Ja Ja Ja “s/t”

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しかしながら、ATA TAKは、いつも凄いバンドを見つけてくるよなー。と言う訳で、今回、ご紹介するのは、当時、Neue Deutsche Welle (NDW: German New Wave)の渦中にあったバンドJa Ja Ja (ヤーヤーヤー)の唯一のアルバムです。もう、ジャケからして脱力してしまう、このバンドは、米国人のJulie Jigsaw,に、独逸人のWietn Wito (ヴイートン・ヴィト)とFrank Sambaから成るトリオです。
 それで、ちょっと調べていたら、VoのJulie JigsawことJulie A. Ashcraftのちょっとした自叙伝みたいな記事を見つけましたので、なるべく簡潔に書いておきます(現在はJigsawnovich名義で活動)。どうも、彼女は米国在住であったようで、1980年にNYCのPratt研究所に通う為にDallasから引っ越して、そこで、美学生のTed Parsons (Drs)とGregory Grinnell (G)とで、最初のバンドGroup of Treesを組んで、彼女はVoとCasiotoneを担当しています。彼女曰く、サーフの影響を受けたポストパンク/ノーウェーブなサウンドであったとのこと。しかし、ParsonsはThe Swansに、GrinnellはThe Toastersに加入して、バンドは消滅します。話しが少し前後しますが、1978年〜1980年には、彼女は、Liquid Liquid, Siouxsie & The Banshees, Bad Brains, The Slits, Captain BeefheartやDevoのライブを観ており、その中で、CrassのSteve Ignorantとも直接会っています。一方で、彼女は、京劇や小野洋子, Der Plan, DAF, Holger Hiller, The Wirtschaftswunder, ? & The Mysterians, The Residents, Kraftwerk, Mars, DNA, PIL, Wire, Ornette Colemanなんかも聴いていました。それで、週1回、ラジオ局WPIRのPratt RadioでDJをやるようになります。1981年に、彼女はDer Planのアルバム”Geri Reig”をジャケ買いし、独逸語のサウンドが大好きになって、Der Planの曲を歌おうと練習していました。そして、彼等にファンレターを送り、そのアートワークとか彼等の求めている音楽とかについて尋ねます。それに対して、レーベルのグラフィック・デザイナー兼リードVoのMoritz Rから返事ももらい、その後、手紙やカセット作品の交換を経て、独逸に来ないかと誘われます。それで、彼女はDüsseldorfに行き、ATA TAKスタジオのゲストルームに住みつきます。そこで、PyrolatorことKurt DahlkeとFrank Fenstermacherらと、かなりディープな哲学的な会話を交わすようになり、特に、Dahlkeが”同一性”について語ったことを、彼女にもっと詩的に書き直させて、それが後のJa! Ja! Ja! (意味は「はい!はい!はい!」)の持ち歌の歌詞になります。それで、彼女は、ピアノでメロディを、ドラムでリズムを作っていたりしましたが、ATA TAKスタジオにあったベースやトランペット、シンセにもチャレンジして、Fenstermacherには「天然の才能だね」と言われ、Dahlkeも友人を紹介するからと言って、Frank SambaとWietn Witoを連れてきました。会った日の晩に早速3人でセッションを行い、即興で歌詞も歌も付けてジャムっていました。それを聴いていたDahlkeがサッと録音ブースに入って、そのセッションを録音しています。その中からベストテイクを選び、Witoの一言で、”Wahrheit (ヴァールハイト; The Truth)”として、1982年のコンビ・アルバム”Klar! 80 Sampler, ALLES ODER NICHTS (アーレス・オーダー・ニヒツ; EVERYTHING OR NOTHING)”に収録し、その翌日、3人で、”Katz Rap”(カッツ・ラップ; Cat Rap)と“Mom”の2曲をシングルとして、ATA TAKからリリースしています。その時に、グループ名をJa Ja Jaとしています。1981年〜1982年に、彼女は、Blixa BargeldやGudrun Gut, Bettina Köster, Robert Görl, Andreas Dorauらと会い、NMEの記事の為に、Holger Hillerにインタビューし、実際にPalais SchaumburgやEinstürzende Neubauten, Der KFCのステージも観ています。彼女はその時に、ベルリンの壁で、西側と東側の両方から、その緊張感やスクワットや暴れ方を実体験しており、独の若者達から「米軍基地の為に、冷戦中、しなければならない業務があるのだ」と言うことを再度伝えて欲しいと言われ、その体験から、“Habt Nicht Mehr Angst (Have No More Fear)”の歌詞が出来たとか。それで、NYCで書いていた歌詞に加えて、Ja Ja Jaでの新曲では、彼女は、全て独逸語で歌詞を書くようになりました。それと、1982年にリリースした”Katz Rap”で、彼女は、欧州で最初の女性ラッパーとして録音されたらしく、また、同年のその後、“Graffiti Artists International”も欧州で最初に「落書きアート」に関してのラップ曲となったとも言われています。また、ジャケ絵は、David Icke (デヴィット・イケ)によるモノで、バンドの曲”I Am An Animal”に関係しています。一方、他の2人は、素晴らしいミュージシャンHenry Scott IIIをバンドに加えることを提案し、実際、ライブでも凄かったらしいです。ただ、3人の音楽性がバラバラで、良い意味で、バンドとしては、色んな要素を含んでいました。例えば、Zurichでのライブでは、観客の半分はゴリゴリのパンクスで、残りの半分はオタクのような若者と言う感じだったとか。彼等は、独、蘭、スイス、ベルギーのクラブや大学、フェスでライブ活動を行っていますし、NYCのダンステリア・クラブからのオファーもありました。John Peelも、BBCラジオ番組で”Katz Rap”を掛けてくれていますし、Zurichの独逸語ラジオ番組でもインタビューも受けています。後、NDWの裏番長Xao Seffchequeが1曲、彼女(Julie Jigsaw)のことを取り上げた曲”Julie In Germany”を1982年にリリースされたコンピ”Klar und Wahr – Sounds Rettet Deutschland (クラー・ウント・ヴァール-サウンズ・レテッテ・ドイッチュランド)”に収録したのは、彼女にとっては嬉しかったようです。Ja Ja Jaでは、彼女が歌詞とメロディを作り、他の2人がアレンジして曲にすると言うやり方でしたので、クレジットもそれぞれ別にしていましたが、ある日、Witoが新曲を書いたと言ってきて、彼の主張によると、複数のクレジットにしてもらえないかと言うことでした。また、彼自身は、よりプログレ・ジャズの方向に向かっていましたが、Jigsawはもっとヒップポップ的にしたかったようです。そう言うこともあって、彼女は、1983年にNYCに戻り、ヒップポップ・ムーブメントにどっぷりハマり、また落書きアーティストとしても活動していくことになり、独でのJa Ja Ja は自然消滅してしまいます。
 
