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a.P.A.t.T “We”
a.P.A.t.T.と聞いて、ピーンとくるリスナーさんは少ないかと思います。私自身も、何でこのアルバム、買ったのか?良く覚えていません。まぁ謎物件な訳です。それでちょっと調べてみました。a.P.A.t.T.というのは、どうも、英国リバプールで、2002年に結成されたアヴァン・ポップとマルチメディアの為のアンサンブルのことみたいです。このアンサンブルには、Kling KlangやZombinaのメンバーが関わっているようです。詳しい結成までの経歴やメンバー等は良く分かりませんが、失敗と成功を繰り返しながら、凡ゆる方向へ向かって成長してきたらしいです。なので、音楽だけではなく、映像やその他の表現分野に渡る活動をしてきており、単にアヴァンギャルドや現代音楽というだけではなく、ライブ・バンドとしての活動にも重きを置いています。そのような背景もあるのか?関係あるかどうか分かりませんが、2016年〜2022年間のメンバーは、Ana Crusis, Boss A Nova, Boss DR-5, Col Legno, Commodore 6/4, Dorothy Wave, Ed Room Dyasono, Empress Play, General MIDI, Mic Lead, Mr Phil, Oscar Later, Private Dancer, Relative Minorと言うように偽名(しかも機材の名前を文字っているお茶目さ)だらけで、曲によって、その組合せは変わることもあり、リスナーや観客を困惑させ続けてきており、チャートとは無関係な立ち位置で活動していたらしいです。ただ、メンバーの中で、General MIDIなる人物がメインに作曲を担当しているので、この人が恐らくリーダー的存在ではないかと思われます。それで、彼等は、1970年代のアートロック~1980年代のシンセポップ〜ポストロック〜硬派なチェンバー・ミュージックまで取り込んで、最終的にモダン・サイケでコーティングされたようで、どこか人を食った様相も見せるキッチュでストレンジなぶっ飛びポップ・サウンドを毎回、作品に刻み込んできました(人を食った様相は、メンバーの名前からも想像できると思います)。特に、2008年にリリースしたアルバム” Black & White Mass”は、ポップ・ミュージックのギリギリの線で留まったアヴァンギャルドな作風として名を馳せ、BBC Radio 1では「今週のアルバム」として毎日放送されていたとのこと。そんな意味で、彼等は、The Beatles, Pink Floyd, Cardiacs, Radioheadと同様の大いなるアイデアを持って、それを実践できるバンドであると評価されています。彼等は、主にBandcampで作品を発表していますが、その中でも、本作品は、フィジカルになった作品の内、6作目に当たります。そして、今回は、米国CA出身女性シンガーDyasonoをゲストとして迎えて、a.P.A.t.T.流の捻くれスウィートな女性ポップス曲”It Keeps Going”を筆頭に、これまでに無かった新味も加わって、端から端まで自由に行き来しています。そんな彼等の”We”は前作から8年振りでリリースされました。そんなa.P.A.t.T.の各曲を紹介していきたいと思います。
★A1 “The Great Attractor” (7:50)は、BとDrsで始まり、そこにエレピが乗ってきて、ヒステリックなVlnやGが絡んできます。途中で雰囲気が変わり、複数のVoによる歌物になりますが、レコメン系に近い音作りをしていますね。マーチのリズムや性急なテンポやらに代わっていく複雑な曲構成がスリリングです。
<General MIDI作>
Bossa Nova(Drs), Private Dancer (Vln),
Boss DR-5 (Fretless-B, E-Piano, Vo), General MIDI (Vo, G, Distorted-B, E-Piano, Synth), Dorothy Wave (Vo), Empress Play (Sax, Piccolo)
★A2 “It Keeps Going” (3:01)は、バックはGeneral MIDIが演奏していますが、軽快なポップスになっており、DyasonoのキュートなVoを上手く活かしています。
<General MIDI&Dyasono作>
Dyasono (Vo), General MIDI (All Instruments)
★A3 “I Sigh: You Sigh” (3:37)は、逆回転で始まり、正確無比なDrsとシーケンサーとBがイントロとなって、クラリネットも加わり、変調男性VoやVlnが入ってくる複雑な曲です。最後にダレますが、直ぐ復活します。
<Dorothy Wave, General MIDI, Bossa Nova, Mark Greenwood作>
Dorothy Wave (Synth), Bossa Nova (Drs), General MIDI (Synth, Vo), Empress Play (Clarinet), Ana Crusis (Vln), Mark Greenwood (Vo)
★A4 “Porca” (2:53)は、ブローするSaxやVlnなんかも含む欧州ラテン系の熱い演奏で、スパニッシュな女性Voが乗っていると思ったら、急に曲調が代わり、ピアノとストリングス・シンセのしっとりとした演奏になります。
<General MIDI&a.P.A.t.T.作>
Bossa Nova (Drs), Boss DR-5 (B), Private Dancer (Vln), General MIDI (Vo, Piano, Farisa-Organ, 5-String-B), Empress Play (Vo, Sax), Dorothy Wave (Clarinet)
★A5 “Solipsisim” (3:04)は、語り調のVoのイントロから、クラリネットとアコーディオン様のシンセの合奏になったり、エレピや女性Voのパートに代わったり、戻ったりと忙しない複雑な曲です。最後にはVlnも絡んできます。
