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Swell Maps “Mayday Signals”
やっぱり買っちゃうよねー、Swell Mapsの秘蔵音源!パンクの前に既に「ポスト」パンクであったSwell Maps。その1976年〜1979年の間に、自分達のガレージやベッドルームやらスタジオやらで録音された曲(或いは曲の素)を、メンバーだったJowe Headがコンパイルした2枚組のセルフ・コンピ・アルバムが、今回ご紹介する”Mayday Signals”です。殆どが短い曲で、これらが今後、曲になっていくのだとすると、結構、スリリングな内容になっているようです。因みに、Swell Mapsのバイオグラフィーは既に書いてありますが、多少、付け加えることもありますので、そこら辺だけ少し。ちょっと復習になりますが、先ず、メンバーはNikki Sudden (本名Adrian Nicholas Godfrey), Phones Sportsman (本名David Barrington), Jowe Head (本名Stephen John Bird), Epic Soundtracks (本名Kevin Paul Godfrey)で、John CockrillやBiggles Books (本名Richard Earl)も加わります(因みに、NikkiとEpicは本当の兄弟です)。結成は1972年、英国Birminghamでとなっていますが、Nikki Suddenに寄れば、彼が、実際に音楽(T. Rex “Telegram Sam”)を意識的に聴き始めたのが、1972年初頭で、彼は直ぐに同級生から中古アコギを購入し、翌週には、Phones Sportsmanと意気投合して、演り始めます。彼の弟Epic SoundtracksはDrsがやりたくて、手作りのドラマキットを組み立てており、その1年後、漸くスネアを購入します。この3人は、最初、Sacred Mashroomと名乗っていますが、EpicとPhonesでは、CalicoとかOdysseyと名乗ったり、NikkiとPhonesでは、MithrilとかThe Black Ridersとか名乗ったりしています。そこに、1973年に、Nikkiの親友Jowe Head(彼もこの時に同級生から中古Gを購入)が、その直ぐ後にEpicの友達のJohn Cockrillが加わって、再びSacred Mushroomとなります。Joweに言わせると、Johnは、ちゃんとGレッスンを受けているように思えたらしいです。しかしながら、NikkiとJoweで、Cardboard Giantになったり、彼等にEpicを加えて、Fall of Eaglesを名乗ったり、Epic, Phones, JohnとPhonesの同級生David WrightではCivil Serviceを名乗ったりして、他にもThe Sheep PoliceとかCirkusとかIncredible HulkとかFountain HeadとかIronとかを色々な組合せで名乗って、ちょこちょこセッションしたり録音したりしています。そうして、最後に、Phonesの友達でKing Edward VI学校出身のBigglesが加わり、1974年夏に、NikkiとJoweは漸く学校を卒業し、Nikkiは数ヶ月、Gを練習した後に、Londonに出稼ぎに行きます。そこで、新しい音楽(パンクなど)とそのムーブメントの熱量に当てられたNikkiは、地元に戻り、Bigglesの親のガレージで演奏・録音を本格的に始めます(その時も、The Nozels, The Himalayas, Sacred Mushroom, The Sausage Rolls等と名乗っています)。それで、NikkiとEpicとJoweで、Swell Maps名義で最初にギグを演ったのは、1977年だそうで、ライブ・デビューは意外と遅かったのだなと思います。そして、Swell Mapsの最初の録音の時には、この3人とPhonesがGで参加しています。また、彼らはSwell Mapsのレコードがリリースされるまでは、それ以降一度もライブをやってはいないのです。彼等をLondonに呼ぶような話もあったらしいのですが、彼等にはプロになるだけのお金が無く、また機材も小さなラジオ付きアンプとスピーカー、中古のGやB、スネアとハイハットだけのDrs、そこら辺にある物を録音する古びたマイクがあっただけだったので、彼等はずっとBirminghamで活動を続けていましたが、1980年に、ベルギー、蘭、伊とツアーを敢行し、その後、バンドは解散してしまいます。その直後の1981年に、2枚組のアーカイブ・アルバム”Whatever Happens Next...”がリリースされていますが、これは再発はされていません。解散後、NikkiやEpic等は、ソロ活動をしていますが、Epic Soundtracksは、1997年に、38歳と言う若さで亡くなっており、死因は不明です。また、Nikki Suddenも2006年3月に、NYCのホテルの部屋で他界しており、49歳と言う若さでした。一方、Phonesは、1980年代から地質学者として働いており、音楽界からは脚を洗っていますが、2008年から数枚のCDR作品を出しています。 以上が、今回、分かったSwell Mapsのバイオグラフィーの一部ですが、本作品では、LP1は、1976年〜1977年に、西Mudlandsの地元のガレージやベッドルーム、リビングで録音された音源から編集・収録されており、LP2は、C1が1977年にCambridgeのSpaceward studioで、C2-D5が1978-1979年にLeamington温泉のWoodbine studioで録音された音源となり、それぞれ、Mike KempとJohn Riversがエンジニアとして付いての録音となっています。D6, D7については、クレジットされておらず、出所不明です。それでは、各曲についてご紹介していきましょう。 ◼️LP1 ★A1 “Intro / Sweet And Sour Extract” (0:10)は、ピアノソロの断片です。 ★A2 “Almost Grown” (1:21)は、アコギとBとガラクタDrsによるMaps流ロッケンローな曲ですが、実はChuck Berryのカバーです。 ★A3 “City Boys (Dresden Style)” (2:23)は、Mapsの代表曲の元曲で、やっぱりこのぶっ壊れ方はイカしてます。 ★A4 “Sahara” (2:11)は、ディレイを掛けたGと物音系Percに、チャルメラのようなFluteが吹き荒れる曲です。 ★A5 “One Of The Crowd” (2:15)は、G, B, DrsによるMaps流ロッケンローなノリの良い曲で、ヘロったVoもイカしてます! ★A6 “Wireless” (3:38)は、ラジオノイズと反復するピアノの合奏で、Gらしき音も微かに聴取可。 ★A7 “Ripped And Torn” (1:55)も、Maps代表曲の原曲で、ぶっ壊れており、最後のGもイカしています。 ★A8 “God Save The Queen” (0:33)は、Sex Pistolsの曲ではなく、アコギとGのせめぎ合いで、意味不明! ★A9 “Platinum Blind” (1:02)は、Drsと物音系Percの乱れ打ちから成る曲で、Lo-Fiな録音により面白さ倍増です。 ★A10 “Harvist” (0:38)は、反復するGに自在に上下するBの一騎打ちですね。訳分からん! ★A11 “Gramofonica” (1:43)は、鼻歌付き、タンテの誤用と物音系Percの合奏で、もう意味不明です。 ★B1 “Read About Seymour” (1:36)も、Maps代表曲の演奏なんですが、このヘナヘナさがサイコー!名曲ですね。 ★B2 “Shubunkin” (1:09)では、変拍子のリズム隊&Gに、更に歪んだGを弾きまくってます。 ★B3 “Trade Kingdom” (2:20)では、アコギとハーモニカとハイハットをバックに、Nikkiが音痴に歌っており、もう大抵の事では怒りません。 ★B4 “Pets’ Corner” (2:24)は、スローテンポの怪しげな曲で、ワウGやJoweの抑制的なVoも不穏な雰囲気を醸し出しています。 ★B5 “Fashion Cult (Opaque)” (2:12)も、Maps流ロッケンローな曲で、痺れます!敢えてLo-Fiと言うより元々がそうしか出来なかったと言う意味で元祖ですね。 ★B6 “Plankton” (1:29)は、Gの単音弾き、ホワイトノイズ、コーラスとB、そしてB, G, ,Drsによる合奏。これってMusique Concreteじゃないか? ★B7 “Johnny Seven” (1:32)は、Maps流サーフ・ロックとも言うべき曲で、何故か泣けてきます。 ★B8 “Below Number One” (3:43)では、Gらしき持続音に微かな物音系Percが絡んでいますが、縦笛のようなFluteや歪みまくったGに移行していきます。 ★B9 “Plumbing / Radio Ten / Here’s The Cupboard” (1:06)は、Drsや物音系Perc、缶ドラム、エコーの掛かった叫び声(?)の狂演で、何でもありですね。 ★B10 “Organism” (1:08)では、悲しげな足踏みオルガンの調べに、微かに唸るようなVoが聴こえます。 ★B11 “Sweet And Sour Reprise” (2:02)は、アコギで始まったかと思うと、G, B, DrsによるMaps流GSロッケンローをぶちかましてきて、最高! ◼️LP2 ★C1 “Vertical Slum” (1:13)も、Maps代表曲の演奏で、音も良く、また元気一杯です。サイコー! ★C2 “Avalanche Prelude” (2:44)は、スローテンポのDrsと通奏低音にシタール様のGが乗っかっているインスト曲で、心地良いです。 ★C3 “International Rescue” (2:27)も、Maps代表曲ですが、VoはJoweがやっており、印象が違いますね。 ★C4 “Deliverous Mistail” (4:09)は、執拗に反復するアルペジオGとリズム隊が変拍子で不穏な空気を出しているダークな曲で、Mapsにしては珍しいです。なお、Mayo Thompsonが独白で参加。 ★C5 “Armadillo” (3:41)も、これぞMapsと言う代表曲の演奏で、コーラスも含めて最高にして最強! ★C6 “Avalanche Part 2” (1:33)は、単調なDrsに不穏なフレーズのBと呟くJoweのVoから成る曲です。 ★C7 “Off The Beach” (2:22)は、これぞMaps流ロックとも言うべきノリのよい曲で、やはりNikkiのVoだと安心できます。最後にStylophoneが聴こえます。 ★D1 “Drop In The Ocean” (2:13)は、ドラムマシンとSynth-Bを使ったウエスタン調の曲で、Mapsにしては珍しい曲調です。 ★D2 “Whatever Happens Next (Acoustic)” (3:00)では、アコギとハイハットとピアノを使った伴奏に、バラライカも入り、3人でのVoも良く映えています。 ★D3 “Elegia Pt.2” (1:57)では、重めのハンマービートに弾きまくるGが、何となくCanを想起させます。 ★D4 “Bandits 1-5” (2:44)は、Wireの”Pink Flag”を想起させるMaps流ミニマル/ハードコアパンクな曲ですが、JoweのVoはヘナヘナです。 ★D5 “Secret Island Choir” (0:38)は、代表曲のアカペラ・ヴァージョンで、貴重。 ★D6 “Big Cake Over America” (1:55)は、シェイカーとBが何となくアメリカンですが、2人のVoは馬鹿にしているようで、Mapsにしては珍しくシンセも使用。 ★D7 “Tibetan Bedsprings” (3:19)は、ワウGと反復するBとハイハット、その間を埋める柔らかいシンセ音から成る曲で、シンセはJ.G. Thirlwellが担当。 確かに、Swell Mapsは最初から自由であったと分かる音源が揃っています。噂で言われているように、彼等がT. RexとCan等のGerman Rockから影響を受けたと言うのも納得です。特にLP1の内容は、彼等の初期衝動による破壊的作曲/演奏の萌芽が含まれており、非常に面白かったです。それに対して、LP2は音質も良好で、機材的にも新たなことに挑戦しており、彼等の許容量の大きさを実感できました。まあ、マニア向けかもしれませんが、この作品には、Swell Maps誕生/成熟の秘密があるように思えますので、そこら辺を知りたい方、或いは宅録のアイデアを模索している方には是非とも聴いて頂きたいですね。そうじゃなくてもマスト❗️な作品。 C4 “Deliverous Mistail” (4:09) https://youtu.be/aFvTzpoZrc8?si=SOJPo_8A0n6ShMzR [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_lIrkpy_8jNmUwo5SodAbDlDAGFun4LOm8&si=7f94cSpT9fmhUQPr #SwellMaps #MaydaySignals #EasyActionRecords #SelfCompilationAlbum #2LPs #1976-1977年 #宅録 #StudioRecording #1977-1979年 #PostPunk #Experimental #DIYPunk #NikkiSudden #PhonesSportsman #JoweHead #EpicSoundtracks #JohnCockrill #BigglesBooks #Guests #MayoThompson #J.G.Thirlwell #Cover #ChuckBerry
Post Punk / Experimental Easy Action Records 3740円Dr K2
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Decada 2 “La Noche Del Atomo”
