-
Deanaspis goldfussi
昨日登録した D. senftenbergi と同時に届いたもの。 こちらは D. goldfussi という種名だが、両者がどう違うのか、まだ調べてみない。 調べてはみないが、おそらくたいした違いはないのではないか、という気がする。 記載はともに古く、前者は1847年にハウレとコルダによって、後者は1846年にバランドによって行われている。 今日では、三葉虫に関心をもっている人なら、Deanaspis といえばチェコ産がすぐに思い浮ぶと思うが、この Deanaspis という属は、もともとはトルコ産に与えられた名前らしく、それがどういう経緯でチェコ産に適用されるようになったのか、そのあたりもいまのところ謎だ。 この標本はややぺしゃんこ気味で、頬棘も失われているが、頭部の縁飾りも含めて、全体がきれいにクリーニングされているので、ルーペで見るとじつに目に快い。 これでもう少しサイズがあり、母岩と本体とのコントラストがはっきりしていたら、なかなかの見物になったと思われる。 本種が属するトリヌクレウス類というのは、頭部に三つの核(というか膨らみ)があるのが特徴で、アサフスに分類されているけれども、むしろハルペス類に近いのではないか、という気がする。 全長:12㎜
Letna Fm. ORD Letna Hill, Prague, Czech Republicktr
-
Deanaspis senftenbergi
これは一見価値なきジャンク品にみえるかもしれない。 しかし、私の基準では、けっこう高品位の準完全体に属する。 まずそのサイズ。 トゲを含まずに20㎜というのは、トリヌクレウス類としては十分な大きさだ。 それと、左側の頬棘が保存されていること。 これもまずふつうには見られない。 次に、頭部が立体的に保存されていること。 たいていは頭部がぺしゃんこになっていて、この標本のように突兀として盛り上ってるのはあまり見かけない。 それから最後に、額環の突起(トゲ)の痕跡が残っていること。 この本来的な特徴が、大半の標本では失われて影も形もない。 というわけで、これでもし胸部と尾部とに欠損がなければ、すばらしい見物になったと思われる。 ちょうとケネディ氏の本の表紙を飾っている Whittardolithus のように。 この標本は、石を割っただけで、とくにクリーニングはなされていない。 なので、左側の縁の部分は、母岩の下に埋まったままになっている。 ここをうまくクリーニングできれば、右側と対をなすような構造が露わになると思われるが、私にはそういう技術はないので、これはもうこのままにしておくほかない。 全長:20㎜(トゲ含まず)
Vinické Fm ORD Židice, Czech Republicktr
-
Eodiscus punctatus
アグノストゥスと三葉虫との中間的存在としてその名前だけは知っていたが、なかなか現物を目にする機会がなく、今回たまたまネットで見かけたので買ってみた。 特徴はといえば、とにかく小さくて地味。 しかしその形はアグノストゥスよりもかなり三葉虫に近い。 保存は意外とよくて、全体の形を明瞭に観察することができる。 これの仲間を広く集めようという気にはならないが、サンプル的にひとつもっていてもいいし、三葉虫愛好家ならばひとつはもっておくべき種類のような気がする。 全長:4mm
Menevian Series of St. Davids MCAM Dyfed, South Wales, UKktr
-
Eldredgeops rana
北米デボン紀を代表する一般種で、たいていの図鑑に載っている。 旧称は Phacops rana rana。 親しみをこめてラナラナなどと呼ぶこともあるが、それが通じなくなる時代もそう遠い先ではないだろう。 名称の変遷 1832年、Jacob Green が Calymene bufo var. rana として記載 1888年、James Hall と John M. Clarke が Phacops rana として記載 1927年、Grace Anne Stewart が亜種 milleri を記載 1953年、Erwin Stumm が crassituberculata, norwoodensis ほか5亜種を記載 1972年、上記の業績をふまえて Niles Eldredge が画期的(?)論文を発表 1990年、その功績を称えて W. Struve が Phacops rana rana を Eldredgeops rana と改称 こういう流れなので、かつて亜種扱いだった milleri, crassituberculata, norwoodensis などがそれぞれ種へと繰り上げられて、たとえば Phacops rana milleri は Eldredgeops milleri となった。 Eldredgeops が Phacops rana の言い換えなので、Eldredgeops rana milleri とはいわないのがふつうだし、理屈にも合っている。 全長:34mm
Moscow Fm. MDEV Hamburg, NY, USAktr
-
Placoparia tournemini
