Chris Watson “Locations, Processed”

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元Cabaret Voltaire/The Hafler Trioの創設者Chris Watsonは、今や、ご当地フィールド録音の第一人者であり、BBCの音響技師としても有名になっていますが、本作品は、英国Moog Recordings LibraryのBlue TB7 Seriesと言うシリーズの一つとして位置付けられています(ジャケにMoogと記載されているので、一瞬、彼がMoogシンセを弾き倒しているのかと思いました)。なお、このシリーズには、Mika VainioやCharlemagne Palestine, The Grid等の実験音楽〜ドローン〜ダンス・ミュージックと様々な参加者がおり、そのキュレーションは、Richard H. KirkとStephan Mallinderと共にDoublevisionを運営し、更にBlast Firstも創設したPaul Smithによるものです。先ず、ソロ・アーティストとしてのChris Watsonのバイオグラフィーについて簡単に触れておきたいと思います。彼は、Cabsを脱退して、英国のテレビTyne Tees Televisionに入った1981年から、フィールド録音を中心にしたソロ活動を始めており、また、そのTV局でも、”Bill Oddie Back in the USA”, “Great Railway Journeys”, “Springwatch” やDavid Attenboroughによる自然ドキュメント番組など多くの作品制作に当たっています。ソロ作品では、アルバム”Stepping into the Dark”で、2000年のPrix Ars Electronica Festivalで特別賞を受賞しており、他のアーティストとのコラボも盛んに行っています。また、2006年には、英国西部大学で工学博士の博士号を取得しており、その時の博士論文のテーマが、自然史や各地でのドキュメントの音を如何に録音するかについてのテクノロジーに関するものであったとのことで、多分、その後の彼のキャリアに直結していると思われます。彼の2003年作”Weather Report”は、2007年のThe Guardian誌での「死ぬまでに聴くべきアルバム1000作」に選ばれています。そして、2007年には、BBC Radio 4で、”The Reed Bed”や”A Guide to Garden Birds”と言った彼の制作したラジオ番組も放送されています。そんな仕事と音楽とが密接に結び付いた彼は、現在、Wildlife Sound Recording Societyの総長となっています。それから、本作品はMoog Recordings Library (UK)のシリーズの一つですが、裏ジャケを見ると、Moog Music Inc (USA)の協力の下、Moogシンセの生みの親、Robert Moog博士 (1934年生-2005年没)へのトリビュートであり、マニアが涎を流す程のMoog Sound Labの機材を使用しての作製ではなかったのかと思います。
そんなChris Watsonによる本作品ですが、先述のように、Moogシンセを弾いている訳ではなく、各地域でのフィールド録音によるドキュメンテーションとなっています。彼の場合には、特に、その土地/地域に実際に行って、その場の音をなるべくそのままの形で録音すると言う一つのディシプリンがあるように思うのですが、そんな彼のマニアックな録音テクノロジーを全開にしての素材を使った作品になっています。A面4曲/B面3曲が収録されており、正に臨場感溢れる「現地」の音ではあるのですが、何処かに操作した痕跡或いはミックスが見られる所が、ミソと言うか彼の独自な才能かと思います。
 そう言えば、SNSで知ったのですが、虫の音や風の音を聴くことが出来るのは、日本人とポリネシア人だけらしく、我々は左脳(言語脳)でそれらを聴いているらしいのです。逆に他の人種は右脳(感覚脳)でこれらの音を聴く為、虫の音とかはノイズにしか聞こえないらしいです。そう考えると、日本人は元々、「フィールド録音」類似環境の中で生活をして、それらを言語化出来たのと関係して、ジャパノイズなる分野で突出したのではないか?と考えてしまいます。なので、西洋人であるChris Watsonにとっては、その聴覚能の獲得が、多分、彼自身にとって「新しい」音楽たり得たのだは?とついつい邪推してしまいます。今回は、各曲の解説はせずに、YouTubeに挙がっていた曲(まあ、アルバム全曲なのですが)を貼っておきますので、皆さんで聴いてみてどうか?と各自、ご判断/ご堪能下さい❗️

A1 “Room 343”
A2 “Grand Central Terminal”
A3 “Rockefeller Centre”
A4 “Central Park”
B1 “Times Square”
B2 “Broad Channel”
B3 “Jamaica Bay”

A1 “Room 343”
https://youtu.be/1ztjb_mddDo?si=bLbmTQ2shUiQLO6A

A2 “Grand Central Terminal”
https://youtu.be/CegRggaTqxg?si=fZuITplMR38m-ZK7

A3 “Rockefeller Centre”
https://youtu.be/nZr4RBwEyX4?si=1gEfVlV_mHG-ixss

A4 “Central Park”
https://youtu.be/Nh5dgO2lQqc?si=LxHsqUUCxmhnVC5d

B1 “Times Square”
https://youtu.be/oWiaZHy58qw?si=XcnX9QK5bBT9gQQ0

B2 “Broad Channel”
https://youtu.be/6mEGJNVPJsw?si=wcOA1z3Hlwahdd2m

B3 “Jamaica Bay To Leigh Vally”
https://youtu.be/FZUwOd4GQqQ?si=LBFrassmJxKGKUHu

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