V. A. “Prophecy+Progress: UK Electronics 1978-1990”

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 これは完全に謎物件でした。買ってから聴いたのかどうかも良く覚えていませんでしたが、発掘しました。副題にもあるように、1978年〜1990年の期間の英国を代表する(広い意味での)電子音楽作品を集めたコンピ・アルバムです。多分、Clock DVAやAttrition, Colin Potter, Konstruktivists等のその手の筋では有名どころが入っていたので購入したと思うのですが、やはり個人的目玉はVice Versaじゃないかな? レーベルのPeripheral Minimalについては、私はよく知らなかったのですが、2013年に英国BristolでJason B.Bernardによって運営されている電子音楽(インダストリアル〜シンセ・ポップやポスト・パンクまで)を扱うレーベルです。今回のキュレーションもBernardがやっているようです。と言う訳で、各参加者/グループと曲を紹介していきます。
 A1 Clock DVA “Lomticks Of Time”(1978年)は、Vinyl On Demand (以下VODと表記)から出た"Horology 1: 1978-1980”ボックスセットの中のLP”Lomticks Of Time”から取られています。この時のメンバーは、Adi NewtonとStephen James Turnerです。余りはっきりしたリズムは無く、シンセの通奏低音に、ディレイの掛かったギター(?)の爪弾く音や男性のナレーションが組み合わさった、かなり実験的な曲です。
 A2 Vice Versa “Idol”(1970年)もVODから出たLP “Vice Versa”から取られており、メンバーはMark WhiteとStephen Singletonのデュオで、1977年結成のSheffieldのバンドです。結成時には、他にIan GarthとDavid Sydenhamもいましたが、前者2人はABCに加入し、商業的成功も得ています。曲は、The Futureや初期のHuman Leagueを想起するエレ・ポップです。ホワイト・ノイズによるスネアがカッコ良い。
 A3 Colin Potter “Number Five”(1979年)は、1970年代後半から活動している実験音楽家/サウンドエンジニアで、ICRレーベルと共に活動し、Nurse With WoundやCurrent 93等とのコラボでも有名です。意外にも、リズミックなシーケンスとメロディアスなシンセからなるエレ・ポップな曲で、Muteから出してそうな音楽です。
 A4 Konstruktivists “Vision Speed”(1981年)はは録音時、T.G./CoilのPeter “Sleezy” Christophersonのハーモナイザーを使用。これは、1982年からGlenn Michael Wallis始めたインダストリアル・ユニットで、相方にMark Crumbyもおり、Whitehouseの初期メンバーでもあったとのこと。一転、機械の中にいるかのようなシンセによるインダストリアルな曲で、後半はリズムマシンDR-55も使っています。
 A5 Naked Lunch “Rabies”(1981年)は、1979年に、Gary NumanやKraftwerkの影響下で、Paul N. Davies (G, Korg Synth), Mick Clarke (Moog Synth), Tony Mayo (Vo), Clifford Chapman (Roland Synth), Mark Irving (Drs)によって結成されており、Stevoがプロモートしていました。これまた、初期Human Leagueっぽいシーケンサーを上手く使ったエレ・ポップですね。
A6 Five Times Of Dust “Automation”(1981年)はCardiffとBristolで録音されています。メンバーは、Mark Phillips (Organ, Synth, Speak & Spell, Compute-a-tune, Drs Machine, Bells, Metals, G, Bassline, Clock, Toy Piano)とRobert Lawrence (Bassline, G, Fx, Metals, PC, Drs Machine, Toy Piano, Melodica, Synth, Vo, Xylophone)のデュオです。捻くれまくった実験的エレ・ポップ曲で、似ているものはありません。
 B1 Schleimer K “Women”(1981年)のメンバーは、Billy Duncan (Sax), Dominique Brethes (Kbd, Drs Machine), Michael Wolfen (Vo), Mark Benjamin (B, G)の4人組です。太いシーケンスと初期Kraftwerkっぽいリズムにシンプルなメロディが重なる曲です。SaxやG/Bは使われていないインスト曲です。