本種はイベリア半島一帯で広く産出する。 近縁種まで含めれば、チェコや英国、さらにモロッコでも多産するので、かなりの成功を収めた種類だといえる。 体制も一風変っていて、カクカクした感じの肋のある胸部や、弧を描くように丸まった尾部のトゲ、顆粒に覆われた目のない頭部など、一目でそれとわかるほど特徴的だ。 今回手に入れた標本は、小さいけれども色合いや質感がシックで、フランス産の美点がよく出ているように思う。 全長:22mm
Traveusot Fm. MORD La Dominelais, Britany, Francektr
-
Cnemidopyge nuda
ラフィオフォルスの仲間をひとつも持っていないので、たまたま見かけた本種を購入。 もちろんそれには値段が安いとか、英国産であるとか、そういう理由もあった。 ラフィオフォルス類というのは、アサフスに分類されているけれども、底棲ではなく遊泳性で、そのフォルムも小型のエイのようだ。 三葉虫は「海の蝶」と呼ばれることがあるが、おそらくこの仲間がいちばん蝶に似ているように思う(註)。 遊泳性の三葉虫は、キクロピゲのように極端に目が大きいのもあれば、本種のように目がないものもある。 目がなくても、3本のトゲや触角を駆使して、たくみに敵をよけながら泳いでいたと思われる。 この標本は頭部前方のトゲだけ保存されているが、よく見ると(心の目で見ると?)左右の頬棘も保存されているような気がしないでもない。 全長:30mm(トゲ含まず) (註) 三葉虫が海の蝶と呼ばれるのは、本来的にはその尾板の形に由来すると思う。 中国の王冠虫の尾板等を参照のこと。
Hastsgraptus Tereticulus biozone LORD Pencerig Builth Wells, Powys, Walesktr
-
Redlichia chinensis
レドリキアは中国のほかオーストラリアでも産出するようだが、このシネンシスがもっとも一般的であるのはまず間違いない。 オレネルスと並んで、最古の三葉虫のひとつ。 この標本は、届いたときはおそろしく汚れていて、とりあえず水洗いから始めなければならなかった。 しかし、洗い浄めてみると、なかなか魅力的な標本だということがわかった。 いまでは北米のオレネルス、欧州のパラドキシデスと並んで、私のコレクションにおけるレドリキア目の三本柱のひとつとなっている。 本種の産地は不明だが、素人のあてずっぽうでいうと、湖南省の Balang Fm. から出たもののような気がする。 Balang Fm. は湖南と貴州の両方に露頭があるらしく、カンブリア紀前期の地層として知られている。 ちなみに本種の中国名は、「中華萊得利基蟲」という(旧漢字表記)。 中国語でどう発音するのか、聞いてみたい。 全長:50mm
Unknown LCAM Chinaktr
-
Inzeria intia
現在のところ、市場に出回るストロマトライトの大半はオーストラリア産ではないかと思う。 オーストラリア産のものはどれもカラフルで美しい。 さまざまな種類があるなかで、私がサンプル的に選んだのはインゼリアという名前のもの。 見た目のおもしろさと価格に惹かれて購入した。 これはストロマトライトの一部を鏡面研磨したもので、層状になった構造がよくわかる反面、どうもあまりきれいすぎて、化石標本ならではのリアリティに欠けている。 化石というのはもっと野暮ったく、ごつごつしていて、あえていえば野放図なものだから。 まあ、そういう無いものねだりを差っ引けば、今回のサンプルはけっこういい線を行ってると思う。 サイズ:60x40mm (付記) 前にLabログにちょっと書いたモロッコ産のお椀のような贋ストロマトライトは、ケルコウブ(Kerkoub)という名前がついているらしい。 また、モロッコでは贋ストロマトライトならぬ真正のストロマトライトも産出するらしいが、市場に出回っているかどうかは不明。
Bitter Springs Fm. Proterozoic 800 MYO Alice Springs, Northern Territory, Australiaktr
-
Vysocania iberica
なんとも知れない僻地の僻標本。 本種の画像を見て、その尾板の畝から、これはもしかしたらスクテルムの一種ではないか、と思って購入したもの。 ネットにはヴィソカニア・イベリカの資料も散見するけれども、どうも私の手に入れたものと同一とは思えず、いったいこの標本がヴィソカニアかどうかもいまのところ不明だ。 私の希望としては、ヴィソカニアではなくて、オルドビス紀に出た稀少なスクテルムの一種だったら嬉しいのだが、その可能性は低い。 本種について新たな知見があったら、また報告します。 全長:36mm
Ribeira do Casalinho Fm. UORD Mação, Portugalktr
-
Altiocculus harrisi
三葉虫にあまり興味のない人にとっては、本種はたぶんエルラシアが長く延びたようにしか見えないだろう。 私もまあ現物を見るまではそんなふうに思っていた。 しかし、じっさいに見ると、やっぱりこれが違うんですな、当り前ですけど。 たんにエルラシアが延びただけではない、サムシングがそこにはある。 そのサムシングが本種の魅力を形作っているわけです。 しかし、前にLabログにも書いたように、表面を覆っている保護剤(?)のギラギラが、そのサムシングの発現を妨げているようにみえた。 そこでアセトンで剥がしてみたわけです。 結果は、おそらく前よりよくなった、少なくとも私の好みには合うようになったと思う。 ビフォーアフターの画像を並べておくので、ご覧ください。 全長:41mm
