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Illaenus crassicauda
本種については、だいぶ前に丸まった小さいのを手に入れたが、どうしても気に入るに至らず、手放してしまった。 一般的には人気のあるらしいエンロール標本が私にはダメなのは、いったいどうしたわけだろうか。 この Illaenus crassicauda はイレヌスの模式種とされているけれども、じっさいのところイレヌスというよりは、北米で産出する Nanillaenus に近いのではないかと思う。 Nanillaenus は Thaleops と混同されることもあり、最近ある研究者がこのあたりのごちゃごちゃしたのを整理したようだが、ともあれその代表種とされる Nanillaenus americanus を本種 Illaenus crassicauda と比較してみると、その類似には注目すべきものがあるように思う。 いちばん最後にその北米種の写真を入れておいたので、ご覧ください。 全長:33mm
Kukruze level UORD Alexeevka quarry, St. Petersburg region, Russiaktr
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Conularia trentonensis
コヌラリアは化石愛好家にはよく知られている。 復元図をみると、ピラミッドを長く引き延ばしたような、断面菱形の長錘形で、それが逆さまになって海底に突っ立っていたらしい。 その様子はルゴササンゴに似ているが、サンゴが群体なのに対し、コヌラリアは単体らしい。 イメージ的にいえば、巻いていない巻貝みたいなものだろうか。 そういうものが、尖ったほうを下にして突っ立っていたというのは、やはり異様な光景だろう。 本種は小さいので見た目のおもしろさはそれなりだが、ルーペで覗くと、窓がびっしりと連なった超高層建築のようで、なかなか見ごたえがある。 全長:20mm
Neuville Fm. UORD Quebec City, Quebec, Canadaktr
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Ectillaenus giganteus
本種はフランスのほか、スペインやポルトガルでも産出する。 イベリア半島一帯から広く産出するといってもいいだろう。 私はあのへんのものはフランス産で集めたいと思っているので、手頃な標本が入手できたのはよかった。 それともうひとつ、この標本のいいところは、目の存在が確認できることだ。 だいたいにおいて自在頬が欠けている標本が多いので、いったい目があるのかないのか明確でなかったが、これを見てギガンテウスには目があることがはっきりした。 ちなみに、チェコで産出する近縁種の Ectillaenus katzeri だが、こちらは確かに目がないので、盲目三葉虫の仲間に入れてもいいだろう。 英国の Ectillaenus perovalis も調べてみたが、これは目があるのかないのかはっきりしなかった。 全長:61mm
Unknown MORD Bain de Bretagne, Francektr
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Asaphus kowalewskii
FFストアによれば、けっこうな人気種らしい。 そういえば、SPPLにも本種だけは十分すぎるくらいの在庫がある。 まあ、それだけありきたりなので、とくに欲しいとも思わなかった。 ところが、ちょっとしたきっかけで手に入れてみると、なるほどこれが人気があるのも頷ける。 なんということはないけれども、いつまでも見ていられる。 飽きがこない。 見れば見るほどそのフォルムに引き込まれる。 この標本は本体が母岩の端に寄りすぎていて、標本箱の縁に当って目が折れる危険性があるので、紙粘土で母岩を延長した。 これだけやっておいて、ようやく安心して眺めることができるようになった。 ところで、日本人ならだれでもこれを見るとカネゴンを連想するわけだが、私はカネゴンの回を見逃していて記憶にないので、このたびアマプラで視聴してみた。 古いことは古いが、まったく古びていない。 傑作也。 全長:47mm
Asery level MORD Vilpovitsy quarry, St. Petersburg region, Russiaktr
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Flexicalymene retrorsa
いっときは何種類かもっていたカリメネも、いまではこの一種のみとなった。 同時期に買った標本が次々に散逸していく中で、これだけが残った理由は何だろうか? それはおそらく、狭義のカリメネの形態的な要素のすべてが、このコンパクトな見本のなかに含まれるからではないかと思う。 私にとってはこのオハイオのカリメネこそが、カリメネの中のカリメネなのである。 カリメネの中のカリメネといえば、一般的には Calymene blumenbachi を指す。 しかし残念なことに私はそれを手に入れることができなかった。 そんなわけで、一般とは異なった、私だけのカリメネの典型として、このオハイオのカリメネは大切な存在となっている。 全長:35mm
