By all means Toledo~もしスペインに1日しかいられないのなら迷わずトレドへ行け

初版 2022/08/21 01:41

改訂 2023/12/26 11:07

初めてスペインに行った際、「トレドに行ったか」と地元のいろいろな方に言われました。家内と私はマドリッドにずっといるつもりだったのですが、スペインの方々があまりに薦めるので日帰りでトレドに行くことにしました。その日のことをお話したいと思います。カメラの性能が悪く、写真がきれいでないことをご容赦下さい。

格言で「もしスペインに1日しか居られないのなら迷わずトレドへ行け」というものがあるそうです。それほどトレドは大切な町だったことを私達は知りませんでした。

マドリッド-トレド間はスペイン国営鉄道「RENFE」の「AVANT」という高速鉄道が走っており、33分で到着します。札幌小樽より短時間です。とても本数の多い路線なのですが、トレドが人気の町ということもあり、満席で乗れないこともあるそうです(実際、前日トレド行のチケットを取ろうとして満席で諦めています)。翌日、何とか二人分の席を確保し、マドリッドのアトーチャ駅から列車にのりトレドに向かいました。

1851年に建てられたアトーチャ駅の駅舎です。スペインはどこも親切な方が多かったのですが、駅のRENFEのチケット売り場の女性たちは事務的で恐ろしくつっけんどんな方が多くて参りました(笑)。

駅構内には広大な空間があり、中は植物園のようになっています。

これが私たちの乗ったAVANT。鼻先が短いのが特徴です。最高速度は270キロ。

こちらはバルセロナなどに向かうAVEですが、デザインは新幹線の勝ちだと思います。速さは最高時速300キロ前後。

この車両は何となくスピノサウルスに似ています。

景色を楽しむ暇もなくあっという間にトレド到着です。これはトレド駅構内です。この建物は「ムデハル様式」という「残留イスラム教徒とキリスト教の建築様式が融合したスタイル」で建てられています。アーチや天井の格子様の模様が特徴です。トレドはキリスト教、イスラム教、ユダヤ教それぞれが尊重され、数百年共存した大変珍しい街でした。

ステンドグラスが見えますが、西洋の駅舎とは明らかに違います。イスラムは偶像禁止ですから、聖人の彫像などもありません。

木製の幾何的な格子は大変美しく、まさにイスラムの天井です。

ここからてくてく歩き、トレド旧市内に向かいます。

タホ川を挟んで旧市街が見えてきました。トレドは三方を川に囲まれた城塞都市。守りは固く西ゴート王国の首都であったのも納得です。

中央に見える尖塔の建物がアルカサルです。

恐らく今私が見ているこの町の様子は、数百年変わらず昔のままだと思います。

タホ川はとても流れがゆっくりしており、川べりは何とものどかな雰囲気です。

鍵穴のような典型的な旧市街への入り口。アルハンブラ宮殿も同じような入口になっています。

トレド大聖堂が見えてきました。270年ほどかけて15世紀に完成した建物です。非常に密集した土地の中に聖堂が建っていますので、この建築物を遠くから眺められるベストポジションというものがありません。

大聖堂の「免罪の門」のファサードです。ファサードの上の彫刻は最後の晩餐をモチーフにしたものです。

こちらは「獅子の門」のファサードです。

中に入ると非常に高い天井の空間です。

左に見えているのが主祭壇の柵です。

柵の間から撮影した高さ30メートルの主祭壇。彫刻がぎっしりです。

至るところにステンドグラスがあります。大聖堂内には全部で750枚のステンドグラスがあるそうです。

主祭壇の向かいにある聖歌隊席です。聖人の彫刻が並んでいます。

ちょっとスペインの三十三間堂っぽいですね。

こちらも聖歌隊席の彫刻です。

主祭壇の裏側にある「トランスパレンテ」と呼ばれる透かしが施された祭壇衝立です。天井の窓から光が差し込んでとても神秘的です。

天井から光を取り込む手法があちこちで取られています。

聖堂内にはこうした礼拝堂が22もあります。

いよいよ本日のメインイベント、聖具室です。この大聖堂の聖具室にはどの美術館にも劣らない素晴らしい絵画があります。絵を見る為だけでもこの聖堂にいく価値があります。

聖具室内陣です。正面に主祭壇画が見えます。

ルカジョルダーノ作の天井画「聖イルデフォンソの昇天」が描かれていまゆす。

主祭壇画であるエル・グレコ作 「聖衣剝奪」

グレコには同じ構図の絵が5点ほどありますが、やはりこの絵の出来が断然素晴らしく思えました。

他にも良い絵がたくさんありました。

エル・グレコ作 「キリストの磔刑」

ティッツァーノの絵なのですが、後日レLEGOの日記さんに教えて頂きました。「教皇パウルス三世の肖像」ということがわかりました。レLEGOの日記さん、ありがとうございました。