Wheeler Fm. MCAM Drum Mountains, Millard Co., UT USAktr
-
Illaenus crassicauda
本種については、だいぶ前に丸まった小さいのを手に入れたが、どうしても気に入るに至らず、手放してしまった。 一般的には人気のあるらしいエンロール標本が私にはダメなのは、いったいどうしたわけだろうか。 この Illaenus crassicauda はイレヌスの模式種とされているけれども、じっさいのところイレヌスというよりは、北米で産出する Nanillaenus に近いのではないかと思う。 Nanillaenus は Thaleops と混同されることもあり、最近ある研究者がこのあたりのごちゃごちゃしたのを整理したようだが、ともあれその代表種とされる Nanillaenus americanus を本種 Illaenus crassicauda と比較してみると、その類似には注目すべきものがあるように思う。 いちばん最後にその北米種の写真を入れておいたので、ご覧ください。 全長:33mm
Kukruze level UORD Alexeevka quarry, St. Petersburg region, Russiaktr
-
Conularia trentonensis
コヌラリアは化石愛好家にはよく知られている。 復元図をみると、ピラミッドを長く引き延ばしたような、断面菱形の長錘形で、それが逆さまになって海底に突っ立っていたらしい。 その様子はルゴササンゴに似ているが、サンゴが群体なのに対し、コヌラリアは単体らしい。 イメージ的にいえば、巻いていない巻貝みたいなものだろうか。 そういうものが、尖ったほうを下にして突っ立っていたというのは、やはり異様な光景だろう。 本種は小さいので見た目のおもしろさはそれなりだが、ルーペで覗くと、窓がびっしりと連なった超高層建築のようで、なかなか見ごたえがある。 全長:20mm
Neuville Fm. UORD Quebec City, Quebec, Canadaktr
-
Ectillaenus giganteus
本種はフランスのほか、スペインやポルトガルでも産出する。 イベリア半島一帯から広く産出するといってもいいだろう。 私はあのへんのものはフランス産で集めたいと思っているので、手頃な標本が入手できたのはよかった。 それともうひとつ、この標本のいいところは、目の存在が確認できることだ。 だいたいにおいて自在頬が欠けている標本が多いので、いったい目があるのかないのか明確でなかったが、これを見てギガンテウスには目があることがはっきりした。 ちなみに、チェコで産出する近縁種の Ectillaenus katzeri だが、こちらは確かに目がないので、盲目三葉虫の仲間に入れてもいいだろう。 英国の Ectillaenus perovalis も調べてみたが、これは目があるのかないのかはっきりしなかった。 全長:61mm
Unknown MORD Bain de Bretagne, Francektr
-
Asaphus kowalewskii
FFストアによれば、けっこうな人気種らしい。 そういえば、SPPLにも本種だけは十分すぎるくらいの在庫がある。 まあ、それだけありきたりなので、とくに欲しいとも思わなかった。 ところが、ちょっとしたきっかけで手に入れてみると、なるほどこれが人気があるのも頷ける。 なんということはないけれども、いつまでも見ていられる。 飽きがこない。 見れば見るほどそのフォルムに引き込まれる。 この標本は本体が母岩の端に寄りすぎていて、標本箱の縁に当って目が折れる危険性があるので、紙粘土で母岩を延長した。 これだけやっておいて、ようやく安心して眺めることができるようになった。 ところで、日本人ならだれでもこれを見るとカネゴンを連想するわけだが、私はカネゴンの回を見逃していて記憶にないので、このたびアマプラで視聴してみた。 古いことは古いが、まったく古びていない。 傑作也。 全長:47mm
Asery level MORD Vilpovitsy quarry, St. Petersburg region, Russiaktr
-
Flexicalymene retrorsa
いっときは何種類かもっていたカリメネも、いまではこの一種のみとなった。 同時期に買った標本が次々に散逸していく中で、これだけが残った理由は何だろうか? それはおそらく、狭義のカリメネの形態的な要素のすべてが、このコンパクトな見本のなかに含まれるからではないかと思う。 私にとってはこのオハイオのカリメネこそが、カリメネの中のカリメネなのである。 カリメネの中のカリメネといえば、一般的には Calymene blumenbachi を指す。 しかし残念なことに私はそれを手に入れることができなかった。 そんなわけで、一般とは異なった、私だけのカリメネの典型として、このオハイオのカリメネは大切な存在となっている。 全長:35mm
Richmond Fm., Arnheim Member UORD Mount Orab, Ohio, USAktr