047 拡がる音

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持ち手から二股に広がり真っ直ぐ伸びる鉄の棒。それを何かにぶつけると音が出る…これが何かお分かりだろうか?

音叉である。

音叉を何かにぶつけると震えながら音がでる。その震えを手で感じつつ見えない音が空間に拡がっていくあの感覚は面白い。我が家には音叉があり、それを味わった際の記憶だ。
恐らく多くの家には音叉は無いと思う。何故我が家にあったかというと…私は小学生から中学生の頃までバイオリンを習っていたからだ。ただ正直、音叉を使って調弦(それぞれの弦の音階を合わせること)したことはないが家にあった。ちなみに紋様はその音が拡がっていく様子をイメージしたものだ。
母曰く、私がバイオリンを始めたのは母にねだったからだそうだが…残念ながらそのような記憶はまったく無いし気付いたらバイオリン教室に通っていたようなものだった。
そして私の腕前はどうかというと…たいして上手くなかったし、上達しなかったと思う。母には申し訳ないがやる気がないのが理由だと思う。
結果的にバイオリンは辞めてしまうが、思い出は色々ある。
バイオリンの弓に対し、決まった方向にはしらせつづけた松脂は弓の形にへこんでいくがその様子が面白かったり、バイオリン教室が終わった後に行くレストランが楽しみだったこと、行く最中のバスの中でバイオリンケースを抱えた私のすました表情の内心は非常に憂鬱だったこと…。
文章にしきれないほど多くの思い出はあるが、バイオリンを弾くことに関する充足した思い出がないのは残念だ。
もし、あの頃の私に声をかけることができるのならば…もっと素直に恐れず、母と話し合えということだろうか。
こんなどうしようもない事を考えてしまう程に、今でも心が揺れ動いているという事に私自身が驚いている。

この文を書きながら、バイオリンに関する思い出、あの頃を静かに思い出すが…当時の思い出はいつだって鈍く暗い色で重く心にあり、悔恨の情と共に蘇る。

そして、いつも雨が降っている。

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    ace

    2018/10/08

    音の2次元化・3次元化はなかなか難しいですが、雰囲気伝わりますよ!😊
    ギターの"鳴り"の話になったとき、視覚化出来ればと常々思います😆

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    • 音の形や色を平面や立体で表現するのは難しいですが楽しいですよね。私の紋様でそれらが伝わっていれば嬉しいです!
      ちょっと伝わるか自信がありませんが
      …子供の頃にCDプレーヤーで曲を流している際にプレーヤーのモノクロの画面の中で増えたり減ったりするメーター?を見ているのが面白かったです。伝わるかなー、あれはなんていう名前なのでしょう…笑

      「鳴り」ですか。ちょっとわからなかったので調べてみたのですが…やはり理解には至りませんでした(苦笑
      ただ、楽器は完全に同一の個は存在しないのでそれぞれに音の個性があると思います。それらにこだわる音楽家の話は楽しそうだなぁと思います。形の無いものの視覚化、もっと人を楽しませる事ができるようになりたいと思いますよね。

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      ace

      2018/10/08

      レベルメーターやインジケーターのことでしょうか?

      「鳴り」は口で説明しづらいですね。
      以前NHKでストラディバリの音に迫る、みたいな番組が面白かったです。ポイントは材の目とそれに合わせた加工のようで、それを考慮せずに修復されると音が変わってしまうとのこと。その違いの視覚化を試みていました。周波数によって色分けしてどの方向へどのくらい伸びているか、というものでしたが大変興味深かったです。ワナナキさんの、音に紋を感じられたのはとても面白いですね✨話逸れちゃって失礼しました😆

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    • そのような名称でしたか!勉強になります。曲が流れている最中にあのメーターが上下する様子が面白くて曲そっちのけで観察していたのを思い出します(笑

      ストラディバリも個体によって音が異なるのは知っていましたが、修復によって音が変わってしまう恐れがあるのは知りませんでした…更にそれを数値化し色分けによる視覚化とは…面白いですね。

      話が逸れるのは大歓迎です(笑
      この様に紋様からコミュニケーションが生まれ、ただの紋様から私にとっても、見てくださった方にとっても意味のある物に変わっていくことがこの作品の重要な部分なのです。なのでこの紋様、拡がる音のように話を拡げてくださり感謝です!

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