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048 彫刻刀
紋様のアイデアの素が、実はネイチャー番組なのは作品の最初期ではかなり多い。 これ自体は南の国の文化を紹介する番組の中で木彫りの紋様の意味などを解説している場面だったと思う。 当時、見ていて思ったのは大胆(大雑把だなー気候からくる性質かしら…とも思っていた)な彫りがなされた木の塊も多くの数が集まり、さらにそれを遠くから見れば非常に繊細で美しい物になるのだ!なんて小さな気付きがあったもの。 話は変わるが、記憶の紋様もこれで48個の思い出を皆様に紹介している事になる。 思い出の種類は様々。懐かしさや楽しさからくるもの、美しいもの悲しいもの…色々あって面白い。 このNo.48は「痛覚」の思い出。ちなみに48あるうちで痛覚に関する思い出は2つ、意外と少ないと思った。 痛みの思い出は思い出すと痛みも蘇る…訳ではないけどその傷があった部分を見て少しだけ苦い気持ちになる。 小学生の頃に図工の授業で木版のパートがある。(今はどうだろうか?) その木版で使うのは「彫刻刀」 自分や人に向けて木を彫らない事、刃先に手や腕を置かないこと…等と先生から注意点を教えられると思う。 でもそこに未熟な注意力を向けても事故が起ってしまうのが悲しいところ。 私が使っていた彫刻刀はしまう時に安全の為ビニルのチューブを被せる必要がある。 事件は私が使っていた「平刀」をしまおうとした時に起こった… 彫るという危ない作業を終えて油断していたのだろうか…チューブの穴に刃を入れて奥に差し込んだ瞬間。 左手の親指の腹に激痛が走った。見たら結構な勢いで血が流れている…その痛みで彫刻刀を手放してしまった。 混乱して何が起こったのかその瞬間はわからなかったが、チューブに収まった彫刻刀を良く見てみると… チューブを貫通して刃の部分が斜めに出ていて、そこが私の親指を切り裂いたようだ。(チューブの厚みは2mm以上あったと思う) つまり彫刻刀を斜めに差し入れてしまったようだが…内心、チューブに対して「お前、やられてしまったのか!?」なんて思っていた。まあ十分役割は果たしてくれたと今は思うけど… その後、それを見ていた目の前の女の子が絆創膏を応急処置としてくれたのが嬉しかったが…とにかく痛かった思い出だ。切り傷としては一番深い傷である(2018年10月13日時点) 思い出を記録し、その文を読み返しながらある事に気付き苦笑いをしてしまった。 今も微かに傷が残った親指と人差し指を無意識にこすっている自分がいることに。 ※1 平刀は刃先がまっ平らで横長の彫刻刀
イラスト ワナナキ帝国製 不明紋様採集士ワナナキ
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記憶の紋様
記憶の紋様が作られるまでには複数の工程があります。 ●まず最初にパネルと作ります。 ①木の棒を40mm×60mmに組み、ベニヤをカットし貼り付けます。 よく画材屋さんで売っている木のパネルの形と同じです。残念ながらこの大きさのものを大量に購入しようとするとコストが非常にかかるので自分で作ります。これが一番骨が折れる作業です。 ②その木枠に画用紙を水張りする 水張りというのは紙が水分を得ることで伸び縮みする性質を利用した固定手法です。 水を吸い込んで伸びた紙を木のパネルに固定(乾くと縮む)することで水彩などの水を多く使う画材などでも紙がよれたりしなくなります。 ワナナキはペンを使うので別に水張りである必要はないのですが…これの方がかっこいいでしょ? これで何も描いていない記録用のブランクパネルの完成!! ●紋様を採取する 何か面白いものや興味のある物、印象に残っているもので紋様化できるものを採取します。日常のどこかしらに紋様は生息しています。 その際に、思い出も記録します。ちなみに後々見返したときに他の思いでも喚起されることもあるので面白いです。 スケッチブックにはこれらが沢山あるのですが採取スピードと描くスピードが全然違うので尽きません。 ●紋様を記録する 0.03~0.5のペンを使って紋様をパネルに描いていきます。 この際に使うのは黒と灰色のペンのみ。ミスしたりすると落ち込みます… 紋様をパネルに描き終わったらナンバリングをして完成。 現在550個程度のコレクションが存在します。
イラスト ワナナキ帝国製 不明紋様採集士ワナナキ
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042 斜線の糸
描いているときは糸をイメージしていたけど、見ていると湧いてくるイメージが変化する事がある。 紙が大量に積み重なり、紙一枚一枚が映し出す非常に繊細な「影」が想起された。 しかし紙の影はもっと細く、目に見えるかどうかも怪しい…幻視のようなもの。理想の線には程遠い。 それを実感した時にもっと…いやぁもっと繊細な線が描きたいな!と声に出してしまった。
イラスト ワナナキ帝国製 不明紋様採集士ワナナキ
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001 はじまりは○
何も考えずにペンを動かすと決まって現れる形。 無心なこの形は原始的で、記憶の紋様はこれから始まった。 これらの他の絵に用いるときは雲にも木の葉にも煙にも何にでもなる。 徐々に空間を埋めていくのが非常に気持ち良い。 ちなみに最初のころの紋様なので40mmX60mmの画面を埋め尽くすのにも10時間ほどかかっていると思います。 慣れると3時間ほどで描ききりますが…
イラスト ワナナキ帝国製 不明紋様採集士ワナナキ
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002 羽毛
皆様は羽毛を観察したことはありますか? あの羽の繊維質の美しさ、極細の線の重なりの美しさは言葉にできません。 何故それに気付いたかって?子供の頃にダウンジャケットから出てくる羽毛を引っこ抜きまくったお陰です。←怒られます。 あれって妙にチクチクしていて気になるし嫌だから引っこ抜いてしまいますよね?あれ、なりませんか?
