世界的カルトGS  ザ・タイガースの12枚組CDボックス 1967-1971

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GSの頂点にはザ・ビートルズが、続いてザ・ローリング・ストーンズが君臨しています。数人編成のロック・コンボという意味では、彼等もまた広義の「クルーブ・サウンズ」といってもいいでしょう。60年代、言うまでもなく日本のそれではこのタイガース、圧倒的な人気を誇っていました。沢田研二のスター性に、あまりに依存し過ぎていたと言えばそこは否定しがたいものがあるかもしれませんが、とにかく他を大きく引き離すスーパー・グループであったのは間違いありません。そこで、このコンプリート録音源集を聴いてみる。すると非常に歪なグループだったことがはっきりとわかるのです。ライブではとにかくストーンズのカバーが中心、おそらくこれは彼らの素の欲求だったのでしょう。走りまくるだけの衝動ガレージといっていい曲もあります。末期のライブなどはGFRやCCRなどまでカバーした熱演を聴かせてくれます。一方で、問題はスタジオ録音のシングルやアルバム群。とにかく徹頭徹尾、タイガースのブレーンである作曲家、すぎやまこういちのクラシック・コンプレックスに翻弄されたテイストの作品がほとんどといっていいでしょう。まさにその点が、海外での日本のGS評価で無視黙殺されつづけている原因に他なりません。ほぼ「バンド」の創ったレコードとは言い難いあさってぶりです。他のどんなGSと比較してもその点は否定できませんが、これは「ポリドール」というレーベルのレコード作りのセンスにも大きく左右されているように思います。もしもフィリップスだったら、もっとましな録音を残せたのでは。日本ではGSの頂点に君臨しながらも世界的には全く相手にされていないアサッテの存在。まさに世界規模での「カルトGS」といっていいでしょう。本当のカルトGSのレベルにある「愛するアニタ」のタイガース・バージョンと、ヘンドリクスの「紫のパクリ」としか言いようもない「割れた地球」の二曲しか拾い物はない、がしかし、だからこその日本国でのスーパーグループともいえるわけですが。

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