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Elrathia kingi
三葉虫といえば、多くの人が思い浮べるのがこれ。 三葉虫のコレクションはここから始めるのがベストだ。 私はなんの因果かモロッコ産から始めてしまったが、それが後年の失速のもととなった。 わるいことは言わない。 三葉虫のコレクションはこれから始めることだ。 そしてどんなにコレクションが充実しても初心を忘れず、一日に一回は本種の顔を拝むのが正しい道だ。
Wheeler Fm. MCAM Utah, USAktr
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Pavlovia sp.
ロシア産のアンモナイト。 サイズは4㎝と小さいながらも非常に状態がよい。 アンモナイトは最初のうちこそ遊色だとかイリデッセンスだとかに眩惑されるが、そういうものは意外に早く飽きる。 アンモライトですらいつかは飽きる。 最後まで飽きないのが、本種のように地味でも造形の整った完璧な標本だ。
Jura Russia ebay, rubellexiektr
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Bumastus ioxus
ニューヨークのシルル紀代表として Dalmanites と双璧をなすもの。 なんの特徴もない三葉虫だが、この特徴のなさが本種の場合ある種の魅力になっている。 じっさいコレクターにも人気があるようで、状態のいいものは出るとすぐに売れてしまう。 ものによっては10㎝近くなるのもあるようだが、私はそんなに大きいのは要らない。 手のひらサイズが本種には相応しい。
Rochester Shale SIL Middleport, NY, USAktr
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Neseuretus tristani
オルドビス紀、フランス産。 カリメネの仲間で、頭の前方に飛び出したクチバシのような突起が特徴。 状態はあまりよくないが、これでもフランス産のなかではましなほうだ。 好意的な目で見ればフランスらしいシャビーでシックな味わいがあるように思うのだが、どうか。
unknown MORD Ecalgrain, Francektr
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Agnostus pisiformis
全体が分離した脱皮殻の集積からできていて、フォーティーはこれを「化石になった豆スープ」と呼んでいる。 知らない人が見たらどういう生物かさっぱりわからないだろう。 それは昔の発見者も同じで、Agnostus とは「さっぱりわからないもの」という意味だ。 この小さい豆の一粒一粒が、Agnostus の頭か尻尾なのである。 Agnostus の仲間は世界中から産出するが、種類が多いわりには見た目の区別がつきにくい。 そこで私は模式種である本種の豆スープで全体を代表させることにした。
Alum Shales UCAM Trolmen, Västergötland, swedenktr
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Aulacopleura koninckii
古くから知られている古典的三葉虫でたいていの図鑑に載っている。 古典種だけあって正式名称は長く、Aulacopleura (Aulacopleura) koninckii koninckii (Barrande) という。 今回買ったこの標本は外殻がほぼ剥がれていて、いわゆる内型になっている。 それがちょっと残念な点だが、しかし目だけは脱落せずにくっついているので、これでもってよしとしよう。
unknown SIL Loděnice, Czech Republicktr
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Deiphon barrandei
英国シルル紀の産。 私にとってはアイコニックな三葉虫で、レプリカであるにもかかわらず、他の化石に混って殿堂入りを果たしている。 募る一方の化石熱を一気に冷ましてくれた「皆殺しの天使」的存在でもある。 というのも、これの買値が100円そこそこだったので、ほんものを買うのがバカバカしくなってしまったのだ。 レア度は「もしこれがほんものの化石だったら」という観点でつけたもの。
Coalbrookdale Fm. SIL Malvern, Worcestershire, UKktr
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Hoplolichas plautini
Terataspis を別格とすれば、本種ほど怪獣を連想させる三葉虫はほかにない。 なかにはサボテンのように全身がトゲで覆われているのもある。 本来ならもっともてはやされてもいいような気がするが、あまり人気がなさそうなのは、同類のHoplolichoides が多産するためだろうか。 手持ちの標本は、形はともかくとして、外殻を覆う顆粒が非常に不気味で、その不気味さがじつに心地よい。 不気味で、しかも心地よいという、アンビヴァレントな三葉虫。 この標本は到着時にツノが折れていたの修復した。 ほかにもちょっとしたかすり傷はあるが、100ドルで買えたのはある意味ラッキーだった。
Aseri Horizon MORD Volkhov river, St. Petersburg region, Russiaktr
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Pleurocystites squamosus
オンタリオのオルドビス系から産出したもの。 海林檎は三葉虫などと比べると知名度は低いが、その奇妙な体制は見る者に訴えるものをもっている。 本種は海林檎のなかでは多産し、かつ保存もよいので、もっともよく市場に出回っている。 私もこれ以外の海林檎はもっていない。 この標本では苞は平らになっているが、本来はもっと立体的で、リンゴのように丸みを帯びていたらしい。 本種には孔菱と呼ばれる菱形の器官がある。 前方の二つはまるで目のようで、苞の全体が人間の髑髏のように見えなくもない。
unknown ORD Ontario, Canadaktr
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Colpocoryphe rouaulti
カリメネ家の三兄弟である Neseuretus、Salterocoryphe、Colpocoryphe は、いずれも欧州や北アフリカで産出する一般種だが、私はこの三つはフランス産で揃えたいという願望がある。 なぜかを書き出すと長くなるのでやめておくが、今回の Colpocoryphe はフランスの Massif Armoricain というところで採れたもので、モロッコ産かと見まがうほど保存がよい。 サイズも37mmとまずまずの大きさだ。 なによりも顔つきが愛らしく、とても癒される。 Neseuretus は前にアップしたので、残るは Salterocoryphe だが、運よく見つけられるだろうか?