イラスト ワナナキ帝国製 不明紋様採集士ワナナキ
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031 ざらざらした線
どこに行っても紋様の素は採取できる。(それに記憶が伴うかは別として) この紋様はホームセンターの外にある合板(調べたところパーティクルボードらしい)から採取した紋様だ。 ホームセンターの木材売り場にあるミニチュアの家や船を見るのが好きだった。(自分で作るのは好きじゃない) ミニチュア模型などで特に好きなのはお店などを再現した模型だ。食べ物や缶などが正確に再現された模型は本当にたまらない。いつか駄菓子屋の模型などが手元にあったらいいなぁと思う。←自分では作らない
イラスト ワナナキ帝国製 2008年より前紋様採集士ワナナキ
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032 重ねて
十二単の胸元、生地と生地が合わさるあの部分がとても美しいと思う。 我が家には立派な雛人形がある。 職人の見事な腕により、小さな人形ながら十二単も完全に再現されている。 この雛人形は変わっていて段は少ないが屋敷のような形状をとっている。実は母の祖父が母の為に宮大工に作らせた品らしくそれが我が家にあるとの事。とにかく豪華なもので見ていて非常に楽しいものになっている。 ただ、私が特に好きなのは人形が持つ小物だった。お内裏様の持つ太刀や姫のもつ桧扇、三人官女の提子、五人囃子の楽器…とにかく緻密に再現されたそれらの小物を毎年見るのが楽しみだった。
イラスト ワナナキ帝国製 不明紋様採集士ワナナキ
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024 白から黒へ
美術系の予備校時代の授業で本当に、一番最初にやった課題。鉛筆の正しい削り方(カッターを使って)から教わり、画用紙に縦並びに四角を描いて白から真っ黒へと明度の変化を描いていった。これは鉛筆のみで物を描く時の基礎の基礎だ。外国はどうかはしらないが鉛筆デッサンは明度のみで静物画や人物を描くからだ。 当時は知らないことばかりで真新しさもあり退屈ではなかったが…慣れるとデッサンの授業はひたすら苦痛だった(笑) 授業中に意味も無く外出したり散歩したりと全く集中できない…。そんな私だが今でも予備校にはちょくちょく顔をだしたりする。そこの校長が色々と博識だからだ。 アングラ本や奇書怪書などの情報を知りたいときはまず、その人に話を聞きに行くくらいだ。 ただ、最近は美術系の大学に進学する学生も減りつつあると聞くしそもそも予備校に通う人も減っていると聞いている。なくならないと良いのだけど。
イラスト ワナナキ帝国製 不明紋様採集士ワナナキ
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040 奥行きのある網
錯視のある画面に仕上げたいと思っていた(恐らくエッシャーか何かを見ていたと思う)がうまくいかないなぁ、と出来上がった画面を見ていたら…いやこれはこれでオッケー!うんうん!なんて収蔵。 自分の中でセーフとアウトのライン引きは感覚的に行われている。アウトな紋様は、描き始めてすぐに予感のようなものはある…不思議なものだ。
イラスト ワナナキ帝国製 不明紋様採集士ワナナキ
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018 紙の編み物
幼少期の頃に細い紙のテープを交互に折り合わせて、紙のバネやバッグなどを作って遊んでいた思い出がある。 ただ…痛いお話になるけど私は注意力散漫なところがあるので紙の端などで不意にスパッと指の腹などを切ってしまうことがある。当然、とても痛い。しかも外でも良く遊ぶので傷に汗や水がしみたりしてとても痛い。 当時の絆創膏は現代のものと比べてはがれ易くあまり役に立たなかった思い出がある。興味本位に傷を開いてみたりして激痛に身をもだえたのも思い出。ていうかなんでそんなことしたんだ…痛いじゃないか。
イラスト ワナナキ帝国製 不明紋様採集士ワナナキ
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003 髪の毛
高校の頃の友人の髪の毛が天然パーマ。私はストレート(伸ばすと癖が出てきて自分で言うのもなんですが見事な中世の巻き毛になるベルバラ…には負けるが)理由は知らないけれど、本人にそれはコンプレックスだったらしく大学に進学した時にあったらストレートをかけていた。最初は非常に違和感を感じたけど、次第に慣れた。 本人が嫌がるので言わなかったけど天然パーマの彼も似合っていた。もうずいぶんと彼には会っていない…元気にしているだろうか。
イラスト ワナナキ帝国製 不明紋様採集士ワナナキ