 ちょっと長くなってしまいましたね。すいません。それで、即席セッションから発展したJa Ja Jaの唯一のセルフ・タイトルのアルバムを紹介していきます。先述のように、このバンドは、Julie Jigsaw (Vo, Casiotone, Harmonica), Wietn Wito (Fretless-B, Chapman Stick), Frank Samba (Drs[Sonor], Perc, Vibes)から成るトリオで、本作品には、Henry Scott III (Trumpet, Flugelhorn, Vo)がゲストで参加しています。またプロデューサーは、PyrolatorことKurt Dahlkeです。内容的には、A面4曲/B面6曲を収録しています。それでは、各曲について紹介していきましょう。
★A1 “Ain't Gonna Give Up Yet” (2:33)はChapman Stick (以下Stickと表記)とカシオの音に導かれて、不思議なメロディとなる曲で、B級感満載です。
★A2 “Graffitti Artists International” (6:29)も、Stickのリフから始まり、Drsとカシオが被って行きますが、VoがモロRap調で、NDWとしては異端的ですね。間奏にはホーン類が吹きまくってますし、Stickのソロもあります。
★A3 “Mom” (3:48)では、ミュートしたBから静かに始まったかと思ったら、いきなり急かすようなアンサンブルが始まります。Slap奏法も交えて、凄い迫力です。
★A4 “I Am An Animal” (3:36)は、カシオの音とVoから成るキュートな曲ですが、バックの演奏は高度です。この曲でジャケが決まったとのことですが、私にはその理由は良く分かりません。
★B1 “On The Other Side” (2:36)でも、Stickの高度な演奏とビートをキープするDrsに、英詞のVoがシアトリカルに絡んできます。
★B2 “Red” (3:36)は、アップテンポで手数の多いDrsとBをバックに、元気一杯なVoが乗っかる曲ですが、途中、鉄琴ソロで、一息付けます。
★B3 “Katz Rap” (2:51)は、Slap奏法も冴えるBとDrsとVoで始まりますが、やがて更にアップテンポになって、ややRap調のVoとStickの速弾きが最高にファンキーでご機嫌です。
★B4 “Ja! Ja! Ja!” (2:20)は、リバーブの効いたDrsに、Bと囁くようなVoが被ってきますが、間奏にハーモニカのソロも良い味付けです。
★B5 “Destiny” (3:50)は、ホーン類のユニゾンで始まり、強力なリズム隊と、爽やかなVoが独自の空間を作り上げています。間奏のトランペット・ソロも良し!更にそれに絡まるBソロとの掛け合いも凄いです。
★B6 “Habt Nicht Mehr Angst!” (1:45)は、地を這うようなリズム隊に、Voが独語歌詞を不貞腐れたように歌い、間奏には歪んだStick(?)のノイジーなソロも聴取できます。

 これは、当時のNDWの流れの中では、異色作ですね。多くはどちらかと言うとミニマルで、ドラムマシンを使うことが多い印象でしたが、Ja Ja Jaは、上手過ぎるStick/Bの演奏(私は当時、Chapman Stickを弾きこなすNDW関係のアーティストを知らなかったです)とそれに耐えうるDrsの力量からして、別格で、更に曲もプログレっぽくもあり、アレンジも最高です。まだ、Jigsawが米国人の為、独逸語の歌詞が極端に少なく、その点でも通常のNDWとは異なります。購入当時、個人的には、そのStick/Bとかの速弾きがどうにも腑に至らず、そのまま、余り聴いていませんでしたが、今聴くと、凄っく面白いです❗️しかも、これが、ATA TAKからあんなジャケでリリースされたことに驚愕してしまいます。なので、ジャケとかに惑わさらないで、聴いてみて下さい!

https://youtu.be/m_-iH3Y8PD4?si=uCMdjUDHfCVGMYzt

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