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Stromatopora sp.
ストロマトポラは和名を層孔虫といい、さまざまな形の群体を形成する。 このゴトランド産のものは、ヘルメットを何層も重ねたような構造で、当地では catskull と呼ばれている由。 これほど見た目がつまらない化石も珍しいと思うが、私はどういうわけかこのつまらなさに惹かれるものがあって、ゴトランド産の各種サンゴ類がことごとく放出の憂き目に会うなかで、なんとか手元に残った数少ないもののひとつ。 これを眺めていると非常にリラックスできる。 この安心感は、これが形状的に胎内回帰の夢を孕んでいるからだろうか。 サイズは幅7㎝ほど。
unknown SIL Gotland, Swedenktr
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Spinocyrtia sp.
腕足類の類としての寿命はおそろしく長い。 なにしろカンブリア紀から現在まで生きているのだから、三葉虫などと比べてみてもはるかに長いわけだ。 しかしもちろんその間に滅びてしまった種類もある。 スピリファーもそのひとつで、三畳紀の中期に絶滅したとのこと。 かつては腕骨入標本もけっこう目にしたが、最近ではさっぱりだ。 今回買ったものは、写真では非常に魅力的に見えたが、現物はまあそれなりで、改めてプロのカメラマンの腕に敬服する。
Zagórze Fm. LDEV Bukowa Góra quarry, Holy Cross Mts, Polandktr
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Sphaerocoryphe robusta
うちにある標本では唯一の真の稀少種といえるのがこれだ。 サイズは14㎜と小さいが、これでも成体なのである。 私はどういうわけかこの手の頭ボールと呼ばれる三葉虫に惹かれるものを感じる。 しかし手に入れたのはこれだけで、ほかのにはなかなか手が回らない。 理由は簡単で、いずれも程度の差こそあれ稀少種であり、そのため値段がかなり張るのだ。 頭ボールときけば、断片であっても、部分であっても、やみくもに欲しくなる。 たぶん一種の病気だと思う。 本種においては、頭だけでなく、尾棘も魅力になっている。 頭ボールと二股になった尾棘とを兼ね備えている点で、本種は小さいながらも最強の三葉虫だ。 産地:ニューヨークのラスト・フォーメーション
Rust Fm. UORD Gravesville, NY, USAktr
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Scotoharpes spaskii
18㎜、オルドビス紀、ロシア産。 Harpes の仲間はいくつか買い求めたが、手元に残ったのはこれひとつだけ。 サイズのわりに目が大きいのは若い個体だからだろうか。 胸節はそれでも18あって、すでに成体と変らない(最多で20節)。 この標本はやや反り気味だが、そのために小さい尾板まで観察できるのはありがたい。 ハルペスの仲間は、部分化石なら世界のあちこちから産出するが、完全体が出るのはほぼモロッコとロシアに限られる。 そういう意味でも本種は貴重だ。
Aseri Level MORD Vilpovitsy Quarry, St. Petersburg region, Russiaktr
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Ptychoparia striata
かつてはプティコパリア目の頭目のような顔をしていた本種だが、いまでは未確定目に他のものといっしょに放り込まれて、もはや昔日の威光はなくなった。 とはいうものの、本種がチェコを代表する三葉虫のひとつであることに変りはない。 けっして稀少種というのではないが、りっぱな標本はやはりそれなりに貴重だ。 R・フォーティはその著「三葉虫の謎」のなかで、本種について「ミスター平均」という呼称を与えている。 三葉虫の基本的なシェイプからの「いかなる方向への誇張もいっさいない」というのだが、どうだろう。 私にはそれほどプリミティヴにはみえないし、むしろボヘミアらしい奇妙な偏向を感じてしまう。 偏向というのは、ボヘミア三葉虫がもっている、一種異様な地下世界的な風情だ。 私にはそれがなぜか鉱山のイメージと重なってくる。 そこに魅力を見出せるかどうかが、この地の三葉虫を鑑賞する際の決め手になるだろう。 全長:48mm
Jince Fm. MCAM Czech Repblicktr
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Pseudocybele nasuta
顔のかわいさという点では、全三葉虫のうちでも五指に入るだろう。 レドリキアやオレネルスの悪相(とあえていう)とはえらい違いだ。 しかしこんなかわいい顔をしながら、食性の面からみると捕食者すなわちプレデターだったという説がある。 顔で相手を油断させておいてガブッとやったのだろうか。 私は三葉虫にはあまり捕食などという野蛮な行為はしてほしくない。 なるべくならプランクトンあたりを餌にしていてほしい。 そうやって平和な三億年を過していたと思いたい(註)。 全長:18mm (註) 厳密には最大限に見積っても2.9億年ほどで、三億年には達していない
Ninemile shale LORD Eureka, NV, USAktr
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Pseudobasilicus lawrowi
全長45㎜の子供個体。 母岩とのマッチングはいいし、形も整っているので、小さくても気にならない。 考えてみれば、私のもっているロシア三葉虫は小さいものばかりだ。 理由は簡単で、そうでもなければとても手に入れられないほど、ロシア三葉虫は高価なのである。 Pseudobasilicus は昔は Ptychopyge の仲間に入れられていて、たしかに見た目もよく似ているのだが、どういうわけかいまは Pseudoasaphus の仲間に入っているようだ。 また Pseudobasilicus にも二種類あって、P. lawrowi と P. planus とを比較すると、前者のほうが頬棘が太くて長い、額の小さい角のような突起が明瞭、頭蓋前方が細長い、尾板の畝がカーブしている、などの違いがあるとのこと(SPPLの図鑑による)。 あと余談だが、本種の名前の元になった Basilicus というのは、イギリスで産出する三葉虫で、ソルターの画期的な論文「英国の三葉虫」でも大きく扱われている。 かなり大型化する種のようで、tyrannus の種小名が示すとおり、威風あたりを払うといった風情だ。 (追記) ソルターの本から Basilicus tyrannus の画像を追加しました。