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007 ページの曲線
高校生の頃、授業に集中できずボーっと閉じられた教科書のページを見ていて一枚一枚の紙が映し出す影が美しいなぁなんて事を考えていたことを覚えています。特に辞書みたいな分厚い本の繊細な影を見るとそのミクロの世界に吸い込まれそうだ…なんて考えていたことを思い出します。あと本を半分に開いて左右のページを一枚ずつ中心に丸めていくなんてこともしていました…何をやってるんだか…
イラスト ワナナキ帝国製 プライスレス紋様採集士ワナナキ
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041 円柱
思い出すのは石膏の白い円柱。静物(せいぶつ)デッサンのバイプレイヤーだ(ワナナキによると) ちなみに、予備校に入ったばかりの時にせいぶつデッサン?え、生き物を描くの?難しくない?なんてドキドキしていたら真逆なものが出てきて肩透かしをくらったのは良い思い出。 しかし、初めは円柱単体で課題として出てくるが回を追うごとに円柱にどんどん物が加わり難易度が増す。 布や棒、野菜や葉のついた枝など…円柱が机に立っている事を描く事に苦労し物が上に乗っていることに苦労しと… しかし、ここから全ては始まる。
イラスト ワナナキ帝国製 不明紋様採集士ワナナキ
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056 アソート
色々な円、円の線を配したパネル…円のアソートを描こう と、思い描いた紋様。 この手の紋様は一つのルールに単純な形で手を替え品を替え色々と派生する。 円の次は、四角だ三角だ!と言う具合で。 さて、唐突ですが皆様。 好きな食べ物は何ですか? 明日世界が終わるとしたら最後の晩餐に何を食べるか…なーんてそんな重大?な質問ではなく私生活で普通に食べるもので好きな物です。 私はパッと思い付くのは「たこ焼き、ドーナツ」 たこ焼きのどこをとても愛しいと思っているかは別に機会に…この二つは何故か特別です。 幼少の私の落書き帳には必ず出現するくらいに。理想の形を追求するためにどれだけ円を描いた事か…(もしかしたら001が円なのはそれが原因か?) この紋様で思い出すのは、円とアソートのお話。 小学生の頃、親にミスタードーナツに連れていってもらいトレーとトングを自分で持ちドーナツを選んでいた時。 チョコファッションやフレンチクルーラ、エンゼルフレンチ…自分がいつも食べる物を載せていたらある商品に目が止まりました。 舟に入った玉状のドーナツ…。 え、たこ焼き…?! その正体は「D-ポップ」でした。(2013年8月までの販売の模様) その商品形態に惹かれて即トレーに載せて母の元へ。 買ったらイートインで座りD-ポップを観察。 一口サイズの球状、6個のドーナツはそれぞれが違う装いのアソート。 ①プレーンなオールドファッション玉 ②プレーンに半分程チョコに浸けたチョコファッション玉(作る人によってチョコのついている部分の比率は異なる) ③チョコ生地にココナッツパウダーをまぶした玉 ④チョコ生地に黄色いつぶつぶをまぶした玉 ⑤砂糖がまぶしてあり柔らかいフニャッとした玉(たしかクリーム入り…) ⑥ストロベリーチョコソースがかかった玉 が一舟の中の同席していました。更に脇にはつまようじならぬフタマタ楊枝までますますたこ焼きっぽい!と心のなかで思っていた気がします。 ただ、味は①から④はいつも食べる味だったのではずれなし。 ⑤と⑥は、私の好みではなかった…(だから記憶が曖昧) たこ焼きっぽさに惹かれて買い、食べ終わってから冷静になって…。 あれ、これを買うならもう一個好きなやつを買ったほうがいいんじゃない?と真顔になった思い出があります。 円のアソート紋様を見ながらドーナツアソートを思い出していたら、ドーナツを食べたくなってしまいました。 好きなものを、食べにいこう!
イラスト ワナナキ帝国製 不明紋様採集士ワナナキ
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012 線のアソート
この頃、早くも紋様はネタ切れ…毎日1枚は描くのだ!なんて意気込んだはいいもののネタがなければ描けない。 しばらくリビングのソファでうなって…その日は思いつく線の種類で画面を構成しようと考えた。今でこそ紋様を思いついたり思い出を記録することに苦労しないけど、始めた当初は一つ一つ思いつくことにすごく苦労した。しかもその紋様を魅力的に仕上げることも…まあこの点は550個以上の紋様を描き上げた今でも苦労しているけれど。 日々、紋様のことを考えてどうやって画面を構成するかを考えることで徐々にスムーズに紋様を考え付く回路が脳内で出来上がっていった気がする。
イラスト ワナナキ帝国製 プライスレス紋様採集士ワナナキ