明治36年(1903年)作 八寸五段重 「醍醐」

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時代が少々下がりますが、明治36年製作の八寸五段重です。卵殻でかたどられた桜の花びらが全面に散らされています。やや大きめの微塵貝も使われて、それが光に当ってとても綺麗です。風に吹かれて桜の花びらが散っている感じがとても良く出ている美しい変り塗です。

共紙には明治8年(1886年)のフィラデルフィア万博に出品して銅牌をもらっていることが書かれています(実際の開催年は明治9年です)。第一回の内国勧業博覧会が明治10年ですから、それ以前に海外進出を既に果たしていた先見の明は素晴らしいと思います。その頃の若狭にはフロンティアスピリットが溢れていたのでしょう。その後の歴史を見ると、この頃の海外出品が若狭塗の発展に繋がらなかったのは大変残念なことです。

作者は「宮川吉之助さん」という方ですが、不思議なことに塗師屋の住所が小浜ではなく「福井市」になっています。福井市と小浜市は大変距離が離れており、越前と小浜では文化も違います。私は「若狭塗の塗師屋が福井市にかつて存在したか」福井市の役所にお尋ねしたのですが、明治時代に若狭塗の工房が福井市内にあったことを示す証拠は見つかりませんでした。

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