ゴヤ作 「キリストの逮捕」 放心状態のイエスの印象が強烈です。

ベラスケス作 「ボルハ枢機卿の肖像」

カラヴァッジョ作 「洗礼者ヨハネ」 彼の描く若者としては何だかおとなしい感じがします。

ヴァン・ダイク作 「聖家族」 ヴァン・ダイクのこうした宗教画の小品はとても珍しい感じです。

ジョヴァンニ・ベリーニ作 「キリストの埋葬」

ラファエロ作 「ベールの聖母」

立派なパイプオルガンのパイプが見えます。

フランボワイヤン・ゴシック様式の鐘楼です。

宝物室に移動します。純金と純銀製で本物の宝石があしらわれた聖体顕示台がありました。高さ約3m、重さ約200kgとたいへん巨大なもので、年に一度だけ外に運び出されて聖体行列を練り歩きます。

聖体顕示台の上の天井はイスラム様式です。大変に装飾的で美しい。

こちらはアルハンブラ、ナスル宮殿の「二姉妹の間」の天井、鍾乳石飾り。

もう一度聖堂内を眺めます。

ドーム内の天井画もきれいです。

聖堂内のバラ窓のステンドグラスはどこも大変美しいものでした。

私はトレドに泊まったことがありませんが、後年この町に宿泊した家内が絶賛したトレドの夜景です。

「もしスペインに1日しか居られないのなら迷わずトレドへ行け」というのは、スペインの複雑な歴史を考えると、まさにその通りなのだと思いました。

1990年3月に行ったロンドンで、初めてエドワードグリーンのドーバーを購入しました。以来、ここの靴の虜になりました。質の良いしっとりとしたカーフ、美しい木型、無い物ねだりと分かりながら、この時代のエドワードグリーンの靴を今も追い求めてしまいます。
他に古い靴も修理して履いています。特に戦前の英国靴は素晴らしいと実感しています。

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    ts-r32

    2022/08/22 - 編集済み

    トレド、懐かしいです。
    私は学生時代にツアーでマドリッドとトレドに行きました。
    大昔のことなので、記憶も薄れかけていましたが、大聖堂や町の景色の写真を拝見し、改めてこんな凄い所に行ったんだなあと感嘆しています。
    当時は、バルセロナに行きたかったのですが、ツアーコースがトレドだったことに今更ながら納得しました💦

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      グリーン参る

      2022/08/23

      ts-r32さん、
      学生時代にトレドに行かれたのですか。素晴らしいです。あまり広くない町ですから、1-2泊できればほとんどのところを回れますね。その後、家内が一人でトレドに行っていますが、特にバラドールからの夜景は筆舌に尽くしがたい美しさだそうです。

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    fanta

    2022/08/22 - 編集済み

    スペインの三十三間堂、、😆👏ウケましたw

    教会内部の装飾や祭壇、聖像など…
    まさに圧倒されるような美ですね。
    圧倒され、支配されそうな中世の気分になってしまいます😅

    イスラム天井の模様は、
    確かピースごと形の決まったのを組んで作るそうなんですが、にしても繊細で、いかにも数学の発展したイスラム文化なのを感じさせます。

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      グリーン参る

      2022/08/23

      fantaさん、
      申し訳ありません。「三十三間堂」の他に例えが思いつかなかったものですから。

      イスラムの幾何的な模様のセンスは信じられないほどです。アラベスク模様はどこも大変美しいですね。メスキータの一部を壊して作ったキリスト教の聖堂の出来上がりを見て、カルロス五世がもらした有名な言葉がありますね。
      「どこにでもあるような建物(大聖堂)のために、この世で唯一のものを壊してしまった」
      確かにメスキータやアルハンブラは誰にも真似できない幾何学的な美しさに溢れています。

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      fanta

      2022/08/23

      いえいえ面白かったので♪
      どこかで使わせていただきたいです、そのナイス表現😆♪

      スペインがかつてイスラム勢力下にあった歴史を、建造物からうかがい知れるという感じですね。それらは世界遺産にもなっているし。
      カルロス五世…わかっているじゃないですか?!😁遅いけど💧

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    レLEGOの日記

    2022/10/08 - 編集済み

    グーグル先生によると、ティッツァーノの絵は教皇パウルス三世の肖像というらしいです。
    ヨーロッパに行ったことがないので、いつかいけたらいいなぁと思います。リタイア後かな。

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      グリーン参る

      2022/10/09

      レLEGOの日記さん
      ティッツァーノの絵のタイトルをお教え頂きありがとうございました。パウルス三世の肖像だったのですね。疑問が解けてようやくすっきりいたしました。私もまたいつかヨーロッパに行ってみたいです。
      今後ともよろしくお願い申し上げます。

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