宙、茜色に染めてく
地球の周りには数百基の巨大なスペースコロニーが浮かび、人々がその内壁を第二の故郷として半世紀。 人類の半数が宇宙生活者となった宇宙世紀0079。 サイド3はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んできた。 開戦当初に総人口の半数が死に、人々はみずからの行為に恐怖した。 連邦軍の新鋭戦艦ホワイトベースの少年パイロット・アムロ・レイは幾つかの戦いを経て、いつしか一人前の戦士に育っていった。 そしてホワイトベースは新たな戦局の進展にともなって宇宙へ発進していった。 それを、彼らの仇敵シャア・アズナブルが追う。 三作目の「めぐりあい宇宙編」は、TVシリーズの第31話「ザンジバル、追撃!」以降の再編集になります。体調不良で現場を離れていた安彦良和が復帰し、ハイクオリティな作画が嬉しい作品です。 冒頭から迫力の艦隊戦。すっかり手慣れたホワイトベース隊は、ドレン率いるキャメル・パトロール艦隊をアッサリ撃破してしまいます。 淡々と敵を撃破していくアムロ...その姿はまさに"白い悪魔"です。 舞台は中立コロニーのサイド6へ... 物語はニュータイプ論へ移っていきます。 実父テム・レイと決別したアムロ。そしてララァ・スン、シャア・アズナブルとの接触。この時点ではまだ真のニュータイプへの覚醒を果たしていないアムロですが、”認識"においては2人を遥かに凌駕しています。また、後にララァに「貴方には、守るべき人も、守るべき物も無いというのに!」「私にはわかる。貴方には故郷も無ければ家族も無いわ、人を愛してもいない!」と指摘されるように、アムロは孤独になってしまいました。これは、”真の人の革新”を得るには"しがらみ"があってはダメだということではないでしょうか。”宇宙時代の人の革新とは、人が宇宙に適応するための進化”と考えれば、それは人が生まれ変わっていくこと。生焼けでは再生しない…"しがらみ"に縛られていては”重力に引かれた者”と同じになってしまう。だからアムロはニュータイプへ近づけたのではないかと考えます。 サイド6でのもう一つのイベント、ミライ・ヤシマとカムラン・ブルームの接触。 勿論、富野監督は戦争を否定しています。例えば、太平洋戦争当時の軍部や政府の指揮・統率力の無さを強く批判しています。一方で、戦争を他人事のように捉えるのも大嫌いなんだと思います。目の前の困難を避けて通ってはダメだ。足掻き、抗い、立ち向かえ。コンスコン隊との会戦時、「戦火に巻き込まれないためには、何を為すべきか考えるべきでしょう!」と叫ぶキャスターのセリフは、富野流の皮肉ではないでしょうか。 ニュータイプを語るのに欠かせない兄妹のストーリーも進んでいきます。 テキサスコロニーにて、アルテイシアさんがキャスバル兄さんと再会です。 ここもアムロとシャアを対比すると面白いのです。シャアは「私は過去を捨てた」と言ってますが、全然捨てきれていません。そもそも”ジオン・ズム・ダイクンの息子"という時点で無理なのです。もしも彼の論法で革新を得るのであれば、「大佐いけません!」と言われて薙刀を引っ込めてはいけないのです。ア・バオア・クーでアムロに敗北し実感したのではないでしょうか。だからこそ、あらためてザビ家への復讐を遂行したと思うのです。 そして“光る宇宙”へ… ここではアムロの”真のニュータイプへの覚醒”が描かれます。敵であるモビルアーマー・エルメスのパイロット、ララァ・スンと感応(ニュータイプ同士の共鳴)するアムロ・レイ。言ってしまうと”互いを分かり合える”ということなのですが、この場合は"意識の混和"のような感じでしょうか。私たちが体験する”共感”ではなく、”同化"に近いもののように思います。 「アムロ、いけないわ!」 「奴との戯言はやめろ!」 一歩手前で引き留められる二人… 戦いは進み、セイラさんを撃墜しそうになって踏みとどまったシャアに対して一気に詰め寄るアムロ。雌雄が決したと思われた瞬間、シャアを庇ったララァにアムロのサーベルが突き立てられる… この時ララァは、軍へ恩義とシャアへの愛情という"しがらみ"を棄てました。自らの命と引き換えに… アムロは孤独な自分の理解者となり得たかもしれない人を自らの手で殺してしまう… そして皮肉にも、2人は意識の海で真に互いを理解し合ったのでした。 「あぁ、アムロ…時が見える…」 この構成・演出は、ただただ素晴らしいの一言です。 そして感動のラストシーンへ… ニュータイプは人の革新、古きものの全てが悪しきものではない。 アムロは、ニュータイプだけでなくオールドタイプにも感応していく。 シャアが見たかった、ニュータイプがニュータイプとして生まれ出てくる道とはホワイトベースだったのではないでしょうか。年齢、性別、人種、そしてニュータイプ、オールドタイプ。それらを混然として受け入れる場がそこにはあったのだから。 カツ、レツ、キッカのカウントダウンで、爆発と同時に飛び出してくるアムロのコアファイター… ごめんよ… まだ僕には帰れるとこがあるんだ …こんなに嬉しいことはない… わかってくれるよね… ララァには、いつでも逢いにいけるから… "恋しくて 募る思い 宙 茜色に染めてく Yes, my sweet, Yes my sweetest I wanna get back where you were 愛しい人よ もう一度 Yes, my sweet, Yes my sweetest I wanna get back where you were 誰もひとりでは 生きられない" https://m.youtube.com/watch?v=_Vdp6H93QkU この日、宇宙世紀0080 この戦いの後、地球連邦政府とジオン共和国の間に終戦協定が結ばれた... #参考 #考察 #思い出 #なんかスミマセン