メキシコのテクノとかハウスとかのクラブ・カルチャーって全然知らなかったので、試しに買ってみました。Decada 2 (デカダ・ホイと発音?)の12㌅EP “La Noche Del Atomo”です。まぁ、何にも知らなかったので、ちょっと調べてみました。Decada 2とは、Mateo LafontaineとCarlos Garcia Teruelの2人によって1985年に結成されたEBM (Electronic Body Music)デュオで、メキシコで初めてEBMをやったインダストリアル或いはテクノの先駆者としては有名らしいです。それで、ちょっと意外だったのは、このグループ名が、Joy Divisionの”Decades”って言う曲にインスパイアされて付けられたってことですね。それで、Mateo Lafontaineは、有名なメディア司会者Mario Lafontaineの弟みたいで、Mateo自身は、1982年からOld Fashionedを結成、その後、MarioとMaria Bonitaを結成しで、1985年に、Decada 2を結成していますので、結構、古くからと言えば古くからやっているアーティストなんですね。一方のCarlos Garcia Teruelは、Mexico city在住のマルチ奏者/作詞家/ サウンド・アーティスト/電子音楽家で、元々は、Walter SchmidtとCarlos Robledoに出会ってから、RIO系のグループDecibelにインスパイアされて、1977年にGlissandoと言うバンドを結成し、その時に中古のシンセやシーケンサーをCapitán PijamaのバンドSizeから購入しており、その後、1982年にOld FashionedとVoltiに加入し、またそれとは別に、並行してArturo Meadeらとのバンドも始めています。それで、Vortiのオリジナルメンバーが脱退した時に、Garcia Teruelは、彼にとって最もヤバいプロジェクトSilueta Palidaの活動を開始します。当初はソロ・プロジェクトでしたが、やがてパーカッショニストのJaime Herranzが加入し、ライブも可能になり、今ではメキシコのカルト・バンドとも言われているLas Insólitas Imágenes De AuroraとBon Y Los Enemigos Del Silencioともフェスで対バンしています。一方、Decada 2の方は、1985年〜2018年までは、Mateoと共に活動し、また、Noiselab RecordsのバンドOf.とも活動を共にしていましたが、 Garcia TeruelはDecade 2 脱退後、ソロアーティストとして活動を続けています。それで、Decada 2としては、Discogs上、カセット・アルバム1枚、セルフ・コンピ2枚、その他CDR1枚を出しているだけです。と言うのも、Mateoが2020年に他界しているからです。なので、デュオとしては実質3年間位しか活動していませんが、Meteoのソロ・プロジェクト期間も考えると30年近く活動しているのに、リリースしたアイテムは少ないかな?とも思います。 以上がDecada 2のバイオグラフィーとなります。そこにも書きましたが、Decada 2としてのリリース作品は少ないので、入手しにくさも考えると、本作品などは、貴重な音源と考えられます。内容は、両面3曲ずつ収録した12インチMini-LPで、1987年〜1991年の曲がセレクトされています。因みに、本音源を復刻した レーベルPhiloxeniaは、独のレーベルみたいです。それらも含めて、本作品の各曲をご紹介していきますね。 ★A1 “Música Electrónica [1988]” (7:09)は、強力なディスコティックなリズム隊に、細かいシーケンスとエフェクト変調した2人のVo或いはテープによる演説やサンプラーなどを散りばめた曲であり、ここら辺はまだ、インダストリアルとテクノ/EBMの狭間に位置しているようです。 ★A2 “Psycho Dance [1989]” (5:38)は、ヴォコーダーVoも用いた、やや重めの四つ打ちリズムと打ち込みによるシンセのリフやシンセ・ベースから成るニューウェーブっぽいダンス・ミュージックです。 ★A3 “La Voluntad De Dios [1987]” (5:34)は、ヒスパニックな語りから始まり、細かく刻むハイハット〜四つ打ちテクノなリズム・トラックで、サンプラーやテープ音を挟み込んできます。Bをサンプリングした音や最小限のシンセのリフ等も絶妙なタイミングです。 ★B1 “Dr. Rhythm [1990]” (5:51)では、ハウスっぽいリズムやシンセのアレンジが施してあり、やや今までと異なった印象です。サンプラーは使用されていますが、シンセのキレが鋭いです。後半の低音シークエンスはカッコ良い! ★B2 “Extasy Bondage [1991]” (6:29)は、四つ打ちのキックに、ファンキーなシンセ・ベースとリズミックなサンプラー等が絡んでくる曲で、後半に挿入されるシンセ音もメロディアスで良い塩梅です。曲のエロさがDAFっぽい。 ★B3 “Holbox [1990]” (8:23)は、出だしが電子庭園のようですが、アシッドなベースラインとシーケンスから、BPM速めなリズム隊がなだれ込んできて、急かすように迫るアシッド・テクノな曲です。また、時に挿入される生ピアノのサンプリングが個人的には好きです。また、メロディアスなシンセも被ってきて、単にダンス・ミュージックで終わらないところも良きかな。 と言う訳で、全6曲を聴いてみましたが、それ程、南米っぽい要素は感じなかったです。ただ、B2のようにDAFをちょっとだけ想起させる曲もあり、DAFのGabiがヒスパニック系独人であるのと共通点があるのかな?とも思いました。正直、調べてみて、Decada 2の2人が結構、昔からやっているアーティストなので、そう言う意味では、欧州や英国のレイブ・カルチャーとの差異はあるようにも思います。私自身はそれ程、クラブ・ミュージックには詳しくないので、ハッキリとはわかりませんが、中々楽しめましたし、曲のクオリティも全然悪いものではなかったので、安心して聴けました。メキシコの電子音楽界を少しだけ覗いた感じです。気になる方は、体験してみてはどうでしょう❗️ A2 “Psycho Dance [1989]” https://youtu.be/Jkf8gLQc4QI?si=aS6FEQ2Xm3gdCyGa [full album] https://youtu.be/Jkf8gLQc4QI?si=aS6FEQ2Xm3gdCyGa [BandcampのURLも貼っておきます] https://lustpoderosa.bandcamp.com/album/phlx002-decada-2-la-noche-del-tomo-ep #Decada2 #LaNocheDelAtomo #Philoxenia #Mexico #SouthAmericanElectronicScene #Techno #EBM #ElectronicBodyMusic #Electro #Synthesizers #Sampler #MateoLafontaine #CarlosGarciaTeruel
EBM / Techno Philoxenia 1375円Dr K2
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Lena Platonos “Balancers”
昔、仕事(学会出張)で、ギリシャに行ったことがありますが、その時に空港を降りて先ず感じたことは、「文字が全然読めん」と言うことでした。その位、ギリシャ語は全く読めなかったんです(まあ、今も読めませんが)。そんなギリシャの女性アーティストLena Platonos (Λένα Πλάτωνος)の過去作品のセルフ・コンピ・アルバムが、この”Balancers (Εξισορροπιστές)”です。しかし、これも謎物件で、なんでこれを買ったの?と自問しています。ただ、彼女は1980年代初頭から現在まで割とコンスタントにリリースを続けていますので、そこそこ有名なアーティストだと思います。それで、彼女についてちょっと調べてみました。Platonosはピアニスト兼電子音楽作曲家で、特に1980年代のアテネの電子音楽シーンではリーダー的存在だったそうです。また、ギリシャの放送局Hellenic Broadcasting Corporation (ERT)の子供向け音楽番組 "Lilipoupoli"に参加していたので、有名だったそうです。もう少し詳しく書きますね。彼女は、ギリシャのCrete生まれで、父親が有名なピアニスト兼作曲家であり、彼女自身も2歳からピアノを習っています。その後、彼女は、アテネ音楽院に進み、18歳でプロのピアニストになっており、1963年にはKatie Papaioannouコンテストで一等賞を受賞しています。その後、彼女は国外での修行の為、ウィーン音楽芸術大学、それからベルリンにも進学します。そこで、彼女はロックやジャズ、東洋の音楽にも触れるようになります。その後、指揮者コースの為に一旦帰国しますが、Heracles Triantaphyllidisと彼のバンドDNA(No New Yorkのバンドではないです)と協力する為に、1975年に再びベルリンに行きます。最終的には、1978年に帰国して、彼女の夫Dimitris Marangopoulosと共に、先述のERTの第3放送で働くことになります。この時のディレクターManos Hatzidakisとも知り合いになり、これが縁で、彼女は、″Lilipoupoli″を放送することが出来、そこで流される音楽の歌詞や作曲を担当することになります。それとは別に、彼女は、作詞家Marianina Kriezis, ”Lilipoupoli”でも一緒だったSavina Yannatou及び歌手Yiannis Palamidasの協力の元、1981年にファースト・アルバム”Sabotage”を出します。このアルバムは、ギリシャ語で歌われており、またギリシャ録音の最初のシンセ作品となります。しかし、実は、このアルバムの前に既に完成していた作品があり、それは、詩人Kostas Karyotakisによる13篇の詞に、彼女が音楽を付けたもので、便宜上、セカンド・アルバム”Karyotakis - 13 Songs”となっています。その翌年、12曲のミニマルかつエレクトロニックなアレンジを施したサード・アルバム”Manos Hatzidakis ’62″を出しています。その後にリリースした3枚のアルバム″Sun Masks″ (1984年作), ″Gallop″ (1985年作, ″Lepidoptera″ (1986年作)は、彼女が、電子音楽、実験的な手法、オーケストレーション及びギリシャ語の歌詞への方向転換を決定づけた代表作となります。これらの作品は、ミニマル・ミュージックでもあり、声には電子フィルターが掛けられ、印象的なKbdが多用される音楽形態となっています。上記3つのアルバムの制作中も、Gianni Rodariの詩に子供用の音楽を付けたアルバム”The Sound and its Errors″を出したり、1986年には、他のギリシャ人音楽家Michalis GrigoriouやVangelis Katsoulisと共に、アルバム”Music for Keyboards″を出していたりもします。1989年には、アンデルセン童話に基づいた子供向けオペラ作品”The Emperor’s Nightingale″を出したり、より落ち着いてダークなアルバム”Spasimo Ton Pagon (The Breaking of the Ice)” (1989年作)と“Mi Mou tous Kiklous Tarate (Do Not Disturb My Circles)” (1991年作)を出したりしています。また、1990年には、Dionysis Savvopoulosと協力してライブ演奏も行い、ライブ・アルバム”Retrospection ‘63-‘89”を出し、翌年には、Dimitra Galaniと協力して、John Lennon等の曲をアレンジしたアルバム”Myths Of Europe”も出しています。その後、Platonosは沈黙しますが、1997年に、Savina Yannatouと共に、派手な電子音楽ではなく、より JazzyとかArt Music的な抑制的なアルバム”Breaths”を出しています。と同時に、ギリシャの電子音楽シーンで有名なアーティストによる彼女の曲のカバーを集めたアルバム”Lena Platonos’ Blender”もリリースされています。2000年には、Thodoros Poalasの詞に音楽を付けて、Maria Farantouriが歌うアルバム”The Third Doorway”を出しており、2003年3月に行われたアテネ・コンサート・ホール(Megaron Mousikis Athinon)でのライブ・ショーでは、あっという間にチケットはソールドアウトしています。また、2005年には、彼女の歌詞集”My Words”が出版され、2008年2月には、CDシングル”I Loved You”が、Eleftherotypia新聞の日曜版で取り上げられています。また、同年3月には、自動書記的な本”Diaries”も出版されており、彼女は電子音楽を再開しています。同年に7月には、彼女の音楽をレトロに見直すコンサートが他のアーティスト達によってOdeon of Herodes Atticusで開催されています。2010年には、Savina YannatouとYiannis Palamidasと共に行ったPallasでのライブ録音を2枚組CDで出しており、同年12月には、エジプト系ギリシャ人Constantine P. Cavafyの詞に音楽を付けるコンサートを生誕150周年として行っています。そうして、2015年に、米国Dark Entries Recordsが、彼女のアルバム”Gallop”をリイシューし、国際音楽誌や非ギリシャ系DJが注目し、Boiler RoomやBeats In SpaceからDiorのファッション・ショーでも彼女の曲が掛かるようになります。2015年には、Platonosは、初めて英国詩人Emily Dickinsonの英詩に音楽を付けたコンサート”Hope is the thing with feathers″をOnassis STEGで披露しています。