鉱物標本 ペタライト(Petalite)

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別名:ペタル石、(葉長石)、Castorite
産地:Araquiai, Minas Gerais, Brazil

リチウムを含有するアルミノケイ酸塩鉱物。産業用リチウムの主要な鉱石鉱物の一つ。和名は葉長石だが実際には長石類ではないため、近年はこの呼称は推奨されていない。

1800年にブラジルの鉱物学者で政治家でもあったJosé Bonifácio de Andrada e Silva(*1)がヨーロッパ滞在時にスウェーデン、ストックホルム近郊のUtöにて発見した透明な新種鉱物について、劈開の様子からギリシャ語で葉を意味する"πέταλον"より命名した。

その後1817年、スウェーデンでJohan August Arfwedsonがペタルライトの化学分析でアルミニウムやケイ素の他にナトリウムやカリウムとも異なる性質を有する未知のアルカリ金属を含んでいることを発見した。彼の所属していた研究室の主宰である化学者Jöns Jacob Berzeliusはこれまでの既知のアルカリ金属であるナトリウムが動物の血液中に、カリウムが植物灰中に存在が認められていたのに対して新元素が鉱物中から発見されたため、ギリシャ語で石を意味する"λιθoς"からlithiumと命名した。BerzeliusはArfwedsonの研究に多くの助言を与えていたそうであるが、この新元素の発見者をArfwedson一人の名前で発表させてあげたという逸話が残っている。

話は逸れるがこのJöns Jacob Berzeliusはセレン、セリウム等の新元素の発見や各元素の単離、原子量の精密な決定の他、これまで図形記号で表記されていた元素記号をラテン語またはギリシャ語の名称のアルファベット頭文字で表す現在の方法を提唱し、化学を無機化学と有機化学の2つに分割し、『たんぱく質』や『ハロゲン』『触媒』といった数多の化学用語を考案して近代化学の理論体系を組織化、集大成した化学者である。

1818年にChristian Gottlob Gmelinがリチウム塩の赤色の炎色反応を初めて確認。しかしGmelinもArfwedsonもリチウムの単離には成功出来なかった。1821年になってイギリスの化学者William Thomas Brandeが酸化リチウムの電気分解により漸く単離に成功できた。

リチウムを含むペグマタイト中で他の含リチウム鉱物と共に産出する。炭酸成分が少なく、高密度含水アルカリホウケイ酸塩液体の存在する3kbar、~500℃の条件下でスポジュメン(リシア輝石)と石英に転換される。
・LiAlSi4O10→LiAlSi2O6+2SiO2

本標本は2020年にミネラルマルシェで購入。

*1: José Bonifácio de Andrada e Silva
→鉱物標本 ウェルネライト(Wernerite)

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