不発に終わったクラシック・ロックのコンピレイション「クラシックス」 米国テスト・プレス

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今年も来た命日、何回目の蜥蜴忌なのか。もはやパリは燃えていないだろう。しかしせめてこの日くらいは、どこにいようと静かに悼んでいたいものです。1985年夏、MTV全盛期にだしぬけに現れた「ワイルド・チャイルド」のプロモ・クリップには驚倒しました。それに連動してリリースされたコンピレイションがこの「クラシックス」です。内容は「ジム・モリソンの遺産」を「13」のコンセプトで再現といったもので大ヒットを排し、比較的地味な曲を並べていました。これは米盤のテスト・プレスです。が、この後に別種のテスト・プレスも存在するはずなのです。公式リリース盤と同内容の。どういうことかいいますと、これは、最終的に発売されたものよりも1曲多く、1曲が差し替えられた「最初期案」の内容だからです。ベスト物だったからいいようなものの、これがもしもオリジナル・アルバムだったらエライことになりましたな。
テスト・プレスの段階でまだタイトルが未定や仮題であるケースは知っていますが、選曲やソング・オーダーが最終決定していないという事例は、結構あるものなんでしょうかね。具体的にいえば、本盤にはB面2曲目に「チャンスはつかめ」が入り、3曲目には「ランド・ホー!」ではなく「イージー・ライド」が収録されています。従って全14曲。シングルでのヒット曲といえば「あの娘に狂って」と「名もなき兵士」くらいしか収められていません。しかし結果的には1曲削って、過去のベスト「13」の続編的位置づけに。だからジャケット写真も、モリソンを正面からではないアングルで撮影した横顔のような一枚で準じ、かつてのベスト「13」への既視感・近似感を演出した上で新旧どちらのファン層にもアピールしようと試みたのでしょう。
米国での発売は1985年5月、(本盤の製作は同年3月20日)、折からのMTVブームに乗って、ドアーズも「ロードハウス・ブルース」と「ワイルド・チャイルド」の2曲をデジタル・リマスター+ビデオ・クリップで商戦に参入としいう運びです。しかしながら米ビルボードでは同年6月に124位が最高位でした。
なお、本盤のマトリクス・ナンバーの枝番がはA/B面ともに1である以上(プロモ盤は3)完成版リリースの為のスタンパーとは別個で独自のものだったのではと推察されます。

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