また、2016年末には、DJデュオRed Axesが、彼女のアルバム”Gallop”のリミックス4曲から成るEPをリリースし、翌年には、Dark Entries Recordsも、彼女の曲”Sun’s Masks”のリミックス作品をリリースしています。2017年には、コロンビア大学の比較文献社会学の教授Stathis Gourgourisが、自身の著書の中で、Lena Platonosの現代ギリシャ電子音楽への貢献について、Laurie Andersonと比較して考察しています。そうして、2021年には、先述の”Hope is the thing with feathers"がアルバムとしてリリースされ、更に、同年には、本作品である1982年〜1985年の未発表曲を集めたセルフ・コンピ・アルバム”Balancers”もリリースされます。 Lena Platonosのキャリアはこんな感じで、アカデミアとポップ・カルチャーを行ったり来たりしており、また、電子音楽とピアノとか、詩人の詩に音楽を付けたりとか、結構八面六臂な活動をしているのだなと思いました。そんな彼女の1980年代前半の電子音楽期の未発表曲をコンパイルしたのが、この作品”Balancers”と言うことになります。内容は、A面8曲/B面6曲となっており、作曲・演奏・歌全て、彼女一人でやっているようです。それでは、各曲について紹介していきましょう。 ★A1 “Ο Χορός της Σαλώμης/Salome's Dance” (1:58)は、いきなり逆回転から始まり、そこに霧のような声とシンセによるメロディ(?)が絡んでくる小曲です。 ★Α2 “Μια Γάτα στη Στροφή/A Cat on the Corner” (1:48)は、ディレイ処理されたリズムマシンに、ギリシャ語で語るようなVo(これもディレイ処理されている)が加えられた不思議な曲です。 ★A3 “Γάμος/Wedding” (1:19)は、ディレイ処理された語り部のVoとシンセの通奏低音から成る小曲です。 ★A4 “Τον Σεπτέμβριο/In September” (2:16)では、やはりディレイ処理された語るようなVoで、ポロンポロンしたシンセをバックに歌っています。しっとりした落ち着いた曲です。 ★A5 “Τώρα που περιμένεις την Αγάπη σου/Now, While You Wait For Your Love” (3:41)では、生ドラムに簡素なKbd(オルガン?)及びシーケンスに、デッドな環境でのVoでの歌が奏でられえます。ギリシャ語の語感が不思議です。 ★A6 “Ναός Ιωνικού Ρυθμού/Sanctuary in Ionian Rhythm” (1:56)は、不明瞭な通奏低音と独白調のVoから成る小曲です。 ★A7 “Αχίλλειον, Παλάτι στην Κέρκυρα/Achilleon, Palace in Corfu” (0:48)は、語り口風Voとシュワ〜ンとしたシンセから成る小曲です。 ★A8 “Φαέθων/Phaethon” (4:54)でも、ゆったりと流れるアンビエンなシンセ音とその上にポロンポロンした単音シンセが微かに跳ね回っています。メロディが不明瞭なインスト曲で、テープ操作も加わっています。 ★B1 “Χένα/Henna” (3:27)は、逆回転の楽曲音と独白調のVoから始まり、呼吸音のような音やゆったりとしたドローン音に置換されていきます。Voも歌うようになっていきます。 ★B2 “Βήματα Πλαπαλ/Plapal Steps” (2:59)では、緩いパルス音に、不明瞭な低音や不思議な変調シンセ音、更には騒々しい音が微音量で聴こえたりします。掴みどころがない不定形の音楽です。 ★B3 “Άρωμα Ροζαλία/Rosalia Perfume” (1:09)は、語り口なVoとそのバックのピコったシンセ音とポリシンセの持続音が静かに流れる小曲です。 ★B4 “Ρώσσικος Θρήνος/Russian Lament” (4:15)では、ディレイ処理された声や卓球をやっているような物音が、ゆったりした通奏低音の上に乗っていますが、やがて、ゆったり流れるシンセ音に、独白調のVoや不明瞭なメロディのシンセ音へと変容していきます。 ★Β5 “Αθάνατος/Immortal” (2:32) も、独白調Voと通奏低音から成る曲で、非常にゆったりと流れていきます。時々、物音系の音が聞こえます。 ★B6 “Παρασκευή 9-9-1983/Friday, 9-9-1983” (4:35)は、物音系の音とそれを模倣したシンセ音から成るインスト曲で、通奏低音らしき持続音が捻れていき、更に上昇していきます。 先ず、第一に、本作品がセルフ・コンピ作品であるにも関わらず、完成した1枚のアルバムとして聴くことが出来ると言うことに驚きます。また、全体的に、非常に不明瞭なアンビエントな電子音楽で、Voも歌うではなく、語るような明確なメロディのないもので、物音のような音も時に聴取出来るのですが、それらのサウンドが相互反応し合って、独自のアトモスフィアを持った音楽に昇華されています。また、歌詞がギリシャ語の曲もあるので、その語感も独特な響きを持っています。そんな彼女のソロ作品は、今まで聴いたことがない雰囲気なので、静かめの音響系音楽が好みの方にはお勧めします❗️ A4 “Τον Σεπτέμβριο/In September” https://youtu.be/BWxhCzLbJ8c?si=zRIF49NlYEHdJAkh [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_mQi0bNjccmtc3OSD65Urwh-dPqEFp2GCw&si=X7VPL-RKb8cjaLXt [BandcampのURLも貼っておきます] https://lenaplatonos.bandcamp.com/album/balancers #LenaPlatonos #ΛέναΠλάτωνος #Balancers #Εξισορροπιστές #DarkEntries #SelfCompilation #PreviouslyUnreleasedTracks #1982-1985年 #Greece #ElectroPop #Experimental #Synthesizers #SoloArtist #Pianist #Composer #GreekElectronicScene
Synth Pop / Experimental Pop Dark Entries 2250円Dr K2
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Getting The Fear “Death Is Bigger 1984-85”
これは謎物件!こんなの通販で購入したのかなぁ?と思いつつも、Discogsを見たら、何と!Vo(BeeことPaul Hampshire)以外はThe Southern Death Cultのメンバーとのこと!ビックリしましたよ。こりゃゴスか!と思い、取り敢えず、Getting The Fear (以下、GTFと表記)を少し調べてみました。Discogsによれば、正規のアルバムは無く、シングルを1枚出しているだけのようです。このバンドを語る上では、The Southern Death Cultを話さないと進まないので、先ず、そちらの方の紹介をしておきます。1979年に、Yorkshire州Bradfordで活動していたViolationが母体になっています。その時には、Barry Jepson (B)とHaq Nawaz ‘Aki’ Qureshi (Drs)が、Mick (G)なる人物とやっており、たっぷりとリハをやって、ライブ・デビューもしています。また、1981年1月には、4曲入りデモテープを録音していますが、その後でしょうか、Mickが脱退し、代わりに、Ian Astbury (Vo)とDavid "Buzz" Burrows (G)が加入し、バンド名をThe Southern Death Cultと改名します。そして、1981年10月29日に、BradfordのQueen’s Hallで、ライブ・デビューを飾り、当時はポジティブ・パンク(通称「ポジ・パン」)とも呼ばれ、後にゴス・ロックとも呼ばれる存在になります。英国ツアーを積極的に行い、シングルのプロモートもやっています。また、1982年終わりには、BauhausやTheater Of Hateのオープニング・アクトも務めていますが、1983年2月26日のマンチェスターでのライブを最後に解散しています。同年4月には、VoのAstburyは、元Nosebleeds/元Theatre of HateのBilly Duffy (G)と一緒にDeath Cult、そしてThe Cultと名前を変えて、活動していきますが、Death Cult/The Cultは、単なるメジャーなハードロックバンドになってしまい、全くの別物扱いになります。それで、他の3人のメンバーは、Paul Hampshire (Vo)を加えて、GTFを結成、1984年にシングル"Last Salute"をRCA Recordsから出して、1985年に解散しています。と言う訳で、GTFは短命なバンドであったのですが、何故か、米国のインディーレーベルDias Recordsから、デモトラックを含むセルフ・コンピ・アルバムでもある本作品が、2021年にリリースされることになりました。盤の方も、通常の黒盤以外にも、Purple/Clear Splatter盤が200部、 Bone White盤が400部、Clear Purple盤が600部、Clear盤が800部と限定盤が沢山出ています(私の購入したのはClear Purple盤です)。一応、メンバーを書いておくと、BarryJepson (B), David ‘Buzz’ Burroughs (G), Haq ‘Aki’ Nawaz Qureshi (Drs), Paul ‘Bee’ Hampshire (Vo)の4人がGTFとなります。 それでは、本作品の各曲を紹介していきます。 ★A1 “Rise (demo version)”は、デモトラックですが、音は良いです。The Southern Death Cultとは違って、良質なポスト・パンクな曲になってますね。 ★A2 “Dune Buggy Attack”は、Gの弾き語り的なしっとりとバラード調に始まり、やがてマーシャル調の曲調に転化していきます。オーボエらしき木管楽器がアクセントになっています。 ★A3 “Last Salute (demo version)”は、シングルにもなったGTFの曲のデモトラックですが、上下するBが特徴的な元気一杯の曲です。サビのコーラスも良きかな。 ★A4 “Against The Wind”は、Joy Divisionのようなハイハットの刻みで、この時期の多くのバンドの流行のアレンジだったのでしょうか?Gのカッティングもファンク調ですね。 ★A5 “We Struggle”も、全体的にスローなバラード調の曲で、Hampshireの表現力豊かなVoもグーです。 ★B1 “Sometimes”は、アコギやヴァイオリン等の弦楽器も使った良質なポップソングで、もうバックがゴスとかポジ・パンとか関係ないですね。 ★B2 “Yurune (demo version)”でも、アコギから始まり、バネのあるファンク調の曲で、Voも中々聴かせてくれます。また、後半のテンポの崩しも良いです。 ★B3 “Fatal Date”も、しっとり目の曲ですが、Gの細やかさに痺れます。途中のクラヴィコードも良い感じです。 ★B4 “Getting The Fear”は、バンド名にもなった曲ですが、Gの多重録音とBラインの絡みがカッコ良いポスト・パンクな曲です。Voも中々上手く聴かせてくれます。 ★B5 “Swell (demo version)”は、一瞬、ネオアコか?とも思わせるようなGのカッティングが効いている良曲です。途中、珍しくGソロっぽいパートもあります。 聴き通してみますと、ポジ・パンとかゴスロックの片鱗は無く、どちらかと言うと、ネオアコ系に近いのかなと感じました。Gも歪んでいませんし、Voもどちらかと言うと歌い上げるスタイルなので、個人的には安心しました。確かに、突出したものは無いのですが、英国的な仄暗さを持ったバンド・サウンドで、そこら辺が好きな方はハマるかもしれません❗️なので、そこら辺に興味のあるリスナーさんはチェックしてみてはどうでしょうか! B5 “Swell (MV version)” https://youtu.be/Fsu7Uuyn31A?si=TAXceZcY45cnFGlN [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_nqxBVBujB0sp0UdrfJ_zX1xJ19ZOheyn4&si=NEuzGQH7vr1Y95Qu #GettingTheFear #DeathIsBigger1984-85 #DaisRecords #SelfCompilation #OnlyOneAlbum #PostPunk #NeoAcoustic #TheSouthernDeathCult #BarryJepson #David’Buzz’Burroughs #Haq’Aki’NawazQureshi #Paul’Bee’Hampshire
Post Punk / Neo-Acoustic Dais Records 1900円Dr K2
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ADN’ Ckrystall “De Unicornis Veritate”
