Cour de Récré “s/t”

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これまた「謎物件」!殆ど何の知識も無く、ちょっとだけ説明文を読んで、購入したアルバムで、このCour de Récréが如何なるバンドかは全然知りませんでした(ついでに読み方も分からん)。それで、ちょっと調べてみました。レーベルはスペインのElefant Recordsですが、バンドは仏Toulouseで活動しています。メンバーはChloé Crozat (女性Vo), Quentin Lasseyte (Instruments, Vo), StanことStanislas Batisse (Instruments, Vo)の女性1人と男性2人のトリオです。まだ、Cour de Récré (「遊び場」とか「校庭」の意味?)としては、ミニアルバムCD1枚と、デジタル・シングル1作、それにコンピCDRへの参加が1枚だけで、本作品はちゃんとしたフル・アルバムとしてはファーストになります。また、このアルバムは、レーベルElefant Recordsの新人バンド発掘シリーズ”New Adventures In Pop”の第53弾になります。最初のリリースが2018年なので、恐らくはその前(2016年位?)からは活動していたと推測出来ますが、ハッキリと書いてある資料はなかったです(すまん!)。資料がBandcampにありましたので、それからの和訳を掻い摘んで書いておきます。このバンドは元々、StanとHéloïse (この人物については不明)のデュオとして始まりましたが、Stanは仏Avignonに、HéloïseはチリのSantiagoに住んでいた為、バンドと言うよりプロジェクトみたいなものであったようです。その後、直ぐに、Stanの友人Quentinが加入し、ライブ要員として、Heloïseの代わりに、Chloéが参加しており、後には録音でも参加するようになります。しかし順風満帆とは行かず、Stanは2年間、カナダに移住しており、その為、最初のEP “Éponyme”は2018年になって、やっとリリース出来たようです。それで、2019年に、Stanは仏Avignonに戻ってきますが、今度はChloéはParisに行ってしまいます。どうもこのトリオには「距離」が付いて回るみたいでしたが、漸く2021年に、本作品であるファースト・アルバムをリリースしています。このトリオは、言わばシンセ・ポップに括られるのですが、彼等の曲には、Aline, La Monja Enana, Freezepop, The Pirouettes, Denimからの影響も少しはあるようです。それでは、Bandcampの解説も含めて、各曲を紹介していきます。
A1 “Chanson Cathartique”は、LIOの“Amoureux Solitaires”やÉtienne Dahoの“Tombé Pour La France”で聴かれる途轍もない楽しさに溢れていますが、一方で、彼等自身の素晴らしい才能も光っています。それは、多くのラブソングが持っているドラマ性に対して、全く新しい方向からのアプローチしたりする点です。この失恋ソングは、何でも悪い方向に持っていってしまう非モテの「彼」が、恋していることに気付いて、恥じらいながらも、最初の恋愛に再度挑戦し始めると言う話しなんですが、歌詞の絶妙なストーリー性とダンサブルな楽曲を持っているのも高評価出来る点です。更に、この曲では、コーラスやベルで予想外のエンディングも用意されています。A2 “Soleil Levant”は、Stendhal症候群(これは調べてみて!)についての歌詞で、ディスコティックに盛り上がりますが、ヌーベル・ヴァーグ好きの日本人女子と恋に落ちる、日本映画推しのフランス人男子の話しについての曲で、Chloéのロリータ・ヴォーカルが堪能出来て、ダンサブルです。A3 “Le Jardin De Nobuko”は、ノスタルジーには何の価値も無いと歌う、極めて甘いポップ・ソングで、France Gall (私にはStereo Totalっぽく聴こえる)のようなMiaの若々しい歌声も聴けます。A4 “Coeur Cruel”は、このトリオが一番最初に作った曲で、EPとはヴァージョン違いが収められています。アシッドなベースラインと完璧なコーラスも聴くことができ、踊っても良し、メロディに酔いしれるのも良しの、これぞ、ポップと言うべき曲です。A5 “Agathe Agathe”も、彼等のサウンドを押し上げた曲の一つで、バロック的で、時にアップテンポで異形のシンセ・ポップであり、物凄くナイーブな恋心を歌っています。
B1 “Le Roi Est Mort”は、ルイ16世を国民裁判で死刑にした一方で、その為にマリー・アントワネットが悲しんだことを国民自身も思い起こした逸話についての曲で、アルペジオとシンセのリフ(ギターも使っている?)が特徴的な曲です。B2 “Vice Et Werther”は、ゲーテの「若きウェルテル(Werther)の悩み」を再構築した曲で、ウェルテルと別れたシャルロットが「ベストフレンドは近過ぎる。良い友人は人生に必要だか、恋愛は子供の遊びのようなもの」と言う意見を正当化しようとするもので、これをアシッドなベースラインとヴォコーダーと安物のシンセを使って、アップテンポのテクノ・ポップに仕上げています。Chloéと男性のヴォーカルの掛け合いが良いです。B3 “Palacio Ideal”はスペイン音楽の影響を受けているとのこと。と言うのも、Stanの父親は家でElefant Recordsのアルバムを沢山掛けていたからだとか。この曲は郵便屋さんのChevalとその娘の話しですが、Chloéが歌謡曲のように歌っています。B4 “Désolé Je Ne Fume Pas”は女の子のファンタジーについての曲で、その中では、彼氏は煙草を吸っているとのことです。WHOへの挑戦みたいな気持ちをシンセ・パンクな曲にしています。アルバムの中で、一番アップテンポで、Chloéのヴォーカルもやや荒っぽいですね。B5 “A L’ombre D’une Jeune Fille En Pierre”は、仏小説家マルセル・プルーストの作品と関係があるようで、ある彫像に恋した少女の話しで、歌詞も、仏作家/歴史家/考古学者プロスペル・メリメの小説”La Vénus d'Ille”から着想を得ています。また曲も最初はバラード調ですが、段々と”Dirty Dancing”由来の異形のファンク・ジャムへと変化していき、このアルバムを締めています。
とまあ、こんな内容らしいのですが、音楽は基本的にかなりピコってるシンセ・ウェーブでかつ舌足らずに聴こえる仏語の女性Voのコケティッシュで、甘酸っぱいサウンドが詰まっています。どうもデジタル・シンセを使っているらしいのですが、どう聴いても、1980年代のシロップ漬けシンセ・ポップのようで、いやーもう書いていて、こっちが赤面するような曲が盛り沢山です。そう言う意味では、かなり貴重なトリオと言うことが出来ますね。なので、あの10代の頃の甘酸っぱい想い(還暦過ぎたおっさんが言うのもなんですが)に浸りたい時には最適な音楽ですので、中にはドストライクな方もいるのではないでしょうか‼️

B2 “Vice Et Werther”
https://youtu.be/poyMxtZrSyE

[full album]
https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_mGD0clEQM2WeOkyByJtaloUzbT0XZpGtE

[BandcampのURLを貼っておきます]
https://newadventuresinpop.bandcamp.com/album/cour-de-r-cr

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