Aseri Horizon MORD Volkhov river, St. Petersburg region, Russiaktr
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Pliomera fischeri
これは二代目のプリオメラで、当初からかなりアラが目立った。 しかし、これ以上に姿勢のよい、頭部の造作が理想的な、ハイポストマまでついた標本はなかなか見当たらない。 このプリオメラという種類は、かつてはそれなりの数が出ていたのに、最近ではふっつり見かけなくなった。 今後はどんどん稀少になっていくのではないか。 本標本は一見ぼろぼろだが、その目をルーペで見ると、微細な複眼の構造が保存されてる。 これもやはり私がこの標本を手元においている理由のひとつだ。 というわけで、いろいろと見どころの多い標本であることは確かだが、やっぱりどうしても気になるのはその全体のくたびれ具合と、母岩から外れている点だ。 これはまあ、諦めるしかないですね。 全長:40mm
Unknown ORD Russiaktr
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Pleurocystites squamosus
オンタリオのオルドビス系から産出したもの。 海林檎は三葉虫などと比べると知名度は低いが、その奇妙な体制は見る者に訴えるものをもっている。 本種は海林檎のなかでは多産し、かつ保存もよいので、もっともよく市場に出回っている。 私もこれ以外の海林檎はもっていない。 この標本では苞は平らになっているが、本来はもっと立体的で、リンゴのように丸みを帯びていたらしい。 本種には孔菱と呼ばれる菱形の器官がある。 前方の二つはまるで目のようで、苞の全体が人間の髑髏のように見えなくもない。
unknown ORD Ontario, Canadaktr
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Perisphinctes sp.
化石集めの初期に購入したもの。 そのころは室内装飾に凝っていたので、なにか飾りになるものというのでこれを手に入れた。 保存はあまりよくないが、165㎜というサイズは装飾品としてはじゅうぶんだろう。 これを買ったころはペリスフィンクテスという名前で出回っていたが、いまはもしかしたら名前が変っているかもしれない。 しかし正式名称はどうあれ、一般的には「マダガスカルの白いアンモナイト」といえば本種を指す。 多産する種類で、もちろん値段は安いが、形としては数あるアンモナイトのうちでも優美な部類に入ると思う。
unknown Jura Tulear, Madagascarktr
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Pavlovia sp.
ロシア産のアンモナイト。 サイズは4㎝と小さいながらも非常に状態がよい。 アンモナイトは最初のうちこそ遊色だとかイリデッセンスだとかに眩惑されるが、そういうものは意外に早く飽きる。 アンモライトですらいつかは飽きる。 最後まで飽きないのが、本種のように地味でも造形の整った完璧な標本だ。
Jura Russia ebay, rubellexiektr
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Paradoxides gracilis
今からちょうど10年前に手に入れたもの。 本種については購入当時にブログにいろいろと書いたので、ここでは繰り返さない。 とにもかくにもこれが私のコレクションの核であって、三葉虫探求において私の辿る道はすべて本種に端を発しているといっても過言ではない。 これはふぉっしるの出品で、落札価格は12,000円だった。 この金額が、その後の私の基準となってしまい、なかなかこの金額を超える標本を買うことができなかった。 その縛りは、細々とではあるが、いまも続いている。 全長:90㎜
Jince Fm. MCAM Czech Pepbulicktr
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Olenellus gilberti
私のもっている唯一のオレネルスがこれだ。 じつのところ、私はオレネルス類にはわりと冷淡で、ほかの種類が欲しいと思ったことはあまりない。 それは私がレドリキア派でもオレネルス派でもない、パラドキシデス派だからだろうか。 それとも最初に手に入れた本標本があまりにも好みに合致していて、これだけで満足してしまったからだろうか。 いずれにせよ、今後他のオレネルス類へ探求の手が延びることはまずないので、この唯一の標本を大切にしようと思っている。 全長:39mm
Pioche Shale LCAM Lincoln, NV, USAktr
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Ogygiocarella debuchii
最初に発見された三葉虫で、当時はカレイと間違えられたという。 全三葉虫のうちでももっとも有名なもののひとつなので、私もいくつか買い求めたが、けっきょく手元にはこれしか残らなかった。 サイズは97mm で、保存状態はまずまずだが、本種においては、標本自体の古さがある種の魅力になっている。 これに昔の書体で書かれた古びた手書きの標本カードがついていたら最高なのだが。 産地情報はいちおう下に記したが、ウェールズの地名は読みがむつかしくてなかなか覚えられない。 (補足) Ogygiocarella には debuchii と angustissima の二種類ある。 尾板の畝が12止まりだったら debuchii、13から16あったら angustissima で、後者のほうが新しい地層から出るらしい(R. Kennedy説)。
Llandelian Stage, Llanffawr Mudstone Group MORD Builth Inlier, Wales, UKktr
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Norwoodia bellaspina
ユタのウィークス層から出たものだが、こんなに奇妙な標本はほかにない。 母岩は薄く切り取られていて、表と裏とで色が全く違う。 表側はほぼ平らで、すべすべしていて、赤味を帯びている。 その中央にすばらしく保存のよい三葉虫が鎮座ましましている。 どうみても作り物としか思えない。 この産地のほかのものも、写真でみるかぎり、似たような感じだから、こういうものだと思うしかないだろう。 とにかく現実離れしていて、あえていえばファンタスティックだ。 この標本では尾部が欠損しているが、なにしろ小さいので、気にすれば気になるし、気にしなければ気にならないといった程度。 サイズはトゲ込みで17㎜。
Weeks Fm. MCAM Millard, Utah, USAktr