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Arno Steffen “Schlager”
私は、正直、Arno Steffen (アルノ・シュテッフェン)なるアーティストについては何も知らなかったんです。ただ、小柳カヲル氏著書「クラウトロック大全」で、Conny Plankと同じ頁に載っていたことで、興味を持ちました。それで、ちょっと調べてみました。
Arno Steffenは、独ケルン生まれの作曲家/演奏者で、彼の最初の学生バンドは、1970年結成のStellar Overdriveで、その後、1977年結成のJennifer、その後1977-1978年にはSuiciyde Ampheta (スイサイド・アンフェタ)をやっていましたが、その後1979年に加入したDie Zeltinger Band (ディー・ツェルティンガー・バンド)で、これは、巨漢VoのJürgen Zeltinger (ユルゲン・ツェルティンガー)のバンドで、Zeltinger自身、無理矢理メン募したり、誰でも気に入れば一緒に演奏したがったりと割と強引にメンバーを集めていました。その後、Steffenは、プログレ・バンドTriumvirat (トリウムウィラート)に加入しています。1983年に、Steffenは、ソロ・シングル”Supergut, ne”と、本作品でもあるソロ・アルバム”Schlager (シュラーガー)”をリリースしていますが、これらの作品は、最初の市販のサンプラーであるEmulator IIだけを使って作成されており、ギタリストとしては奇異な感じに受け止められています。これらの作品をキッカケに、Steffenは、Dieter Möbius (Cluster)やConny Plankと共に、Goethe-InstitutやAround the Globe及びWestworldの要望で、アートと音楽の為のパフォーマンスや映画音楽に注力するようになります。特に、映画”Tatort”と”Das Wunder von Lengede”のサントラを担当したことは好評でした。彼は、1993年に、クラウドロック、ニューウェーブ、ポストパンク、インディーロックで国際的に活動しているグループ/ミュージシャンをケルンに集め、様々な構成で作曲して、録音をしていますが、この模様は、ドキュメンタリー映画”Freispiel (フライシュピール)"に収録されており、長い間お蔵入りしていましたが、2021年に、「ケルン映画祭」でお披露目されています。その後、Steffenは、Jürgen Klauke (ユルゲン・クラウケ)と共に、幾つかの「ケルン-サンプラー」を作っており、Rolf LammersとTommy Engelと共に、L.S.E.と言うバンドを結成しており、これは彼にとっての最後のバンド・プロジェクトとなります。
以上が、Arno Steffenの略歴となりますが、本作品は、先述したように、サンプラーをフルに活用して、作成された音楽で、その音源は、ケルン動物園、ドイツ連邦鉄道の工場、ケルンの路上の音から収集されており、楽器やシンセ等は使用されていません。なお、このアルバムには、12 x 12 インチのインサートが 2 枚付属しており、1 つはオリジナルのドイツ語インナースリーブの両面を複製しており、もう 1 つは日本語のメモからなります。そして、本作品の参加者は、Christa Fast (Vo [A1, A2, A5|), Jürgen Klauke (Vo [A5]), Mascha Ohlow (パーティーケラーの娘役の声 [B5]), Arno Steffen(Singing Vo), Cay Wolf (Singing Vo), Conny Plank (低音Vo)であり、プロデュースは、Arno SteffenとConny Plankが共同でやっています。それでは、各曲(折角の日本盤なので、邦題も併記しておきます)についてご紹介していきましょう。因みに、Steffenは、1986年にDieter MöbiusとConny Plankと共に中南米ツアーもやってあります。
★A1 “Hörprobe/試聴” (1:07)は、メトロノームのような電子音にパンされた複数の女性Voが点描されている曲です。
★A2 “Schlager/流行歌” (3:55)は、強力なキックによるビートに叫び声や怒号等のスライスされた音片が乗り、更に、その上にSteffenのVoが挿入されるダンス・ミュージックですが、これが全部サンプラーで作られているのかと疑う位、ポップです。ミックスも最高!
★A3 “Berg In Flammen/炎の山” (4:09)は、反復するキックから成るビートに、象の鳴き声〜ガラスの音〜息切れ音等から成る音がバックを構成し、Steffen?のVoが挿入される曲で、音響構築が素晴らしい!
★A4 “Säubert Das Reich/権力を追放せよ” (3:36)は、アンサンブル音がサンプリングされてバックを堅める前で、サンプル音なのかな?プロパガンダ風の演説と混成コーラスが響き渡る強力な曲です。
★A5 “Pearl Harbour/真珠湾” (4:19)は、一転、モゾモゾとした正体不明な音と大人し目なキックに、男性の語り口調Voが乗る曲で、知らない間に飛行機の飛昇音らしい音や女性の笑い声も混入されてきます。
★B1 “Somewhere/どこかに” (4:49)は、静かな森の泉のようなイントロから、鳥の鳴き声やリズムっぽい打撃音や正体不明な柔らかい ドローン音をバックに、女性Voがエモーショナルに歌い上げています。
★B2 “Supergut (Ne?)/超最高じゃねぇか⁈” (2:18)は、女性Voの反復するフレーズと同期したキックによるや」ユーモラスな音、そしてスクラッチ音も交えて、「最高」な音楽を聴かせてくれます。
★B3 “Ba Ba/ふんふん” (3:47)は、反復するドラムマシン?のビートに、女性のうめき声や男性のコーラス等を同期させた曲で、どれがメインのVoかもよく分からないまま、進行していきます。バックには正体不明音も流れています。
★B4 “Tanz Du Wanz/さわぎ過ぎ、踊れ” (3:44)は、反復するダンサブルなドラムマシン?のビートに、同期した女性コーラスや他の正体不明音による「リフ」が乗り、更に男性Vo隊がメインを張っている曲で、中々複雑な曲なのだか、充分に踊れます。
★B5 “Partykeller/パーティの地下酒場” (4:02)は、いきなり場末の酒場っぽい雰囲気の環境音で、時折、遊園地っぽい音も聴取されるノンビートの曲で、このアルバムを締めるのに相応しい。
何だろう?映画的な音楽なのかな?1曲の中にストーリーがあり、そして、また1曲も1シーンとしてお互いの曲が次の曲に繋がっていく、そんな映画を観ているようなアルバムです。そう言う意味では、かなりのレアな極めて視覚的な音楽です。サンプラー(Emulater II)を駆使して作成されたとのことですが、やっぱりHolger Hillerのソロと比較してしまいますね。正直言って、Steffenの方が、スムースに情景が頭に思い浮かびます。それは、具体音の使い方であって、優劣ではなく、Steffenの音楽はより具体性を意識しているのだと思います。そう言う意味では、Hillerとは、サンプリング仕方とか対象とかが違うのでしょう。色々とサンプリング音楽のあり方を考えさせられてしまいましたが、Steffenのこのアルバムは一度聴いておいた方がよいですよ!加えて、この具体音から成るポップ・ミュージックにダンサブルな音響面で、Conny Plankのエンジニアリングが与えた影響は非常に大きかったと思います。
https://youtu.be/NrYBIds6uC0?si=4G7-3ppGSntduSqv
[full album]
https://youtube.com/playlist?list=PLLvdvodyj3fKUwODddXwDBTUmEr9EVzhf&si=JuAXmrjLsydtRoqT
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