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The Flying Lizards “s/t”
このアルバムは欲しくて欲しくてねえ。やっと中古盤屋で見つけた時は心の中でガッツしました。そんなこととは全然関係ないThe Flying Lizardsのファーストアルバムです。The Flying Lizardsは1976年結成の不定形の英国のユニットですが、中心人物はDavid Cunninghamで、Voと楽器に関しては、Davidがその場その場で、選んでくるという感じですが、本作のVoはDeborah Evans-Sticklandが務めてます。また初期には前衛フリーミュージック奏者のDavid ToopやSteve Beresfordがバックを担当していました。ヒットしたシングル"Money (That's What I Want)"はBarrett Strongが原曲ですが、全く生気のないDeborahのVoとスカスカのバックの楽曲からなりました。それで、The Flying Lizardsはこの曲を披露する為に、1979年8月にBBCのTop of the Popsに2度出演していますし、1980年にもシングル"TV"の時も出演しています。元々はDavidが、低予算でヒット曲を作るというコンセプトの下、ドラムの代わりに段ボールの叩いて、ペナペナなギターやスカスカな音に全く「ロック」を感じさせない冷め切ったVoが乗ると言う、Blue Cheer
の"Summertime Blues"をカバーした異形な曲を完成させます。費用はわずか6ポンド。そしてそれが大ヒット。レコード会社Virgin Recordsは"Money"のヒットで、ファーストアルバムを作製させる為に契約を延長します。なお、このアルバムにはVoのVivian Goldmanが書いた曲"Her Story"と"The Window"が収録されています。ヒットした"Money"やEddie Doochranの"Summertime Blues"はヘナヘナでやる気ゼロなVoとバックの素人っぽい演奏からなるポスト・モダンなカバー曲として一躍有名になりました。1981年には、VoをSnatchのPatti Palladinが担当したセカンドアルバム"Fourth Wall"を出して、評論家のお評価は概ね良かったのですが、商業的には売れませんでした。その後、1984年にはVoをSally PetersonにしてStatik Recordsから全曲カバー曲から成るアルバム"Top Ten"をリリースし、彼女の全くやる気の無いと okいうか気持ちのこもっていないロボットのようなVoが大々的にフィーチャーされています。このアルバムからはJames Brownの"Sex Machine"と"Dizzy, Miss Lizzy"がシングルカットされており、Leonard Cohenの"Suzanne"もアルバムに収録されています。このアルバム以降、DavidはSallyと映画と広告の為の音楽作製に取り掛かりますが、その過程で"Money"の再録音をおこなっています(私は未聴。すまん)。この"Money"カバーは人気があり、"The Wedding Singer"や"Charlie's Angels"などの映画のサントラや米国TVドラマ"NIP/TUCK マイアミ整形外科医"や英国ドラマ"LIfe on Mars"などでも使われていますし、2011年でにはタコベル(タコスのチェーン店)のCMでも使われています。その後、1978年に録音が済んでいたアルバム"Secret Dub Life of the Flying Lizards"が1995年になって漸くリリースされますが、このユニットは1984年には既に活動を停止しています。
それで、本作品"The Flying Lizards"は、シングルカットされた"Money"や"Summertime Blues"も収録されており、そのチープでヘタウマな楽曲に無機質/無感情な女性Voが乗ると言った構造もあるのですが、実は他の曲は、それ程チープではなく、何となくダブ処理されているようなドンシャリでスカスカな曲が多いように思います。特にベースとかはダブっぽい感じで録音されています。A-1 "Mandelay Song"なんかはオペラチックな女性Voが縦横無尽に走り回りますし、B面なんかは何か薄暗い感じすらしますし、ミキシングが異様だったりします。やっぱりフリー系の人たちがバックを務めているので、「ヘタウマ」じゃなくて「ウマヘタ」になってますね。なので意外に曲ごとに表情やアレンジが異なり、ヴァラエティに富んでいて楽しめました。いやあ、ここら辺を探り当てるDavidの嗅覚は鋭いですね。ちょっとだけ、XTCあるいはAndy Partridgeのソロと共通点があるように感じました。もしホワイト・ダブに興味があるのであれば、是非、聴いてみてください。言い忘れましたが、David Cunninghamはちゃんとした教育を受けた音楽家で、この後、Piano Recordsを運営しています。
A1 “Mandelay Song” (2:27)
A2 Her Story” (4:37)
A3 “TV” (3:51)
A4 “Russia” (6:11)
A5 “Summertime Blues” (3:09)
B1 “Money” (5:52)
B2 “The Flood” (4:57)
B3 “Trouble” (2:46)
B4 “Events During Flood” (3:25)
B5 “The Window” (4:52)
https://youtu.be/UkDeNC--dHU?si=EK_EsE7h8InJAftK
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