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Richard Pinhas & Tatsuya Yoshida “Ascension”
仏プログレ・バンドHeldonを率いていたギタリスト/シンセ奏者/作曲家Richard Pinhas氏と日本屈指の最強プログレ・ドラマー/即興音楽家/作曲家の吉田達也氏のガチンコ・コラボ・アルバムを今回は取り上げます。
Richard Pinhas氏については、これまでも紹介してきているので、そちらをご参考にして下さい。なので、吉田達也氏のバイオグラフィーについて、簡単に紹介していきます(彼の活動は多岐に渡り過ぎて網羅出来ないかも?)。吉田氏は、高校時代に吹奏楽部でDrsを始め、主にプログレ・バンドに影響を受けて、1980年代初期から、都内のライブハウスを中心に、本格的な音楽活動を開始し、以降、Zeni Geva, High Rise, YBO², Musica Transonic, Vasilisk, Dissecting Table, ZOAやあぶらだこ等のバンドでDrsを担当しています。1985年に、DrsとBによる自身のデュオRuinsを結成し、1990年代には海外ツアーを始めるとともに、Ruins以外に、和製シンフォニック・ロック・バンドの高円寺百景、叙情派/ユーモラス・プログレ・バンドの大陸男対山脈女、プログレ・ジャズ・ロック・バンドの是巨人、赤天、アカペラ・トリオのZubi Zuva/Zubi Zuva X等、次々と違うコンセプト/音楽性に基づくユニットを立ち上げ、そのレパートリーの大半を手掛けています。それ以降、現在まで様々なアーティストとの共演や自身のバンドにおいて、プログレやジャズ・ロック、即興演奏の分野で活動を続けています。また、国内のみならず海外でもコラボ等で精力的にライブを行っており、セッションでの参加を含めて多岐にわたる作品を様々なレーベルから発表しています。国内外の音楽家との共演も多く、近年では、菊地雅章、藤井郷子、林栄一等のJazzミュージシャンともセッションを行う他、反対派ロックのSamla Mammas Manna, サイケ・ロックのAcid Mother Gong (Acid Mothers TempleとGongの合体バンド), John ZornとBill LaswellとのPainkillerといった日本国外のバンドのメンバーでもあります。近年では、吉田氏一人で打ち込み/生Drs/Vo/Kbd等を演奏するRuins aloneや、Sax奏者の小埜涼子氏とのSax Ruins、天才キーボーディストの武田理沙氏とのデュオ等でも国内外でツアーを敢行し、観客を魅了しています。また、音楽活動のかたわら石仏や石像など、石の写真を撮り続ける写真家でもあり、その趣味は結成するバンド名やレーベル名(磨崖仏、Ruins[廃墟の意]、石窟寺院)や特徴的な作品のジャケットにも現れています。吉田氏の経歴は多過ぎて、書き出すとキリがないので、ここら辺にしておきます。
それで、そんな八面六臂の活躍を続ける吉田達也氏が、1970年代から活動を続けているRichard Pinhas氏と共に、仏のNantesのLa Sourisスタジオで録音・作成したのが、本作品”Ascension”です。担当は、Richard Pinhas (G, Effects)とTatsuya Yoshida (Drs, Kbd, Vo)で、プロデュースは吉田達也氏が行っています。どうも、Pinhasが高齢の為、2019年のジャパン・ツアーが最後の来日となったようです。しかしながら、Pinhas氏は、仏ではまだまだ精力的活動を続けていますので、吉田氏が渡仏して制作されたアルバムと言うことになります。と言う訳で、本作品の各曲をご紹介していきましょう。
★A1 “Ignition.” (7:54)では、重厚なイントロ部分から、一気に雪崩れ込み、変拍子のリズムに乗せて、吉田氏のDrsとPinhas氏の伸びやかなGのセッションへ、更に往年のHeldonを思わせるパートへと移ります。
★A2 “Affection.” (6:10)では、シーケンスに導かれて、Pinhas氏がGを弾きまくっており、吉田氏の超絶ドラミングも炸裂して、途中で現代的なエフェクトやPercプレイのブレイクから、再び炸裂する演奏になります。
★A3 “Infection.” (7:58)では、ややスローな出だしで、三味線のような音やピアノの演奏に移って来ますが、やがて、両者の壮絶なインタープレイとなります。そのバックから、シンセに導かれて、3拍子のリズム〜更にポリリズムとなります。Pinhas氏はGは弾きまくっていますが、曲はフェイドアウトしていきます。
★B1 “Ascension.” (21:53)は、組曲になっており、”Procession”, “Ascension”, “Invasion”, “Confusion”, “Elision”, “Decision”, “Illusion”と言うパートからなっています。先ずは、連続する電子音のバックに、Pinhas氏の伸びやかなGで始まり、5拍子のリズムに乗って両者の凄まじいインタープレイが繰り広げられます。やがて、叙情的なピアノの連打に合わせて、9拍子のパートへと。口ずさむメロディも加わりますが、一瞬のブレイクの後に、再び、両者の凄まじい激突演奏が展開され、アップテンポ化します。一旦、フェイドアウトした後に、今度は、両者のインプロ・プレイが始まります。その後、通奏低音らしきシンセに吉田氏のDrsとシンセのメロディが始まり、そこにPinhas氏のGが切り込んできて、5拍子のリズムでの演奏に続きます。やがてフェイドアウトした後に、エレピによるシーケンスで曲は幕を閉じます。
本作品は、「現代版Heldon」とも言って良いかもしれませんが、とにかく吉田氏も得意な緊張感溢れる変拍子プレイと、展開の早い曲作りに、Pinhas氏の往年のHeldonを思わせるGプレイ(Frippertronicsっぽい音色等)ががっつりハマった名作だと思います。多分、吉田氏もHeldonのファンであったのだろうと想像も出来(直接、聞いた訳ではないです)、ツボを押さえた展開や曲作り及び演奏をしています。なので、両者の息もピッタリで、リスナー側も、流石の緊張感を感じることが出来ます。本作品は、単なる懐古的なプログレの再現と言うよりも、「新しいロック」として聴く方が楽しめると思います!なので、Heldonのファンも吉田達也ファンも存分に楽しんで下さい!
[album digest]
https://youtu.be/IUjig1GPDeA?si=PPU9NULxZLet7-cu
[Richard Pinhas last Japan tour at 秋葉原Club Goodman; 2019/09/23; part 1]
https://youtu.be/5CYpCiK9JFU?si=AzXqdv3pr8LDpfue
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