ADN’ Ckrystallって聞いて、知ってるって方は相当のシンセマニアですね。私は全然知らずに、まあ中古だから買っちゃおうか位の気持ちで購入しました。この作品は1982-1983年に録音され、1983年には出来上がってはいたのですが、今までリリースはされていなかった「幻のセカンド・アルバム」と言うお蔵入り物件です。それで、スペインのWah Wah Recordsが発掘して、2021年にリリースしたと言う訳です。それで、ADN’ Ckrystallと言うのは、仏のシンセ奏者/宅録者であるErick Moncollinのソロユニット名で、その意味は、ADNと言うのは仏語でDNAのことで、Ckrystallと言うのは、先ず、Ckが本名のeriCkから、Yは彼自身のレーベル或いは曲名Ysil-puckiesから、LLは”aLL… Viola !”のLLから取って、”Jazz’ Mad (彼の中では1980-1983年らしい)”を思いついた「森」を繋げて作った造語です。先ず、Erick Moncollinのバイオグラフィーを調べてみました。Moncollinは、南仏Tarbes近郊の街で生まれ、子供の時に独に4年、パリに3年、そうして仏Tourouseに居を構えています。幼少期には、King Crimsonや”The BeatlesのWhite Album”, T-Rex等を聴いており、その内、Hawkwind, Captain Beefheart等を聴いて育ち、大学時代には、Gong, Utopia, John Cale, Magma, The Stooges, Amon Duul 2, Guru Guru, Tangerine Dream等の電子音楽系クラウトロックにのめり込んでいます。時に仏のCatharsisがお気に入りだったとか。それで、Oberheim 2-4 & 8, SEM Voices, EMS Synthi 100, VCS 3, RMI Kbd Computer 1のシンセに触れたくて仕方がなかったそうです。しかし、シンセ・ショップで、Korg MS-20 flat prototypeを試してみて、凄い音が出ることに気付き、気に入ったそうで、その時に、Yamaha CSQ80のテストをしていたVangelisと、またはMini-Moogを弾いていたTim Blakeともジャムっていたそうです。その2週間後、最初のリズムマシン, ピアノ-ストリングスKbd, エフェクター2台, モノ・シンセを購入し、1977-1979年はToulouseのアートスクールでシンセを使い倒して、色んな実験をしています。1980-1983年が”Jazz’Mad”の年になりますが、その時期に、Moncollinは洞窟や重機置き場、農場のような場所で、ライブ活動を始めています。その時に、地元でシンセの達人Benoit Hutinと出会い、そのライブ音源を聴いたHutinがADN’Ckrystallのアルバムを出すように言われ、初めてスタジオでの録音を経験しています。その時には、Moncollinは、Crumar, ブラス・エフェクターとヴォリューム・ペダルを繋いだMultiman 52, 2台のKawai Synthi 100-F, Roland CR-65, Korg PS-3200, Roland Jupiter-4, Boss Flanger, MXR phaser、それにTEAC 8トラック・レコーダーを使っていましたが、その後のライブの前に、Roland SH-05とSCI Pro-Oneも購入しています。そうして、最初はシンセ奏者のいるバンドを参考にしていましたが、どうも彼等はシンセ以外の楽器も演奏しており、シンセの可能性を拡大しようとはしていないようでした。1977年にパンクが勃興してきた時に、Gary Numan/Tubeway ArmyやSimple Mindsが出てきましたが、仏ではそれ程シンセポップ指向のバンドは多くはなかったとのこと。しかし、1980-1990年には、ゴス/ガレージ/バットケイヴ/ニューウェーブ/エレクトロ/ニューロマ/パンク/実験音楽/ファンク/ポップ・バンドがゴロゴロ出てきましたが、玉石混交でした。一方、ADN’Ckrystallのライブは、そのアナログ機材のセッティングは大変でしたが、Moncollinはそんな機材を無理矢理パッチングしたりして乗り切っていました。この時期(Jazz’Mad)のライブで覚えているのは2回だけで、1回目は、1982年12月のクラブL’Enferで、Moncollinは中心に位置し、その周りに観客が配置されていました。観客は踊っており、1980年代ニューウェーブの反応だなと思っていたそうで、ライティングもあってサイケなニューウェーブ・パーティーとなっていました。もう一つは、ピレニア山脈のクラブ活動Le Puouletでのライブで、Moncollinが歌っている時、酔っ払った警官が、彼のシンセを弾きたがって、演奏の邪魔をしてきたので、クラブのオーナーがこの警官を叩き出し、店を閉めて、もう一度、最初からリプレイしたことらしいです。Moncollinは、特にシンセが上手く弾けた訳ではありませんが、とにかく、彼はシンセの音が好きであったとのこと。ある友人は、「Jazz’Madはまるでロード・オブ・ザ・リングのサントラのようだ」と言っていたそうですが、Moncollin自身はクラウトロックからの影響が大きいと思っていたそうです。彼は、1982年作のアルバム”Jazz’Mad”時代から、割とコンスタントにアルバムをリリースしており、本作品が22枚程のアルバムとなります。この後に、1枚10㌅Mini-LP”Frankraut”を2023年に出しています。ちょっと、データと言うよりも、彼の回想録みたいな感じなんですが、彼が、ADN’ Ckrystallとして、買い集めたシンセを使い倒して、エレクトロな音楽をずっとやり続けてきたのは分かってもらえたでしようか? と言う訳で、本作品”De Unicornis Veritate”を紹介したいと思います。この作品は、ファースト・アルバム”Jazz’Mad”をリリースした後に、セカンド・アルバムとして、直ぐに出す予定だったのですが、何故かお蔵入りになってしまった作品なので、1983年と言う時代背景で聴いてみたいと思います。なお、作曲・演奏・打ち込み・録音等はMoncollin1人やっています。では、内容と各曲を紹介していきたいと思います。 ★A1 “De Unicornis Verythème”は、細やかなシンセの手弾きによる、ちょっと悲しげな旋律から成る小曲です。 ★A2 “In Mutabilitate”も、割とアップテンポなリズムマシンも使ったシンセの手弾きで、音色も余り変わらないですが、一発録りっぽいのか? ★A3 “De Codex Unicornis”も、懐かしいヴィンテージモノのアナログ・シンセによる曲で、リズムマシンも使ってます。ここでは、シンセらしいSE的音作りも披露しています。多分、シーケンサーも使っていないのでは? ★A4 “Unicornis Garden”もチャカポコしたリズムマシンに、ポリシンセのコード進行と、モノシンセによるメロディが組み合わさった曲ですね。如何にも1980年代初頭のシンセの音色です。 ★A5 “Dragonus, Dragonis”も手弾きシンセとリズムマシンによるややアップテンポの曲ですが、リズムマシンの音色が、どうもエレクトーンに付属しているようで、懐かしいです。 ★B1 “De Spirito Signo”は、大体同じようなリズムパターンで、手弾きによるアナログ・シンセのインスト曲なのですが、そのテクニックは凄いです。リズムマシンに、ポリシンセによるコード進行がメロディ代わりになっていますね。 ★B2 “De Unicornis Creature”は、ベース・シンセとコードを弾くポリシンセに、柔らかいモノシンセのメロディが乗ると言う曲ですね。 ★B3 “La Corne Spiralée”は、リズムマシン無しで、ポリシンセのコード進行にモノシンセによるメロディと言う簡素な弾き語り(勿論Voはないですが)から成る曲ですね。後半にもリズムも出てきます。 これは、正直、余りにもテクノロジーを使わな過ぎて、全部、手弾きでほぼ一発録りのようで、聴いていて、折角のシンセなんだから、もっと音色だけでも替えたりした方が良いのでは?と思いました。そうですね、私がまだ多重録音していなかった高校生時代に、一発録りで曲を録音していた時のことを思い出しました。せっかく、色々集めたシンセを沢山持っているのに、そこら辺は惜しいです❗️多重録音すれば、更に表現が広がったと思いますよ。また、全曲、インストなのも、ちょっと残念です。そう言う意味では、最近の作品も聴いてみたいですね! [live at Kernknach on Oct. 27, 2012] https://youtu.be/Mznj142vaaY?si=RSWkpunweeO7Pye5 [本作品はYouTubeにもBandcampにも無かったので、同時期のアルバム”Jazz’ Mad”を貼っておきます] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_lWul6UC9qOn0dEDUFlBB_GNddVqBszYF0&si=PNf4QkRxfv6q3_J_ #ADN’Ckrystall #DeUnicornisVeritate #WahWahRecords #French #Synthesist #SynthMania #幻のSocondAlbum #1983年recording #2021年release #PreviouslyUnreleased #SynthWave #一発録り #インスト曲 #Synthesizers #ErickMoncollin
Minimal Wave / Experimental Wah Wah Records 3000円Dr K2
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Siegmar Fricke / A Thunder Orchestra “Energy Is Eternal Delight”
このアルバムは元々は、ポルトガルのカセット・レーベルSPHから1990年にリリースされていたスプリット・カセット作品の再発なんですが、何と、この再発を2枚組レコードで行ったのが、日本(東京)の電子音楽レーベルCalax Recordsなんです。何となく親しみを感じますね。それで、このスプリットのアーティストについて、先ず、紹介していきたいと思います。Siegmar Frickeは、独の電子音楽/実験音楽家で、Pharmakustik名義で、Conrad Schnitzler先生とのコラボ作品3部作(“Kontraktion”, “Extruder”, “Schubkraft”)を出しており、そのことについては以前に紹介しました。なので、そこで彼のバイオグラフィーに関してはそこの紹介文をご参照下さい。Fricke氏は、他にも、復活後のMaurizio Bianchiとも何作もコラボ作品を出しており、活発に活動しています。一方、A Thunder Orchestraの方ですが、ベルギーのDirk De Saever(本名Dirk Desaever)のソロユニットです。他にもDanton's VoiceとかWhite House White名義でも作品を出しています。しかしながら、情報は少なかったんですが、Calax Recordsのインタビューで少しハッキリしました。Desaeverは、ベルギーのHobokenにて、16歳の時に、音楽を始めていますが、最初はカバーバンドのドラムだったようです。しかし、余り上手く叩けなかったのと、練習部屋に置いてあったアナログ・シンセ(Korg MS-10)をいじるのが面白かったことから、シンセに転向。その後、父親が資金を出してくれたので、ドラムマシンやシンセや録音ソフトを入手して、22~23歳まで自身の音楽作製に没頭しています。その間に、自身の個人レーベルClimax Productionも運営し、先述のように様々なユニット名で活動しています。同国のバンドThe Neon Judgement, The Klinik, Absolute Body Control達ともカセット・カルチャーで結び付いていたようです。そして、彼が影響を受けたアーティストはSkinny Puppy, Laibach, Severed Heads, Chris & Cosey, Die Form, Cabs, Test Dept., The Virgin Prunesとのことですが、先述のように22~23歳の時に機材を全て売り払って、音楽活動から手を引いています。その後、大学の司書をやりながら、何と(!)クラシック・ギターを練習して、今やバロックやルネッサンス、タンゴなど幅広いスタイルの曲を演奏できるらしいです。それでも、Alex Turnerがプロデュースした曲は大好きで、他にもThe Last Shadow Puppets/”Aviation”やPearl Jam/"Alive”, Joy Division/"Atmosphere", Bauhaus/"The Passion of Lovers"だとかは彼のお気に入りだとか。いやはや、こう言う方だとは思いませんでした。 と言う訳で、本作品を紹介していきたいと思います。LP1はSiegmar Fricke氏の曲全8曲から成り、LP2はA Thunder Orchestraの曲全8曲から成ります。 LP1 Siegmar Frickeサイド A1 “Go Skate Or Go Home!”は、意外にもストレートなビートとシグナル的シンセから成るミニマルな曲で、所々でのエフェクトの掛け方が絶妙。 A2 “This Is John”は、男女の語りをサンプリングして弄り回し、ミニマルなピアノとキックと組み合わせた曲で、中々面白い。後半はシンセのリフが! A3 “Parking In France”も、やはり声のサンプリングと、独特のグルーヴを持ったリズム及びデジタルっぽい音色のシンセが特徴的な曲です。 A4 “On the 3-hour-jam”でも、タイトルの語りをサンプリングして、如何にもクラウトロックなシーケンスとメロディを合わせた彼らしい立ち位置の曲です。 B1 “Rap Signals”は、シンコペーションの効いたリズムと声のサンプリングとが絶妙なミニマルな曲で、テープ・スクラッチ等のSEの使い方が秀逸です。 B2 “In Good Shape“では、馬の駆けるようなリズムとウィスパー・ヴォイスのようなシンセの浮遊感が堪らない曲です。 B3 “This Is John (Remix 91)”は、A2のリミックスみたいですが、サンプリング(男声のみ)とピアノはそのままに、キック音と(笛の様な)電子音が強調されています。 B4 “Strikes”は、デジタルっぽいシンセに導かれて、ミニマルなビートと構成から成る曲となっており、コード進行がちょっと哀愁的ですね。 LP1のFrickeサイドは全体的に、電子系クラウトロックからミニマル・ウェーブへの橋渡しとなるような作品になっており、以前聴いたParmakustik名義と全く違っていて、ちゃんとポップになっている所が面白かったです。