしています。
★D5 “Summer Of The Bourgoise / Tötet Die Bourgeosie” (7:47)では、出だしこそテクノポップっぽいですが、Drsが入ってくると一気にロックっぽくなり、パンキッシュなVoと弾きまくられるGに熱くなります。やはりライブ音源は違います!

 しかしながら、LP1からLP2へと移ると、いきなりUKパンクから、仏Magmaフォロワーを経て、NDW的な音楽に変わってしまい、これらを一つのコンピにして収録するのも如何なものかとも思われますが、ここら辺がVinyl On Demandらしいと言うか、西ベルリンらしいと言うか、当時は何でもありであったことを如実に示しているようにも思えます。そんなことを踏まえて、聴いてみると、このボックスセットの制作意図が見えてくるようにも思います。ただ、D1とD2の曲名間違い等はやはりVinyl On Demandらしいとは思いますが(自分も経験あり)。MDKも12インチかLPを持っていたと思うのですが、その時は特に印象には残ってなかったのです。なので、久しぶりに聴いて、何となく独のポストパンク的な位置付けだったのだなあと思います。一方、Din A Testbildに関しては、以前にも聴いていましたが、独逸らしい実験ポップで、印象は変わらなかったです。ただD5のライブ音源は躍動感もあって、非常に貴重な音源だと思いました。皆さんはどちらが好きですか?

C1 “Spass Muss Sein” (3:21)
https://youtu.be/UdFntnKtyhc?si=ohXAE4k5gEqII4e8

C2 “Der Tag Schlägt Zu” (3:37)
https://youtu.be/Fq8t5ZKTphM?si=GSqfYdPkBYBHxlHe

C3 “Berlin” (5:34)
https://youtu.be/llviLN_o8q4?si=QrizIWQw-2JpT2z-

C5 “What Music Needs” (2:50)
https://youtu.be/KTXbHZhpsxA?si=DS0Qt_2_b3xPfFdl

D1 “She's So Nice” (5:08)
https://youtu.be/_kguTAmeIJ8?si=XNJPa7Uais3kWeVz

D3 “Revolution” (5:23)
https://youtu.be/Xan2Ix241Zw?si=uHiEXjFucvnufNTM

D4 “Rock N Roll Circuit” (6:03)
https://youtu.be/3qdZX2W3wtE?si=FB3uw-W2osPIoICP

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