珍奇と脱力の昭和あさって歌謡「ミネソタの卵売り」暁テル子

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過去を今日の常識やセンスで論い、嗤うことはいくらでもできますし、実際に大笑いも可能です。昭和モードの山本を現在モードの早川がダサいと言って笑いをとる千鳥の手法です。伏龍や風船爆弾を、さらにいえば竹槍での一億玉砕の覚悟も、まあ、そういう論じかたで嗤うのはいくらでもできますし、際限なく続けられる。しかしキリがありません。テリーの愛称でよばれた暁テル子は昭和20年代を代表する早世した歌手、笠置シズ子の対抗馬と目されてそれなりにヒットも飛ばしました。ちなみに、その後20年ほど経過すると、テリーといえば寺内タケシ御大になりますけど、あれは、ケーシー寺内と呼ぶのが妥当で、「寺」だからテリーというのも変な話です。それはともかく、この昭和26年2月の「ミネソタの卵売り」。いま聴いてもその突き抜けた能天気な雰囲気は
破壊力がありますね。珍奇にして面妖、わけのわからぬヒット曲、ミネソタ出身のロバート・ジンママン先生にでも、「こんな曲があったんですよ」と告げ口してあげようか。暁の遺した曲のタイトルがすごい。「ミシン娘」「チューインガムは恋の味」「ハワイ航路のマドロスさん」「港キューバのタバコ売り」「チロルのミルク売り」「リオのボボ売り」「りべらる銀座」「憧れのエアーガール」その他、戦後すぐの日本人の異国情緒、欧米への憧憬、もはや大米帝国の赤子として生まれ変わった我が国の、邪気が無いにもホドがあるこの憧れぶりと一瞬の手のひら返し。真珠湾に突っ込んでからわずか七年後には岡っパルの「ハワイ航路」だもんなあ。それにしても「皆さん卵をたべなさい 美人になるよ いい声出るよ 朝から晩まで コッコッコッコッコケッコーッ」って・・・・これが現代日本の原風景でしょう。

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