- wananakiemperor Museum
- 1F 記憶の紋様
- 045 木のかご
045 木のかご
私は自分を「プチ潔癖症」だと思っている。いきなりなんだ?と思われるかもしれないが、どうにも生理的に受け付けないものがある。プチ潔癖症に関する思い出は山ほどあるがそれはまたの機会に。
この紋様自体の思い出としては、銭湯の脱衣所にある木のカゴからだ。
皆様は銭湯にいかれたことはあるだろうか?
最近は経営が厳しく、数を減らしていると聞くが私の家の近くには2軒程ある。そのうちの1軒は小学生の頃によく行った場所だ。
夏の暑い夕方、親から銭湯に行くぞと告げられ自転車をこいでいったのは良い思い出だ。
のれんをくぐり、靴をしまう(鍵は木の板の鍵だったはず)
スライド式の戸を抜けると休憩室がある。私はここが好きだった、そこに漂う時間の雰囲気が幼いながらに貴重なものだと感じていた。
入浴券を渡すカウンターにはおじさんが座り、部屋の対面にあるテレビを見ている。定番のマッサージチェアや天井には扇風機(があったと思う)、そして古き良き風呂道具(タオルや石鹸)を売る販売機があり、銭湯には絶対に欠かせない中が見えるガラスの冷蔵庫。内心では親に買って欲しかったがその中にあるフルーツ牛乳を飲んだ記憶はない…どんな味であったろうか?あの頃には戻れないのでその味を知ることは永遠にない。
さて、ここからが問題だ…銭湯に来たからには風呂に入らねば。
先に断っておくが私は銭湯の文化は大好きだ。待合室は勿論、普段入浴する浴槽とは違う大きなお風呂場で味わう内から湧き出る安心感。銭湯の絵も勿論魅力だ(私が言った場所は富士山ではなかったと思う)
ただ、いつからか顕在し始めてしまった嫌悪感から銭湯にはもうながいこと行っていない。
脱衣室で木のかご(ようやくでてきた)に服をいれ面倒だがたたんで袋に入れる。
新しい着替えをかごにセットしておき体を洗う用具一式を装備したら浴場への扉を開ける…
そして、足を踏み出した先にあるのは…生理的嫌悪感の対象、「濡れたタイルに落ちた抜け毛」だ。
もうダメ(無理)である。それを見た瞬間に素足の裏から頭の毛先まで駆け上がる嫌悪感の微細電流。
つい少し前まで誰かの頭に生えていた毛、残念ながら脱落し濡れたタイルの上に落ちたその毛は…私の精神に大きなダメージを与える…、とかなり大袈裟に書いたが本当に心が受け付けないのだ…もしその毛を踏んだらすぐにでも水で洗い流さなければ気がすまない。恐らく、その毛は大して汚くはないと思う…しかしダメなものはダメである。
行きも地獄だが帰りも当然抜け毛があるので地獄だ…正直、体を綺麗にした気がしない…
それを実感してからというもの銭湯には行っていない。私の残念な性質の思い出であった…