独逸人独特のミニマルさと声のサンプリングを多用しているのも高得点です。 LP2 A Thunder Orchestraサイド C1 “Birch”は、いきなりの6/8拍子の変則エレ・ポップで、危機迫る感が半端ないです。恐らくヴォーカルもDesaever自身ですね。 C2 “Coming Closer”は、またまた交響楽のような演奏なんですが、これ、どうやって作ったのでしょう?因みに切羽詰まったヴォーカル入りです。 C3 “Reaching Out For That Brand New Little Nothing”で、やっと普通(?)のエレ・ポップらしき曲になってきましたが、構成は極めてミニマルです。 C4 “Show You The Way”でも、変則的なマシンリズムに、ジャンクな打楽器とダルダルなヴォーカルから成る変態的な曲です。 D1 “Columbarium”は、微音でスタートしたかと思ったら、重くて太いシンセ・ベースから成るシーケンスとキックが始まり、それに隠れてシンセ音が遊んでいますが、最後はしっとりと終わります。 D2 “Dropsical”も、アンビエンスなシンセ音とキックの対比が面白く、C面に比べて大人し目な曲ですね。 D3 “She Lives In A Dream”では、またまた室内楽のような演奏をバックに、ハキハキしたヴォーカルが乗ってきます。 D4 “Retribution”でも、大人しいイントロから、怒涛のリズムがフェイドインして、やがてシンセによるミニマルなリフが入ってきます。 A Thunder Orchestraサイドの方は、より変態的と言うか仕掛けがある曲が程良く並んでおり、ここら辺は何かある意味「素人」っぽい感じがして、当時のカセット・シーンを懐かしく思い出しました。後、謎なのは、C2やD3でのクラシックの演奏のようなバックの音はどうやって作ったのかな?と不思議に思いました。 総じて、両者ともミニマルな構成が基本にあって、Fricke氏はクラウトロックからのガチガチの独逸っぽいアプローチを行い、A Thunder Orchestraはより実験的で素人的なアプローチを行っており、その違いも非常に興味深かったです❗️ひょっとすると国内盤でも購入出来るかもしれないので、興味のある方は是非‼️ LP1 Siegmar Fricke A1 “Go Skate Or Go Home!” A2 “This Is John” A3 “Parking In France” A4 “On the 3-hour-jam” B1 “Rap Signals” B2 “In Good Shape“ B3 “This Is John (Remix 91)” B4 “Strikes” LP2 A Thunder Orchestra C1 “Birch” C2 “Coming Closer” C3 “Reaching Out For That Brand New Little Nothing” C4 “Show You The Way” D1 “Columbarium” D2 “Dropsical” D3 “She Lives In A Dream” D4 “Retribution” [original cassette album] https://youtu.be/S80_AiSXWIs?si=jyvIPPipFIuAoIur [SoundcloudのURLも貼っておきます] https://on.soundcloud.com/DKccZ26Af3hCmGp58 #SiegmarFricke #AThunderOrchestra #EnergyIsEternalDelight #CalaxRecords #SPH #Reissue #2LPs #SplitWork #Germany #Belgium #DirkDeSaever #Electronic #MinimalWave #Groove #Sampling #Experimental #Classic
Electronic / Minimal Wave / Experimental Calax Records 不明Dr K2
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Himukalt “Dreaming Of A Dead Girl”
米国女性パワー・エレクトロニクスの筆頭、その名もHimukalt!その正体は、米国ネバダ州在住のEster Kärkkäinen女史です。彼女は、ヴォイス、エレクトロニクスだけでは無く、鋏を使った独特のコラージュ・アートワーク(xerox)もこなしており、欲望、性欲、敵意、怒り、マニア、抑鬱、血液、肉欲に関するサウンドを使うことで、肉体の複製や再生を試みることをコンセプトに表現活動をしています。今回は、彼女の本気度を知らしめることになった、パワ・エレ総本山の独Tesco Organisationからのリリース作品”Dreaming Of A Dead Girl”を紹介しましょう。Himukaltのバイオグラフィーについては、前回、書いた通りなので、そちらをご参照下さい。両面とも3曲ずつ収録されています。彼女のコンセプトがより一層剥き出しになった感がアルバム全体に漂ってますね。全体の第一印象は、押し殺したヴォイスが特徴的なパワー・エレクトロニクス作品です。それでは、各曲について紹介していきましょう。 A1 “Sehr Empfindlich”は、小声の囁きとゆったりと圧死させられるような電子音から成る曲ですが、その声が何故か「いけないこと(個人的には近親相姦を想起)」をしてしまった独白のように聴こえます。 A2 “The Chemical Lust”は、ひび割れた電子音とリズムが、もろパワ・エレのストロング・スタイルで、更に潰れ、歪んだ声が聴こえてます。 A3 “Hysterical”では、最初、通奏低音の上に乗る形で、女性の叫び声とか呻めき声のコラージュから始まります。そうしていると、テンポの速いキックとKärkkäinenの歪んだヴォイスによる告発が始まり、段々と切迫して、ドラマチックな展開になっています。 B1 “Suicidal Ideation”は、淡々としたリズムにぶ厚い電子音と抑制されたヴォイスが乗る「告白」系のパワ・エレです。淡々としている所に余計、悪意を感じます。 B2 “Naked, Soiled, Desperate”でも、ひび割れた持続電子音と淡々としたKärkkäinenの独白、そこに切れ込む電子ノイズ。題名通り、完璧にして名曲です! B3 “This Pig Is Crying Out”も、また緩やかな波状電子音と押し殺した独白系ヴォイスから成り、段々と彼女のヴォイスは電子音に覆い被されてしまい、後半にはハーシュな電子ノイズに蹂躙されてしまいます。 何となく、後味の悪いアルバムだと感じますが、これはEster KärkkäinenのHimukaltとしてのコンセプトがより明確になったことを意味するものと想像します。独白系のヴォイスは、抑制された「もの」(=秘密にせざるを得ない物事)を体現し、それ故に、この作品では必然であったのでしょう。それ故、危険なアルバムですので、聴く際は、注意して下さい‼️R18指定ですね! A3 “Hysterical“ https://youtu.be/o6mVJMAmac8?si=UxirK07oWPgRppQn [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_mhwpE74YaPbtE463Je_oY0OwR8M-2MSUE&si=qk9izIoRCVV0Ly2j [BandcampのURLも貼っておきます] https://himukalt.bandcamp.com/album/dreaming-of-a-dead-girl #Himukalt #DreamingOfADeadGirl #TescoOrganisation #PowerElectronics #Voice #13ThAlbum #Collage #Artwork #Female #SoloUnit #独白 #電子音 #EsterKärkkäinen
Power Electronics Tesco Organisation 不明Dr K2
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Conny Frischauf “Die Drift”
これも謎物件です!Conny Frischaufって誰?多分、信頼の独レーベルBureau Bから出ていたので、買ったのでしよう。余りに知らないので、ちょっと調べてみました。Conny Frischauf (「コニー・フリシャウフ」と発音)はオーストリアのViennaの宅録アーティストで、本作品”Die Drift”は彼女のデビュー・アルバムにして現在、唯一のアルバムであると言うことが分かりました。それで彼女は、2013年に、ポルトガル出身のRick Linsと共にRSHMTHと言うデュオで、カセット作品を出しているので、その前辺りから音楽活動をやっていたみたいです。彼女のソロとしてのデビュー12㌅EP “Effekt & Emotion“は、2018年にInternational Major Labelから出ていますので、ソロとしてはこの前辺りから活動を開始しているのでしよう。その後も、2019年には、独Berlinのレフトフィールド・ダンスレーベルKame House Recordsから、12㌅EP ”Affekt & Tradition”を出しています。Connyが何故、独の電子音楽系プログレ・レーベルBureau Bからアルバムをリリースするようになった経緯の詳細は不明ですが、彼女の音楽が、クラウトロックやニュー・エイジ、ネオ・フォークなどを通過して、現在、レフトフィールド・シンセ・ポップをやっていることと関係があるからでしょう。なお、同年2021年には、プロモ・シングルとして”Parapiri (single version)”もCDRとして出しています。彼女の音楽は、ユニークな電子音とパーカッシヴなビート或いは、軽やかな歌声が宇宙に向かって口笛を吹くように、また水面を描く波紋のように静かで豊かな広がりを生み出すようなものであるとも評されており、Laurie AndersonやCate Le Bonの作品も想起させる程の独創性があるとか(ここら辺の音楽は私は聴いていないので良くは分かりません)。まあ、兎に角、一風変わったシンセ・ポップをやっているようですが、これ以上の情報は見つからなかったです(すまん!)。 と言う訳で、Conny Frischaufのデビュー・アルバム”Die Drift”を紹介していきましょう。内容は両面とも5曲ずつ収録されています。全体の印象としては、最近の宅録システムをフルに使ったエレクトロ・ポップなんですが、ディレイなんかのエフェクトの使い方や曲の構成仕方が、通常のバンドのそれとは異なり、かなり自由度の高いスキルを見せてくれます。確かに、電子音楽系クラウトロックっぽい瞬間も垣間見れるのですが、彼女のアレンジ力で、全く古臭い面は皆無です。と言う訳で、各曲を聴いていきましょう。 A1 “Rauf”は、散歩しているリズムで、多重録音されたヴォーカルが印象的な曲。 A2 “Parapiri”では、ダウンテンポなんですが、使われている電子音が心地良すぎます。タイトルを執拗に歌う彼女の声は澄んでいて、天使のよう。 A3 “Fenster Zur Strasse”では、ヴォーカルの多重録音で幕を開け、朗々と流れるシンセと上手く絡んでいます。途中からラップ調にも⁈ A4 “Sonntag”もゆったりとしたリズムとドローン音で始まりますが、太めのベース音とシンセのリフの使い方が面白いインスト曲です。 A5 “Auf Wiedersehn”は、回転数間違えたような存在感のあるベース・シンセとハキハキと歌うヴォーカル、それがスラップ気味のベースに変わって、クラブ・ミュージックっぽく変化していきます。 B1 “Zeit Verdrehen”は、可愛らしいリズムと太いシンセ・ベースと言うアンバランスに、甘めの独逸語ヴォーカルが乗っている曲で、ディレイが掛かったヴォーカルが面白いですし、クラウトロックっぽいです。 B2 “Roulette”でも、やや民族音楽調のリズムとシーケンスに独逸語ヴォーカルが乗っており、キッチュな感じ。最後にシーケンスが壊れます。 B3 “Eingaben Und Ausnahmen”では、シンセ・ベース・ソロが展開され、トランペットらしきメロディが入ってくるジャジーな曲。 B4 “Private Geheimsache”は、口笛のようなメロディとガチャガチャしたリズムに、硬めの独逸語ヴォーカルが乗ってくる不思議な曲です。 B5 “Freundschaft”では、アンビエントなシンセにトランペット様のシンセとディレイを掛けた物音シンセが入ってきます。やがて静かなリズムや穏やかなヴォイスも。ここら辺はクラウトロックっぽいです。 やはり、現代っ子的で、ちょっと真似出来ないエレクトロ・ポップでしたね❗️あと、ベース音に存在感があるのは、クラブ・ミュージックからの影響ですかね? まあ、ジャケがイマイチですが、これに惑わされず、Conny Frischaufの作品に触れてみて下さい‼️ A2 “Parapiri” https://youtu.be/S6VJWBjV_HU?si=t51So481NyDlcQy- [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_kXjdvRT05rQ-0L2z6l0_Wpu0uYcuYRRFE&si=2qjqrmHcS7kRmH0s [BandcampのURLも貼っておきます] https://connyfrischauf.bandcamp.com/album/die-drift #ConnyFrischauf #DieDrift #BureauB #Viennese #FirstAlbum #Left-FieldSynthPop #Electronic #FemaleVocal #Krautrock #NewAge #Synthesizers #打ち込み #宅録 #RSHMTH
Left-Field Synth Pop Bureau B 880円Dr K2
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Métal Urbain “Panik!”
