Cabaret Voltaire “Hai !”

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発掘しました!CabsことCabaret Voltaireの初来日の模様を収めたライブ盤”Hai !(唯)”です。実は、私は、当時、Cabsか来日するのを楽しみにしていたのですが、Chris Watsonか脱退して、代わりにドラマーが加入したと聞いて、なんだか拍子抜けして、観に行きませんでしたし、その時のライブ盤である本作品もリアルタイムでは買ってないです。それで、随分後になってから、まあライブ盤も聴いてみようかなと思い直して、購入したと言う経緯があります。Cabsのバイオグラフィーは余りちゃんと書いていませんでしたので、少し詳細に書いておきます。Cabsは、1973年に、英国Sheffieldにて、Stephen Mallinder, Richard H. Kirk, Chris Watsonによって結成された実験的音楽バンドてす。バンド名は、チューリッヒにあった初期ダダイストの集まっていたサロンから取られています。それで、元々は、1970年代初期に、Watsonが、楽器以外の物で音楽が作れないか?と言うBrian Enoに触発されて、電子機器を用いて音の実験をやっていました。その頃、彼は電信電話技師として働いており、テープ・ループを使ったり、カスタム・メイドのオシレーターを購入したりしていました。その時に、Enoの信奉者であったKirkと知り合いになります。その内、Watsonはテクノロジーと音楽を結びつけるのに、サウンド・コラージュやその他の音素材を使ったテープ・ループを作り出すようになります。一方、Kirkはクラリネットやギターと言う古典的楽器を始めます。1973年末に、彼等はKirkの友人のMallinderをヴォーカルとベースで誘い、一緒にセッションと言う実験を行っています。これらの音源は、Industrial Recordsのカセット”1974-1976”(1980年作)や後になってMuteの3枚組CD”Methodology '74/'78: The Attic Tapes”(2002年作)として世に出ています。その内、Cabsは、ライブもやり始め、Joy Divisionと料金を折半したりしていますが、兎に角、普通の演奏は全然やっていませんし、寧ろ挑発的でした。彼等はSheffieldの色んな場所で、そこの環境音を録音し、それらを電子変調させて、それを公衆トイレや街の雑踏に向けて、車の上に詰んだスピーカーから流したりしており、ステージでもパンクスよりパンク的な態度でしたので、1975年5月のライブでは、観客とバンドの間で乱闘が起きて、Mallinderは背骨に大怪我をして入院する羽目にもなっています。しかし、その後、SheffieldのファンジンGunrubberで評価されるまでになります。その後、1977年に、Watsonは、バンド自身の録音スタジオWestern WorksをPortobello通りのビルの2階に設置します。ここは単にスタジオと言うだけでなく、Shieffieldのシーンの重要なスポットとしても使われています(Clock DVA, The Human League, New Orderもここを使っています)。1978年になると、CabsはRough Tradeと契約を結びます。Factory RecordsやIndustrial Recordsからのオファーもありましたが、アフターケアを考慮して、Rough Tradeと契約します。それで、Cabsは、実験的なEP“Extended Play”や名曲シングル”"Nag Nag Nag"を作製、1980年には名作”Three Mantras”とアルバム”The Voice of America”を、1981年にもアルバム”Red Mecca”をリリースしています。これらのレコードは音楽誌でも高評価を受けています。しかしながら、1981年に、Watsonは、Tyne Tees TVでサウンド・エンジニアとして働く為に、バンドを脱退します。その後、彼はAndrew M. McKenzieとHafler Trioを結成し、その後はソロで活動しています。Cabsの方は、1981年6月25日に、以前に録音した曲が、BBCのJohn Peel Sessionで放送されています。そして、この頃、Cabsは、メジャーレーベルのサポート無しで、欧州、日本、米国へのツアーを行なっており、日本でのライブを収録したライブアルバムで、本作品でもある”Hai!”を1982年にリリースしています。この後、Cabsはよりコマーシャルな方向に行き、米国ダンス音楽のプロデューサーJohn Robieに、彼等の曲”Yasher”のリミックスを依頼したり、1983年にはFactory Recordsより12㌅EPをリリースしたりしており、その後は、Cabs (これ以降はMallinderとKirkのデュオとなります)はVirgin Recordsと契約しており、それで得た資金で、Western Worksを改良して、1983年8月にアルバム”The Crackdown”をリリースしています。その後は、エレクトロ・ファンクとも言われるダンス・ミュージックのやハウスの方向性で活動していきますが、2人は別々の場所(始めはLondonとSheffield)に居を構え、それぞれがソロ活動を始め、その内、KirkだけがCabsの名前を使うようになっていきます。そのKirkも、2枚のアルバム”Dekadrone”と “BN9Drone”を出した後に、2021年9月に65歳の若さで他界しており、これを持ってCabsは消滅したことになります。
以上がCabaret Voltaireの大体の流れになります。
それで、本作品”Hai!”ですが、来日直前に、音楽的な頭脳でもあったChris Watsonが抜け、その代わりにドラムのAlan Fischが加入したことで、多分それまでのCabsとは違うんだろうなと言うのが、買う前の感想でした。一応、メンバーは、Stephan Mallinder (B, Vo), Richard H. Kirk (G, Clarinet, Synth, Tapes), Alan Fisch (Drs, Perc)で、先述のようにLyn Clarkがスライド・プロジェクターでサポートしています。録音は、1982年3月23日に東京のツバキハウスでのセカンド・ステージのもので、両面とも3曲ずつ収録されています。A1 “Walls Of Kyoto”はいきなり、リズムマシンのビートとシンセから始まり、ノリが良くてびっくりして覚えがあります。投げやりなVoも含めて、インダストリアルと言うよりも、ある種の「ロック・バンド」っぽさを感じますが、時折、挿入されるテープ音が異化作用を醸し出します。A2 “3 Days Monk”は生ドラムとファンキーなベースに、フリーキーなクラリネットとギター・ノイズから成るエレクトロ・ファンクへの萌芽を感じられる曲です。A3 “Yashar (Version)”はドコドコとしたタムを多用するドラムとシンセのリフから成る曲で、ベースとVoは記号のような点描になっています。
B面に行きます。B1 “Over & Over”もエレクトロ・ファンクを予感させる音楽ですね。B2 “Diskono”は、シーケンサーも使っているのかな?抑制されたVoと独特の奏法でエフェクトを掛けたギターとが、Cabsのポップネスを現出させていると思います。B3 “Taxi Music (Version)”はボンゴの音とディレイ処理されたクラリネットやギター、それにパーカッシヴな電子音から、ドラムやファンク調のベースも入ってきて、ラテン系要素も垣間見られます。これは踊れる曲ですね。
総じて、Cabsがインダストリアルからエレクトロ・ファンクに移行しようとしたいる過渡期的作品で、今聴くと、最初、思っていた以上にポップですね。また、”Nag Nag Nag”など、それ以前の作品で聴かれるようなエフェクトを掛けたVoではなく、素の肉声も意外でしたねー。それまでのCabsを知らない方が楽しめるかも⁉️

https://youtu.be/zlETL9wNBAY

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    オマハルゲ

    2023/09/02 - 編集済み

    「こんなアルバムあったなぁ」と思い出しました。そう言えばCabsが来日したのにライヴに行こうと思わなかったのは何故だったのか思い出せません。まあ、興味が色々移っちゃった時期なので、絶対に行こうという気が失せてたのかも知れません。金欠だったしw

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      Dr K2

      2023/09/02

      私はChris Watsonが直前で脱退して、なんかドラムが入ったと聞いたので、行くのは辞めました。

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