鉱物標本 クロコアイト(Crocoite)

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別名:紅鉛鉱、黄鉛
産地:Adelaide Mine, Dundas, Tasmania, Australia

赤い短冊状の結晶が特徴の鉛とクロムを含有する鉱物。そもCr元素自体が1797年にフランスの化学者Louis-Nicolas Vanquelinのよってこの鉱物から発見されており、化学史においても重要な鉱物である。ちなみにクロムの語源はギリシャ語で色を意味する"χρωμα"で、クロム化合物はその酸化状態で赤色から黄色、緑色と多彩な色を示すことからVanquelinの知人で鉱物学者で聖職者でもあったRené Just Haüyが命名した(*1)。

クロコアイトは1763年にエカチェリンブルク近郊のBerezovsk鉱床で発見され、1766年にJohann Gottlob Lehmannにより"Nova Minera Plumbi"と命名された。

1770年にPeter Simon Pallasによってこの鉱物を砕いた黄色い粉末が顔料に適していることが指摘され、「シベリアの赤い鉛」として黄色顔料として珍重された。かのゴッホの「ひまわり」もこの黄色によって1888年~1889年にかけて描かれた。現在の日本でもクロムイエローや黄鉛という名前で利用されているが、6価クロムを含むこの顔料の毒性はとても強く、発ガン性や生殖毒性、造血系や腎臓、神経系への影響等の恐れがあるとされる。日本の化学物質に関する法規制では毒劇物取締法の劇物指定な上、特定化学物質の第2類物質にも引っ掛かっており、毒性に関しては役満アウトである。ただしクロコアイトは法的には化学試薬ではなく石ころなので鉱物標本としての所持については(まだ)セーフである。

閑話休題、この鉱物には歴史の中でplomb chromate, kallochrom, crocise, beresofite, lehmannite等々まさしく「色々」な名前が付けられてきたが、現在のクロコアイトの元となったのは1841年のJohann August Breithauptによる"krokoite"という名前で、この顔料の黄色がサフラン"krokos"の色に良く似ていたことに由来する。

本標本が採掘されたAdelaide鉱山はタスマニア島西部のDundas鉱山地帯にある鉱山の一つで、世界でも有数のクロコアイト産地でもある。ここの露頭は古生代カンブリア紀の超苦鉄質岩に由来し、長い時間をかけて蛇紋石や方鉛鉱、苦灰石を豊富に含む岩へと変成し、さらに風化作用を受けることでクロコアイトのような二次鉱物も生成された。この鉱山ではクロコアイトの他にもMgとCrからなるスティヒタイトや、PbとAlからなるデュンダサイトのような希少鉱物も発見されている。

本標本は2019年のミネラルフェスタで購入。机下の目立たない所にあったこの標本買おうとしたら外人のお店の方が相当割引して下さって非常にお買い得だった。名前はサフランに由来しているが、私的には結晶の色形と毒性からヒガンバナの花のイメージが強い。…もしくはニンジンの千切り。

*1:René Just Haüy
→鉱物標本 ダイオプテーズ(Dioptase)

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