Toshi Ichiyanagi “Obscure Tape Music of Japan vol.5: Music for Tinguely”

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日本を代表する現代音楽の作曲家一柳慧 (Toshi Ichiyanagi)の「日本の電子音楽 vol.5」で、”Music For Tinguely”の登場です。まあ発売元がOmega Pointなので、自ずと内容にワクワクするところですね。先ずは一柳さんのバイオグラフィーを少し。幼い頃から音楽一家で,若い時から才能を発揮し、ピアノを原智恵子、作曲を平尾貴四男、池内友次郎らに師事しています。青山学院高等部在学中、1949年から1951年にかけて、毎日音楽コンクール作曲部門で3年連続入賞(うち2回は1位)しています。1954年、19歳で渡米し、1957年までニューヨークのジュリアード音楽院で学んでおり、1956年にオノ・ヨーコと結婚(1962年に離婚)。1959年、同地のNew SchoolでJohn Cageの講座に参加し、彼の思想に大きく影響を受けたことがきっかけで、図形楽譜や不確定性の音楽を取り入れ、Fluxusなどの前衛芸術活動に参加しています。1961年に帰国[。同年8月に大阪で行われた「二十世紀音楽研究所第4回現代音楽祭」を皮切りに、さまざまな演奏会でケージを代表とするアメリカの前衛音楽および自己の作品を紹介し、音楽評論家吉田秀和をして「ケージ・ショック」と言わしめるほどの衝撃を日本の音楽界に与えています。その一方で、アメリカの実験音楽のもう一つの流れであるミニマル・ミュージックにも触発され、1972年に ”Piano Mediaを発表しています。80年代に入ると尾高賞を4度受賞するなど高い評価を受け、以後、日本を代表する作曲家の一人として活動を続けています。
それで、本作品ですが、スイスの廃品駆動芸術を実践していたJean Tinguelyの個展が日本で開かれた時に、感銘を受けた一柳氏はTinguelyに頼んで、駆動音を録音させてもらい,それを元に”Music For Tinguely”と言うテープ音楽を作曲。カタカタ,ガタガタとモーターによる金属音を上手く使った動的な作品としています。これは草月アートセンターで作成されています。次の曲は1970年の大阪万博で太陽の塔の内部にあった三層構造の内、「未来を表す空中」をテーマにプロデューサーの川添登と黛敏郎から依頼を受け、建築家黒沢紀章の建築論をコンピュータで喋らせることに挑戦しています。当時としては難易度の高い曲であったみたいですが、今ならボカロがありますからね。最後に片面全てを使った”Appearance”ですが、これが白眉な曲で、元々は1967年にコンポーザー・イン・レジデンスとして、NYに渡米した時に、カリフォルニア大学Davis校のLarry Austin教授から本の出版に際して委託曲を作ってもらえないかと頼まれて使った曲がこの曲です。図形楽譜に書かれた楽器群とライブ・エレクトロニクスから成るが、殆どがフィードバックのようなノイズミュージックとなっています。当初はDavid Tudorが初演するものとして書かれていたそうです。爆音で聴きたい曲ですね。まあ、ノイズミュージックが、ロックのラウドネスと現代音楽の即興性や物理性から生まれてきたものであると言う解釈も成り立つでしょう。是非とも若いノイズミュージシャンにこそ聴いて貰いたい作品ですね。

“Music For Tinguely”
https://youtu.be/AVaLI8jiDLI

“Appearance”
https://youtu.be/VQ4TmijOPV8

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