unknown ORD Massif Armoricain, Francektr
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Chotecops ferdinandi
ヤフオクで売りに出したものの、「レプリカではないか」といわれて返ってきたもの。 たしかに改めてよく見ると、真正の化石でない可能性が高い。 いや、高いどころか、確実にブンデンバッハのフンスリュック粘板岩ではない。 ではいったいこれは何だろう? 表側を見るかぎり、どうしてもレプリカとは思えないほど真に迫っている。 ところが裏側を見ると、あちこちに気泡とおぼしい孔があいている。 比重もフンスリュック粘板岩としてはかなり軽い。 モロッコ産のレプリカ(というかフェイク)はさんざん目にして自分でも判別がつくが、まさかブンデンバッハの贋物をつかまされるとは…… というわけで、自分の愚かしさの象徴として、しばらく机の上に置いておこう。
Hunsrück Shale LDEV Bundenbach, Germanyktr
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Spinocyrtia sp.
腕足類の類としての寿命はおそろしく長い。 なにしろカンブリア紀から現在まで生きているのだから、三葉虫などと比べてみてもはるかに長いわけだ。 しかしもちろんその間に滅びてしまった種類もある。 スピリファーもそのひとつで、三畳紀の中期に絶滅したとのこと。 かつては腕骨入標本もけっこう目にしたが、最近ではさっぱりだ。 今回買ったものは、写真では非常に魅力的に見えたが、現物はまあそれなりで、改めてプロのカメラマンの腕に敬服する。
Zagórze Fm. LDEV Bukowa Góra quarry, Holy Cross Mts, Polandktr
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Greenops widderensis
アカステ科のなかでは群を抜いて好みの種類がこれ。 『ニューヨークの三葉虫』という本に、この仲間の拡大写真がモノクロでいくつも載っていて、すっかり魅了されてしまった。 だから標本をひとつ選ぶとすれば、ニューヨークの Greenops boothi になるんだろうけど、手ごろなのがなかったのでこれに落ち着いた。 カナダのオンタリオ産でサイズは27㎜。 Greenops はもとは Cryphaeus と命名されたが、すでに同名の昆虫がいたので Greenops に改称されたらしい。 Cryphaeus のほうはボリビア産の Metacryphaeus にその名残をとどめている。 いつも思うんだけど、昔の名前のほうが趣があっていいね。 人名+ops だとか +ia とかいうのはなんか適当すぎる気がする。
Arkona Fm. DEV Ontario, Canadaktr
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Scotoharpes spaskii
18㎜、オルドビス紀、ロシア産。 Harpes の仲間はいくつか買い求めたが、手元に残ったのはこれひとつだけ。 サイズのわりに目が大きいのは若い個体だからだろうか。 胸節はそれでも18あって、すでに成体と変らない(最多で20節)。 この標本はやや反り気味だが、そのために小さい尾板まで観察できるのはありがたい。 ハルペスの仲間は、部分化石なら世界のあちこちから産出するが、完全体が出るのはほぼモロッコとロシアに限られる。 そういう意味でも本種は貴重だ。
Aseri Level MORD Vilpovitsy Quarry, St. Petersburg region, Russiaktr
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Dalmanites limulurus
ニューヨークのシルル紀代表として Bumastus と双璧をなすもの。 蒐集を始めたころ、これを手に入れるのがひとつの目標だった。 ほかの三葉虫にない、知的で凛とした雰囲気が好ましかった。 それにしてもこの種類、どの標本をみても同じようにみえる。 その佇まいから母岩の質感にいたるまで、そっくり同じ標本が何百、何千とあるような気がする。 私の手に入れたのも、その何百、何千のうちのひとつだ。 標本というより見本といったほうがしっくりくる。 この見本、example を眺めながら、ゆくりなくも頭に浮んでくるのは「贋造」の二文字だが、おそらくは杞憂だろう。 サイズはトゲ込みで60㎜
Rochester Shale MSIL Middleport, NY, USAktr