Richmond Fm., Arnheim Member UORD Mount Orab, Ohio, USAktr
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Olenellus gilberti
私のもっている唯一のオレネルスがこれだ。 じつのところ、私はオレネルス類にはわりと冷淡で、ほかの種類が欲しいと思ったことはあまりない。 それは私がレドリキア派でもオレネルス派でもない、パラドキシデス派だからだろうか。 それとも最初に手に入れた本標本があまりにも好みに合致していて、これだけで満足してしまったからだろうか。 いずれにせよ、今後他のオレネルス類へ探求の手が延びることはまずないので、この唯一の標本を大切にしようと思っている。 全長:39mm
Pioche Shale LCAM Lincoln, NV, USAktr
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Conocoryphe sulzeri
本種はカンブリア紀チェコの代表的な一般種で、サイズよし、保存よし、価格よしと、いい条件が揃っている。 見た目も、なんとなくぶきみで変態的な雰囲気を漂わせているのがチェコらしくてよい。 とりあえずチェコの三葉虫をサンプル的に、と思っている人には、これがお勧めだ。 と思ってネットを見ると、意外や意外、けっこうな値段がするではありませんか。 これではうかつに人に勧められない。 まあ、あるところにはあると思うので、安いのを見つけて買ってみてください。 全長:40mm
Jince Fm. MCAM Czech Repblicktr
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Pseudocybele nasuta
顔のかわいさという点では、全三葉虫のうちでも五指に入るだろう。 レドリキアやオレネルスの悪相(とあえていう)とはえらい違いだ。 しかしこんなかわいい顔をしながら、食性の面からみると捕食者すなわちプレデターだったという説がある。 顔で相手を油断させておいてガブッとやったのだろうか。 私は三葉虫にはあまり捕食などという野蛮な行為はしてほしくない。 なるべくならプランクトンあたりを餌にしていてほしい。 そうやって平和な三億年を過していたと思いたい(註)。 全長:18mm (註) 厳密には最大限に見積っても2.9億年ほどで、三億年には達していない
Ninemile shale LORD Eureka, NV, USAktr
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Ellipsocephalus hoffi
本種は密集になった標本がよく出回っている。 私も最初に手に入れたのはそういう密集標本だった。 しかしそのひとつひとつの個体の状態がイマイチなので、単独の標本(つまりこの標本)を買ってみたが、本種はやはり密集での標本のほうがいいみたいだ。 本種においては、昔から目の有無がずっと気になっていたが、いまだに判然としない。 正面から撮った画像を見れば、たしかに目はありそうだが、それはほんとうに目なのか、それともたんなる痕跡か、そのあたりがはっきりしないのだ。 SSPの図鑑の著者ピート・ローランスなどは、はっきり「ある」といっているし、1988年に出たドイツの化石雑誌の記事にも「(エリプソケファルスの)細長くやや弓なりになった眼はまったく目立たないので、昔の記載者たちは眼のない種類だと勘違いしたほどである」と書かれている。 しかし本種について詳細な記載を行っているミラン・シュナイドルは、瞼翼の存在こそ認めているものの、目の有無については一言も書いていない。 というわけで、ほんとのところはわからないが、私としては「ある」に一票入れておきたい。 全長:30mm
Jince Fm. MCAM Czech Repblicktr
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Agraulos ceticephalus
三葉虫には名前と現物とが釣り合わないものがある。 本種などもその一例で、名前だけきけばどんな三葉虫かと膝を乗り出すが、現物を見ると少なからずがっかりする。 小さくてあまり特徴もないので、よほど手広く集めている人か、あるいはチェコ産を集中して集めている人でなければ手に入れようとは思わないだろう。 本種は自在頬を欠いた標本がほとんどだが、本来は小さいトゲつきの自在頬があるので、それのついている標本はけっこう貴重だ。 全長:15mm
Jince Fm. MCAM Czech Repblicktr
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Pliomera fischeri
