鉱物標本 パイロクスマンガイト(Pyroxmangite)

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別名:パイロクスマンガン石
産地:愛知県、北設楽郡、設楽町、八橋、田口鉱山

変成マンガン鉱床の酸化鉱層、炭酸塩鉱層の下のケイ酸塩鉱層に産出するマンガンケイ酸塩鉱物。花崗岩やその他火成岩中にも見られる。

同じマンガンケイ酸塩のロードナイトと見た目で判別するのは非常に困難であるが、生成される条件が異なる。どちらもマンガン含有岩の変成とケイ酸分との接触交代作用により生成されるが、ロードナイトは高温低圧条件下で生成されるのに対して、パイロクスマンガイトは低温高圧条件で生成される。

名前はマンガン(manganese)を含有した輝石(pyroxenes)に似た鉱物という意味で1913年にWilliam E. FordとW. M. Bradleyにより命名された。

基本的にMnがFeに置換されたパイロクスフェロイトと固溶体を形成しており、Mn>Feのものはパイロクスマンガイト、Fe>Mnのものをパイロクスフェロイトに分類される。パイロクスフェロイトそのものは1970年にアポロ11号が静かの海から持ち帰った月の石から発見されている。

話は変わるが、海洋プレートが海溝にて大陸プレート側に沈み込む際に海洋プレートから剥ぎ取られて陸側に寄せられた堆積岩層を付加体と呼び、日本列島の陸地の多くはこの付加体から成立している。

本標本が採掘された田口鉱山はジュラ紀付加体(中央構造線)の北側に位置する領家変成帯という長野県南部から九州まで続く長大な変成岩帯上にある。この領家帯は白亜紀に起きたマグマの大規模上昇による「高温低圧型」の変成を受けて出来たものである。田口鉱山の層状マンガン鉱床の場合は泥質片岩の付加体が白亜紀に角閃岩相広域変成(500~800℃、0.2~1.3GPa)と花崗閃緑岩の接触変成、ペグマタイト貫入を受けて出来た。

この田口鉱山は国内でも良質なパイロクスマンガイトが産出する場所で、他にもロードクロサイト(*1)やロードナイト等のマンガン鉱物がかつては採集できたが、現在は一切の立入りおよび採集が禁止されてしまっている。

2019年、ミネラルマルシェで購入。

*1:ロードクロサイト
→鉱物標本 ロードクロサイト(Rhodochrosite)

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