<Oscar Later&General MIDI作>
Oscar Later (Vo), General MIDI (Drs, Upright-B, Synth), Dorothy Wave (Clarinet), Col Legno (Vln), Relative Minor (Vo)
★B1 “Cigarettes And Margerine” (4:05)は、一聴すると、エレポップのようなシンセを多用した曲で、メジャー級女性Voをメインにしている為か、かなり本格的な雰囲気で、可愛らしい出来になっていますが、SE的シンセ音も散見されます。
<Empress Play作>
Empress Play (Vo, Synth), Bossa Nova (Drs), General MIDI (Vo, Synth), Boss DR-5 (G)
★B2 “Study/Relax To Mid-Fi Chill/4am Beats To” (1:36)は、一転して、指パッチンのリズムとピアノの弾き語りから成る小曲で、何となく物憂げで寂しげです。
<General MIDI作>
General MIDI (Synth)
★B3 “Plump In The Mud” (3:17)は、シンセBと生ドラムとストリングス・シンセのバックに、朗々と歌う男性Voが乗る大らかな曲ですが、後半には、SE的シンセ音やGソロも聴取できますが、いきなりアップテンポに変わります
<Boss DR-5&General MIDI 作>
Bossa Nova (Drs), General MIDI (Vo, Synth, Perc), Boss DR-5 (G, Synth), Dorothy Wave (Vo), Empress Play (Synth)
★B4 “Walking Around Proper Looking At Things” (0:18)では、アップテンポのリズム隊にシンセとGを合わせた短い曲ですが、何だかCardiacsっぽい喧騒を感じます。
<Boss DR-5 作>
Bossa Nova (Drs), Boss DR-5 (G, Bass-Synth), General MIDI (Synth),
★B5 “Titus The Bellows” (1:54)では、SP盤のような音質のジャジーな曲で、アコーディオンやクラリネットが小気味良い雰囲気を出しています。
<Boss DR-5作>
Boss DR-5 (G), General MIDI (Drs, Upright-Bass, Accordion), Empress Play (Clarinet)
★B6 “Young People Are Old People From The Future” (2:45)は、締め殺された鶏(?)で始まる落ち着きの無い曲で、ストリングスを多用していますが、突然、曲調がアップテンポに変わったり、楽器も度々変わり、疾走していき、やがて変拍子の曲調に変わり、目まぐるしい展開になっています。
<General MIDI 作>
General MIDI (Vo, Drs, Philicordia, Synth, Glockenspiel, Tape wriggles), Empress Play (Clarinet, Piccolo, Flute), Ana Crusis (Vo, Vln)
★B7 “The People You Know” (2:13)では、ピアノとリズム隊に合わせて、朗々と歌う男性Voがゴージャス感を醸し出しています。しかし、Gの伴奏やピアノも時に崩れるのが面白いところです。
<General MIDI&Boss DR-5 作>
Bossa Nova (Drs), Boss DR-5 (G, B, Stylophone, Vox Continental), General MIDI (Vo, Piano)
★B8 “Doom II: Hell On Earth” (3:37)は、デスVo入りのストーナーロックで、やがて阿鼻叫喚な音地獄へと落ちていきます。これには、ビックリしました!
<Col Legno&General MIDI 作>
Bossa Nova (Drs), Boss DR-5 (G), General MIDI (Vo, B, Synth), Empress Play (Synth), Commodore 6/4 (Sax)
曲自体の構成が非常に複雑で、転調やテンポの変換或いは使用楽器等が一曲の中で頻繁に変わるので、初め聴いた時には、曲間が良く分かりませんでした。しかしながら、そんなこととは無関係に、プログレっぽい展開、特に、レコメン系プログレをポップ・ミュージックの領域に反映させていますので、次はどう来るのかな?と中々楽しめます。メンバー名が全て偽名であることなんかも加味すると、The HomosexualsやEtron Fou Leloublan辺りに近いのかなあとも思いますが、a.P.A.t.T.の方が、これらのバンドの音楽よりももっとポップネスを感じますし、最後にストーナーロックまで持ってきたのには驚きました。そうですねー、一番、近いのが、初期のCardiacsですかね。難解と言うよりも、寧ろ凄く面白くてユーモアのある音楽なので、これは皆さんに是非聴いて欲しい1枚です❗️
B7 “The People You Know” (2:13)
https://youtu.be/1JQ1fPRdw5k?si=XbY1i_tNc9aFn37b
[full album]
https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_mJ73tnG1p1I-qaV9GhLnZtiOwminEbric&si=hyQgARpiO9SdQxqm
[BandcampのURLを貼っておきます]
https://apatt.bandcamp.com/album/we
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