これは、思わず買うでしょ‼️仏のエレクトロ・パンクMétal Urbainのセルフ・コンピ・アルバムの一つ”Panik!”です。2023年現在、一番新しいアルバムなので、入手はし易いと思います。何故、私が、このバンドに注目したか?ですが、それは、昔、平沢進が、P-Modelを始めるにあたって、Métal Urbainも参考にしたと言う噂を聞いていたからです。それでは、先ず、Métal Urbainのバイオグラフィーを簡単にご紹介しておきます。Métal Urbainは、仏Parisで1976年に結成された仏最初のパンク・バンドの一つです。彼等のユニークなところは、The ClashやSex Pistolsなどの初期パンクに影響を受けながらも、一方で、Lou Reedの”Metal Machine Music”の電子音にも影響を受けていたことです。その為か、彼等の編成は、ギターの他にドラムマシンとシンセが入っており、ドラマーがいなかったことも特異でした。結成時(1976年6月〜1977年5月)のメンツは、Clode Panik (Vo: 本名Claude Peronne), Eric Débris (Synth: 本名Eric Daugu), Zip Zinc (Synth: 本名Jean-Pierre Zing), Rikky Darling (G: 本名Eric Feidt)で、その後、Zip ZincとRikky Darlingが脱退した為、Hermann Schwartz (G: 本名Jean-Louis Boulanger), Pat Lüger (G: 本名Patrick Boulanger)が加入していますが、1978年12月に、今度は、Clode Panikが脱退したので、Eric Débrisがヴォーカルとシンセの担当になります。その後、1979年7月に、Charlie H. (Synth: 本名Charles Hurbier)が加入したので、Eric Débrisはヴォーカルに専念しています。この時期に、スピンオフバンドMetal BoysやDoctor Mix and the Remixを並行してやり始めます。その後、1980年2月に、SchwartzとLügerの2人のギタリストがDesperadosを結成する為に脱退し、オリジナル・メンバーのRikky Darling (G)が1980年から再加入しています。結成当初から彼等は、アルバムよりもシングルのリリースに注力しており、最初のシングル”Panik”を仏Cobra (このレーベルは元々は電子音楽系プログレのレーベル)より1977年に出しており、同年には、シングル"Paris Maquis"も英国Rough Tradeよりリリースしています。英国ではJohn PeelやRough Tradeのお陰で、多少の反響はありましたが、仏ではパンク・シーンは盛り上げっていなかったので、殆ど無視されていました。1981年に、Métal Urbainは、この時期、唯一のアルバム”Les hommes morts sont dangereux”を仏レーベルCelluloidよりリリースしますが、これは新録ではなく、シングル曲やBBCなどでの録音曲或いはライブ音源をコンパイルした内容となっています。しかしながら、同年にバンドは解散してしまいます。彼等のエレクトロニクスへのアプローチは、後進のThe Jesus and Mary Chain, Bérurier Noir, Steve Albini (Big Black)にも影響を与えたと言われています。2003年に、Métal Urbainは、Éric Débris (Vo, Machines), Hermann Schwartz (G, Chorus), Vott (G, Chorus), Jérôme Solo (Machines, Chorus)のメンバーで再結成し、Jello Biafraのプロデュースでアルバム”J'Irai Chier Dans Ton Vomi”をリリースして、現役で活動しています。ザッとMétal Urbainの流れはこのようになります。 それで、本作品”Panik!”について紹介していきます。先述と通り、本作品はセルフ・コンピ・アルバムなので、新緑は無いです。なので、参加メンバーとしては、Clode Panik, Eric Débris, Hermann Schwartz, Pat Lüger, Zip Zincが主で、一部の曲にMiss O.D. (Chorus)とRikky Darling (G)も参加しています。なので、1976年~1978年辺りの音源だと思います。全体の印象は、仏語で汚く歌うヴォーカルと、ハードロックな分厚いギター、ヘナヘナとしたリズムを刻むドラムマシンとシンセとから成る異形のパンク・ロックなんですが、それまでは、今挙げた3つの要素はどれも噛み合わないと思われていました。しかしながら、彼等は何のマジックか?それらを融合させた何処にも無い「ロック」を演奏しています❗️大体、ベースがいないのも変だし。そもそも、これは「パンク」なのか?まあ既成の概念をぶち壊すのがパンクなら、彼等程、革新的に間違い無く「パンク」な連中はいないと言えますね。しかも、この路線を貫いたのが、どのパンク・バンド(Sex Pistols等に代表される英国のパンク・バンド全て)よりも、正しくパンクなんだよなぁ❗️兎に角、一度、聴いて欲しい、パンクなアルバムです!大推薦‼️それにしても、A4 “Lady Coca Cola”やA8 “Metal Urbain”のむちゃくちゃさ加減は一聴に値しますね。 収録曲のクレジットです。 A1 “Hystérie Connective”、 A2 “Ghetto” A3 “Clé De Contact” A4 “Lady Coca Cola” A5 “Panik” A6 “Futurama” A7 “Anarchie Au Palace” A8 “Metal Urbain” B1 “Paris Maquis” B2 “Pop Poubelle” B3 “50-50” B4 “Atlantis” B5 “E 202” B6 “Numéro Zéro” A5 “Panik” https://youtu.be/3BiF1zVAMuk?si=3co5fnqzw7HHnCuS [full album] https://youtu.be/vzR_-PmlTec?si=0Ffy--G8RcXXhj6T #MétalUrbain #Panik! #CleopatraRecords #SelfCompilationAlbum #FrenchPunk #SynthPunk #PunkRock #DrumMachine #Synthesizers #Remastering #SingleCollection #ClodePanik #EricDébris #HermannSchwartz #PatLüger #ZipZinc #MissO.D. #RikkyDarling
Synth Punk Cleopatra Records 2764円Dr K2
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John Duncan + Stefano Pilia “Try Again”
このブツも当時、John Duncanの名前を見かけて購入したアイテムだと思いますが、すっかりどんな音楽だったのか?を忘れてしまったので、今回、再度、聴き直しました。John Duncanについては、既に何回かご紹介したいますので、彼の最近の活動と、今回の相方である伊ミュージシャンStefano Piliaについて、ご紹介したいと思います。Duncanは元々は米国カンサス州Wichita生まれの米国人ですが、1970年代から、LAでLAFMSと関わったり、西海岸で、パフォーマンスやコンセプチュアル・アート・シーンで活動を開始しています。しばしば、彼のパフォーマンスは、権力や権威或いは支配に対するものが多く、例えば、有名なのは「死姦パフォーマンス」で物議を醸し出しています。その後、日本に活動の拠点を移し、海賊ラジオやAQMレーベルを運営、その頃は、短波ラジオの音とビデオとを組み合わせたパフォーマンスをやっています。次に、彼は蘭Amsterdamへ、更に伊Udine、現在は伊Bolognaに居を構えて活動しています。近年では、歌詞を作り、歌を歌うと言った、これまでのコンセプチュアルな活動/作品の真反対の作風になっています。一方、今回のコラボ相手Stefano Piliaですが、彼は、1978年生まれの生粋の伊人で、1995年からBolognaに住んでおり、最初は、パンクやロック・シーンで、ギターやウッドベースを担当していました。即興と電子音響作曲との融合したような音楽をやっていた3/4HadBeenEliminatedを結成し、ソロでも活動していましたが、2008年からはMassimo Volumeと、2010年からはZaireと、その他にもDavid GrubbsとAndrea Belfiから成るBGPトリオやMike WattとA. Belfiとから成るil Sogno del Marinaioともコラボで実験ロック的な活動をやってきており、2012年からは、Rokia Traorèでもギターを弾いています。近年では、ギターやループ、フィールド録音或いは他のアコースティックな音源を使った緻密なドローン作品を作るようになっており、サントラの作製や、演劇や映画、朗読、ダンス或いはヴィデオ・アートのアーティスト達ともコラボをやっており、CDなども沢山出しています。また、David TibetやZ’ev, Rhys Chatamなどなど多くのミュージシャンともコラボをしています。直近ではサウンド・インスタレーションを演っているようですが、Wire誌などでは好評を得ています。 今回は、そんな2人のコラボ・アルバム”Try Again”をご紹介したいと思います。先ず、クレジットを見ると、John Duncan (Lyric, Vo, Mix)とStefano Pilia (Synth, Processed Recording, Mix)となっていることから、やはり、「歌物」と言うことが容易に想像できますね。それでは、各曲を紹介していきます。 A1 “Try Again”から始まる本作品は、多分、バックの茫漠たる霞みのような音像はPiliaによるモノと思いますが、そこに乗っかるハスキーな声で呟くように歌うのはDuncanでしょう。またヴォーカルを重ねて録音したり、念仏のように”Try Again”をひたすら繰り返すのも、何らかの効果を狙っているのでしょう。しかしながら、バックの音には、明確なメロディな無いのですが、何とも言えない哀愁(?)を感じますね。そして、唐突に簡素な打撃音のみで終わります。 A2 “The Reprisal”では、不明瞭なPC音やキックやパルス音と逆回転ヴォイス、更にはオルガンなどが絡み合って、活き活きした曲となっています。また、Duncanのヴォーカルも重ねて多重録音されており、これが摩訶不思議な効果を醸し出しています。 B1 “The Sellout”は、テープの低速回転と逆回転とから始まり、どんどん空間が捻れていきます。そして、ハスキーなヴォーカルが今度はメロディアスに歌い上げています。 B2 “Obsolete + Comeback”は、シンセ音の多重録音で始まり、その途中途中にエフェクト処理されたヴォーカルが挿入されてきますが、段々とスペーシーになったと思ったら、またもや朗読のようなヴォーカルとバックの煙のような音塊がくんず外れず絡み合っていきます。 B3 “Fare Forward”も、A1のようにまたまた茫漠たるバックの音とそれに寄り添うようなコーラス、そうして、語りのように一つ一つの単語をハッキリと発音するヴォーカルが入ってきます。もうここまで来ると泣けてきますね。本当に悲しい曲です。最後はコーラスでしんみりと終わります。 ここに来て、何故、John Duncanが歌物を始めたのかは、寡聞にして知りませんが、何か考えがあるのでしょう。元々、コンセプトをしっかりと立てて、パフォーマンスをするタイプのアーティストなので。しかも、歌詞はゆっくりで、発音もハッキリしています。これにも何か意図があるように思います。そんな謎解きを含めた面白い作品だと思いますので、近年のJohn Duncanのことを知りたいのであれば、是非聴いて、謎を解いて下さい‼️ *アルバム各曲のYouTubeのURLを貼っておきます。 A1 “Try Again” https://youtu.be/q7KIgkPGy9A?si=kaV0q_UkJG3DvwTW A2 “The Reprisal” https://youtu.be/0v2fCSb8Vlg?si=FSXgD6ujgt4d23CU B1 “The Sellout” https://youtu.be/l3IV-mcIIL8?si=PBvFBHBcMM8Z27MJ B2 “Obsolete+Comeback” https://youtu.be/5miJNdl4g5w?si=5yOBXQ_CWTPBkO3p B3 “Fare Forward” https://youtu.be/MSAS48YufOE?si=-SeZyCzt29TM-piE [BandcampのURLを貼っておきます] https://mapledeathrecords.bandcamp.com/album/try-again #JohnDuncan #StefanoPilia #TryAgain #MapleDeathRecords #US&Italy #Bologna #CollaborationAlbum #Noise #歌物 #Experimental #ConceptualArtist #Vocal #Lyrics #RockScene #SoundInstallation #Synthesizers #SoundProcessing #DarkAtmosphere
Experimental / Vocal / Noise Maple Death Records 不明。Dr K2
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Cour de Récré “s/t”
これまた「謎物件」!殆ど何の知識も無く、ちょっとだけ説明文を読んで、購入したアルバムで、このCour de Récréが如何なるバンドかは全然知りませんでした(ついでに読み方も分からん)。それで、ちょっと調べてみました。レーベルはスペインのElefant Recordsですが、バンドは仏Toulouseで活動しています。メンバーはChloé Crozat (女性Vo), Quentin Lasseyte (Instruments, Vo), StanことStanislas Batisse (Instruments, Vo)の女性1人と男性2人のトリオです。まだ、Cour de Récré (「遊び場」とか「校庭」の意味?)としては、ミニアルバムCD1枚と、デジタル・シングル1作、それにコンピCDRへの参加が1枚だけで、本作品はちゃんとしたフル・アルバムとしてはファーストになります。また、このアルバムは、レーベルElefant Recordsの新人バンド発掘シリーズ”New Adventures In Pop”の第53弾になります。最初のリリースが2018年なので、恐らくはその前(2016年位?)からは活動していたと推測出来ますが、ハッキリと書いてある資料はなかったです(すまん!)。資料がBandcampにありましたので、それからの和訳を掻い摘んで書いておきます。このバンドは元々、StanとHéloïse (この人物については不明)のデュオとして始まりましたが、Stanは仏Avignonに、HéloïseはチリのSantiagoに住んでいた為、バンドと言うよりプロジェクトみたいなものであったようです。その後、直ぐに、Stanの友人Quentinが加入し、ライブ要員として、Heloïseの代わりに、Chloéが参加しており、後には録音でも参加するようになります。しかし順風満帆とは行かず、Stanは2年間、カナダに移住しており、その為、最初のEP “Éponyme”は2018年になって、やっとリリース出来たようです。それで、2019年に、Stanは仏Avignonに戻ってきますが、今度はChloéはParisに行ってしまいます。どうもこのトリオには「距離」が付いて回るみたいでしたが、漸く2021年に、本作品であるファースト・アルバムをリリースしています。このトリオは、言わばシンセ・ポップに括られるのですが、彼等の曲には、Aline, La Monja Enana, Freezepop, The Pirouettes, Denimからの影響も少しはあるようです。