 B2 V-Sor, X “Conversation With”(1982年)はCheshireのAlsager大学で録音されており、その時のメンバーは、Alastair Boyle (Drs), Jacqueline Hemmings (Kbd), Alex Newton (Trumpet, Vo), Morgan Bryan (Vo, G)で、1979年末〜1989年まで活動していました。ミニマルなシーケンスとドラムマシンにキャンディーのようなシンセのメロディと男性Voから成るキャッチーなエレ・ポップです。
 B3 Attrition “Beast Of Burden”(1984年)は、元々はThird Mind Recordsから出た”The Attrition Of Reason"から抜粋されています。この時のメンバーはMartin Bowes (Vo, Electronics)とAshley Niblock (Vo)とで、Gordon Maxwell (Sax)が客演しています。なお、Attritionは1980年にBowesとJulia NiblockによってCoventryで結成され、現在は、Bowes, Ashley Niblock, Alan Rider, Julia Niblock Wallerがメンバーです。これは!メチャクチャカッコ良いシーケンスに度肝を抜かれるAttrition節のエレ・ポップで、男女混成Voの切羽詰まった感じもグーです。
 B4 Peter Hope & David Harrow “Too Hot”(1986年)は、Hackneyからシングル"Sufferhead EP”が出た後に録音されています。メンバーは、Hope (Vo)とHarrow (Synth, Kbd)のデュオです。この曲はLinnドラムマシンを使っているのか?そんな強烈にファンキーなリズムと絡むVoもマッチョです。
 B5 John Costello “Total Shutdown”(1986年)は、自主制作カセット"Cantos"から取られています。彼は1980年代中期にカセット2本を出した後、15年後の1996年に、Martin Bowesとのコラボ・ユニットENGRAM名義で”What Am I?”をリリースしており、その後は作品を出しています。割とダークな雰囲気の曲で、エレ・ポップ界のBauhausみたいです、Voはサンプリングなのかな?
 B6 T.A.G.C. “Further And Evident Meanings” (1986年)はSweatboxからリリースされたEP"ShT"から取られており、その時のメンバーは、Clock DVAのAdi Newton, Robert Baker, Darrell D. D'Silva, Mark Holmes, Barry R.D.L. Harden, David A. Heppenstallです。このグループの正体は、1978年にAdi NewtonとSteven James Turnerによって結成されたThe Anti Group Communications (T.A.G.C.) に始まっており、多次元的な表現方法の開発と発信を目指しており、しばしば音/映像/ビデオ/パフォーマンスを含んだ劇場的演出を試みています。強烈にファンキーで複雑なマシンリズムと途中でのクールオフが面白い実験色濃い曲で、テープ音がコラージュされています。
 B7 John Avery “12AM And Looking Down”(1990年のライブトラック)は、元々は1992年にForced Entertainment Theaterの"12am: Awake and Looking Down"の7分ヴァージョンでした。Averyは元々、劇場のパフォーマー/作曲家/サウンド・デザイナーであり、1980年代〜1990年代にSheffieldのバンドHulaのメンバーであり、劇団Forced Entertainmentとのコラボを熱心にやってきました。マリンバのようなリズミックなシーケンスが絡み合うミニマルな曲で、音自体シンプルながらも、アレンジは秀逸です。
 とまあ、グループ/アーティストそれぞれな訳ですが、英国縛りと言うのが面白く、また全然知らないアーティストなんかも参加していて、凄く楽しめました。皆さんも、電子音楽に興味が有れば、是非とも聴いてみて下さい‼️

A2 Vice Versa “Idol (demo version)”
https://youtu.be/GpxBsjwbsnQ

[BandcampのURLを貼っておきます]
https://peripheralminimal.bandcamp.com/album/prophecy-progress-uk-electronics-1978-1990

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