これは二代目のプリオメラで、当初からかなりアラが目立った。 しかし、これ以上に姿勢のよい、頭部の造作が理想的な、ハイポストマまでついた標本はなかなか見当たらない。 このプリオメラという種類は、かつてはそれなりの数が出ていたのに、最近ではふっつり見かけなくなった。 今後はどんどん稀少になっていくのではないか。 本標本は一見ぼろぼろだが、その目をルーペで見ると、微細な複眼の構造が保存されてる。 これもやはり私がこの標本を手元においている理由のひとつだ。 というわけで、いろいろと見どころの多い標本であることは確かだが、やっぱりどうしても気になるのはその全体のくたびれ具合と、母岩から外れている点だ。 これはまあ、諦めるしかないですね。 全長:40mm
Unknown ORD Russiaktr
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Cybele bellatula
Labログ(キベレの思い出)にも書いたように、復帰後最初に手に入れたのがこれだ。 あれからまだ一年ほどしか経っていないが、なんだかずいぶん昔のことのような気がする。 これはエンクリヌルスの仲間に入れられていて、エンクリヌルスといえば、イチゴ頭と称される頭部のツブツブと、飛び出した目が特徴的だが、本種においては頭部の顆粒はそれほど目立たず、目は飛び出しているけれども控えめで繊細だ。 この控えめで繊細というのは、本種の全体についてもいえることで、全三葉虫のうちでもかなり優美な部類に入るのではないかと思う。 野趣が感じられないので、それが物足らないという人もいると思うが…… この標本は母岩がいびつで、どうしても安定せず、下手をするとひっくり返りそうで、心臓にわるいので、紙粘土で補強して安定させてある。 なお、この繊細すぎる三葉虫には、C. Panderi という姉妹種があって、本種に輪をかけて細長い眼軸をもっている。 その細長さは、チェコのミラスピス・ミラと双璧をなすといってもいいくらいだが、あまりにフラジャイルで私には怖くて扱えない。
Kunda Horizon, zone Asaphus expansus LORD Voibokalo quarry, St. Petersburg region, Russiaktr
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Dactylioceras sp.
私が最初に手に入れた化石が本種なので、懐かしさもあって購入してみた。 かつて手に入れたものはノジュールを割っただけのもので、母岩に眠るような格好で入っていたが、今回のものは母岩側も掘り出してあって、独立した標本になっている。 あの硬い母岩をよくここまできれいに取り除いたな、と感心するが、最近は機材の進歩がすさまじく、こういうかつてはできなかったような剖出も可能になったんだろう。 そんなわけで、片面は金属光沢をもち、反面は艶消しの質感をもつ、一種アンドロギュノス的な標本に仕上っている。 アンドロギュノスといえば、Androgynoceras という名前のアンモナイトがあって、これも美しいので人気があるが、いったいどうしてこういう名前になったのか、興味がある。 全長:45mm
Unknown Jura, Lias Whitby, Yorkshire, UKktr
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Paradoxides gracilis
今からちょうど10年前に手に入れたもの。 本種については購入当時にブログにいろいろと書いたので、ここでは繰り返さない。 とにもかくにもこれが私のコレクションの核であって、三葉虫探求において私の辿る道はすべて本種に端を発しているといっても過言ではない。 これはふぉっしるの出品で、落札価格は12,000円だった。 この金額が、その後の私の基準となってしまい、なかなかこの金額を超える標本を買うことができなかった。 その縛りは、細々とではあるが、いまも続いている。 全長:90㎜
Jince Fm. MCAM Czech Pepbulicktr
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Ptychoparia striata
かつてはプティコパリア目の頭目のような顔をしていた本種だが、いまでは未確定目に他のものといっしょに放り込まれて、もはや昔日の威光はなくなった。 とはいうものの、本種がチェコを代表する三葉虫のひとつであることに変りはない。 けっして稀少種というのではないが、りっぱな標本はやはりそれなりに貴重だ。 R・フォーティはその著「三葉虫の謎」のなかで、本種について「ミスター平均」という呼称を与えている。 三葉虫の基本的なシェイプからの「いかなる方向への誇張もいっさいない」というのだが、どうだろう。 私にはそれほどプリミティヴにはみえないし、むしろボヘミアらしい奇妙な偏向を感じてしまう。 偏向というのは、ボヘミア三葉虫がもっている、一種異様な地下世界的な風情だ。 私にはそれがなぜか鉱山のイメージと重なってくる。 そこに魅力を見出せるかどうかが、この地の三葉虫を鑑賞する際の決め手になるだろう。 全長:48mm
Jince Fm. MCAM Czech Repblicktr