それでは、Bandcampの解説も含めて、各曲を紹介していきます。 A1 “Chanson Cathartique”は、LIOの“Amoureux Solitaires”やÉtienne Dahoの“Tombé Pour La France”で聴かれる途轍もない楽しさに溢れていますが、一方で、彼等自身の素晴らしい才能も光っています。それは、多くのラブソングが持っているドラマ性に対して、全く新しい方向からのアプローチしたりする点です。この失恋ソングは、何でも悪い方向に持っていってしまう非モテの「彼」が、恋していることに気付いて、恥じらいながらも、最初の恋愛に再度挑戦し始めると言う話しなんですが、歌詞の絶妙なストーリー性とダンサブルな楽曲を持っているのも高評価出来る点です。更に、この曲では、コーラスやベルで予想外のエンディングも用意されています。A2 “Soleil Levant”は、Stendhal症候群(これは調べてみて!)についての歌詞で、ディスコティックに盛り上がりますが、ヌーベル・ヴァーグ好きの日本人女子と恋に落ちる、日本映画推しのフランス人男子の話しについての曲で、Chloéのロリータ・ヴォーカルが堪能出来て、ダンサブルです。A3 “Le Jardin De Nobuko”は、ノスタルジーには何の価値も無いと歌う、極めて甘いポップ・ソングで、France Gall (私にはStereo Totalっぽく聴こえる)のようなMiaの若々しい歌声も聴けます。A4 “Coeur Cruel”は、このトリオが一番最初に作った曲で、EPとはヴァージョン違いが収められています。アシッドなベースラインと完璧なコーラスも聴くことができ、踊っても良し、メロディに酔いしれるのも良しの、これぞ、ポップと言うべき曲です。A5 “Agathe Agathe”も、彼等のサウンドを押し上げた曲の一つで、バロック的で、時にアップテンポで異形のシンセ・ポップであり、物凄くナイーブな恋心を歌っています。 B1 “Le Roi Est Mort”は、ルイ16世を国民裁判で死刑にした一方で、その為にマリー・アントワネットが悲しんだことを国民自身も思い起こした逸話についての曲で、アルペジオとシンセのリフ(ギターも使っている?)が特徴的な曲です。B2 “Vice Et Werther”は、ゲーテの「若きウェルテル(Werther)の悩み」を再構築した曲で、ウェルテルと別れたシャルロットが「ベストフレンドは近過ぎる。良い友人は人生に必要だか、恋愛は子供の遊びのようなもの」と言う意見を正当化しようとするもので、これをアシッドなベースラインとヴォコーダーと安物のシンセを使って、アップテンポのテクノ・ポップに仕上げています。Chloéと男性のヴォーカルの掛け合いが良いです。B3 “Palacio Ideal”はスペイン音楽の影響を受けているとのこと。と言うのも、Stanの父親は家でElefant Recordsのアルバムを沢山掛けていたからだとか。この曲は郵便屋さんのChevalとその娘の話しですが、Chloéが歌謡曲のように歌っています。B4 “Désolé Je Ne Fume Pas”は女の子のファンタジーについての曲で、その中では、彼氏は煙草を吸っているとのことです。WHOへの挑戦みたいな気持ちをシンセ・パンクな曲にしています。アルバムの中で、一番アップテンポで、Chloéのヴォーカルもやや荒っぽいですね。B5 “A L’ombre D’une Jeune Fille En Pierre”は、仏小説家マルセル・プルーストの作品と関係があるようで、ある彫像に恋した少女の話しで、歌詞も、仏作家/歴史家/考古学者プロスペル・メリメの小説”La Vénus d'Ille”から着想を得ています。また曲も最初はバラード調ですが、段々と”Dirty Dancing”由来の異形のファンク・ジャムへと変化していき、このアルバムを締めています。 とまあ、こんな内容らしいのですが、音楽は基本的にかなりピコってるシンセ・ウェーブでかつ舌足らずに聴こえる仏語の女性Voのコケティッシュで、甘酸っぱいサウンドが詰まっています。どうもデジタル・シンセを使っているらしいのですが、どう聴いても、1980年代のシロップ漬けシンセ・ポップのようで、いやーもう書いていて、こっちが赤面するような曲が盛り沢山です。そう言う意味では、かなり貴重なトリオと言うことが出来ますね。なので、あの10代の頃の甘酸っぱい想い(還暦過ぎたおっさんが言うのもなんですが)に浸りたい時には最適な音楽ですので、中にはドストライクな方もいるのではないでしょうか‼️ B2 “Vice Et Werther” https://youtu.be/poyMxtZrSyE [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_mGD0clEQM2WeOkyByJtaloUzbT0XZpGtE [BandcampのURLを貼っておきます] https://newadventuresinpop.bandcamp.com/album/cour-de-r-cr #CourDeRécré #ElefantRecords #FrenchPop #SynthWave #NewAdventuresInPop #Vocal #Electronic #Synthesizers #RhythmMachine #ChloéCrozat #QuentinLasseyte #StanislasBatisse #Stan #Toulouse #FrenchLoveSongs #10代の恋愛
Synth Wave Elefant Records 1800円Dr K2
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Moritz R “Nach Herzenslust (思う存分)”
今回は、Neue Deutsche Welle (German New Wave)の代表バンドでもあるDer Planのリード・ヴォーカルにして、全てのアート・ディレクションもこなしているMoritz RことMoritz Reicheltの唯一のソロアルバム“Nach Herzenslust (思う存分)”を紹介します。Moritz Rは、1955年に東独逸のHalle (Saale)で生まれましたが、育ったのは西独のCelleでした。1970年代末より新進気鋭の画家として活動を始めるかたわら、Frank FenstermacherとギャラリーArt Attackの運営を始め、1979年に、Düsseldorfで、Frank Fenstermacher, Robert GörlとChrislo Haasと共にDer Planを始めています。その後、Robert GörlとChrislo Haasは脱退し、PyrolatorことKurt Dahlkeが加入し、鉄壁のトリオDer Planとなります。なお、Der Planは、活動当初、「天使」と「悪魔」と「ロボット」の三位一体からなり、Moritz Rは「悪魔」役で、メイン・ヴォーカルも担当していました。その一方で、Art Attackの方は、Ata Takと改名して、NDWを代表するレーベルとして展開していきます。Moritz RはDer Planのみならず、レーベルのアート・ディレクションも手掛けており、他と一線を画したレーベルカラーを確立させています。Der Planは1992年に解散していますが、2003年に、Moritz Rは、他に2名の若手ミュージシャンと共に、Der Plan 4.0として短期活動していましたが、2014年に、Moritz Rは、FenstermacherとPyrolatorと共に、本家Der Planを再結成し、活動を始めています。なお、2006年-2008年には、Mo EriksenとかMoni Duettmannという名義で、3Dコンピュータ・グラフィックも手掛けています。また、Moritzはグラフィック・デザイナーとして、アルバムのジャケや書籍、企業ロゴ、商品パッケージに至るまで手掛けています。2020年には、Moritz RはBerlinに移り、自身のギャラリーChak Chak Art Shopを運営しています。それで、今回、2021年に、初のソロアルバム“Nach Herzenslust (思う存分)”を日本のSuezan Studioからリリースした訳ですが、その後も、「ポップカタログVol.1 : ポスト・サイケデリック絵画: 独逸の新しい波におけるDer Planの栄光と不幸」という記録集を書いたり、アルバム”JaPlan”の映像作家として活動したりで、多忙な日々を送っています。 と言うことで、本作品の紹介をしていきましょう両面とも8曲ずつ収録されています。先ず、ザックリ言って、Der Planよりも「まとも」なポップ・ミュージックから成るアルバムと言えるでしょう。とは言うものの、崩してある所は崩してある、と言うか、Moritz R (Der Plan)らしい、天然に「変な」ポップ・ミュージックで、全く安心はできないですけど。エキゾチカ、フォーク、アシッド・サイケ、実験音楽からFrank ZappaまでがMoritz Rの手にかかり、軽妙洒脱で破天荒な前代未聞のポップ・ソングへと再生されています(DUの宣伝文より引用)。ほぼほぼ、1人で作られていますが、2曲程、Pyrolatorも参加しています。いやー、Moritz Rがギターとかシンセとか弾けるのにビックリしましたね。そんな訳で、モンド・ミュージック〜シンセ・ウェーブ〜フォークロアなど幅広い音楽が詰め込まれていますので、多分、欧州(或いは独逸)のポップ・ミュージックに興味のある方にはお勧めします❗️発売元が日本のSuezan Studioなので、曲名に邦題が付いています(それもまた楽し!)。 A1 “Herzlich Willkommen! (ようこそ)” A2 “1-2-Test (1-2-テスト)” A3 “In Meinen Träumen (夢の中で)” A4 “Haus In Düsseldorf (デュッセルドルフの店)” A5 “Polywaiian Village (ポリワイアン村)” A6 “Controllfreak Mama (コントロールフリークのママ)” A7 “Rosetta (ロゼッタ)” A8 “Silberner Manta (シルバーのマンタ)” B1 “St-sp-shk” B2 “Ich Steh Auf Drogen (ドラッグ)” B3 “Wochenend Und Sonnenschein (週末と晴天) B4 “Susanne Daubner (ズザンネ・ダウブナー)” B5 “Ich Heiz Mein Haus Mit Holz (うちを薪であたためる)” B6 “Fuselschnaps (安酒)” B7 “Dunkel Wars (暗かった)” B8 “Bernd‘s Tune (ベルントの曲)” A3 “In Meinen Träumen (夢の中で)“ https://youtu.be/KMCjy7nZXVs A4 “Haus In Düsseldorf (デュッセルドルフの店)” https://youtu.be/wz04tkSji3Y A5 “Polywaiian Village (ポリワイアン村)” https://youtu.be/hU9vk8qzK2k B1 “St-sp-shk” https://youtu.be/r8VZOH-qRL B2 “Ich Steh Auf Drogen (ドラッグ)” https://youtu.be/XHRdz1ZTk5c #MoritzR #NachHerzenslust #思う存分 #SuezanStudio #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #ElectronicPop #SynthPop #SpecialEdition #YellowSplatterVinyl #300部限定#DerPlan #LeadVocalist #ArtDirection #AtaTak #Pyrolator
Electronic / Neue Deutsche Welle (German New Wave) Suezan Studio 2650円Dr K2
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V.A. “Cold Wave 2”
Cold Waveって何?と思われる方もいらっしゃるとは思いますが、何となく、シンセとリズムマシンを使っていて、シリアスな音楽って感じですかね?と言う訳で、勉強も兼ねて、そのものズバリ”Cold Wave 2”と言うコンピ・アルバムを購入しました。発売元が英国のSoul Jazz Recordsと言うのが、ちと心配ですが、まあ、調べてつつ、とにかく聴いてみましょう。各曲について紹介して行きます。 A1 Lena Willikens “Howlin Lupus”は、元々、独DüsseldorfのSalon Des AmateureでフリーフォームなレジデントDJで、2012年にはシングル”Kingii”をリリースしているジャンルレスなミュージシャンで、テルミン, ループ, タンテ等を使ったオリジナル曲のやっています。現在はAmsterdam在住。四つ打ちではないキックの打ち込みに特徴のあるテクノで、ミニマルなシーケンスから成る曲です。 A2 Beta Evers “Hiding”は、本名Brigitte Enzlerで、1970年後半〜1980年初期にNew Waveと実験的電子音楽を聴いて育ち、10代で少女バンドを組み、1990年代には独Augsburgのクラブで電子音楽のアレンジをしていましたが、2000年には電子集団Kommando 6を組織、同時にソロでも活動を開始し、2002年からはサイドユニットBlack Spider ClanとFlying Bodiesもやっています。如何にもなベースのシーケンスとフィーメールVoで往年のシンセ・ウェーブを現代風に甦らしています。 A3 L.F.T. “Stay Away From The Light”とは本名Johannes Haasのことで、ユニット名は、Love, Fist, Tearsの略だそうです。彼は独Humbugで活動しており、バンドSchulverweisでG/Voを担当。A2よりも更にシンセ・ウェーブな曲で、ミニマルで疾走感もあり、結構、カッコ良いです。途中、ギターソロも。 B1 Job Siffre “At Least We Try”は、蘭Haarlem生まれで、20歳代初めにAmsterdamに移住。クラブDe SchoolのレジデントDJで、ジャンルを越えたパーティを仕切り、new wave, synth-wave, EBM, industrial, downtempo technoをやっています。ダウンテンポな曲で、初め聴いた時、回転数間違ったかと思いましたw ビートは重目ですが、時に入ってくるシンセのメロディがカッコ良いです。 B2 De Ambassade “Niet Van Mij”はAmsterdamて活動している蘭人の実験音楽/ニューウェーブ・トリオのことで、Pascal Pinker, Aniek de Rooij, Jippe van Nielがメンバーです。1980年代のシンセ・ウェーブを現代風にアップグレードして作り直したようなキッチュな曲をやっています。これは私の好物です。日本のBGM(バンドの方ね!)とかにも影響を受けたそうです。 C1 Tolouse Low Trax “Rushing Into Water”は、Detlef Weinrichのソロユニットで、同時にバンドKreidlerのメンバーであり、Victoria WehrmeisterとJan WagnerともToreschをやっています。また、DüsseldorfのSalon Des AmateursでレジデントDJもやっています。今回は、土俗的リズムに女性ヴォイスや通信などのサンプリングを加えたプリミティブな曲です。 C2 V.C.V.S. “Hum”は、ジョージアのIrakli ShoniaとSandro Kozmanishviliのデュオで、2016年から活動しており、オシレーターに興味を持っており、2017年に1stアルバムをリリースしています。バンドのリハのような音の後に、如何にもなアシッド・テクノなシーケンスとリズムが始まる曲で、ホワイト・ノイズで作ったスネア音が1980年代風です。 D1 Dave I.D. “Help Starts”は英国の南東LondonのHedges Davisで、今ではThe Lunacy of Flowersとしても知られています。元々はDark Relief名義でインダストリアルな曲を作製していました。2023年現在はエストニアのTallinnで活動中。今回は、機械の駆動音のようなリズムと特異なベースラインに、物憂げな女性Voとノイズが乗っており、結構、ダークな雰囲気です。 D2 Broken English Club “Vacant Cars”は、本名Oliver Hoで、英国西Londonの音楽家で、JG Ballardからの影響を受けています。1997年には自身のレーベルMetaを始め、トライバルなテクノを扱っています。重いキックに、軽目のシンセ(まるでRoland SH-101みたい)のシーケンスが同期し、そこに呟く男性Voが乗っています。 D3 Krikor Kouchian “Deserver Dub”は、アンビエントからテクノまでを扱う南仏のプロデューサーで、1990年末にはFrench Touchシーンで現し、2001年から、即興的要素も盛り込んだライブを開始しています。現在はパリ在住。ダブっぽい処理もされたリズムと重低音とサンプリング音が交差しています。 聴いてみて、思ったのは、皆、1980年代〜1990年初期のシンセウェーブやミニマル・ウェーブなんかの影響を受けながらも、現行のテクノなりダブなりを使って作っているのだなあと。だから、何故か懐かしい感じやノイズを上手く使うテクやシーケンスの妙があるのだなあと感心してしまいました。そう言う意味では、面白かったです。なので、 C1 Toulouse Low Trax “Rushing Into Water” https://youtu.be/UOJFZ_szcDc [full albums] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_mepfgQ6w-jZQf_v8EfXH9-KELxM0bOII4 #VariousArtists #ColdWave2 #SoulJazzRecords #ModernClubMusic #DJ #SoundEngineer #Band #SoloUnit #SynthWave #MinimalWave #Influence #LenaWillikens #BetaEvers #L.F.T. #JobSiffre #DeAmbassade #TolouseLowTrax #V.C.V.S. #DaveI.D. #BrokenEnglishClub #KrikorKouchian
Cold Wave / Synth Wave / Avant-Pop Soul Jazz Records 2250円Dr K2
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V. A. “Oz Echoes: DIY Cassettes & Archives 1980-1989”
これは珍しいです!1980年代の豪州地下音楽のコンピです。確かに、豪州と言えば、The Birthday PartyやSPKなんかが出てきてはいますが、1980年代の豪州の更に個人的な音楽なんて聴いたことがないです。なので、完全なるジャケ買いみたいなものですし、勿論、知っているバンドやアーティストはいません。なので、各曲を紹介していきたいと思います。 A1 Height/Dismay “Mother's Footsteps”は、Drusilla JohnsonとPatrick Gibsonのデュオで、この曲を含むEPをM Squaredからリリース予定でしたが、当時は、プレスの問題で少数部のみリリースされただけとか(後にちゃんと発売されています)。マーチング・ドラムとディレイの掛かった女性ヴォイス、それにエレピのコードと単純なベースから成る曲で、中々面白いです。 A2 The Frenzied Bricks “Vicious Circle”は、Chris Merchant (TR-808 programming, B, Kbd), David McCarthy (B, Vo)がオリジナルメンバーで、時にDave Warren (Casio Kbd, G)も加わることもあったようです。スラップ奏法もこなすBと男性Voがそれなりに野太く、ストリングス・シンセがバックを支えており、途中のシンセソロも面白いです。 A3 Modern Jazz “Zoom Dub”は、Ash Wednesdayが呼びかけて、電子音をベースにしたライブ・パフォーマンス集団で、1980年代中期に活発だったとのこと。メンバーはAsh Wednesday (Vo, Drum Machine, Mix), Lyn Gordon (Synth), Andrew Park (Tape, Effects)の他、Ruthven Martinus, Steve Williams, Warwick Marksも加わっていたとか。テープ音から始まり、力強いドラムマシンが一本筋を通し、そこに、聴き取りにくい男性Voが乗っかる形態です。勿論、シーケンスもあります。 A4 Mr Knott “Poor Galileo (He Has Gone Mad)”は、Patrick GibsonとGordon Renoufのデュオで、1984年に結成され、M Squared スタジオで、自a作電子楽器などを作っていましだ。この曲では、Mary Quinn (Vo), Lindsay O’Meara (Vo), Dermot Browne (B)もゲスト参加しています。2人の女性ウィスパーVoが力強いビートの上に乗っかっています。この曲はシンセウェーブと言うよりニューウェーブな曲ですね。ちょっとファンキーはベースとかも普通に使っていますし、テープ音なんかも使っており、ちょっとインダストリアルな要素もあるのかな? A5 Aeroplane Footsteps “Arabia”はJandy RainbowとSimon Edhouseによって、1981年に結成されたデュオで、Grapevineスタジオや5MMMでのセッションの為、多数の持ち曲がありましたが、1983年には解散しています。その後、Rainbowは、サイバーパンク・バンドDonno Detti に加入しています。ドラムマシンのビートの上に、掠れた女性Voやシンセソロが乗っている、ちょっと不思議な曲。ただそれ程「アラビア」を感じないです。 では、B面に移ります。B1 Shanghai Au Go-Go “I Cried All Winter”は、Chris ‘Eddie’ Mort (Synth, Drum Machine, Vo), Karen Harborow (Synth, B), Meilindah Ronalds (Vo)のメルボルンのシンセウェーブ・トリオで、この曲は1983年のデモテープから取られています。彼等は豪州におけるEBMやインダストリアルやハイ・エナジーのパイオニアでもあったそうです。確かにRonaldsの力強い女性Voはシンセウェーヴと言うよりもニューウェーブに有りそうで、シンセ奏者の2人も中々ポップかつキャッチーな旋律とリズムを聴かせてくれます。 B2 Matt Mawson “Open The Goddam Door”は、1980年代のメールミュージックの先駆者で、Irena Luckus, John Willsteed, Tery Murphy, Tim Grunchyが関係していたようです。この曲はミニマルな展開で、聴こえそうで聴こえない呻き声のようなVoや不思議な旋律のメロディも秀逸です。 B3 The Horse He's Sick “Terminal Rebound”は、Ian Andrewsのソロユニットで、TR-808とTom Errardのスタジオで作った音楽活動以外にも、映像や彫刻、インスタレーション、コラージュ、詩作等もやり始めており、歯磨き粉のTVのビデオクリップも手掛けていたそうです。後に、ダンスバンドDisco StuやHypnoblob, Non Bossy Posseにも参加しています。この曲には、テープ音が微かに聴こえると言う1980年代の宅録っぽい雰囲気がありますね。終わり方も最高です。 B4 Wrong Kind Of Stone Age “Ravi Dubbi”は、1983年〜1991年に活動していたSydneyのポスト・パンク・バンドで、メンバーはGavin Williams (G), Miriam Williamson (Vo), Geoff Nolan (B), Craig McLeod (Drs)で、WilliamsとWilliamsonがコアメンバーで、後期になると、中近東風のトライバル・ミュージックになり、その時には、コアメンバーに、Bryce Cannon (Perc), Andy Rantzen (Kbd), Drew Mayson (G)を加えた編成で演奏していたらしいです。これは、気怠い単調なベースラインが特徴的な曲で、Voも語りの様にボツボツと聴こえますし、パーカッションやシンセ(?)の物憂げな旋律も良い雰囲気です。 B5 Les Trois Etrangers “Luna”は、Jandy Rainbowが、Roland SH-09シンセ、ミニCasio、ミキサー、ディレイとDrum Machineを購入した3ヶ月で始まっており、1980年にライブデビューしています。当時はトリオで、毎週金曜日に演奏していたらしいです。この曲に関しては、彼女の若気の至りのようなミニマルな展開に、他の2人は余り良く思っていなかったようです。これは、GとBが淡々とミニマルに弾いている横で、スペーシーなシンセの効果音と女性のウィスパーVoが乗っかってくると言うヒプノティックな曲です。 A面はどちらかと言うとシンセウェーブのような宅録ものが中心で、B面はよりパンド・サウンドだったり、宅録であってもちょっと実験的であったりする曲を集めたのかなあと言う印象です。しかしながら、これまで、全然知られていなかったOz地下音楽の層の厚さを、このアルバムで触れることが出来て、私自身は興奮しましたねぇ。今後もこのように発掘される音楽を聴いてみたいです‼️ *収録曲をそれぞれ貼っておきますので、聴いてみて下さい❗️ A1 Height/Dismay “Mother's Footsteps” https://youtu.be/-0k96kyJjqY A2 The Frenzied Bricks “Vicious Circle” https://youtu.be/XNcUXzBGDlQ A3 Modern Jazz “Zoom Dub” https://youtu.be/7dXOChq6oPA A4 Mr Knott “Poor Galileo (He Has Gone Mad)” https://youtu.be/2p6Xy4_Jit0 A5 Aeroplane Footsteps “Arabia” https://youtu.be/E9sQAmvcVa8 B1 Shanghai Au Go-Go “I Cried All Winter” https://youtu.be/2p6Xy4_Jit0 B2 Matt Mawson “Open The Goddam Door” https://youtu.be/e7IZVRqDpjk B3 The Horse He's Sick “Terminal Rebound” https://youtu.be/7A1Mo_q3tvU B4 Wrong Kind Of Stone Age “Ravi Dubbi” https://youtu.be/4b2NZ8ccwMg B5 Les Trois Etrangers “Luna” https://youtu.be/CkQct2f3N5E #VariousArtists #OzEchoes: #DIYCassettes&Archives1980-1989 #EfficientSpace #Australia #CompilationAlbum #1980年代 #SynthWave #PostPunk #Dub #CassetteCulture #Height/Dismay #TheFrenziedBricks #MrKnott #AeroplaneFootsteps #ShanghaiAuGo-Go #MattMawson #TheHorseHe'sSick #WrongKindOfStoneAge #LesTroisEtrangers
Synth Pop / Post Punk / Dub Efficient Space 1900円Dr K2
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Conrad Schnitzler & Pharmakustik “Schubkraft”
ついつい、買ってしまうんです。今回は、Conrad Schnitzler先生とPharmakustikとのコラボ作品3部作の最終作品”Schubkraft”です(2016年作第1部”Kontraktion”、2018作第2部”Extruder”があります)。Schnitzler先生については、これまでも色々書いてきましたので、ここでは、Phamakustikのバイオグラフィーを補足しておきます。PhamakustikことSiegmar Fricke氏は、1981年辺りから活動を始めた独逸の実験音楽家で、元々は、短波ラジオとアコースティックな音を用いた作品を作製しており、丁度、ミュージック・コンクレートとポスト・インダストリアルの間に位置して、世界的なカセット・カルチャー・シーンで活躍しています。それで、Siegmar氏は自身のレーベルBestattungsinstitutを運営し、1985年〜1993年の時期に、実験音楽から、EBM、エレクトロ、テクノ、アンビエントまでを取り扱っており、その後、ネット・レーベルに移行しています。2009年より、彼のソロユニットとしてPhamakustikを名乗り始め、また2013年からは、ポップな音楽をやる為に、Dieter Mausonとのコラボ・ユニットDelta-Sleep-Inducing Peptideを立ち上げています。それで、Pharmakustikでは、一種の音響学的研究や音に関するリサーチ或いはアコースティックな音の断片の再統合などを行い、極めて電子的て抽象的なレイヤーを作り出していたとのことです。 そんな2人がコラボして作り上げた内の第3作目が、本アルバム”Schubkraft (「推進力」の意)”になります。クレジットによると、このシリーズは、1986年11月〜1987年7月にBerlinのSchnitzler先生のスタジオで行われた未発表音源を順次発表しているようです。2人が用いた楽器は、EMS Synthi A, Korg MS-20, Dynachord Echocord, Automatic Rhythm-Player, Digital Delay, Ibanez MultiEffector, Radio, Yamaha CS-5となっており、アルバムは、両面1曲ずつの長尺の曲から成ります。両面とも、もう涙がちょちょ切れる位、素晴らしい曲です!A面は、スペーシーなシンセと、Esplendor Geometricoのように駆動するリズムマシンの絡みから成り、まるで「電子界を走る銀河鉄道999」のようです。結構、リズム音が強調されたミックスになっています。最後で、リズム・パートが無くなってからは、お互いの電子音が自由に絡まり合って、程良い緊張感を出していまし、ディレイが効いていて、宇宙へ飛んで行きそうです。一方、B面は、リズムマシンは使っているものの、ロング・ディレイを掛けたシンセ音が瞑想音楽のように響き渡り、一瞬、1980年代のM.B.サウンドがフラッシュバックします (Fricke氏は復活後のM.B.ともコラボしていますね)。時間軸が曲がってしまった世界で音楽を聴いているようです。B面の最後には、何故か、ラジオの音声と不気味な電子音との狂宴に移行し、不穏な空気感で終わります。両者とも、電子音や実験音楽をベースに活動している/していたので、本作品のような素晴らしいコラボ作品が出来たのだと思います。ミックスはFricke氏によって、2019年に行われていますので、その為、Fricke色がやや強く出ているのかもしれませんね。これを聴いたら、第1部と第2部も欲しくなりました。全ての電子音楽ファンに必聴です‼️ [trailerのみ] https://youtu.be/9VZn8_z4lYc #ConradSchnitzler #Pharmakustik #SigmarFricke #Schubkraft #Rotorelief #CollaborationAlbum #第3弾 #ElectronicMusic #Experimental #1986年-1987年録音 #2016-2017年再構築 #LimitedEdition #500部
Electronic music Rotorelief 2100円Dr K2